車いす目線で考える 第14回 新たな移動手段は心のバリアも取り除く

バリアフリーコンサルタント大塚訓平が考える、東京のアクセシビリティ

作成者: Kunihiro Miki |
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タイムアウト東京  Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第14回 PMの普及は心のバリアも取り除く

テキスト:大塚訓平

最近、高齢ドライバーによる危険運転や悲惨な交通事故のニュースが、連日のようにメディアで報道されている。これに伴い、運転免許証を自主返納する高齢者が全国的に増えてきている。特に、2019年4月19日に池袋で起きた87歳の男性が運転する車が暴走し、2人の死者、9人のけが人を出した事故がきっかけとなり、東京都内ではこの事故の翌月に当たる5月に運転免許証を自主返納した人が5700人を超えたそうだ。

新たな移動手段が経済効果も生む

しかし、免許を返納し、自動車の運転ができなくなったことにより、普段の買い物や、通院、人との交わりなどが大きく制限されては、生活の質が下がってしまう。

そこで免許返納後の新たな移動手段として注目を集めているのが、電動車椅子を含むパーソナルモビリティ(以下「PM」)だ。PMとは、先進技術を用いた1~2人乗りの電動式の乗り物(移動機器)で、歩行と自動車やバイクといった既存移動体との中間体な乗り物のこと。現在、ベンチャー企業だけでなく、世界的な大企業も研究開発に乗り出している。

海外に目を向けると、PMを単なる移動手段としてだけでなく、ビジネスの側面からもうまく活用している例がある。イギリスでは、既に400以上の施設にさまざまな種類のPMが導入されており、あるショッピング施設では、客の滞留時間が今までの3倍に伸びたことによって消費が上がったという。つまりPMの導入が、売上増に大きく貢献したのだ。

日本で乗れるPMとは?

このようなポジティブな事例があると、今後の日本におけるPMの普及スピードが加速していきそうだが、国内でのPMの使用には一定の法規制が課されていることは知っておかなくてはならない。

PMには現在「立ち乗り型」「座り乗り型」が発売されているが、「立ち乗り型」で有名な『SEGWAY®︎』は、残念ながら未だ一部の特区でしか公道走行が許可されていない。それに対し、座り乗り型で現在最も普及している『WHILL』は、時速6キロメートル以下で走行する電動車椅子のため、歩行者扱いとなり歩道を通行できる。もちろん運転免許も不要。そしてトヨタはこの2つのタイプに加えて「車いす連結型」を2021年に投入すると発表している。


『WHILL』は、オムニホイールという大小24個のタイヤを持つ前輪のおかげで小回りが利き、操作も簡単。今までの電動車椅子にはなかった優れたデザイン性、走破性、先進性を兼ね備えている。事実、「電動車椅子には乗りたくないが、『WHILL』なら乗りたい!」という声も多く、車いすユーザーだけでなく、免許を返納した高齢者の購入が急増しているのは、こうした理由からだろう。

ワクワクするような新たな移動手段を

僕自身も行き先によって『WHILL』に乗り換えるが、最近、東京都内で移動していると『WHILL』ユーザーに出会うことが多く、思わず笑顔で挨拶してしまう。『WHILL』のようなPMが大々的に普及し、日常に溶け込むようになれば、ハード面だけでなく、心のバリアも自然と取り除かれていくことだろう。

人々の生活を豊かにし、誰もが乗りたくなる、そんなワクワクするような新たな移動手段が数多く登場することによって、大胆な規制緩和や省庁をまたぐ法整備につながることを願うばかりだ。

大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)

1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。

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