車いす目線で考える

バリアフリーコンサルタント大塚訓平が考える、東京のアクセシビリティー

車いす目線で考える 第15回 「感動ポルノ」の意義
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車いす目線で考える 第15回 「感動ポルノ」の意義

『感動ポルノ』という言葉をご存じだろうか。オーストラリアのコメディアン、ジャーナリストであり、障害者人権活動家のステラ・ヤングが用いたワードで、『障害者を健常者の感動の対象として扱うこと、または、やる気を起こさせるために利用すること』という意味を指す。障害があるだけで特別な存在だと捉えられ、一般に求める真の成果で評価されずに、あらかじめ低く設定された期待値のもとで、高い評価を受けることにつながってしまっているような気がする。しばしば、この『感動ポルノ』と揶揄(やゆ)されてしまうのが24時間テレビだ。NHKの『バリバラ〜障害者情報バラエティー〜』では、2.4時間テレビと称し、障害者の頑張る姿を映し、感動を誘う企画や演出をわざと模倣し、当事者が求める障害者像を表現していた。 僕自身は24時間テレビに対し、否定も肯定もしない。事実、24時間テレビを見て、うそっぽい演出に興ざめしたこともあるし、数々のチャレンジに感動して涙したこともある。また、チャリティー番組なのに、芸能人の出演者に高額なギャラが支払われていることに関しては理解に苦しむが、一方で、わずかな期間であれだけ多額の募金が集まることは、本当に素晴らしいことだと思う。障害者が感動ポルノとして消費されることは悪か? ものの考え方や受け止め方は、人それぞれ違うものだ。僕自身は感動の対象になっても構わないと思っている。それは、今まで講演させてもらったさまざまな場所で、「感動しました。ぜひ、今度はうちの会社でもお願いしたい」と、ありがたいことに、その場で次につながる話が自然と生まれることが多いからだ。また、『一歩を踏み出す勇気』を誰かに与え、背中を押すことができたりもする。つまり、感動は人を変え、新たな出会いを生み出すものだと思う。僕は「あなたのことを、もっと知りたい」と思ってもらえるような人になりたい。そうなることで、自分のアイデアや生き方を伝える場が増え、障害者のリアルを見せることができる。まずは接点ができた僕に興味を持ってもらい、その後日常生活の中で、僕以外の障害当事者に出会ったときに、自然な形でコミュニケーションが取れる人を増やし続けていきたいからだ。 障害者との接点がない、または少ない人にとって、24時間テレビは、一年に一度、画面を通して間接的にでも障害者との接点を持つことができる良い機会だと思う。 「感動ポルノ期」の次のステップへ 障害があるという理由で用意された、低いハードルで評価されるのではなく、真の成果で評価される世の中に直ちになってほしい。しかし、何事にも段階があると思う。まずは、「感動ポルノ期」から次のステップに上がるために必要なことを考えなくてはならない。 24時間テレビは、一時の障害者のチャレンジを映すだけでなく、同時にその人が日常的に抱えている課題や困難を社会に広く知らしめる必要があると思う。そして、その課題を解決するようなプロダクトやサービスを、障害当事者が中心となってスポンサー企業と一緒に生み出す機会をつくることができれば、番組を見た人たちは、障害を正しく知ろうとする「障害関心期」に入り、障害者との交流も生まれるかもしれない。そして障害者と自然と混ざり合っていく「障害交流期」を経て、今まで深めてきた障害理解をほかの誰かに伝えていくという「障害伝道期」へと進んでいくはずだ。 まずは、何がきっかけでも構わない。パラスポーツを通して、ボランティア活動を通し

車いす目線で考える 第14回 新たな移動手段は心のバリアも取り除く
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車いす目線で考える 第14回 新たな移動手段は心のバリアも取り除く

最近、高齢ドライバーによる危険運転や悲惨な交通事故のニュースが、連日のようにメディアで報道されている。これに伴い、運転免許証を自主返納する高齢者が全国的に増えてきている。特に、2019年4月19日に池袋で起きた87歳の男性が運転する車が暴走し、2人の死者、9人のけが人を出した事故がきっかけとなり、東京都内ではこの事故の翌月に当たる5月に運転免許証を自主返納した人が5700人を超えたそうだ。 新たな移動手段が経済効果も生む しかし、免許を返納し、自動車の運転ができなくなったことにより、普段の買い物や、通院、人との交わりなどが大きく制限されては、生活の質が下がってしまう。そこで免許返納後の新たな移動手段として注目を集めているのが、電動車椅子を含むパーソナルモビリティ(以下「PM」)だ。PMとは、先進技術を用いた1~2人乗りの電動式の乗り物(移動機器)で、歩行と自動車やバイクといった既存移動体との中間体な乗り物のこと。現在、ベンチャー企業だけでなく、世界的な大企業も研究開発に乗り出している。海外に目を向けると、PMを単なる移動手段としてだけでなく、ビジネスの側面からもうまく活用している例がある。イギリスでは、既に400以上の施設にさまざまな種類のPMが導入されており、あるショッピング施設では、客の滞留時間が今までの3倍に伸びたことによって消費が上がったという。つまりPMの導入が、売上増に大きく貢献したのだ。 日本で乗れるPMとは?このようなポジティブな事例があると、今後の日本におけるPMの普及スピードが加速していきそうだが、国内でのPMの使用には一定の法規制が課されていることは知っておかなくてはならない。PMには現在「立ち乗り型」「座り乗り型」が発売されているが、「立ち乗り型」で有名な『SEGWAY®︎』は、残念ながら未だ一部の特区でしか公道走行が許可されていない。それに対し、座り乗り型で現在最も普及している『WHILL』は、時速6キロメートル以下で走行する電動車椅子のため、歩行者扱いとなり歩道を通行できる。もちろん運転免許も不要。そしてトヨタはこの2つのタイプに加えて「車いす連結型」を2021年に投入すると発表している。 『WHILL』は、オムニホイールという大小24個のタイヤを持つ前輪のおかげで小回りが利き、操作も簡単。今までの電動車椅子にはなかった優れたデザイン性、走破性、先進性を兼ね備えている。事実、「電動車椅子には乗りたくないが、『WHILL』なら乗りたい!」という声も多く、車いすユーザーだけでなく、免許を返納した高齢者の購入が急増しているのは、こうした理由からだろう。 ワクワクするような新たな移動手段を僕自身も行き先によって『WHILL』に乗り換えるが、最近、東京都内で移動していると『WHILL』ユーザーに出会うことが多く、思わず笑顔で挨拶してしまう。『WHILL』のようなPMが大々的に普及し、日常に溶け込むようになれば、ハード面だけでなく、心のバリアも自然と取り除かれていくことだろう。人々の生活を豊かにし、誰もが乗りたくなる、そんなワクワクするような新たな移動手段が数多く登場することによって、大胆な規制緩和や省庁をまたぐ法整備につながることを願うばかりだ。

