空港用の樹脂製車いす

車いす目線で考える 第18回 航空機での移動 〜搭乗・降機〜

バリアフリーコンサルタント大塚訓平が考える、東京のアクセシビリティ

テキスト:
Kunihiro Miki
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タイムアウト東京  Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第18回 航空機での移動 〜搭乗・降機〜

ハード面とソフト面の双方からバリアフリーに関するコンサルティング事業を展開している大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)とともに「東京のアクセシビリティ」について考えるコラム『車いす目線で考える』の第18回。

今回は、前回に引き続き、車いすユーザーが空港や航空機内で遭遇するバリアや、ストレスなく利用するためのコツを伝える。車いすユーザー本人のみならず、そのパートナーや友人たちにとっても、事前に知っておくと役立つ知識だ。

空港用の車いすへの乗り換え

チケット購入について取り上げた前回に続いて、今回は、搭乗から機内での着席やトイレの利用、そして降機までの行程について、気をつけたいポイントを伝えたいと思う。

チェックインカウンターで一通りの手続きを終えたら、保安検査場に進むのだが、一般的な車いすのままだと金属部分が検査機に反応して、ボディーチェックを受けることになる。

こうした手間を省くために、金属を使わない樹脂製または木製などの車いすを航空会社が独自に開発している。チェックインカウンターで空港用の車いすに乗り換えを希望すれば、検査機に反応しないタイプの車いすを用意してくれる。

しかし、僕の場合は約10年前の手術で、金属プレートやネジが体内に残っており、こうした車いすに乗り換えたとしても検査機に反応してしまうので、乗り換えることはせずにボディーチェックを受けている。体内に入っている金属の量によって反応するかしないか分かれるので、まずは実際にこの車いすに乗り換えて確かめてみてもよいだろう。

いざ、搭乗へ

保安検査場を抜け搭乗口に行くと、係の人から、一般客よりも先に搭乗することや、機内への搭乗方法について案内される。このタイミングで座席の確認もしてもらおう。

空港や航空機の機種によっては、一般的なボーディング・ブリッジからアクセスできない場合があり、代わりにリフト車や巨大なスロープが用意される場合もある。小型機の場合は、ストレッチャーを使うことがあるので、不安な人は事前に問い合わせておくと良いだろう。

機内に入る時にはほとんどの場合、空港用・機内用の車いすに乗り換える。大きな後輪が取り外せるようになっていて、狭い機内の通路でも通れる幅に車いすが変形する。普段使用しているクッションを持ち込みたい場合は、この時に忘れずに持っていこう。

後ろ向きで進み座席まで来たら、移乗しやすい位置を伝えて、車いすを動かしてもらう。なかにはブレーキがかからない車いすもあるので、動かないように後ろで固定しておいてもらった方が安心だ。移乗に不安がある人は、遠慮せずにアシストをしてもらおう。

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トイレ事情と、降機時の心得

現在はほとんどの航空機で、機内用の車いすで利用できるトイレが備えられている。しかし、機内のトイレは狭く利用しやすいとはいえないので、フライト時間を考慮して、搭乗前に用を足しておくことを強くおすすめしたい。もちろん長時間のフライトでは数回トイレに行くことになるだろうから、我慢せずにリクエストしよう。

機内での時間を楽しく過ごし、いよいよ降機。搭乗時とは逆で、降りる時の順番は一番最後となる。そのため、通路側に座った場合、隣の席の人には自分の状況をあらかじめ伝えておき、先に降りてもらうように伝えると親切だ。降機後の自分の車いすへの乗り換えは、チェックイン時にリクエストした場所で行うことができる。

航空機を使った旅行やビジネスでの移動は、普段の外出と違いハードルが高いように思うかもしれない。しかし、事前に詳細な行程を知っておくことで、そのストレスは大幅に軽減できる。

ぜひ、前回と今回のコラムを読んでもらい、自分が配慮してほしいことを周囲にスマートに伝え、快適な空の旅を楽しんでもらいたい。

大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)

1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。

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