アート&カルチャー

東京で話題の展覧会やダンス公演情報から、定番のギャラリーや美術館の紹介

アートフェア東京がオンラインギャラリーで作品を販売
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アートフェア東京がオンラインギャラリーで作品を販売

新型コロナウイルスの影響で、多くのイベントが自粛し、SaveOurSpaceのように、ライブハウスなどの文化施設の休業に伴う補償を支援する動きも出てきた。もちろん文化施設はこれらパフォーマンスや音楽に限定されるわけではない。美術館やギャラリーなどのアートに関わる施設も休廊、休館を余儀なくされ、世界各国で支援の動きが出ている。今回は、アートマーケットの動きを紹介したい。 国内最大のアートの見本市の一つである『アートフェア東京2020』は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、中止に。当然の措置によって、アーティストもギャラリーも損失を被ることとなった。この損失を補おうとする試みが、AFT Art Huntingだ。このオンラインギャラリーモールは、TODOROKI社がオンラインサービスの「Art Scenes」を提供して実現した。Art Scenesでは、ギャラリーがセレクトしたアートをオンライン上で販売でき、アートフェアや展覧会のオンラインビューイング機能も有する。 今回は『アートフェア東京2020』に出展されるはずだった作品がオンラインで公開、購入が可能。現時点で80を超えるギャラリーが参加を表明しており、奈良美智から4世紀のブッダ像までさまざまな作品がそろう。  サイトでは、インターネット技術をオークション市場に導入、アートマーケットの拡大を目的ともしており、それはアート東京が構想していた同様の施策の実現でもある。作品やギャラリーごとに検索可能で、ギャラリーに詳細を問い合わせることもできる。 TODOROKIは、今回に限らず、コロナの影響を受けているギャラリーにArt Scenesを通して支援を行なっていて、審査を経ればオンラインビューイング機能や作品の売買など全ての機能の無償で利用できる。 こうしたアートマーケットの機会損失を補おうとする動きは、ほかにもある。海外では、アートバーゼル香港2020やフリーズニューヨーク2020が同様にコロナによる中止を受けてオンラインのビューイングルームに向けて動いている。国内では、ほかにアートフェアの自粛を受けて立ち上げられた『Oil by 美術手帖 オンライン・ビューイング』が挙げられる。 オンラインでの閲覧や売買は、クリスティーズなどオークションディーラーが導入して久しいが、これらは、コロナで損失を被ったアーティスト個人のみならず、彼らを取り巻くコレクターやギャラリーの支援にもつながっている点に特徴がある。しかし、こうした支援の動きは世界的に見てもまだ多くはなく、AFTは、このようなコロナ禍での支援をめぐる動きとしては国内での数少ない例だ。2020年5月9日(土)までの開催となっているので、ぜひアクセスしてほしい。 オンラインギャラリーモール「AFT Art Hunting」 は、2020年5月9日(土)まで開催。 公式サイトはこちら  関連記事 『50のギャラリーが集まる、無料のオンラインサイトが始動』 『オンラインで作品の見どころが学べる展示5選』

50のギャラリーが集まる、無料のオンラインサイトが始動
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50のギャラリーが集まる、無料のオンラインサイトが始動

コロナウイルスの大流行を受け、2020年は厳しい幕開けとなった。東京および日本各地でも、森ビル デジタルアート ミュージアム チームラボ ボーダレスや東京ディズニーランドなどの美術館や観光スポットが一時閉鎖している。東京国際フォーラムで行われる予定だった『アートフェア東京』や京都で開催されている『KYOTOGRAPHIE』といった大規模なアートイベントも中止や延期に追い込まれた。 自宅で過ごすことが多くなった今、外出しなくても楽しめるようクリエーティブなプログラムも続々と生み出されている。村上春樹の作中に登場した楽曲、238時間分を集めたSpotifyのプレイリストを聞いて一日を過ごしたり、日本の桜をVRビデオで見ることもできるが、自宅のソファでくつろぎながら日本国内のアートギャラリーを「訪問」することも可能になったのだ。 Oil Bijutsutecho  日本の美術誌、美術手帖はECサイト OIL by 美術手帖の中で「オンライン ビューイング アートギャラリー」を開催中。各アートフェアに出展予定だった50を超えるギャラリーが参加しており、サイト上ではアート作品の閲覧だけでなく、購入も可能だ。 エイチピージーアールピーギャラリー(hpgrp Gallery)や、小山登美夫ギャラリーなどから集められた700点の作品が展示されている。登録をしなくても世界中から簡単にアクセスができ、期間は2020年4月5日(日)まで。 アート界にも大きな影響を与えた新型コロナウイルスだが、こうしたオンライン上でのイベントで、ギャラリーやキュレーター、アーティストをサポートする動きが今後も増えていきそうだ。

オンラインビューイングでNYのアートギャラリーへ
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オンラインビューイングでNYのアートギャラリーへ