車いす目線で考える 第13回 スムーズな電車移動を2020までに
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車いす目線で考える 第13回 スムーズな電車移動を2020までに

タイムアウト東京 >  Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第13回 スムーズな電車移動を2020までに テキスト:大塚訓平 電車移動の際に大活躍する乗換案内や路線検索のアプリ。検索結果を見れば最短ルートで迷うことなく目的地にたどり着くことができる便利なツールだ。しかし、車いすユーザーの場合、そこに表示された所用時間通りに移動できる人は少ない。車いすユーザーの移動は、皆さんが想像する以上に時間がかかるのだ。 複雑すぎる乗り換えは車いすユーザーの移動時間を倍増させる先日、法事のために大阪に行った際は、東京駅で東海道新幹線に乗り換えるのに20分もかかってしまった。宇都宮から出発したので、東北新幹線のホームから向かったのだが、車いすユーザーの場合、「北のりかえ口」にあるエレベーターでホーム階から下がり、この「北のりかえ口」から直結する東海道・山陽新幹線の「中央のりかえ口」へ……と行くことができればいいのだが、この「中央のりかえ口」にはエレベーターがないことから「南のりかえ口」まで移動しなくてはならなかったのだ。 駅員さんから道のりを教えてもらったが、その説明通りに行ってみると、そこには階段しかなく、結局周辺を右往左往しながら20分かかって、なんとか「南のりかえ口」に到着できた。ちなみに、乗り換えアプリでは、8分が所要時間として表示されていた。 本来ならどちらの乗換口にもエレベーターを設置してほしいところが、駅の構造上の難点や多額の投資など、整備はそう簡単ではない。しかし、せめてこの複雑な乗り換えを分かりやすく表示した小さなマップを用意するなど、移動をスムーズにするための工夫をしてくれれば、乗換案内アプリに表示される時間通りに行けるはずだ。 フレンドリー&ノンストレスだった大阪 一方大阪では、駅員さんが手際よくスロープを設置し列車の乗降をアシストしてくれ、特急への乗り換え案内も具体的で分かりやすかった。案内の最中も世間話で盛り上がり、とてもフレンドリーだ。全体的にこうした対応に慣れている印象。街中でも声をかけられることが多く、道やスペースを譲ってくれたりする。 ある駅では僕が改札を通った後、「何かお手伝いすることありますかー?」と小走りで駆け寄ってきた駅員さんが、まるでセカンドバックのようにスロープを小脇に抱えていたことには驚かされた。すぐ手に取れる場所にスロープがあり、バリアフリーに対する意識が高いことから、こうした素晴らしい対応につながったのだと思う。ハード面の整備にも驚いた。ホームと電車床面との段差やすき間の縮小化が進んでおり、スロープなしで乗降できる駅が多かった。また、私鉄の小さな駅でさえ、駅構内外の段差や階段はきちんと段差が解消されており、改札横には車いす対応トイレもあったので、ストレスなく安心して鉄道利用ができた。 ICTの利活用でスムーズな移動を実現 普段移動し慣れている東京よりも、大阪の方が移動に関しては楽だったのは事実だ。しかし、東京にも先進的な取り組みはある。西武鉄道の「車いすご利用のお客さまご案内業務支援システム」だ。鉄道移動を円滑化するこのシステムは、当事者からの評価が非常に高い。これまで鉄道側は、車いすユーザーの乗客がいる場合、どの列車のどの場所に案内するか、乗り換えはあるか、同伴者がいるか、などを電話やメモを使い、乗車駅から降車駅に伝達するというアナログ方法で対応をしてきた。これらの情報を全てスマホやタブレット端末で情報共有し、乗車駅と降車駅間で連絡を取れるようにしたのだ。 この

車いす目線で考える 第12回 東京2020大会、車いす席はどうなる?
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車いす目線で考える 第12回 東京2020大会、車いす席はどうなる?

