車いす目線で考える 第8回 神社仏閣に潜む壁

バリアフリーコンサルタント大塚訓平が考える、東京のアクセシビリティ

作成者: Shiori Kotaki |
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テキスト:大塚訓平


新年明けましておめでとうございます。今年も『車いす目線で考える』をよろしくお願い申し上げます。


さて、みなさんは今年、初詣に行っただろうか。ちなみに、僕はまだ行っていないのだが、そもそも車いすユーザーになってから、初詣に行ったのはこの9年で2回だけだ。なぜなら、神社仏閣は、玉砂利や段差、勾配のきつい坂道などが多く、車いすユーザーにとって難所だからである。また、賽銭箱前には階段があり、現状、車いすのまま賽銭を入れられないことも多い。こうしたことから、神社仏閣は避けたいスポットの一つとなってしまっている。しかし、実のところは、昨年の感謝を伝え、新年の無事と平安を祈願する年始の挨拶『初詣』には、行きたいと思っているのが本心だ。

嬉しいことに、都内にある比較的大きな神社や仏閣では、ここ10年ほどでバリアフリー化が進んだような気がする。歴史ある景観を守りながらも段差を解消したり、玉砂利を石畳に変更したり......。本殿に上がれるように、スロープやエレベーターを設置するところも徐々に増えてきた。

ここで一例挙げよう。大晦日から正月三が日の間、約300万人もの人がお参りをするという明治神宮では、2016年に行われた『明治神宮鎮座百年記念事業』の一環で、歩道などが整備された。参道の両端には石板を敷いた歩道が設けられ、御社殿と神楽殿には、緩やかなスロープが設置されたのだ。実は7〜8年前、僕も一度、明治神宮へ参拝をしようと足を運んだことがあった。しかし、この時はまだ整備させていなかったため、原宿口から入るも途中で砂利道に屈し、参拝を断念した。

その後、友人が明治神宮へ参拝した際の画像をSNSに投稿したとき、御社殿の横にスロープが写っているのを見てバリアフリー化の事実を知った。投稿を見てから実際に行ってみたところ、車いす対応の駐車区画やトイレがしっかりと設けられていたのはもちろん、係りの人の対応が素晴らしく、神社や仏閣の中では、アクセシブル度が高い環境になっていたのだ。しかし、残念ながら明治神宮の公式ホームページには、こうした情報は掲載されていない。未だにバリアフリー化のことを知らない人も多いかもしれないので、ぜひ、積極的にバリアフリー情報を公開してほしい。

こうした面の整備は、たしかに多額の費用を要する。しかし、車いすユーザーだけでなく、ベビーカーユーザーや高齢者の参拝者を増やすことができるため、新たな客層の獲得になるという視点を持ち、ポジティブにバリアフリー化に取り組んでほしいものだ。

もう一つ紹介したいのが、長野県の善光寺エリアの事例。このエリアでは、障害者や高齢者にも観光を楽しんでほしいという想いから、地域のNPOなどが、寺の敷地内だけでなく、周辺の飲食店や土産物店、宿泊施設のバリアフリー情報を調査して、マップアプリを完成させたのだ。このアプリは、現在地から一番近い多目的トイレや、車いす対応の駐車場を検索すると、経路検索してくれるというもの。このように、バリアフリー情報を事前に取得できたり、現地で簡単に検索できるようになっていくことは、誰もが安心して外出できる社会づくりへと繋がっていくだろう。

以前、出張の帰りに善光寺に立ち寄ったことがあるが、周辺にある商店の人々も車いすユーザーに慣れているようで、段差などのアシストや声かけが、ごく自然で心地よかった。これは、地域でバリアフリー化に取り組んだことによる良い成果と言えるだろう。ある蕎麦店の店主に聞くと、「2005年に長野県で開催された、知的発達障害者スポーツ大会『スペシャルオリンピックス冬季世界大会』を経験しているからこそ、一定の障害理解があると思う」と話す。スポーツを通じて、障害や国籍を超えた心のバリアフリーを実現した長野県から学ぶことは多そうだ。

人は「機会」に出会うことで、様々な価値観を知り、学び、そして行動に移すことができる。障害がある人と接する機会を増やし、バリアフリー化を推進していってほしい。そうすることで「誰もが、行きたいところに、いつでも行ける社会」になるはずだ。

大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)

1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。

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