現在、ニューヨーク市を含む世界中のアート展示会場が、新型コロナウイルスの感染対策のため閉鎖中だ。しかしいくつかのアートギャラリーでは、閉鎖期間に開催予定であった展示作品のオンラインビューイングが始まっている。展示会場に行き作品を前にした鑑賞体験は叶わないが、オンラインの鑑賞旅行に訪れてみるのも悪くはないかもしれない。 NYCギャラリーのウェブサイトでは、作品をより深く掘り下げたり、ウェブ用に特別にキュレーションした展示を提供するオンラインルームが作成されており、オンラインビューイングで作品や展示の魅力を伝えることがギャラリーの狙いだ。展示コレクションのバーチャルツアーの提供は、現在ほかの美術館や別の都市のアートスペースでも行われている。 またアーティストや批評家も自らで企画を立ち上げ始め、特定のギャラリーと組むことなく催されているオンラインの展覧会もある。ここでは、トレンドの例をいくつか紹介しよう。   デイヴィッド・ツヴィルナー・ギャラリー デイヴィッド・ツヴィルナー・ギャラリー(David Zwirner Gallery)は、アート業界最大のプレーヤーの一人が運営している。そのため美術館のクオリティーと、ほぼ同等のビューイングルームを備えたオンラインリソースを持っているのは不思議なことではない。サイトではキャプションが付いた展示のビデオや画像を見ることができる。現在開催されているのは、60年代のカウンターカルチャーに影響を受けたアーティスト、ジェームス・ウェリングによるサイケデリックな写真展『James Welling:Pathological Color』だ。 ペース・ギャラリー この大きなギャラリーの公式サイトでは、ベテランのカラーフィールドペインターであり、叙情的な抽象主義者であるサム・ギリアムの水彩画を含む展示を開催。美術館クオリティーの体験をオンラインで提供するという点で、デヴィッド・ツヴィルナー・ギャラリーを追従している。  ガゴシアン・ギャラリー ガゴシアン・ギャラリー(GAGOSIAN Gallery)は世界中に18カ所のスペースを持つ、言わずと知れた有名なアートギャラリーだ。オンラインビューイングルームからは、その全てをバーチャルに訪問することができる。現在はニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、パリ、ローマの展示が閲覧可能だ。 ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート(New Museum of Contemporary Art)のサイトでは、ウェブ用に制作されたデジタルアートを特集。現在は、鑑賞者を「ビデオゲームの歴史の中の象徴的な女性キャラクターが住む迷宮の世界」に誘うようなブラウザゲーム、またゲームオブスローンズの夜の王を主役に据えた、資本主義の悪についての公共広告が公開されている。

家で楽しむニューヨークのストリートアート
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家で楽しむニューヨークのストリートアート

新型コロナウイルスの大流行によって閉鎖されたニューヨークの博物館や美術館、ギャラリーの多くは、バーチャルツアーやオンラインのみの展示を通じて、外出しなくても人々がアートを楽しめる機会を設けている。 しかし、屋外に作品があることが多いストリートアートが好きな場合はどうすればいいのだろう。うれしいことに、Google Arts & Cultureが、Googleストリートビューを利用してニューヨークにあるカラフルな壁画を360度ビューで体験できる「9 Amazing Street Art Murals in New York」を公開している。 鑑賞できる作品はブラジルのストリートアーティスト、エドゥアルド・コブラが描いた壁画など。コブラの作品は、クラウンハイツにあるフリーダ・カーロとディエゴ・リベラのポートレート、ブッシュウィックにあるボクシンググローブをはめたアンディ・ウォーホルとジャン・ミシェル・バスキアが並ぶ壁画、そしてジャージーシティのタワーマンションの壁に描かれたジギー・スターダスト姿のデイヴィッド・ボウイの3作品を見ることができる。 この投稿をInstagramで見る ⚡️Ziggy Stardust ! Mural finalizado em Jersey City / Eua #davidbowie #ziggystardust #jerseycity #eduardokobra #kobra Eduardo Kobra(@kobrastreetart)がシェアした投稿 - 2016年11月月13日午後1時34分PST ストリートアートシーンには欠かせない存在、バンクシーの作品もある。アッパー・ウエスト・サイドにあるニューヨーク市消防局の消火栓に向かってハンパーを振り落とす子どものシルエットを描いた『Hammer Boy』をバーチャルで見られるほか、キース・ヘリングの有名な『Crack Is Wack』、気鋭の作家が参加することでも有名なハドソン・ストリートのバワリー・グラッフィティ・ウォールへもサイトを通して訪れることができる。 Photograph: Ali Garber 家にいながらにして、ストリートアートを楽しみたいなら、今週末はバーチャルトリップに出かけてみよう。アメリカへの旅らしく、『Ben & Jerry's』のアイスでも頬張りながらチェックするのもありかもしれない。 原文はこちら   関連記事 『今こそバーチャルでニューヨークの有名美術館を訪れよう』『オンラインビューイングでNYのアートギャラリーへ』 

バレエ&ダンスの名作を自宅で鑑賞:第3回 オンラインダンスビューイング一覧
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バレエ&ダンスの名作を自宅で鑑賞:第3回 オンラインダンスビューイング一覧

外出を控える中でも楽しめる、バレエ&ダンスの無料オンラインビューイングの総集編。第1回 シュトゥットガルト・バレエ団『眠れる森の美女』、第2回 バットシェバ舞踊団『DECA DANCE』『LAST WORK』に続き、ここでは世界各国のバレエを中心にさまざまなダンスビューイングを紹介する。この機会に、あなたも自宅でバレエ&ダンスの鑑賞デビューを。 ※配信日時は、各国の現地時間で表記。

エディターズ・ピック

自宅で観劇:第1回 週末に楽しむストレートプレイ3選
ステージ

自宅で観劇:第1回 週末に楽しむストレートプレイ3選

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、世間はすっかり外出自粛モード。それは裏を返せば、家で過ごす時間がいつもよりたっぷりあるということだ。現在、国内外の劇場や団体が、これでもかと演劇公演の映像を無料で配信している。 そこで今回は、英語上演あるいは英語字幕の映像から、2020年4月3日(金)〜5日(日)に配信するおすすめのものをチョイス。なにせ生きた言葉であるから、英語の勉強にもなること請け合いだ。シアターゴアー(劇場の常連)のあなたも、普段は演劇を見ないあなたも、お気に入りの演劇がきっと見つかるはず。 

