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渋谷の「頭バー」が8月に馬込へ移転、時間帯に応じた音と食が楽しめる場へ

16年の歴史を経てより日常に近い空間で再出発

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Hanako Suga
頭バー zubar
Photo: Yuki Nakamura | 頭バー zubar
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渋谷駅南口すぐの路地裏で独自の存在感を放ってきたDJバー「頭バー(BAR)」が、2025年8月いっぱいで閉店し、大田区馬込エリアへ移転する。新店舗は9月中のオープンを予定。10時から夜まで営業し、ブランチやランチ、カフェ、リスニングバーといった多目的な使い方のできる、より自由な空間として再スタートを切る。

頭バーは、2025年で16周年を迎えた。「家賃の高騰によって演者やスタッフにも負担がかかり、やりたいことを諦めなければならない状況がつらくなりました」と語るのは、オーナーの木村健治だ。経済的な制限で自由な表現が阻まれることに限界を感じ、移転を決断したという。

頭バー zubar
Photo: Yuki Nakamura頭バー zubar

頭バーは当初、恵比寿と渋谷の中間にあった一戸建ての店舗だったが、2018年に現在の渋谷・南口エリアへ移転。ノイズから歌謡曲、ヒップホップ、四つ打ち系までを横断する多様な音楽が鳴り響く、アンダーグラウンド色の濃いヴェニューとして知られてきた。

頭バー
Kisa Toyoshima恵比寿時代の頭バー

恵比寿時代にはイギリスのダブ界のレジェンド、エイドリアン・シャーウッド(Adrian Sherwood)やDJ SPINNAがサプライズでプレイしたことに加え、2階の畳部屋でローラン・ガルニエ(Laurent Garnier)がゆったり過ごしていた、というエピソードも残る。

頭バー
Photo: Kisa Toyoshima恵比寿時代の頭バー

レギュラーイベントも幅広く、毎週水曜日の「妖怪倶楽部」では、ラッパーたちが自由にフリースタイルを披露。長年続く「AOP」は、テクノやハウスだけでなく、ノイズやヒップホップ、レゲエ、ガバ、ジュークのアーティストなど、過去に100組以上のゲストが参加した看板パーティーだ。

そのほか、詩の朗読会や初心者向けDJ体験会など、日替わりで全く異なる顔を見せてきた。

新しい頭バーが誕生する馬込は、都営浅草線の「馬込駅」や「中延駅」、東急大井町線の「荏原町駅」などが徒歩圏。個人商店が残る下町的な空気が漂い、都会ではすでに失われた風景が広がる地域でもある。「場所が不便だと言われても、通う人は通う」と木村は語る。

新店舗では、音量制限のある住宅地という条件を逆手にとって、アコースティックライブや少人数のイベントなど、昼間からゆっくりできる企画を予定。ブッキングも個人単位が中心となりそうだ。

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Photo: Yuki Nakamura頭バーの魯肉飯

定評のあった食事メニューに引き続き力を入れ、台湾人スタッフがいた時代から人気の「魯肉飯(ルーローファン)」や「水餃子」をはじめ、モーニングプレートやカレー、手作り菓子など、時間帯に応じた音と食が楽しめる場を目指す。

 木村は頭バーでの16年間を振り返り、「音楽愛にあふれる人々との出会いに数多く恵まれたことが最高の思い出ですね」と話す。その根底には、「ジャンルやキャリア、テクニックに縛られず、音楽を愛する全ての人が、DJという手段を通して自由に自己表現できるべきである」という一貫した思想もある。

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Photo: Kisa Toyoshima恵比寿時代の頭バー

「人が平等であるなら、DJもまた平等に扱われるべき。有名無名、ベテラン初心者、巧拙を問わず、私たちは誰のプレイもジャッジしません。」音楽への愛から生まれたその信念の下、頭バーが新たな出会いと表現の場を育んでいくことに期待したい。

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