都立砧公園(Photo: 大塚訓平)
都立砧公園(Photo: 大塚訓平)

車いす目線で考える 第32回 インクルーシブ公園のすすめ

バリアフリーコンサルタント大塚訓平が考える、東京のアクセシビリティ

作成者: Time Out editors
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誰もが安心して、そして楽しく遊べるのが公園。しかし、何かしらの「障害」が公園にあることで、家族や友達と遊びたくても、一般的な公園では思うように遊ぶことのできない子どもたちがいる。なお、ここでいう「障害」とは、障害の社会モデル(個人の心身機能に対するものではなく、社会や環境の不整備によって作り出された障害)を指す。

例えば、滑り台をはじめとする高さのある遊具には階段があるため、車いすで上がれないし、砂場遊びも車いすを降りなくてはならない。座位保持が難しい場合、ブランコやシーソーにも乗ることができない。障害に対する偏見や誤解を受けたことによって、公園に行くこと自体を諦めてしまう場合もある。つまり、物理的な障害だけでなく、心理的な障害(バリア)もあるのだ。

こうした障害をなくし、年齢や性別、国籍を問わず、誰でも楽しめる公園を「インクルーシブ公園」という。すでに欧米諸国のほか、シンガポール、台湾などでも整備が進んでいる。日本国内では20203月、都立砧公園(東京都世田谷区)に日本で初めて誕生した。

この公園を訪れたとき、障害の有無にかかわらず、みんなが混ざり合って笑い声や歓声を上げながら遊んでいる光景を目にして、僕は初めて公園に感動した。というのも、従来の画一的な公園では取り残されてしまう子どもがいたし、車いすユーザーの僕自身も息子を連れて公園に行く際アクセスできないエリアが多く、取り残される側になっていたからだ。

都立砧公園(Photo: 大塚訓平)
都立砧公園(Photo: 大塚訓平)

このインクルーシブ公園では、段差のある遊具にスロープが付いており、滑り台は大人が付き添って一緒に滑れるように幅広になっている。ブランコには背もたれや安全バーが付いているし、遊具設置エリアの地面は遊んでいる最中に転んでもけがしにくいようゴムチップで舗装。日陰エリアを設けるべく日よけの付いたパーゴラ(日陰棚)や大きさの異なる樹木が配置され、その下にベンチが置かれているのもうれしい。 

都立砧公園(Photo:大塚訓平)
都立砧公園(Photo:大塚訓平)

これらの整備内容を聞いて、どんな印象を持つだろうか。こうして列挙すれば実にさまざまな配慮がなされていると思うかもしれないものの、実際この公園にいると、それらがごく自然なものだと感じられるはずだ。それは、公園の計画初期段階から、あらゆる当事者との対話を重ね、そこで得た公園における多様なニーズを共有してベストな課題解決の方法を見いだした結果、誰もが居心地よくいられる公園を作り上げることに成功したからだろう。

都立砧公園(Photo:大塚訓平)
都立砧公園(Photo:大塚訓平)

通常、こうした整備では、障害にフォーカスし過ぎるあまり、配慮が特別扱いに変わり、見えない壁を勝手に作り出してしまうことが多い。しかし今後は、それぞれの個人が持つ力を最大限に発揮できるような環境を整備することが求められるだろう。そのためにも、今まで意思決定の場から取り残されていた当事者に参画してもらうことが重要になる。

簡単に言ってしまうと、インクルーシブ公園とは、障害のある子どももない子どもも一緒に遊べる公園だ。砧公園では、今まで存在していた「見えない壁」はなく、親や子どもを問わず、遊びの中で新たな会話や理解、譲り合いが生まれていた。「分ける」から「混ざる」という新たな価値観がもたらされる場所になっていたのだ。

少子高齢、多様化の時代にあってその存在意義はこれからますます大きくなっていくだろう。各自治体が誰も取り残さない街へと成長を遂げるための一歩として、こうした公園の整備を検討してほしい。まずは、「百聞は一見に如かず」。感染予防対策をした上でインクルーシブ公園で交流を楽しんでみては。

大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)

1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。

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