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代官山駅のほど近く、恵比寿駅や中目黒駅からも歩いて10分かからない鎗ヶ崎交差点に2025年5月31日、新たなクラブ「オード(ORD.)」がオープンした。ミュージックラバーには、「代官山ユニット(UNIT)」「サルーン(SALOON)」と同じビルの2階といえば分かりやすいかもしれない。
オードは、「恵比寿バチカ(Batica)」、「中目黒ソルファ(solfa)」、そして下北沢「カウンタークラブ(COUNTER CLUB)」の姉妹店。店名は、「Ordinary(日常)」の頭3文字から名付けた。「誰もが自分自身を表現できる場所」「表現することが日常となる場所」をコンセプトに、「日常的に訪れてほしい」「アーティストにとっては出演することを日常的に考えてほしい」という願いも込めている。

大きな窓が特徴の非日常感あふれる「ラウンジフロア」
同店は、バチカやソルファと同じく2フロア構成。エントランスを抜けると、まず約100人ほどのキャパシティーの「ラウンジフロア」が現れる。なにより印象的なのは、旧山手通りを見渡せる大きな窓。開放感あふれる空間は、クラブにあまり足を運んだことがない人でも過ごしやすいだろう。窓に沿ってソファも置かれていて、踊り疲れても安心できる。

カウンタークラブを訪れたことのある人には想像しやすいが、バーカウンターの大理石のような設えに加えて、物販やケータリングにも使用できるブースが設置されているのも、どこか同所をほうふつとさせる。ラウンジフロアの横に「メインフロア」へとつながる入り口があるのだが、その近くに中の様子が分かるモニターが設置されているのは、バチカの1階のようだ。


取材時には、イベントに備えて、DJブースにターンテーブルとCDJがセッティングされていた。メインフロア、ラウンジフロアともに、スピーカーは「d&b」のものをインストール。コンパクトに見えても、オールジャンルに対応できるレンジの広さとパワフルさを兼ね備えている。

サブバーとDJブースが併設された「メインフロア」
メインフロアは、約150人ほどのキャパシティー。横長のステージは、バチカと同じくバンドでの生演奏にも対応する。客席の中央後方にはPAブースと、その前にはDJブース、さらに奥にはサブバーを併設。また、バチカでは出演者がステージに上がる際、客席を通るいわゆる「プロレス入場」だったが、オードではステージ後方に動線が用意されている。

メインフロアとラウンジフロア、どちらにも系列店のエッセンスを感じつつ、ブラッシュアップされている印象を受けた。2フロア合わせて約250人という収容人数も、約120人ほどの規模のバチカ、約150人ほどのソルファに出演していたアーティストにとって、「大箱」を目指す前段階のヴェニューとしてぴったりのサイズ感だろう。

曜日ごとのジャンル展開とフロア演出
流れる音楽は、ライブを含めてオールジャンル。水曜日は四つ打ち、木曜日はヒップホップやR&B、レゲエを軸とし、DJバーのようにラウンジのみで営業する。金・土曜日は、8月ごろからデイ・ナイトイベントの2回転にし、日曜日はデイイベントのみを開催予定だ。

ラウンジフロアで過ごしていると、シトラス系の爽やかな香りが漂ってきた。匂いの正体は、同店の内装も手がけている空間デザイナーたちによるフレグランスブランド「(SURROUND)」のアロマ。イベント開催時は、フロアごとに匂いを分けるそうだ。加えて、バーカウンターでは同ブランドによるロールオンタイプの香水を5種類(各2,900円、以下全て税込み)販売している。

ドリンクは、系列店と同じくビールや各種カクテルなどスタンダードなものを幅広く用意するほか、プレミアムテキーラ「クラセアスール」を初めて導入。グラスには店名がデザインされており、店舗のテーマカラーである「青」にちなんで注文したカクテル「チャイナブルー」がよく映える。

恵比寿バチカの移転計画から新店舗へ
「実はバチカを移転する計画から、この新店舗はスタートしたんです」と、同店とバチカの2店舗のマネジャーを務め、DJとしても活動するSILVERこと矢野龍一は語ってくれた。矢野の前の店長が、コロナ禍でかなわなかったバチカのリニューアル・規模拡大という目標。前店長の夢を引き継ぐ形で、めぼしい場所を数年かけて探し続けた。
いよいよ現在の場所が見つかった時、移転の計画はほとんど誰にも話したことはなかったにもかかわらず、複数の常連たちから「バチカの空間が好き」という話をされたことや、グループの代表から「新店舗にするか、移転にするかは任せる。自分は腹をくくっている」と言われたことで、バチカを残したまま新店舗としてオープンすると決断した。

現時点の集大成、そして新たなシーンが始まる予感
オードは、系列店で培ったノウハウの現時点での集大成であり、挑戦のヴェニューだ。だからこそ、新たな試みを計画しているという。
これまでもバチカとソルファをハシゴして遊ぶ人たちはいたが、公式に往来イベントを行ったことはなかった。両店舗の間に位置するオードができたことで、系列店の回遊イベントを開催するほか、同じビルのサルーンや近くの「デブリ(Débris)」、少し離れているが「サーカス トーキョー(CIRCUS Tokyo)」など、周辺のミュージックヴェニューと協同でイベントを行えたら、と今後の展望は明るい。
聞けば、オープンしてから毎日のように、サルーンのスタッフが遊びに訪れているそうだ。また、グランドオープンを記念した2日間のイベントのラインアップを見てみると、これまで系列店に出演してきたアーティストたちが多数出演していた。キャパシティーの問題で今まで開催できなかったイベントも、きっと単体でも、ほかのヴェニューとの共催でもできるだろう。

誕生したばかりだが、すでに愛されている同ヴェニューからは、新たなシーンが始まる予感がする。ぜひ訪れてみてほしい。
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