バレエ&ダンスの名作を自宅で鑑賞:第2回 バットシェバ舞踊団『DECA DANCE』『LAST WORK』
ダンス

バレエ&ダンスの名作を自宅で鑑賞:第2回 バットシェバ舞踊団『DECA DANCE』『LAST WORK』

3月に来日公演を予定しながら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で公演中止となったバットシェバ舞踊団。芸術監督として長年率いてきた振付家オハッド・ナハリンの、在任中の最後の作品『Venezuela-ベネズエラ』を上演するはずだったため、悲しみに暮れたファンも多いだろう。 彼の作品のうち『DECA DANCE』『LAST WORK』は現在(2020年3月28日)、ネットで視聴可能。コンテンポラリーダンスの中でも、人間離れした強靭(きょうじん)で奇妙な動きや、ユーモアと神秘性が混じり合う不思議なテイストで、一頭地を抜くナハリン作品は、ダンスを見慣れない人にもぜひ体感してほしい世界だ。

毒山凡太朗個展「SAKURA」
アート

毒山凡太朗個展「SAKURA」

毒山凡太朗による、時代によってさまざまに扱われ、世相を反映してきた桜をテーマに、表現とその自由を考える展示がリーサヤ(LEESAYA)で開催。毒山は、特定のコミュニティーに介入し、インタビューを行う対話形式の映像作品を制作することで知られる。その類まれな対話力で、忘れ去られた過去の記憶や場所、問題意識を再発見するように調査する手法は、作品を体験する側に強い印象を残してきた。 古くは山田孝雄の『櫻 史』、最近では佐藤俊樹の『桜が創った「日本」』まで、桜に関する考察は数多くある。しかし、『あいちトリエンナーレ2019:情の時代』でも桜木のインスタレーションを展開した毒山は、桜の解釈とそれを利用した側へ見る者の眼差しを向けさせ、これまでの試みよりも一層先鋭な問題意識を提示しようとしているかのようだ。 鑑賞され、解釈されるという作品の在り方と、誰かの利益のために『公益性』を重視した先の作品の在り方は、現代のアートではもはや不即不離の関係だ。毒山が両者の間で揺れる様子を、ぜひ一緒に体験してみたい。

ジェンダー差別を可視化するアートプロジェクト「Our Clothesline with Monica Mayer」
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ジェンダー差別を可視化するアートプロジェクト「Our Clothesline with Monica Mayer」

メキシコのフェミニストアーティスト、モニカ・メイヤーの作品『The Clothesline』を もとに活動するアートプロジェクト『Our Clothesline with Mónica Mayer』が、2020年度の川村文化芸術振興財団支援助成(※)の対象に選出された。 『Our Clothesline with Mónica Mayer』は、あいちトリエンナーレ2019参加作家のモニカ・メイヤーによるレクチャーワークショップに参加した有志グループによるプロジェクト。フラワーデモ名古屋の参加を筆頭に、メキシコ大使館「移民女性のエンパワーメントワークショップ」、上智大学主催のジェンダー暴力と闘うキャンペーン「Raise Our Voices For Empowerment」など、を日本各地で『The Clothesline』を開催する活動を行う。  可視化された声なき声『The Clothesline』  あいちトリエンナーレ 2019 の展示風景 モニカ・メイヤー 《 The Clothesline 》 2019 Photo: Akane Yorita モニカ・メイヤーの『The Clothesline』は、鑑賞者が質問の記載してある小さな紙に回答を記入し、会場の物干しロープ(The Clothesline)に干すというインタラクティブアートの手法をとった作品だ。日常生活の中で感じる抑圧、ハラスメントの経験を紙に書き、物干しロープに展示することで世の中に埋もれていく「声なき声」を可視化し共有する空間を生み出している。 あいちトリエンナーレ2019ではこの作品を通じて、日常生活の中で埋もれている性に関する嫌がらせや暴力、明らかな犯罪的行為が日常的に行われていることを浮き彫りにし、話題となった。また同トリエンナーレを巡る騒動の標的となった『表現の不自由展・その後』の展示中止期間には、物干しロープに干された小さな「声」を引きちぎり『沈黙の Clothesline』と内容を変えた抗議としての展示も行っており、同氏の敏捷(びんしょう)かつアーティストとしての感度の良さが示されていた。 このアート作品の特徴は、紙とペンと物干しロープさえあればどこででも開催が可能なこと。特別な知識や情報必要なく凡用性が高い反面で、アートとしてのレイヤーは多岐にわたる。そのため開催地のコミュニティーグループと協働し、その土地で現在どのような問題が起こっているのか、重要な問題は何かをまずグループ内で話し合い、作品に反映させているそうだ。そして1回の作品づくりでは終わらせずに、その土地で継続していくこと、派生した各地でそれぞれの『The Clothesline』の開催を、作家は希望すると表明している。  国際女性デーへ向けた取り組み 『The Clothesline』photo by Akane Yorita   本プロジェクトは国際女性デーに合わせ、未だ解消されないジェンダー問題をテーマに東京、名古屋での『The Clothesline』開催を企画。2021年3月8日(日)の開催に向けて、プロジェクトを進めている。また2020年度は、コロナウイルス感染症の影響により、フラワーデモ名古屋のみの開催となる。  フラワーデモ名古屋  2020年3月8日(月)17時00分~17時30分 場所:久屋大通公園希望広場/

