車いす目線で考える
Photo: BANANA18(写真AC)

車いす目線で考える 第23回 新幹線の座席整備

バリアフリーコンサルタント大塚訓平が考える、東京のアクセシビリティ

作成者: Ryuichiro Sato
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タイムアウト東京  Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第23回 新幹線の座席整備を見直す

JR5社全てにおいて2020年6月11日から、新幹線の車いす席がネット予約可能になったというニュースが流れた。これにより、大幅に時間が短縮できるため、今後車いすユーザーの新幹線利用は一定数増えるだろう。というのも以前は、窓口や電話でしか予約ができなかったため、非常に不便だったからだ。この手続き方法だと、予約から発券完了までには最短でも30分程度(場合によっては1時間以上)かかることから、車いすユーザーの間では、しばしば改善を求める声が挙がっていた。

以前、僕自身も窓口での車いす席予約に最長で1時間半かかったことがあり、しかも高いカウンター越しにやりとりをしていたので、非常に疲れた。また、利用の2日前までに手続きする必要があり、急なスケジュールには対応できなかった。こうした理由から、僕は新幹線よりも車での移動をいつも選択している。本来なら、ほかのビジネスマン同様に、新幹線で席に着きながら、ゆっくりとコーヒーでも飲みながら仕事をし、時間を有効活用したいのだ。

ネット予約可能というソフト面が整備される一方、新幹線の車いす席自体の改善は未整備だ。以前にも本コラムの第6回でも書いたが、車いす座席が自由席、指定席共に少なすぎることに加えて、スペースが狭いことは、いまだ改善されていない。

JR各社が保有する新幹線で、車いす対応可能な席(多目的室を含む)の数は、1列車(編成)につき2、3席のままだ。1000以上の座席の内2、3席ということは、0.2〜0.3%だ。「数が少なすぎる!」と鉄道会社に言いたくなる当事者も多いだろうが、実は国土交通省の『バリアフリー整備ガイドライン』に、「客室には1列車に2以上の車椅子スペースを設ける」とされているため、鉄道会社はこの基準をしっかり守っていることになる。

バリアフリーの街作りや、障害理解が進んできたことで、以前よりも多くの車いすユーザーが一人で外出する時代になった今、このガイドラインにある座席数では、間に合っていないと思う。是非参考にしてもらいたいのは、競技施設における車いす席の整備基準である、総座席数の0.5%だ。また、電動車椅子やストレッチャータイプだと既存のスペースでは通路にはみ出てしまったり、車両間の自動ドアのセンサーに反応してしまうため、もう少しゆとりのある座席計画を立ててもらいたい。

ハード面を変えていくことは高額な費用がかかることから、なかなか進まないが、オリンピック、パラリンピックが1年延期したことをポジティブに捉えれば、準備する期間が延び、受け入れ態勢をさらに充実できると解釈すべきだ。

もしかすると、これらの整備が、障害者への優遇や特別扱いと思う人がいるかもしれない。しかし、これは障害のある人とない人との平等性が図れているかという観点で考えて欲しい。国連総会で採択された人権条約で、障害者権利条約というものがある(日本は2014年に批准)。この条文の中で32回も出てくるワードがある。それは「ほかの者との平等」。つまり、一般の人と何ら隔たりのない状態にすることが求められているのだ。

健常者はチケットのネット予約ができるが、障害者はできない。健常者は好きな座席から選べるが、障害者は列車中2、3席からしか選べない。これが「ほかの者との平等」が図られている状態と言えるだろうか。ネット予約が可能になったことは大きな前進であることは間違いないが、当日のネット予約もできるように早急に進めて欲しい。そして、車両の座席計画も改善してこそ、平等と言えるのではないか。

こうしたハード面の整備の時には、車いす専用となることが多いが、車いす対応として運用する方が良いと思う。事業者側の立場から言えば、利用されるか分からない席を作ることはしたくないだろう。だからこそ座席自体を、ワンタッチでスライド(移動)、または折り畳み(収納)可能にして、その場の状況に応じて、すばやく座席のレイアウトを変えられるようになれば最高だ。

日本の高い技術力があれば、近い将来こうしたことが当たり前になり、障害の有無にかかわらず、誰もが楽しく外出できる社会になるだろう。

大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)

1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。

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