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『NIN_NIN』(Photo:大塚訓平)
『NIN_NIN』(Photo:大塚訓平)

車いす目線で考える 第29回:「この発明はどうして生まれたのかな?展」

バリアフリーコンサルタント大塚訓平が考える、東京のアクセシビリティ

作成者: Time Out editors
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2021年は、再び緊急事態宣言が13県で発出され、さらに7府県が追加、11都府県にまで拡大するという暗いニュースで幕を明けた。そこでこのコラムでは少しでも明るく、ポジティブな話題を紹介したい。

2020年12月中旬、芝公園のすぐ近くにある、東京都人権プラザ(東京都が設置した人権啓発のための施設)がリニューアルオープンし、オープニングイベントが開催された。無観客ではあったが、東京都知事の小池百合子や港区長、パラリンピック銀メダリストの上原大祐が出席していた。

ここでは僕も参画している一般社団法人障害攻略課が企画、プロデュース、障害当事者の課題を起点として発明されたスポーツやファッション、ロボットなどを、開発ストーリーの動画とともに紹介する『この発明はどうして生まれたのかな?展』が開催されている。

コンセプトは「発明、のち啓発」で、展示してある発明品に触れ、その開発の起点となった人や課題を知ることで多様な人権を学ぶことができ、結果として人権啓発につなげるという思いが込められている。どの発明品も障害のない人でも楽しめたり、おしゃれに着こなしたり、使いたくなるようにデザインされているのも重要なポイントだ。展示してある三つの発明品を紹介してみよう。

展示1:『イモムシラグビー』

『イモムシラグビー』は、普段の移動は車いすを使い、家の中では床を這(は)いながら移動して生活するという、二分脊椎の障害当事者を起点として発明されたスポーツだ。足が自由に動かせなくなるイモムシウエアを着ることで、障害の有無にかかわらず、みんなが同じ条件でラグビーを楽しめるというもの。

一般的なスポーツでは障害当事者が健常者を超えることは不可能とも言えるが、イモムシラグビーなら、這う動作のうまい障害当事者がヒーローになる可能性もある。そして、みんなが初めて体験するスポーツだからこそ、年齢、性別、障害はもちろん、運動神経の良い悪いも問わず、楽しむことができるのだ。

展示2:『フレアにもタイトにもなるZIPスカート』

これは、頸髄(けいずい)損傷の女性の課題を起点に発明された。実は、車いす女子にとってフレアスカートは鬼門だ。車いすでの移動時、風にふわりと揺れるスカートの裾を、タイヤに巻き込んで汚れてしまうからだ。

そこでウエスト部分から裾まで縦に5本のファスナーをあしらい、これを上げるとフレアスカート、下げると裾がすぼまり、タイトスカートへと変身させることを可能にした。これによって移動時は裾がタイヤに当たらないようにタイト、カフェやレストランでは華やかにフレアというように、シーンによって使い分けしながら、課題を解決することができた。

しかも座位でもすてきに着こなせるように、臀部(でんぶ)を膨らませたことで、ずれることがなく、立ち座り動作を頻繁に繰り返す、子育て世代の女性にもウケるデザインとなっている。中心をずらして履けばアシンメトリースカートに早変わりするなどほかにないデザインとなっており、いつもおしゃれに関心のある東京都知事の小池も購入したくらいだ。

展示3:『NIN_NIN(ニンニン)』

『NIN_NIN』は人の肩に乗るサイズ感で、忍者の形をしたボディシェアリングロボットだ。視覚障害者が、今も勘と勇気で横断歩道を渡っている、という事実を知っているだろうか。あるいは、この事実は知らなくとも、駅のホームから視覚障害者が転落するという事故を見聞きしたことはあるはずだ。

こうした当事者の課題を解決するために、見える人の視覚を『NIN_NIN』のカメラを通じて提供することで、安全に移動を可能にしたり、買い物を楽しむことができるようにした。ほかにも外国人が肩にNIN_NINを乗せて観光すれば、通訳できる人がカメラを通じて視界に入る看板や日本語での会話を翻訳することで、コミュニケーションを円滑にして旅をより楽しむことも可能になる。

これらの発明品をただ単に見るだけでなく、その背景を知ったり、実物に触れて体験したりすることで得られる新たな気づきや発見を、ぜひ社会にシェアしてもらいたいと思っている。

一人一人のそうした行動が、社会を1ミリ1センチと動かしてポジティブな変化をもたらすことができることを僕は知っているからだ。今は緊急事態宣言下であるため外出を控えなくてはならないが、解除された時には足を運んでもらい、「知る」を楽しんでほしい。

大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)

1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。

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