インタビュー・アーカイブス

インタビュー:隈研吾
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インタビュー:隈研吾

東京では、変化こそ唯一の不変だともいわれている。個性のないガラスと鋼の高層ビル、そして同じようなショッピングモールのために新しい街のスペースを勝ち取ろうという争奪戦が繰り広げられ、「再開発」という表現の圧力が押し寄せる。しかし、都市発展のための控えめながらも練り上げられた野心的な取り組みには、まだまだ希望を見いだすことが可能だ。東京の新しいオリンピックスタジアムの設計者である隈研吾が提唱する、より緑にあふれ、より人間の体の大きさに合った、伝統を尊重した街づくりは、希望あるもう一つの未来を作り出す有力な手段であると言える。 今回は青山にある隈研吾のオフィスを訪ね、2020年までの準備期間とその先の未来に、彼がどのような東京の発展を期待しているか、聞いてきた。 ーあなたのオリンピックスタジアムが今後何十年も東京のシンボルとなる可能性について、どう感じていますか? 僕はスタジアムそのものよりも、周囲の緑との融合がシンボルらしいものになるのではないかと見ています。すぐそばを取り囲む明治神宮と新宿御苑もあわせて、周囲に広がる自然の緑のつながりの中心にスタジアムを据えています。  ー今回のスタジアムとその周囲の環境にどのようなメッセージを込めようとしていますか? 伝統的なことを言えば、日本の建築は単体で目立つ建築物を造ることを目指してはいません。その代わり、建物と周辺の自然などといった関係が強調されます。今回のスタジアムでは木材が使用されており、全体の調和という点で自然と木が取り入れられていますし、地上から見上げたときも見る人を圧倒するような印象を与えないように意図して設計されています。こうすることでもう一度、日本建築のこうした要素を世界中の人に知ってもらう役に立てればと考えています。 ー建築家の目を通して見て、東京の未来についてどのような考えを持っていますか? 世界の都市が国際競争を繰り広げる時代では、東京は巨大な建築物で競い合おうとする考えを捨てるべきだと僕は思います。そのやり方では僕たちは勝てません。僕たちの強みはもっとほかのところにあります。緑があふれ、人に優しい通りです。そびえ立つど派手な高層ビルではありません。  ー住民に優しい建築、ほかの言葉に言い換えると? そうですね……世界中の都市が、たとえば中国の胡同や東南アジアの路地のような、類似する狭い路地の文化を持っています。しかし、東京の家庭的で、通る人を快く迎え入れるような心地よい裏通りはほかに類を見ないもので、保護してもっと広めるべきものです。  ーほかに2017年に向けて楽しみにしている、東京で進行中のプロジェクトは? 現在進めている日本橋三越本店の改装の一部が2017年に完了します。僕は古い建物のリノベーションが大好きで、三越は子どものころに深い感銘を受けた記憶があります。昔の百貨店はとてもきらびやかで、そこにあるあらゆるものからオーラが放たれていました。かつての壮観さが修復されたところを見られれば嬉しいです。 ーでは、新しいショッピングモールはあまりおもしろくないと……。 新しい建築物は世界中どこでも似通った見た目になる傾向があります。グローバル化によって好みがまとまってしまい、世界中どこに行っても複合商業施設のなかに同じブランド、ときには同じレストランでさえも存在するようになりました。これは明らかに退屈です。だから街に深い関心を寄せる人々は代わりに古いものに引きつけられます。ある意味では、代わりに建てられた新しい建築物にはない、こういった力が三越のような建物にはあるわけです。 伝統を

インタビュー:日比野克彦
アート

インタビュー:日比野克彦

2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック。東京都は、2020年に向けて東京の魅力を高めるための文化事業を推進している。そのリーディングプロジェクトとして、野田秀樹が監修を務める『東京キャラバン』とともに進行しているプロジェクトが、いわゆる「障害者」など多種多様な人がアートを通じてつながる可能性に焦点を当てた『TURN(ターン)』だ。監修を手がけるアーティスト、日比野克彦に話を聞いた。

インタビュー:ソフィ・エブラード
アート

インタビュー:ソフィ・エブラード

ソフィ・エブラード(Sophie Ebrard)は1976年フランス生まれ。広告業界で10年のキャリアを積んだ後、写真家へと転身。ポルノ作品のディレクター、ガズマン(Gazzman)との出会いをきっかけに、4年間にわたり世界中の撮影現場を撮りおさめた作品『It’s Just Love』をアムステルダムの自宅を展覧会場に発表した。 同作を『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2017』のサテライトエキシビション『KG+』のプログラムのひとつとして、日本で初公開。本展は、けしていやらしいものではなく、詩的なストーリーさえも垣間見える作品として昇華されている。待ち合わせの場所に現れた彼女は、印象的な赤いリップと明るい笑顔で日本での展示について、彼女なりのポルノを撮るということについて、インタビューに答えてくれた。

インタビュー:ライアン・マッギンレー
アート

インタビュー:ライアン・マッギンレー

写真家、ライアン・マッギンレー。特に写真に興味がないという人も、彼の名前は聞いたことがあるという人は多いのではないだろうか。スケーター少年だったその人は、周りの友人たちとの日々をありのままに写真で記録し、カメラを手に夜な夜なパーティへと繰り出していた。ニューヨークのストリートカルチャーが色濃く写し出された彼のドキュメンタリー作品は、史上最年少でホイットニー美術館での個展を実現し、スターダムへと導いていく。 それから9年が経った今秋、東京でマッギンレーの個展が2つ同時に行われることとなった。近年は、圧倒的な世界観を放つステージング写真の数々を発表。広告やファッションのコミッションワークを同時に手掛けながら、映像作品においてもその才能をいかんなく発揮している。まさに時代の寵児とも呼べるアーティストだが、インタビューに現れた本人は過密なスケジュールからの疲れも見せず、とても気さくに、すべての質問に対して丁寧に答えてくれた。彼のアシスタントがテーブルに置いたCanon 5Dをしきりに気にしていたので、インタビュー終了後に気になって聞いてみると、四六時中どこへ行くにも動画で記録をしているそうだ。「まとめて作品にするつもりだから、そのうちどこかで目にすると思うよ」。作品のスタイルが変化せよ、そのアーティストの根底にある揺るぎないものを垣間みた気がした。