タイムアウト東京 >  Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第11回 東京2020大会、車いす席はどうなる? テキスト:大塚訓平 平成から令和の時代に入り、10連休のゴールデンウィークが明けた5月9日から『東京2020大会オリンピック』観戦チケットの抽選申し込み受付が開始されたが、皆さんは申し込みされただろうか。僕は開会式をはじめ、興味のあるさまざまな競技のチケットの申し込みを、受付初日早々に済ませた。開会式は特に人気が高く、良い席になればなるほど価格も高いのは当然のことだが、車いす席は一般の席に比べ大幅にディスカウントされていた。例えば開会式のA席(1階)は、一般の24万2,000円に対して車いす席は4万5,000円なので、通常の2割以下の価格となるのだ。これだけ安いと倍率は相当高いだろうし、申し訳ない気持ちにもなる。平等とは何なのかを考えさせられる。 IPCが定めた車いす席の席数は? 車いす席はどのように整備されているのか。2013年9月に東京が開催地として決定してから、国際パラリンピック委員会(IPC)は、障害者が多様な位置や価格帯で観戦できるよう、車いす席を異なるエリアと階層に分散設置することを求めた。また、車いす席の座席数については、オリンピック会場は全体の0.75%、パラリンピック会場では1~1.2%と基準を設けた。 これにより、新国立競技場では常設で500席の車いす席を設け、1層スタンドにスタジアムをグルっと囲むように配置し、その上の階層でも車いす席を用意し、その割合は全体の0.8%を超えた(パラリンピック開催時には747席に増やし、基準となる全体の1.2%を超す見込み)。競技をできるだけ間近で観たい人にも、俯瞰するために上の階層を希望する人にも対応できるようになったし、予算で席を選ぶこともできるようになったのだ。 日韓W杯の教訓=サイトライン 今までの競技施設では、車いす席が一般の客席よりも広いスペースを必要とするため、端の方に固められてしまい、数も極端に少なかった。また、実際に車いすユーザーが観戦することを想定していない造りとなっていて、サイトラインが考えられていなかった。サイトラインとは、車いす席から舞台やスクリーン、競技への視界のこと。「サイトラインが確保されている」状態は、車いす席の前の観客が立ち上がっても、その視界を妨げないように、座席の設計に工夫がされていることを指す。 2002年の日韓『FIFAワールドカップ』のメイン会場となったさいたまスタジアム2002の車いす席は、サイトラインが考慮されておらず、ゴール際のエキサイトする場面で観客が立ち上がってしまうと、その重要なシーンを見れないことがある。 新国立競技場においては、このサイトラインの確保と車いす席の数とその配置は、IPCの基準をクリアする見込みだ。対応がここまで進んだのは、障害当事者が参加するバリアフリーに関するワークショップが繰り返し開催され、そこで挙がった声がしっかりと反映されたからだ。アクセシビリティの高い施設を造り上げるのに重要なのは、障害当事者参加のもとで、段階的かつ継続的に、調査・評価・改善を繰り返す、スパイラルアップの動きを止めないことだと思う。日本国内においては今後、オリンピック・パラリンピック関連施設に限らず、さまざまなスポーツ競技施設でもこういったことが十分考慮され、障害者向けの観戦環境が改善されていくことを強く願う。

車いす目線で考える 第11回 助け、助けられることに慣れる
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車いす目線で考える 第11回 助け、助けられることに慣れる

タイムアウト東京 >  Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第11回 助け、助けられる習慣 2020年の東京パラリンピック競技大会の開会まで500日を切った。機運醸成のため、都内各地で競技の体験会や、パラアスリートによるトークショー、ラッピングバスの巡回など、様々な形でPR活動が展開されている。また各競技の魅力が一目で分かるようなピクトグラムが発表され、このピクトを使った『東京2020パラリンピックスポーツピクトグラムかるた』も誕生した。 このように、パラリンピック競技大会への関心、認知度を高める動きや、公共交通機関、競技施設のバリアフリー化も加速度が増してきた。しかし、障害そのものへの理解については、まだまだ発展途上と言える状況だ。 実際、2016年4月に施行された、障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)は、障害当事者にとっては広く知られている一方で、一般社会においての認知度が極めて低いことから、公共交通機関での乗車拒否や、飲食店での入店拒否もいまだにひん発している。事業者側に拒否してしまう理由や事情があるのは分かるが、どうしたら利用できるかを一緒に考えてほしいのだ。 こうした問題を解決する鍵となるのは、障害者自身がもっと外に出て、健常者との接点を持つ機会を増やし、数多くの声掛け、手助け体験をしてもらうことだと思う。一言で言えば「慣れる」ということ。障害者も健常者も、互いに「断られたらどうしよう」と思ってしまっている人が多いのではないだろうか。まずは、その見えない心理的なバリアを取り除くことから始まる。 具体的には、以下のような行動を意識することが重要だ。 ▽障害者側の「慣れる」 ・自らに必要な配慮や、手助けを求める申し出をすることに慣れる。 ・声をかけられたり、手助けされることに慣れる。 ▽健常者側の「慣れる」 ・困り事があるかを確認する声掛けや、手助けをすることに慣れる。 ・障害者から手助けを求められることに慣れる。 しかし、先日都内某所で講演をした際、参加者からこんな質問が出て、大変残念な思いをした。 「駅のホームで、前に並んでいた車いす利用者が電車に乗り込む際、『お手伝いしましょうか?』と尋ねたら、『結構です』と強い口調で言われ、迷惑そうな顔をされてしまった。この場合、どうすれば良かったのでしょうか」と。僕はこの方に、障害者を代表して2つのことを謝罪した。 1つ目は、手助けを断るにしても、勇気を振り絞って声を掛けてくれたことに、まずは感謝の意を伝えるべきだったこと。2つ目は、その人の「手助けをすることに慣れる」という機会を奪ってしまったこと。 このほかに、東京駅のタクシー乗り場で、こんなシーンに出くわしたこともある。車いすユーザーがタクシーに乗り込む際、後ろに並んでいたビジネスマンが車いすを支えると、「勝手に触るな」とにらみながら言い放ったのだ。せっかくの好意を無駄にする残念な言動だ。 この2つのシーンを間近で見た人たちは、どんなことを思うだろうか。恐らく、「障害者には関わらないでおこう」と思ってしまう人が多いのではないだろうか。 一連の出来事から、障害者側の意識改革が必要だと強く実感した。僕は最近、声をかけられたら、自分でできることであっても、手助けしてもらうようにしている。もちろん感謝の言葉を添えて。 電車やバス、飲食店やコンビニなど、生活のあらゆるシーンで、互いにコミュニケーションを取ることが日常となれば、障害理解も促進され、さらに外出しやすい環境

車いす目線で考える 第10回 バリアフリーな避難所、知ってますか?
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車いす目線で考える 第10回 バリアフリーな避難所、知ってますか?

