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今年も夏がやってくる。本稿執筆時点において、すでに都内の最高気温は30度を優に超えており、これからまたあの蒸し暑さが到来するのかと思うとウンザリを通り越してゲッソリであるが、とはいえスペシャルな季節である。未来への予感とノスタルジーが混じり合うあの特別な気分は、夏の光と太陽がなければ生まれ得ないのだ。
そして我が国の夏はどういうわけか、アニメーション映画がぴったりハマる。スタジオジブリが巧妙な戦略によって「夏はジブリ」という図式を定着させてから幾星霜、この時期にアニメーション作品を鑑賞する行為は、花火大会や夏祭りにも似た、ちょっとしたイベントの一つとなった。
本稿ではこの夏にぜひ観ておきたいアニメ映画のリバイバル上映作を紹介する。
『ラブライブ!サンシャイン!! The School Idol Movie Over the Rainbow』

2019年に公開され、興行収入13億円という大ヒットを飛ばした劇場版『ラブライブ!サンシャイン!!』が4DXとして復活する。
スクールアイドルの全国大会「ラブライブ!」で優勝を果たした9人組グループAqoursが、沼津とイタリアを舞台に歌ったり踊ったりして、挫折しながらも成長してゆくという青春大河ミュージカル映画だ。
はっきり言って詰め込みすぎな上にあまりにも御都合主義だし、とにかくツッコミどころ満載なのだが、怒涛の勢いで押し切る脅威的なドライブ感は唯一無二にして痛快。
3DCGを駆使したライヴシーンのダイナミックな空間表現がすばらしい。そしてやはり「Believe again」は名曲。考えるな、肌で掴め!
7月4日(金)から「ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場」「グランドシネマサンシャイン池袋」など全国の劇場で2週間限定上映
『劇場版カードキャプターさくら 封印されたカード』
言わずと知れた超名作『カードキャプターさくら』の劇場版第2作が、公開25周年を記念して再上映。TVシリーズのその後を描いた作品であり、さくらと小狼の恋路の行方が巧妙なストーリーテリングによって進行する。セル画アニメの集大成ともいわれる作品であり、恥ずかしくなるほどピュアな恋愛模様と、なかなかにエグい戦闘場面が、超絶作画によって実に丹念に活写されている。
「個人」を取るか「世界」を取るかを迫られる、いかにもアーリー2000年代的な感覚も、いま観るとかなりノスタルジー。登場人物が全員良い子すぎるのでそれだけで泣いてしまう。
入場者特典として第1週はイラストカード、それ以降はミニ色紙が配布されるとのこと。絶対にほしい。
7月11日(金)から「新宿ピカデリー」「アップリンク吉祥寺」など全国の劇場で上映
『海がきこえる』

シティポップ リバイバルによって近年再評価を受けた、「ジャパニーズ エモ」の金字塔だ。
大学進学を機に上京してきた青年・拓が、吉祥寺駅のホームで初恋相手の里伽子にそっくりな女性を見かけ、過ぎ去りし日々を振り返る……。というトレンディかつセンチ極まりない作品で、とにかく全編エモエモにエモい。付き合いそうで付き合わないトキメキに満ちたモヤモヤや思春期のちょっとした背伸び、夏の熱気がたちこめる中央線の空気感、地方民から見た東京の雰囲気などなど、肌感覚に訴えかける演出がとにかくすばらしい。
「夏なんて暑いだけじゃん」という夏アンチの諸君も、本作を劇場で観終わって外に出たとき、少しだけ夏を好きになれるかもしれない。
7月4日(金)から「新文芸坐」「新宿ピカデリー」など全国の劇場で3週間限定上映
『この世界の片隅に』

1944年、海軍の街・呉に嫁いできた18歳の女性・すずの視線をとおして、第二次世界大戦下における銃後の暮らしを活写したエポックメーキングな超傑作だ。
物資が無い中でも工夫をこらし、明るく前向きに生きようと試みる人々の日常を優しくユーモラスに、そしてそのささやかな暮らしを蹂躙(じゅうりん)し破壊する戦火の恐ろしさを、水彩画のような筆致で丹念に描く。
日々の生活の中で起こる笑いや恋情を丁寧にまなざした非ドラマチックな構成だからこそ際立つ、戦争の理不尽かつ圧倒的な暴力性。ものすごく笑えるシーンがたくさんあるのに、ものすごく切なくて悲しい、とにかくものすごい映画である。
未見も100回観たという人もこの機会に劇場で鑑賞してほしい。NO WAR!!!!!!!!!!!
8月1日(金)から「109シネマズ プレミアム新宿」「ユーロスペース」など全国の劇場で期間限定上映
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