インタビュー:楳図かずお
アート

インタビュー:楳図かずお

恐怖漫画からギャグ漫画まで、つねに新しい表現方法を築き上げ、「グワシ!」といった強烈なパンチラインを持つキャラクター“まことちゃん”などを生み出してきた楳図かずおは、間違いなく日本が誇る巨匠の一人。彼のリミットレスで自由な右脳は漫画だけに納まることはなく、音楽からタレント業まで、つねに日本のメディアを刺激し続けるBUZZとして最重要視され続けてている存在である。 1975年にリリースされた、楳図かずお初のソロアルバム『闇のアルバム』は“ミュージシャン楳図かずお”の存在を示した一枚であったが、2005年に画業50周年記念として紙ジャケット版でこの作品が再リリースされた事実はファンだけでなく日本のカルチャーシーンにおける一つの事件であり、さらに新たなコアなファン層が誕生した瞬間でもあった。1970年代から80年代にかけて、バンド『スーパー★ポリス』を組んでツアーまで行っていた楳図であるが、ファーストアルバム『闇のアルバム』に納められた、バンド名と同じ題名の曲『スーパー★ポリス』は、既に楽曲として高純度に結晶化されたマスターピースであり、滑り落ちるような高速なシンセロックのポップなフローは聴く人をヤミツキにしていた。まさにNHKの音楽番組で、銀色ラメのピッタリパンツに銀のロンドンブーツというド派手な格好で「ビチグソ・ロック」を歌っていた楳図全盛期の強烈な姿が脳裏に蘇るような一枚として、時代を超えて多くのファンのハートをわしづかみ。それが今から5年前の話であった…。 そんな楳図が、なんと『闇のアルバム2』の製作に入っているという。これに先立ち7月27日(水)には楳図かずおのシングル「新宿烏」もリリースされる。『闇のアルバム2』は、ある意味2011年のベスト盤になることが運命付けられたような、そんな匂いさえ感じさせられる作品だ。 ちょうどレコーディングが始まったばかりの楳図に、ほんの少しだけ時間を割いてもらい、過去の名作から最新作の話まで時間の許す限りインタビューを敢行。最後にはお気に入りのレストラン情報まで聞いてしまった。美味しそうに真っ赤なトマトジュースを飲む先生を前に、興奮を抑えきれず前のめりになりながらホットシート・インタビューが始まった…。グワシ! ついにあの『闇のアルバム』のセカンドがリリースされますね…! 楳図:最近、わりとライブをやってるもんだから、目を付けていただいたんですね。それで作ることが決まりました。今回は聴かせる歌も多いですが、色々なパターンがあります。演歌もタンゴもプログレもありますし、童謡のような曲もあります。8月31日(水)にアルバムが発売になります。8月11日(木)にはタワーレコード新宿店、8月27日(土)にはアニメイト横浜、9月に大阪でもリリース記念ライブをやります。 前回の『闇のアルバム』は、ジャケットアートが女の子のイラストでしたが、今回は? 楳図:今回も可愛らしく、女の子のイラストでいこうと思っています。前回のイラストは作品『洗礼』からのイラストでしたが、今回は最近起きている出来事も意味しているような一枚にしようと思っています。キャラクターがいて、花が背景いっぱいにあるんですけど、殺伐とした風景で…。 歌詞の世界が深いですよね。今回もこだわっているんでしょうか? 楳図:ドラマやストーリーがある歌詞から出発することが多いんです。歌詞も曲もどっちもストーリーがないといけないと思うんですよ。最初は詞を作り、それにあわせて曲を作ることが多いです。 先生の歌い方は独特ですが、どなたかに影響を受けていますか

Tokyo Insider

Tokyo Insider #14 食品まつり
Things to do

Tokyo Insider #14 食品まつり

今回は、名古屋出身のトラックメイカーの食品まつりが登場。 食品まつりは、2012年にニューヨークの先鋭的なレーベルOrange Milkから発表したデビュー作『Shokuhin』以降、アルバム『Ez minzoku』(2016年)『Aru otoko no densetsu』(2018年)などのほか、EPも多数リリースしている。国内でのカルト的な人気はもとより、『Boiler Room』『Low End Theory』への出演など、海外での評価も非常に高いアーティストだ。 無類のサウナ好きとしての彼の一面は、先日掲載されたインタビュー『サウナと創作』でも語られているが、ここでは彼が東京で行きつけにしている店を紹介する。

Tokyo Insider #13 newsynco
ナイトライフ

Tokyo Insider #13 newsynco

今回は、イギリス人アーティストのnewsyncoが登場。 newsyncoは、現在ロンドンの服飾大学に通い、音楽活動もする20歳のアーティストだ。ポップ、オルタナティブロック、映画音楽、グラム、テクノなどさまざまなスタイルから影響を受けたジャンルにとらわれない音楽を発表している。 

Tokyo Insider #12 RYUZO
音楽

Tokyo Insider #12 RYUZO

今回は、京都出身のラッパーでプロデューサーのRYUZO(リュウゾウ)が登場。渋谷の行きつけを案内。

Tokyo Insider #11 青山礼満
Things to do

Tokyo Insider #11 青山礼満

下北沢のディープなミニガイド。

東京、定番の美術館

東京国立近代美術館
アート

東京国立近代美術館

皇居の横に建つ日本で最初の国立美術館は、20世紀の始まり以降の日本美術を集めたもう1つのMoMA。企画展もさることながら常設展も充実している。横山大観や上村松園など13の重要文化財を含む12000点を超える国内屈指のコレクションから約200点を入れ替え展示している。建物は1969年に谷口吉郎により設計され、2002年に増築、改築が行われた。皇居の堀と石垣の横にあるので、春には花見、秋には紅葉を楽しむのに最高の場所。東京駅からの、皇居を見ながら同館へいたる散策ルートもおすすめだ。

東京都現代美術館
アート

東京都現代美術館

絵画、彫刻、ファッション、建築、デザインなど幅広く現代美術を紹介、展示する美術館。2019年3月末、約3年の大規模改修工事を終えてリニューアルオープン。併設する美術図書室に子ども向けのライブラリーを備えたり、一新された飲食店で季節に応じた離乳食を提供するなど、より親子で楽しめる施設へと生まれ変わった。 国内外から集められた5400点ものコレクションは今でも好評だが、ここに多くの人々を呼び寄せるのは、魅力的な企画展の数々だろう。また、美術関連図書資料27万冊を誇る美術図書室を備えており、充実した映像ライブラリー、雑誌やカタログのコレクションも見逃せない。