テキスト:大塚訓平 15000人以上の犠牲者を出した東日本大震災から8年。あの時に感じた、大きな揺れと押し寄せる不安はかつてないものだった。しかし、そうした記憶も時間とともに薄れてしまうものだ。毎年3月になると、震災の記憶を風化させないために各メディアで特集が組まれ、震災当日の様子や、今なお続く避難生活、復興支援、地域再生に向けた取り組みなどが取り上げられるが、皆さんは何を思うだろうか。 僕は昨年のこの時期に、ネットニュースである町の存在を知り、防災意識が高まった。その町は、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の舞台となった、岩手県北東部にある人口約17000人の洋野町。東北3県の太平洋側沿岸地域で唯一、死者・行方不明者がゼロという、防災意識が極めて高い町だ。 洋野町は、明治、昭和の時代に起きた過去の地震による津波被害を教訓に、自主防災組織を作り上げたのだ。平時から、高台への避難路の草むしりや除雪を行い、訓練では「逃げる」ことを徹底して教える。いざというときに助け合えるように、日頃から住民同士がコミュニケーションをとって、顔の見える関係を構築していた。町のどこに障害者や高齢者、妊産婦がいるのかを近隣住民が把握し、助け合うというように。つまり「向こう三軒両隣」で防災意識を高めていった結果、犠牲者ゼロどころか、負傷者さえ出さなかった。この洋野町から学ぶことは多い。 洋野町で行われた、大地震に伴う津波を想定した避難訓練の様子。車両から車いすへの移動の訓練も 東日本大震災のような地震に限らず、台風や集中豪雨による洪水や土砂災害、噴火などによる被害が全国各地で起きている。こうしたとき、避難勧告があると避難所を目指し移動するわけだが、ここで問題になるのは、避難所がどこにあるかということ。皆さんは自宅や勤務先近くの避難所をしっかりと把握しているだろうか。自治体の防災情報を検索すれば、あっという間に避難所を見つけることができるだろう。しかし、車いすユーザーの場合は、その避難所に段差はないか、スロープはあるのか、車いす対応トイレがあるか、などを調べる必要がある。残念ながら、避難所のバリアフリー情報を公開している自治体は非常に少ない。つまり事前に調べることができないわけだ。熊本地震の時は、ある車いすユーザーが避難所に行くも、そこには段差があり、車いす対応トイレもなかったため、別の避難所に移動。しかし、次に行った避難所も整備されておらず、また移動する……というように避難難民になってしまった事例も報告されている。避難所のバリアフリー状況が一目でわかるような情報が公開されていたり、行政職員がそれらの情報を知っていれば、その方は避難難民にならずに済んだことだろう。 避難生活において、障害者と健常者で差が出ないよう、情報のバリアを解消するとともに、障害者も参加できる避難訓練の実施、そして向こう三軒両隣で防災意識を高めることが、災害時の混乱や被害を最小限にすることに繋がるはずだ。まずは、家族や職場の人と防災計画を立て、それを共有することから始めてみよう。

車いす目線で考える 第9回 ハードのバリアをハートで解消
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車いす目線で考える 第9回 ハードのバリアをハートで解消

タイムアウト東京 > Open Tokyo > 車いす目線で考える 第9回 ハードのバリアはハートで解消 テキスト:大塚訓平 「このあと新宿駅周辺で飲みましょう」。なんてことのない日常会話だ。すぐにスマホを取り出し、グルメサイトをチェック。料理の種類や店の雰囲気、価格帯、口コミなどを参考に、簡単に店を決めるだろう。しかし、車いすユーザーの店探しは、そう簡単にはいかない。なぜなら、店舗内外に段差はあるか、扉や通路の幅はどのくらいか、エレベーターや車いす対応トイレはあるかなど、事前に知りたい情報がいくつもあり、それらを容易に調べることはできないからだ。 最近では、グルメサイトで「バリアフリー」表記をしてくれていたりするが、その情報の信頼性や正確性の低さが課題になっている。例えば、あるグルメサイトで「バリアフリー」の表記があったとする。しかし、実際に行ってみると、エントランスに段差があったり、入口の扉が狭くて入れなかったり、車いす対応のトイレがなかったりするのが現状だ。これは、車いすユーザーが考えるバリアフリーと、事業者側が考えるバリアフリーに大きなギャップがあることから生じる課題と言える。 具体的な事例を2つ紹介しよう。まずは、僕が障害者デビューして間もない頃、某サイトに記載してあった「バリアフリー〇」という記載を頼りに、店を予約して行ってみたときの話だ。店の前に着くと、入口に2段の段差があったので、店に電話をしてアシストをリクエストした。店のスタッフは快く手伝ってくれ、無事に入店することはできた。しかし、残念ながら店内のトイレにも段差があり、車いす対応のトイレもなかったのだ。店のオーナーに話を聞くと、「店内がフラットであれば、バリアフリーとして良いと思ってしまっていた。トイレまでは考えが及ばなかった」とのこと。そう、ここにズレが生じていたのだ。 当然、車いすユーザーが求める「バリアフリー」を完璧に実現できている店は数少ない。しかし、リクエストに応じてアシストをする。車いす対応トイレが店内になければ、近隣の多目的トイレを調べ、その情報を提供するなど、ちょっとした工夫でバリアをなくすことはできる。つまり「ハード(施設や設備など)のバリアをハートで解消する」ことがポイントだ。 もうひとつの事例は、経験値があるからこそのズレ。メディアや雑誌でも取り上げられた某有名店に行きたくて、車いすユーザーである旨を伝え、店内外の状況を問い合わせたことがあった。返ってきたのは「入口に段差が3段、店内にも2段ありますが、そこだけ立って歩いてもらえれば……」という言葉。これはおそらく、以前そのスタッフが対応した車いすユーザーは立つことのできる人で、その人を基準に話をしたのだと思う。だが、障害は十人十色。同じ車いすユーザーでも、できることとできないことは皆異なるし、もちろん、リクエスト内容も異なる。「車いす=少しなら歩ける」「車いす=まったく歩けない」というような決めつけをなくし、相手の状況を正確に把握しながら、できることを提案していくのがベストと言えるだろう。しかし、自店のバリアを正確に把握していたことは、とても素晴らしいことだ。 バリアフリーの定義は、皆異なる。だからこそ、店舗内外のハード面については、ありのままの情報を公開する。そして、リクエストに応じて、あらゆるバリアをハートで解消するという意思表示があると、さらに多くの人から選ばれる店になるはずだ。これからの時代は、ハード面を整備する「人にやさしい店舗づくり」と同様、ソフト面(心や情報)のバリアフリー化

