車いす目線で考える 第12回 東京2020大会、車いす席はどうなる?

バリアフリーコンサルタント大塚訓平が考える、東京のアクセシビリティ

作成者: Time Out Tokyo Editors |
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N.MORI

タイムアウト東京  Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第11回 東京2020大会、車いす席はどうなる?

テキスト:大塚訓平

平成から令和の時代に入り、10連休のゴールデンウィークが明けた5月9日から『東京2020大会オリンピック』観戦チケットの抽選申し込み受付が開始されたが、皆さんは申し込みされただろうか。

僕は開会式をはじめ、興味のあるさまざまな競技のチケットの申し込みを、受付初日早々に済ませた。開会式は特に人気が高く、良い席になればなるほど価格も高いのは当然のことだが、車いす席は一般の席に比べ大幅にディスカウントされていた。例えば開会式のA席(1階)は、一般の24万2,000円に対して車いす席は4万5,000円なので、通常の2割以下の価格となるのだ。これだけ安いと倍率は相当高いだろうし、申し訳ない気持ちにもなる。平等とは何なのかを考えさせられる。

IPCが定めた車いす席の席数は?

車いす席はどのように整備されているのか。2013年9月に東京が開催地として決定してから、国際パラリンピック委員会(IPC)は、障害者が多様な位置や価格帯で観戦できるよう、車いす席を異なるエリアと階層に分散設置することを求めた。また、車いす席の座席数については、オリンピック会場は全体の0.75%、パラリンピック会場では1~1.2%と基準を設けた。

これにより、新国立競技場では常設で500席の車いす席を設け、1層スタンドにスタジアムをグルっと囲むように配置し、その上の階層でも車いす席を用意し、その割合は全体の0.8%を超えた(パラリンピック開催時には747席に増やし、基準となる全体の1.2%を超す見込み)。競技をできるだけ間近で観たい人にも、俯瞰するために上の階層を希望する人にも対応できるようになったし、予算で席を選ぶこともできるようになったのだ。

日韓W杯の教訓=サイトライン

今までの競技施設では、車いす席が一般の客席よりも広いスペースを必要とするため、端の方に固められてしまい、数も極端に少なかった。また、実際に車いすユーザーが観戦することを想定していない造りとなっていて、サイトラインが考えられていなかった。サイトラインとは、車いす席から舞台やスクリーン、競技への視界のこと。「サイトラインが確保されている」状態は、車いす席の前の観客が立ち上がっても、その視界を妨げないように、座席の設計に工夫がされていることを指す。

2002年の日韓『FIFAワールドカップ』のメイン会場となったさいたまスタジアム2002の車いす席は、サイトラインが考慮されておらず、ゴール際のエキサイトする場面で観客が立ち上がってしまうと、その重要なシーンを見れないことがある。

新国立競技場においては、このサイトラインの確保と車いす席の数とその配置は、IPCの基準をクリアする見込みだ。対応がここまで進んだのは、障害当事者が参加するバリアフリーに関するワークショップが繰り返し開催され、そこで挙がった声がしっかりと反映されたからだ。

アクセシビリティの高い施設を造り上げるのに重要なのは、障害当事者参加のもとで、段階的かつ継続的に、調査・評価・改善を繰り返す、スパイラルアップの動きを止めないことだと思う。

日本国内においては今後、オリンピック・パラリンピック関連施設に限らず、さまざまなスポーツ競技施設でもこういったことが十分考慮され、障害者向けの観戦環境が改善されていくことを強く願う。

大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)

1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。

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