森美術館
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森美術館

森美術館の成功の秘密は、並はずれた人気を博している六本木ヒルズの中に位置し、森タワーの53階にあること。52階の展望台 東京シティビューもあわせて訪れれば、バーやカフェ、パノラマ式のデッキからのすばらしい眺望も楽しめる。夜遅くまで開いているので、ますます足を運びやすい。展覧会は意図的に変化をつけてあり、過去の催しにはビル・ヴィオラのビデオアートや現代芸術におけるユーモアを巡る展覧会もあった。東京シティビューからの眺めは厳密にいうと360度ではないし、東京都庁舎の無料の展望台に比較すると高価ではあるが、とにかく眺望はほぼ間違いなくこちらのの方がすばらしい。 特集記事 東京でしかできない88のこと 六本木でしかできない101のこと

三鷹の森ジブリ美術館
アート

三鷹の森ジブリ美術館

『となりのトトロ』、『もののけ姫』、『千と千尋の神隠し』など、日本で最も人気のあるアニメーション作品を生み出してきた、宮崎駿が館主を務める三鷹の森ジブリ美術館。トトロが出迎えてくれる入口や、屋上には佇む巨神兵などジブリの世界を楽しめる。また、ミニシアターが館内にあり短編アニメーションが上映されている。2016年5月から、オープン以来初の長期休館が決定。期間中には、展示物などをほぼすべて撤去し、大規模なリニューアルを行うようだ。 関連記事『東京でしかできない88のこと』

アーティゾン美術館
アート

アーティゾン美術館

1952年に開館したブリヂストン美術館が、改称して2020年に開館。故・石橋正二郎が収集した作品をコレクションの母体としている。 ルノワールやコローといったヨーロッパの絵画のほかに、雪舟や青木繁といった日本美術史上重要な作品も収蔵。新築された建物は、横15メートルの継ぎ目のない展示用ガラスケースなどが特徴だ。

すみだ北斎美術館
アート

すみだ北斎美術館

※2016年11月22日オープン 生涯のほとんどを墨田区で過ごした江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎に関する美術館。葛飾北斎が残した名作の展示はもちろん、常設展示室では、北斎の生涯に沿って人物像や「すみだ」との繋がりを紹介する。作品だけではなく、門人の露木為一が残した絵をもとに忠実に再現した北斎のアトリエを再現したスペースなども設けらている。 関連記事『幻の肉筆画を公開、すみだ北斎美術館がオープン』 特集記事 『両国、ご近所ガイド』

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連載:東京を創訳する

東京を創訳する 第24回
Things to do

東京を創訳する 第24回

旅行のひとつの楽しみは、その土地の人との思い出深い交流である。ちょっとした買い物で店員としたやりとりや、食べ物屋で隣り合った地元の人との会話など、旧跡を訪ねた感動とは違うものがある。しかし、そうした普通の人との交流はできても、パリやニューヨークに行って、そこの「セレブ」やその生活を「観光」するのは難しい。それは無理に近い。でも、ロンドンでバッキンガム宮殿に行ったりするのは、その建物を見るためだけでなく、エリザベス女王が現れないとしても、宮殿の上に王室旗がはためいていれば陛下がそこにいるのだな、といった興味が湧くからだろう。 東京を訪れる外国人旅行者は、東京ではそうした「上流」の人とはどんな人で、どこにいて、何をしてるのだろう、とは考えないだろうか?他方、「普通の日本人」は東京の盛り場で何をしているのかと思ったりしないか?そう考えて、今回からは、観光では会えないような東京の上流や、「下流」というよりは庶民の人たちがどこで何をしているのかを半年ほどシリーズで書いてみる。 実は、この「High Life - Low Life」というのは、イギリスの雑誌コラムからのパクリである。1990年代は、High Lifeは上流階級出身のTakiという人が、Low Lifeの方は、ロンドンで有名な酔っ払いのエッセイスト、ジェフリー・バーナードという人が書いて人気を集めていた。僕自身はもちろん上流階級ではなく、盛り場に詳しかったりしているわけでもまったくないが、多少、今までに見知ったことを書こう。まずは上流から。 欧米に行くと上流の人たちというのが確かにいる。アメリカの古い大金持ちや、大統領の係累(けいるい)。ヨーロッパだったら貴族という階層があって、城に住んでいたりする。では、それにあたる人々とは日本、特に東京では誰なのか。答えは簡単。東京のど真ん中、広大な皇居に住んでらっしゃる天皇とそのご一家だ。ほかにも、皇居からそう遠くない繁華街の赤坂に「御所」という広い敷地があって、天皇の男系親族の数家族が「宮家」(prince)として住んでらっしゃる。そのあたりのことは英国のロンドン、タイのバンコクの王族の事情と変わらない。ただ、日本の社会で「上流階級」、というと何か外国とはニュアンスが違う。天皇や皇族は「階級」ではない、というか、ある意味で、もっと飛び抜けているというか。そのあたりの理屈も追々書くことにする。 天皇、皇族とその生活はこのタイムアウト東京のテーマになるのか。ぶっちゃけていえば、「天皇」は「観光」の対象になるのか?(日本人の読者にはやや無礼な、と気になる人もあろうが、今後このシリーズでは許してほしい)もちろんなる。好奇心と興味の湧く文物はすべて観光の対象だ。まず、天皇と会うことはできなくても拝見するチャンスはある。毎年2回、天皇誕生日(12月23日)と、1月2日には、皇居で一般参賀という機会があって、天皇ご一家がみなの前に姿を現すのだ。正月などは、毎年数十万人が集まるところを見ると、少なくとも日本人にとってこれは、一種の「観光」だろう。 ご一家は見られなくても皇居だったらいつもそこにある。日本一大きな城だから見応えはある。ただその皇居も、元はといえば天皇の「御所」ではなく、将軍であった徳川家の御城だった。天皇代々の御所は京都にある。最近のことだが、いまの皇居に天守閣を建てて観光の目玉にしようという案が出て、国会で議論にすらなった。その