車いす目線で考える 第8回 神社仏閣に潜む壁
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車いす目線で考える 第8回 神社仏閣に潜む壁

タイムアウト東京 > Open Tokyo > 車いす目線で考える 第8回 神社仏閣に潜む壁 テキスト:大塚訓平 新年明けましておめでとうございます。今年も『車いす目線で考える』をよろしくお願い申し上げます。さて、みなさんは今年、初詣に行っただろうか。ちなみに、僕はまだ行っていないのだが、そもそも車いすユーザーになってから、初詣に行ったのはこの9年で2回だけだ。なぜなら、神社仏閣は、玉砂利や段差、勾配のきつい坂道などが多く、車いすユーザーにとって難所だからである。また、賽銭箱前には階段があり、現状、車いすのまま賽銭を入れられないことも多い。こうしたことから、神社仏閣は避けたいスポットの一つとなってしまっている。しかし、実のところは、昨年の感謝を伝え、新年の無事と平安を祈願する年始の挨拶『初詣』には、行きたいと思っているのが本心だ。 嬉しいことに、都内にある比較的大きな神社や仏閣では、ここ10年ほどでバリアフリー化が進んだような気がする。歴史ある景観を守りながらも段差を解消したり、玉砂利を石畳に変更したり......。本殿に上がれるように、スロープやエレベーターを設置するところも徐々に増えてきた。 ここで一例挙げよう。大晦日から正月三が日の間、約300万人もの人がお参りをするという明治神宮では、2016年に行われた『明治神宮鎮座百年記念事業』の一環で、歩道などが整備された。参道の両端には石板を敷いた歩道が設けられ、御社殿と神楽殿には、緩やかなスロープが設置されたのだ。実は7〜8年前、僕も一度、明治神宮へ参拝をしようと足を運んだことがあった。しかし、この時はまだ整備させていなかったため、原宿口から入るも途中で砂利道に屈し、参拝を断念した。 その後、友人が明治神宮へ参拝した際の画像をSNSに投稿したとき、御社殿の横にスロープが写っているのを見てバリアフリー化の事実を知った。投稿を見てから実際に行ってみたところ、車いす対応の駐車区画やトイレがしっかりと設けられていたのはもちろん、係りの人の対応が素晴らしく、神社や仏閣の中では、アクセシブル度が高い環境になっていたのだ。しかし、残念ながら明治神宮の公式ホームページには、こうした情報は掲載されていない。未だにバリアフリー化のことを知らない人も多いかもしれないので、ぜひ、積極的にバリアフリー情報を公開してほしい。 こうした面の整備は、たしかに多額の費用を要する。しかし、車いすユーザーだけでなく、ベビーカーユーザーや高齢者の参拝者を増やすことができるため、新たな客層の獲得になるという視点を持ち、ポジティブにバリアフリー化に取り組んでほしいものだ。 もう一つ紹介したいのが、長野県の善光寺エリアの事例。このエリアでは、障害者や高齢者にも観光を楽しんでほしいという想いから、地域のNPOなどが、寺の敷地内だけでなく、周辺の飲食店や土産物店、宿泊施設のバリアフリー情報を調査して、マップアプリを完成させたのだ。このアプリは、現在地から一番近い多目的トイレや、車いす対応の駐車場を検索すると、経路検索してくれるというもの。このように、バリアフリー情報を事前に取得できたり、現地で簡単に検索できるようになっていくことは、誰もが安心して外出できる社会づくりへと繋がっていくだろう。 以前、出張の帰りに善光寺に立ち寄ったことがあるが、周辺にある商店の人々も車いすユーザーに慣れているようで、段差などのアシストや声かけが、ごく自然で心地よかった。これは、地域でバリアフリー化に取り組んだことによる良い成果と言えるだろう。ある蕎麦

車いす目線で考える 第7回 障害はうまくデザインする
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車いす目線で考える 第7回 障害はうまくデザインする

タイムアウト東京 >  Open Tokyo > 車いす目線で考える 第7回 障害はうまくデザインする テキスト:大塚訓平 毎年12月3日〜9日が『障害者週間』であることを知っているだろうか。内閣府のウェブサイトには、『国民の間に広く障害者の福祉についての関心と理解を深めるとともに、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に積極的に参加する意欲を高めることを目的として、従来の「障害者の日」(12月9日)に代わるものとして設定されました』とある。 今年の障害者週間のニュースで僕の目に止まったのは、筋ジストロフィー患者の半生を描いた映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』で主演を務めた俳優の大泉洋が、「少しでも障害者と健常者の垣根をなくせる映画になれば」という言葉を残したこと。12月4日に、障害者週間の特別企画として開かれた講演会での一言だ。社会的に影響力のある有名人から、このような言葉を聞ける時代になったのである。 また、2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催が決定して以来、パラアスリートのメディア露出が増えたり、障害者を題材とした映画やドラマが数多く放送されたことで、障害者に対する意識が、少しずつ社会の中で変わりつつある。今までのように、障害者を感動のストーリーに乗せて伝えるのは、もう古い。最近良くなってきたこの流れを、さらにポジティブにしていくには何が必要か。僕は、「障害をうまくデザインすること」だと思う。 「すごい!」や「かっこいい!」というイメージで、障害者に対する意識を世界的に大きく変えたのが、イギリスの公共テレビ局、チャンネル4が制作したパラリンピックのCM『Meet The Superhumans』だ。ヒップホップの名曲、PUBLIC ENEMYの『Harder Than You Think』に乗せて、パラアスリートの誕生からハードなトレーニング、そして、想像を超えるパフォーマンスを描いている。このCMは、障害者を不自由な人や助けが必要な人、弱々しい人だと思っていた人には衝撃を与え、「強さ」や「人間」に対する概念さえも変えてしまった。最も印象的だったのは、パラアスリートを「Superhumans(超人)」と表現したことだ。 ネガティブをポジティブに、そして、そのポジティブをさらに超えていくには、悲壮感漂うものや、同情を乞うものではいけない。むしろ、笑いやポップさ、クールさが必要で、うまい見せ方ができていると、誰が見ても「かっこいい!」「(いい意味で)やばい!」となるはずだ。だからこそ、障害をうまくデザインすることが必要不可欠なのである。 僕自身が考える、ドラマや映画での「ポジティブな表現」とは、現在、健常者の俳優が演じている障害者役を、障害当事者の俳優が演じるようになること。そして、「ポジティブを超える表現」とは、主役が演じる様々なシーンの裏側で、多数の障害当事者が、通行人Aや路上ライブをする青年B、居酒屋の客Cという具合に、エキストラとして背景を彩っているということだ。障害を持った人が、自然に日常に溶け込んでいるシーンこそが、真に障害者と健常者の垣根がなくなっている世界だと思う。

