車いす目線で考える 第15回 「感動ポルノ」の意義

バリアフリーコンサルタント大塚訓平が考える、東京のアクセシビリティ

作成者: Kunihiro Miki |
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Mother with disabled son
David Wicklund

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『感動ポルノ』という言葉をご存じだろうか。

オーストラリアのコメディアン、ジャーナリストであり、障害者人権活動家のステラ・ヤングが用いたワードで、『障害者を健常者の感動の対象として扱うこと、または、やる気を起こさせるために利用すること』という意味を指す。障害があるだけで特別な存在だと捉えられ、一般に求める真の成果で評価されずに、あらかじめ低く設定された期待値のもとで、高い評価を受けることにつながってしまっているような気がする。

しばしば、この『感動ポルノ』と揶揄(やゆ)されてしまうのが24時間テレビだ。NHKの『バリバラ〜障害者情報バラエティー〜』では、2.4時間テレビと称し、障害者の頑張る姿を映し、感動を誘う企画や演出をわざと模倣し、当事者が求める障害者像を表現していた。

僕自身は24時間テレビに対し、否定も肯定もしない。事実、24時間テレビを見て、うそっぽい演出に興ざめしたこともあるし、数々のチャレンジに感動して涙したこともある。また、チャリティー番組なのに、芸能人の出演者に高額なギャラが支払われていることに関しては理解に苦しむが、一方で、わずかな期間であれだけ多額の募金が集まることは、本当に素晴らしいことだと思う。

障害者が感動ポルノとして消費されることは悪か?

ものの考え方や受け止め方は、人それぞれ違うものだ。僕自身は感動の対象になっても構わないと思っている。それは、今まで講演させてもらったさまざまな場所で、「感動しました。ぜひ、今度はうちの会社でもお願いしたい」と、ありがたいことに、その場で次につながる話が自然と生まれることが多いからだ。また、『一歩を踏み出す勇気』を誰かに与え、背中を押すことができたりもする。つまり、感動は人を変え、新たな出会いを生み出すものだと思う。

僕は「あなたのことを、もっと知りたい」と思ってもらえるような人になりたい。そうなることで、自分のアイデアや生き方を伝える場が増え、障害者のリアルを見せることができる。まずは接点ができた僕に興味を持ってもらい、その後日常生活の中で、僕以外の障害当事者に出ったときに、自然な形でコミュニケーションが取れる人を増やし続けていきたいからだ。

障害者との接点がない、または少ない人にとって、24時間テレビは、一年に一度、画面を通して間接的にでも障害者との接点を持つことができる良い機会だと思う。

「感動ポルノ期」の次のステップへ

障害があるという理由で用意された、低いハードルで評価されるのではなく、真の成果で評価される世の中に直ちになってほしい。しかし、何事にも段階があると思う。まずは、「感動ポルノ期」から次のステップに上がるために必要なことを考えなくてはならない。

24時間テレビは、一時の障害者のチャレンジを映すだけでなく、同時にその人が日常的に抱えている課題や困難を社会に広く知らしめる必要があると思う。そして、その課題を解決するようなプロダクトやサービスを、障害当事者が中心となってスポンサー企業と一緒に生み出す機会をつくることができれば、番組を見た人たちは、障害を正しく知ろうとする「障害関心期」に入り、障害者との交流も生まれるかもしれない。そして障害者と自然と混ざり合っていく「障害交流期」を経て、今まで深めてきた障害理解をほかの誰かに伝えていくという「障害伝道期」へと進んでいくはずだ。

まずは、何がきっかけでも構わない。
パラスポーツを通して、
ボランティア活動を通して、
各種メディアを通して、
友だちを通して、
障害をもっと知ってほしい。
障害者が特別視されるのではなく、普通だと思われる世界になるまで、僕は感動の対象でい続けてもいいと思う。もっとも、僕はほかの誰よりも自分に感動していたいから、自分のスキルを磨いたり、人から学んだり、日々楽しく過ごすことに一生懸命だ。

大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)

1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。

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