東京を創訳する 第23回『初夏』
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東京を創訳する 第23回『初夏』

東京を訪れるベストシーズンは、5月から6月の初夏である。その理由は3つある。 第1に、気温は高いが盛夏の35度といった暑さではなく、風が吹けば心地良い、夜は時に肌寒くなるくらいの、温帯の夏である。旅行の装いも軽くなるし、身が軽ければ心も軽くなる。 第2に、昼間が長い。何十年もサマータイムの導入が叫ばれているがなかなか実現しない日本で、昼間(daytime)でもなく夜(night)でもない、宵(evening)の美しさと心地良さを味わえるのは、この時期だけである。灯刻となり、さて今から何を食べよう、どこに飲みに行こう、と考えるのは旅の大きな楽しみだが、初夏はそれをゆっくり算段することができる。夜が長いのだ。 第3が、意外に気づかれないのだが、旅行に最適なのに、その割にはすいている。4月は桜の狂想曲で、外からの旅行者よりもまず日本人が浮き足立っていて、どこに行っても混むし、気ぜわしい。桜に興味のある外国人旅行者だったらよいが、日本人の浮かれ具合に巻き込まれ、スケジュールが立てにくいのはやっかいだ。その桜が終わっても、4月末から5月第1週のゴールデンウィークという旅行シーズンが来る。この時期は、外国からの旅行者にとっては、興味深い行事や催しものがある訳ではない。ただ列車やホテルが取りにくくなるだけだから、避けた方がよい。ゴールデンウィークが終わると、気温が高くてもあまり蒸さない、心地よき初夏が来る。この時期に日本を旅する楽しさを逃がす手はない。最近北米の旅先で聞いた話だが、日本に来て2週間くらいサイクリングをする、というツアーがあるようだ。少しハイエンドな感じだが、東京のホテルに集合し、飛行機で出発地点に向かう。自転車とそのガイドさんが待っており、サイクリング旅行が始まる。私の聞いた場所は、能登半島と瀬戸内である。その行程に老舗旅館や、美術館が組み入れられていて、元気で好奇心の旺盛なシニアにうってつけだろう。ゴルフもこの時期にプレーするのが最高だ。日本のゴルフ場は、その数が飽和状態にあることからさまざまな工夫がなされているところも多く、ハワイでのゴルフとは違った味わいのゴルフ旅行ができるだろう。 さて、話の焦点を東京に合わせると、私の初夏の好みは、ショウブと大相撲である。ショウブは堀切菖蒲園など名園が沢山あるようだが、それはタイムアウト東京でチェックするとして、個人的には明治神宮御苑が好きだ。6月の開花の時期をうまく見計らうと、鳥居をくぐって進む参道は木々の深い緑が美しく、小道に入ってからしばらくして、ふと現れる菖蒲園は、見渡す限り濃紺から白までさまざまな色が彩なす、大輪の花が満開となっているだろう。この時ばかりは薄曇りくらいがよく、雨が降っていたらそれはむしろ好都合、興を添える。その点は風と雨が大敵の桜と違って、水と縁あるショウブならではの持ち味かも知れない。 大相撲は行けばすぐに見られるものではない。東京の夏場所は、5月の15日間と限定されて、そもそもチケットが取りにくく、外国から訪れる観光客には難しい見物であろう。しかし、そう諦めたものでもない。両国の国技館に行くと、やってくる力士、「場所入り」をする相撲取りの姿を見ることができる。そのため国技館の周りには、ファンがたくさん群がっている。番付の下の方にいる若いのから、次第にランクが上の力士が現れ、最後は横綱である。そこに何時間もいるわけにもいかないので、小一時間くらいの見物を勧めるが、相撲取りは見ると聞くとでは大違いだ。単なる肥満の人とは大違いである。その若くはち切れた大きな姿を見るだけでも

東京を創訳する 第22回『早春 - 花見』
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東京を創訳する 第22回『早春 - 花見』