車いす目線で考える 第6回 新幹線の「デッキ族」
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車いす目線で考える 第6回 新幹線の「デッキ族」

タイムアウト東京 >  Open Tokyo > 車いす目線で考える 第6回 新幹線の「デッキ族」 テキスト:大塚訓平 2018年11月7日〜13日まで、渋谷ヒカリエで開催された『2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展(通称、超福祉展)』。今回は、同イベント内で行われ、僕も登壇したトークセッション『nono2020会議 乗り物の巻Vol.2』で話し合った内容から学んだことついて、深掘りする。 トークセッションでは、バスや電車、タクシーなど、様々な乗り物に関する日本と海外の「イケてる事例」と「イケてない事例」をシェアしながら、どこに社会障害があるのかについてディスカッションした。なかでも、大きくフォーカスされたのは新幹線に関する社会障害で、座席確保の困難さだ。※「nono2020会議」:障害当事者達が感じる社会障害の「あるある」を「ないない」にするために、なぜ社会障害が生まれるのか、どのように攻略すれば良いのかについてディスカッションするプロジェクト お得感のある座席......そこが、車いす対応座席だったみなさんが新幹線を利用する際、真っ先に気になることといえば「席を確保できるかどうか」ということではないだろうか。指定席を取らずに1人で移動する場合、たとえ乗り込んだ車両に空席がなくても、次の車両に移動すれば、年末年始や大型連休を除いて、席を確保することはそんなに難しくないだろう。 では、車いすユーザーの場合はどうか。そもそも、新幹線には車いす対応座席があるのだが、このことを知っている人はどのくらいいるだろうか。例えば、東北新幹線E5系の場合、通路を挟んで左右に3席、2席と席が配置されている。その3席側の1席分スペースが空いている席がある。実はここが車いす対応座席なのだ。 車いす対応座席 よく見てみると、肘掛の側面と窓の上方に車いすマークの表示があるのが分かるだろう。この座席には、ほかの座席と違う以下の特徴があるのだ。①車いすから座席に移乗しやすいように、通路側の手すりが跳ね上げ式(可動式)になっている②座席の隣に車いすを置いておけるスペースがある③車いすを固定するためのベルトが備え付けられている 車いす対応座席であることを周知する大きな表示があるわけでなければ、そのようなアナウンスもされていない。そのため、本来の用途の認知度がかなり低いのだと思う。スペースが広く確保されていて、お得感のある座席として、多くのビジネスマンに利用されているのが現状だ。実際にこの写真を撮った時も、ほかに空席があったにもかかわらず、50代のビジネスマンが1人で2席分を利用していた。 次に、肝心の席数だが、僕が利用した1000席を超えるこの列車の中に、何席あったのか。答えはシートマップを見てほしい。なんと自由席の5両目に1席、グリーン車に1席のみだ。この中で座席を確保するのは、困難を極める。 シートマップ。いかに車いす対応座席が少ないか明らかだ さらに、車いす対応座席に辿り着くまでにバリアになることがもう一つある。それは、新幹線の通路幅だ。新幹線の通路幅は、55cm~57cm。一般的な車いすの全幅は約60cmなので、通路を通れない場合がほとんどだ。また、車いす対応座席が上り側にあるのか、下り側に設置されているのかは、到着する車両によって違いがある。そのため、たとえ車いす対応座席のある車両に乗り込んだとしても、もしその座席が逆方向にあった場合、車両内通路は通れないので、一度ホームに出て、次の乗車扉まで移動してから乗り込むしかないのだ。 こ

車いす目線で考える 第5回 Don’t think. Feel!
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車いす目線で考える 第5回 Don’t think. Feel!

タイムアウト東京 >  Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第5回 Don’t think. Feel! テキスト:大塚訓平 知られていない「障害者差別解消法」先日、某所で講演をした時に、参加者に向けてこんな質問をしてみた。「2016年4月に施行された『障害者差別解消法』という法律をご存知の方はいますか」。知っている人に挙手を求めたところ、手が挙がったのは全体の2割以下。内閣府の世論調査でも同法の周知度は21.9%という結果だったので、認知度は約2割と言って良いだろう。 しかし、障害当事者に同じ質問をしたらどうなるか。恐らく割合は逆転し、8割以上の人が「知っている」と回答することだろう。なぜなら、多くの障害当事者にとって待望の法律だったからだ。法施行から2年経過するが、まだまだ障害当事者と社会の間には、浸透のギャップがある。合理的配慮とは...この「障害者差別解消法」では、「不当な差別的取り扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」が求められているわけだが、「差別」はなんとなく分かったとしても、「合理的配慮」というものが、一般の人にとっては分かりにくいものとなっている。 理解を進めるために、内閣府のウェブサイト「合理的配慮サーチ」というページでは、シーン別、障害の種別ごとに具体例を紹介しているので、小売企業や飲食店をはじめ、事業者はこれを参考に、事前的改善措置や環境整備にあたるのが良いと思う。しかし、障害は十人十色であり、求める合理的配慮が何なのかは人によって異なるので、障害を理解し、その場その場で柔軟に対応していくことも求められる。そのために必要となってくるのが、積極的かつ、建設的な対話だ。 しかし、対話といっても、障害のある人を目の前にすると、急に距離を感じてしまったり、必要以上に構えてしまったりしていないだろうか。日本人の控え目でシャイな気質が「断られたらどうしよう。迷惑なのではないか......」と、互いにコミュニケーションをとることを邪魔しているような気がする。勇気を振り絞り、思い切って声をかけるにはどうすれば良いか。*合理的配慮の定義:障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう(国連総会『障害者権利条約』より)Don’t think. Feel!行動を起こすのに必要な心構えを僕の大好きな映画から紹介しよう。1973年に公開された『燃えよドラゴン』の劇中で、ブルース・リーが蹴りの稽古をつけていた少年に向けて言った言葉だ。「Don’t think. Feel!」。「考えるな。感じろ!」だ。 「車いすで自動販売機の前にいる人、何か困っているのかな」「坂道を上るの大変そうだな」「手助けした方が良いかな」「声をかけても大丈夫かな」など、あれこれ(手段を)考えるのではなく、感じたまま行動する。それによって得た経験(結果)は必ず糧となり、次に同じような場面に遭遇した場合には、さらに良い結果を得ることができるはずだ。 障害のある人とない人が接し、関わり合う機会が増えないことには、理解も進まないし、慣れることもできない。だからこそ、障害当事者側も、もっと外に出て行くべきだとも思う。それと同時に、自分が手助けをしてほしいことを、簡潔に、そして明確に伝えられるスキルは少なくとも身につけておきたい。また、世の中に課題があれば、それを嘆いたり、不満を言うの

