車いす目線第26回
超福祉展の主催者、須藤シンジと出会うきっかけとなったルーズシューズ

車いす目線で考える 第26回:超福祉展が私たちに残したもの

バリアフリーコンサルタント大塚訓平が振り返る『超福祉展』

作成者: Time Out editors
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NPO法人ピープルデザイン研究所(以下「PDI」)が、渋谷ヒカリエで2014年から開催している『2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展』(以下「超福祉展」)が、2020年98日で閉幕となった。

超福祉展は、障害や福祉、マイノリティーに対する意識のバリアを取り除くために、あらゆる社会障害を解決できる最先端のプロダクトやサービスの展示や体験、そして魅力的なプレゼンターによるシンポジウムが行われる、今までの福祉の概念を超えた一大イベントだ。

僕はこの超福祉展を通して、多くの人と出会い、さまざまな価値観を知った。自分とは異なる、障害のある人が感じる困難さや、課題の解決方法を知ることで、新たな視点を手に入れることもできたし、僕自身が持つアイデアや取り組みを世に広める方法も身に付けることができた。一言で表すのは、大変恐縮だが、「発見、行動、伝播(でんぱ)」につながり、自己成長ができるイベントと言える。

また、さまざまな社会障害や課題に対して、何が正解かを説くのではなく、毎年アップデートされた多様な問いが随所に散りばめられていることで、それをどう解消するかのを参加した人たちで一緒に考えていくというプロセスが何ともポジティブで心地よいと感じる。

この感覚は、PDIの須藤シンジさんと最初に出会った時に感じたワクワク感と似ている気がする。須藤さんと出会ったのは、20116月だ。きっかけになったのは、僕が不慮の事故により脊髄(せきずい)を損傷し、入院している時に、兄がプレゼントしてくれたユニークなデザインのルームシューズだった。これが須藤さんの手がけるNextidevolutionのアイテムだったのだ。

こんな面白いデザイン、誰が考え、誰が作っているのか、そしてどんな理由でこのデザインにしたのか知りたくて、ウェブサイトの問い合わせフォームからメッセージを送り、面談の機会をいただいた。この時点で、僕は新たな発見と行動を起こすことができた。

そして、須藤さんが思い描く「障害者と健常者(違いのある人たち)が自然と混ざり合う社会」というワードに強く共感し、以来、このワードを全国各地で講演する際に使わせてもらい、波及させてきたつもりだ。そのおかげで、多くの人と出会い、縁が広がり、講演や研修の依頼や新たなプロジェクト立ち上げの誘いを受けるなど、自分自身を成長させることができた。

実際、タイムアウト東京とのご縁は、2017年キックオフの時だった。代表の伏谷博之さんによる『OPEN TOKYO』のプレゼンテーションを聴いて感動し、即座に意見交換の機会をいただき、コラボレーションの形を模索した。その後、『OPEN TOKYO Talk』に登壇させていただいたり、『THE NIKKEI MAGAZINE FUTURECITY』への協力、銀座や箱根のアクセシブルガイドマップ監修、そして、この『車いす目線で考える』のコラム連載につながっていった。このように、参加企業や団体間が連携することで、より多くの人を巻き込むことができ、人の心や社会に潜む「意識のバリア」を解消することができるだろう。

また、超福祉展では、社会全般的にネガティブなものとして描かれることをポジティブにするだけでなく、そのポジティブをさらに超えていくデザインや表現で、展示とシンポジウムが行われてきた。例えば、「障害」「福祉」「車いす」といったワードを聞くと、ほとんどの人が、身構えたり距離を置いてしまったりするだろう。

しかし、そのワードにカッコよさ、かわいさ、ポップさを盛り込んで、あらゆるジャンル(アート、ファッション、テクノロジーなど)から表現されるので、参加者は一人一人の持つ個性(違い)が、新たな可能性を生み出すということを知ることになる。このような気付きが、特別な感じではなく、自然と体得できるようにデザインされているのだ。

我が国では人口が減少し続け、高齢者だけでなく障害者人口も増え続けていることから、「少子高齢多様化」の時代になってきたと言える。その流れを受けて、最近では多くの企業が障害当事者の課題解決に注目し始め、さまざまなプロダクトやサービスが誕生するようになってきた。障害当事者は日常的に、課題に直面しているからこそ、独自の解消法やさまざまなアイデアを持っている。対して企業は、高い技術と潤沢な資金を持っている。自分が持っていないものを、ほかの誰かが持っていて、それを交換して価値を生み出すという、ある意味、この少子高齢多様化時代において、最もイノベーティブな物々交換とも形容できるかもしれない。

このように、社会全体で「発見、行動、伝播」のサイクルが自転するようになれば、あらゆる社会障害が解消できると思う。違いのある人たちが自然と混ざり合う社会の実現に向けて、まず僕自身ができることは、本コラムを始め、講演や研修、メディア出演など数多くの場所で「知る」機会を提供し続けることだと思う。そして、それが「行動する」「伝える」機会につながるはずだから。

「KNOW MORE. DO MORE. TELL MORE.」というマインドを常に持って、社会に良い影響を与えることのできる取り組みをしていきたい。

大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)

1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。

車いす目線で考えるを振り返る……

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