「4月は残酷な季節」とは、イギリスの詩の有名な一節だが、文学的解釈は別にして、まずはイギリスの天気の不安定さを言っているに違いない、と思う。4月、うららかな日差しに家庭菜園の手入れを始めると、突如黒雲が湧き、霰(あられ)が降ってくる。あの激変は手が付けられない。東京の3月も似たところがある。3月の初めはまだ、雪が降ったり、厳冬の気温となったりするのに、月末には桜が咲いて、浮かれ気分になる。その一月の変化の大きさは一年の中で最も激しい。 花の薫りは、まずは2月に梅が届けてくれるが、そこから冬が居座る。一体いつ春が、と思うと突然、「春一番」という名の暖かい風が吹いて、冬の縛(いまし)めがほどけだす。そうすると、3月には、地球上で日本列島だけの気候現象、「桜前線」が南から上がってくる。桜が開花した土地を線で結ぶ前線だ。世界にどんな大ニュースがあっても、NHKのトップニュースはどこそこで桜が開花した、という桜便りである。そんなことでいいのか、もっと大事な問題があるだろう、と思う向きもあろうが、3月半ばを過ぎれば、もはや「桜」にかなう話題は無い。 昔からそうか、といえば、4、50年前はそんなでもなかった。全共闘という古風な運動をしているとき、花見をしようと言い出したりする僕は「右翼」と批判された。戦前、桜のぱっと散るところが軍人の潔さの比喩になったりしたからだ。今はそうした政治的反省など気にすることなく、いつでもどこでも、桜を愛でない人は日本人でないと思われる。常にあまのじゃくな僕は、そういう押しつけは全体主義的だと感じて、いまでは桜の話題をいぶかしく思っているのだが、ここでは素直になって、東京の花見はどこがいいか、という定番の話題に進もう。 どこがいい?いや、そんなことは僕が書くまでも無く、テレビや雑誌、新聞で特集が組まれている。そこを参考にした方が良い。それほど、桜フィーバーは、現代の日本に定着している。しかし言っておくが、半世紀昔の若い頃、市ヶ谷の土手伝いで桜吹雪の下を歩いたりしても、同好の鑑賞者とすれ違ったりしなかった。みな先を急いでいた。「桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている!」も、あまりに有名な文学的一節(梶井基次郎『桜の樹の下には』)だが、屍体でなくても「馬糞」は桜によく効くらしい。生まれた家の近くにある世田谷の馬事公苑に行くのは僕の年中行事で、そこに咲く重たいほどの花の下枝に感激したりしたが、誘う相手はあまりいなかった。 学校というものはどこでも桜の名所になるが、特に何も埋まってなくても、桜はすごい。たとえば、僕の元の職場の東大駒場キャンパスも、グラウンドを囲む土手に見事な桜並木がある。そこで、大学に勤め出した1980年代に、僕がゼミ生を誘って花見をしたのだが、夕暮れは予想より寒く、段ボールで囲いをしながら持ち込みのおでんを震えながら食べるはめになった。そう、実は桜が花開く頃は、まだまだ寒いのだ。花が咲いていて豪奢(ごうしゃ)なもんだから、つい暖かいと誤解をするのだ。地方のお城の花見など、桜の花冠の下で売られている定番はおでんだ。そこで、花見は寒いからやめた方が良いとまで言わないが、寒さには十分注意をするように、とガイドをしておく。酒盛りに参加するときはコートを忘れず、幹事は地面に敷くものの断熱に留意されたい。 などと、桜について書いていると、つい興奮をする。何しろ、最初に生まれた子に「桜

東京を創訳する 第21回 「初春 - 日本が一番日本の日」
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東京を創訳する 第21回 「初春 - 日本が一番日本の日」

1月1日は、1年の内で東京が一番、日本らしくなる日である。 始まりは、前日の大みそかからだ。12月31日は正月の準備に一家は集まり、年越し蕎麦を食べ、みなで延々、4時間半の歌番組、NHK『紅白歌合戦』を見る。この50組近くの歌手が集まる騒がしい番組が23時45分『蛍の光』の大合唱で終わると、突如、テレビからは静寂の中、「ゴーン」とお寺の鐘の音が響いてきて、次の番組『行く年来る年』となる。日本のどこか、暗い中に雪が白く輝く寺社の参道に、人々が無言で集まって来ている。東京の私たちは、「寒そうだね」と心でつぶやきながら、1年の終わり、大晦日の24時を待つ…。 ただし、必ずしもこうとは限らない。人によっては大晦日に恒例の格闘技やカウントダウンコンサートに出かけたり、家にいても部屋で片付けものをしたり、テレビを見るとしてもほかの番組にチャンネルを合わせたり、そもそも団らんには加わらず、借りためてあった連続ドラマのDVDを長時間見続けたりしている。そんな人もたくさんいる。 しかし、そういった人も、「今夜は世間では、定番の紅白と、その後のかったるい番組を見ているんだろうな」と思ったりする。そのくらい12月31日の夜は、典型的な「日本らしい」日なのである。おそらく、2、30パーセントの東京人は、いま書いた通りのことを、そっくりそのまましている。 西洋のクリスマスが家族行事であることと同じである。ただ、日本の正月は、12月28日には仕事を終えて、元旦、1月1日の後、3日まで、同じようなおせち料理の日々が続き、それに飽きた頃にやっと4日の仕事始めとなる。 では、日本人は元旦に何をするのか。朝、みなで集まって「明けましておめでとう」と言い合い、「おせち料理」を食べる。これだけ。この「おせち」は、まさに「The 日本」の食べものである。日本人だって普段は食べない日本料理を食べる。食べるどころか、正月以外は見ることすらない奇妙な「ちょろぎ」という食材も出てくる。みな、作り置きのコールドディッシュであるが、雑煮だけは温かいスープである。なかには青菜とニンジンと、そして餅が入っている。スープがおすましか味噌仕立てか、餅が丸いか角なのかは地域によって異なる。東京はおすましに角もち。異なる地方の人同士が夫婦となると、この相違は、結婚生活を脅かしはしないが、彩を添える論争の種となる。 ただしこのおせち料理、どこかのレストランで食べようとすると、普段のメニューにはない。サンクスギビングの七面鳥料理がレストランのメニューではないように。正月の三が日にホテルに泊まったりすると、ホテルの催し物の中で食べられたりするかもしれないが。 ということで、元旦に東京を訪れた旅行客は、人通りの少ない東京の街を変だなと思ったら、日本人はみな、家の中でそんなことをしているのだ、と納得すればよい。街の店はみな閉まり、レストランで営業をしているところも少ないのだ。 では、そうやって、正月は何もしないのかといえば、1つだけ「日本人の義務」がある。初詣である。『行く年来る年』で、凍てつく深夜、黙々と人々が集まっていたのはその「初詣」に向かう光景なのである。東京でも、正月の三が日、あるいはその1週間くらいは、寺社に、昨年の感謝と今年の幸せを願って、出かけていく。それは半端ではない数である。毎年、東京の明治神宮と浅草寺には、それぞれ300万人が集まる。ほかにも中小の寺や神社は数限りなくあるから、1000万人ほどの東京人は、計算上ほとんど全員、1つあるいは2つくらいの初詣を済ませることになる。 では、正月に日本

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