車いす目線で考える 第4回 ホテル予約が取れない
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車いす目線で考える 第4回 ホテル予約が取れない

タイムアウト東京 >  Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第4回 ホテル予約が取れない テキスト:大塚訓平 出張や旅行などで宿泊施設を予約する際、何かしらの障害を感じたことはあるだろうか。おおかたの人は、特に思い当たることはないだろう。僕は、障害者デビューして以来、この宿泊予約には毎回かなりの困難を感じている。 つい先日も、10月に北海道で開催される某団体の会合に出席するために宿泊予約しようとしたが、開催場所となっているホテルはもちろん、会合に一緒に参加する方々が泊まる予定のホテルや、ほかの同クラスのホテルにも、車いす対応客室が整備されておらず、予約までかなり手間取った。 その理由は大きく分けて3つある。 1つ目は、車いす利用者用の客室(バリアフリールーム、ユニバーサルルーム、アクセシブルルームなどの呼び方がある)が一般客室に比べ、極めて少ないこと。2つ目は、その車いす対応客室の有無や、詳細情報がウェブサイトなどに公開されていないこと。3つ目は、一般客室に比べて宿泊料金が高額になるケースが多いことだ。今回は、この車いす対応客室について考えてみる。     五輪・パラリンピック、どうするの?   SportsPress/アフロ 車いす対応客室がどの程度整備されているかご存知だろうか。 国土交通省が2017年に全国606の宿泊施設に向けて行ったアンケート調査では、対応客室がある施設は、全体の約32パーセント(194施設)という結果だった。 例えば、皆さんが10のホテルから選べるところ、僕の場合はその内の3つからしか選べないということだ。さらに、その部屋は各ホテルでたいてい1、2部屋しかないので、予約は困難を極める。それぞれの課題を解説しよう。 対応客室(UDルーム)の数はわずか194施設/グラフ:国交省「ホテル・旅館のバリアフリー化の現状等に関するアンケート調査結果」から作成 まず最初に、対応客室の少なさ。 現行のバリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)では、50室以上の客室がある宿泊施設には、車いす利用者用の客室を1室以上設けることが義務付けているが、客室割合ではないので、客室総数1000室の宿泊施設であっても1室あれば、バリアフリー法はクリアできることになっているのだ。 194施設のほとんどが、対応客室を1部屋しか有していない 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを観戦する車いすユーザーやパラアスリートたちは、どこに宿泊するのだろうか。ましてやチーム競技の選手たちがバラバラに宿泊し、試合でベストなパフォーマンスを出せるのだろうか。 東京大会については、国際パラリンピック委員会もバリアフリー対応の客室が不足していると指摘している。調査結果からも不足が明るみとなったことで、国土交通省はバリアフリー法を改正し(2019年9月施行予定)、客室総数50室以上の宿泊施設を新築/増築する場合、車いす対応客室の割合を1パーセント以上とするよう義務付ける方針を打ち出した。この国の動きにはぜひ期待したい。   せめて客室の写真情報だけでも   次の課題は、車いす対応客室の詳細情報が、ウェブサイトなどに掲載されていないこと。 一般の客室は、種類やグレード別に客室の詳細が画像とともに紹介されていることがほとんどだが、車いす対応客室はそれとは大きく異なる。「よくあるご質問」や「FAQ」などに「車いす対応客室はありますか?」という質問があれば、たいていは「1部

車いす目線で考える 第3回 バリアフリーの「ルール化」
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車いす目線で考える 第3回 バリアフリーの「ルール化」

タイムアウト東京 >  Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第3回 バリアフリーの「ルール化」 テキスト:大塚訓平 2006年にバリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が施行されたことにより、建築物や交通機関など、ハード面のバリアフリー化が進んできた。それに伴い、車いすのマーク「国際シンボルマーク」が様々な場所に設置表示され、日常に溶け込んできている。 特に目にする機会が多くなったのは、駐車場やトイレ、エレベーターではないだろうか。国際シンボルマークが普及してきたとはいえ、適切に理解・運用がされているかと言えば、まだまだだ。今回はこれら3つの場所における課題を、車いす目線で考える。   駐車場(障害者等用駐車スペース)   車いすユーザーは、車の乗降に広いスペースが必要なことから、一般駐車区画より幅が約1メートル広い障害者等用駐車スペース(幅3.5メートル以上)を利用している。 残念ながら日本では現在、健常者の不適正利用が問題視されている。店舗や施設の入り口に近いことから、「便利な区画」としてイメージが定着してしまっているのだろうか。  日本国内では、利用対象者の範囲を広げ過ぎたり、法令で「努力義務」という何とも歯切れの悪いワードを使い、いつまでもマナーやモラルで管理しようとしているが、欧米先進国は明確にルール化している。 5年前に訪れたラスベガスのネバダ大学構内で見たのは、対象者以外が駐車した場合、レッカー移動された上に、250~1,000ドルの罰金(場所によって罰金額は異なる)という標識。  州発行の許可証に加え、大学の許可も必要と警告する標識  何が素晴らしいかと言うと、このルールは健常者だけではなく、障害者側にも適用しているのだ。たとえ障害者が駐車したとしても、州が発行したプラカードを掲げていないと、アウトなのだ。権利と義務のバランスがとても良い。 身体障害を示す州発行のナンバープレート。プラカードかどちらかを所持していなければ専用駐車場は利用できない トイレ(多機能トイレ)   次に多機能(多目的)トイレについて。最近、「みんなのトイレ」や「だれでもトイレ」というネーミングのトイレが増えている。ここまで来ると、もはや誰に配慮して整備したのか全く分からない。 僕が実際に見かけたのは、イベント時の着替え場所として使う学生や、高校生カップルら。ほかにも小説片手に出てくるサラリーマンもいるし、お風呂がわりに使う路上生活者までいた。 車いすユーザーとしては、一般トイレでは扉の幅が狭く、車いすのまま入れないから多機能トイレを使っているのだ。決して「便利だから」使っているわけではない。 一般のトイレでも、扉幅や内部がもう少し広くなれば、より多くの人が使いやすくなるはず。ハワイで見た事例は、車いす「専用」よりも「対応」を多く設置するというもの。一般のトイレの一番奥の個室のみ、扉と室内を広くしてあり、手すりも設置している。さらに、その広めのトイレを必要としている人の優先利用に関しても、みんながきちんと理解していた。  広い作りになっている個室トイレ  車いす対応の個室トイレ内部 エレベーター   上下階の移動を便利にするエレベーターについても考えてみよう。僕が商業施設や主要駅での乗り換えなどで途中階から移動する場合、時間帯にもよるが平均2、3回は乗れずに見送ることになる。最近増えてきた「車いす・ベビーカー優先」と書かれているエレベーターでさえ乗

車いす目線で考える 第2回「とりあえずバリアフリー」
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車いす目線で考える 第2回「とりあえずバリアフリー」

タイムアウト東京 >  Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第2回「とりあえずバリアフリー」 テキスト:大塚訓平 2020年東京オリンピック・パラリンピックまで、残すところあと2年。東京を中心に、急ピッチで各所のハード面のバリアフリー化が進んできた。しかし僕は、この急ピッチがある問題を引き起こしているのではないかと考えている。それは、整備することだけに集中してしまったが故に、実際に利用する当事者の意見が置き去りになり「使えない・使いづらい」という、「とりあえずバリアフリー」の設備や施設が多く生まれたということだ。 日ごろ、街中を車いすで歩いていると、「とりあえずバリアフリー」に出くわすことが多い。例えば、 ①普通駐車区画と同じ規格の障害者等用駐車スペース ②奇妙な位置に手すりが設置された多機能トイレ ③踊り場がないスロープ ④点字ブロックの上に敷かれたマット などだ。 ①車いすマークが描かれているだけの障害者等用駐車スペースになっている。普通駐車区画と同じ規格(幅2.5メートル)で、傾斜もあり、平坦ではない場所に設置されている。 ②左右の手すりの高さが合っていないため、体を支持するのが難しい。L字手すりの設置位置が便器から遠く、縦部分(立ち上がる時に体を支える為に必要)に届かない。同じく手洗い器も便座に座ったままの状態では、使用できない。 ③スロープを上りきった頂点部分に踊り場がない為、扉が開くまでブレーキをかけたまま待っていなくてはならない。 ④点字ブロックの上にマットを敷いているため、誘導ブロックと警告ブロックの認識が途切れてしまっている。 障害者をビジネスパートナーに 障害当事者の目線で設計、施工、運用がされていれば、上記のような事案は発生しないはず。単に法令にのっとって整備すればいいというものではなく、なぜその設備が必要なのか、どのように利用するのかをイメージして作ることが求められている。つまり、バリアフリーには「ビジョン」が必要不可欠なのだ。 では、どうすればいいのか。一番の近道は、障害当事者をビジネスパートナーにすることだろう。当事者が何に不安を感じ、何に不便さを感じるのかが分かれば、「とりあえず…」という考え方はなくなり、無駄な投資に終わらず、本当にアクセシブルな設備と施設を作れるはずだ。 バリアフリー化はビジネス的にも賢い選択 しかし同時に、そのためには障害当事者自身がもっと学び、もっと成長しなくてはならないと、僕は強く思う。ダメ出しをするだけなら誰でもできるが、ほかの良い事例を参考にしながら、具体的な方法を提案し、そのバリアフリー化によって得られるベネフィットを、事業者側に分かりやすくイメージさせなくてはならない。 「社会的に良いことだから…」では継続性もないし、ネガティブな発想で終わってしまう。バリアフリー化は、新たな客層の獲得などに繋がると知ってもらい、「ビジネス上賢い選択だから」とポジティブに取り組んでもらうための土台づくりを、僕たち障害者側がやるべきだ。 障害当事者目線の活用を推進し、誰もが笑顔で外出できる社会の実現に向けて…。 車いす目線で考える 第1回「"Thank you"と"Excuse me"」はこちら

車いす目線で考える 第1回「"Thank you"と"Excuse me"」
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車いす目線で考える 第1回「"Thank you"と"Excuse me"」

タイムアウト東京 >  Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第1回「"Thank you"と"Excuse me"」 テキスト:大塚訓平 2009年6月20日に不慮の事故で脊髄を損傷、車いすでの生活になった。障害者デビューして約9年。この間、国内外問わず、様々な場所を訪れてみたが、車いす目線で見る街(社会)は、健常者の時とは大きく違う。シリーズコラム「車いす目線で考える」では、健常者と障害者のどちらも経験しているという独自の立場から、バリアフリーに関するテーマを深掘りしていこうと思う。 ※タイムアウト東京では通常「障がい」と表記していますが、視覚障害などを持つ方々が文章読み上げソフトを使用すると、「さわりがいしゃ」と読み上げられてしまうため、このコラムでは「障害」としています