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東京の映画情報、映画館ガイド

フライング・ロータスが来日、グロテスクすぎる監督作品について語る
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フライング・ロータスが来日、グロテスクすぎる監督作品について語る

アメリカの音楽プロデューサーフライング・ロータス(Flying Lotus)がスティーブ(steve)名義で制作した初長編監督作品『KUSO』のジャパンプレミアが、8月16日に開催された。イベントには監督自身も登壇し、トークショーが行われた。 ミュージシャンであるフライング・ロータスによる映像作品が誕生したことは、予想外ではない。もともと、高校卒業後にロサンゼルス映画学校で勉強していた上に、2016年には映像作家エディ・アルカザールと組み、映像スタジオ「Brainfeeder Films」を立ち上げていたからだ。 映画『KUSO』より 映画『KUSO』は、巨大地震に見舞われた米ロサンゼルスを舞台に、奇病に侵された人々のストーリーが紡がれる。サイケデリックで、チープなB級映画のような雰囲気をもつ作品だ。それぞれの登場人物たちの物語が展開しては移り変わるという構造で、ひとつのアルバムを聞いているような感覚にもなる(劇中音楽にはフライング・ロータス、ジョージ・クリントン、エイフェックス・ツイン、山岡晃の楽曲が使用されている)。  映画『KUSO』より 本作についてフライング・ロータスは、「子どものころからラーメンやアニメなど、日本のカルチャーに親しんできた。20年くらい、日本の映画にインスパイアされてきたんだ。映画監督の三池崇史と塚本晋也、北野武は僕のヒーローだよ。本作で日本の映画からもらったインスピレーションへの恩返しができたかな」と日本への愛を明かした。 タイトルは、日本語の「糞」からつけられている。「アメリカで、KUSOって言ってもなんの問題もないだろうと思ってつけたんだ、日本だと問題になっちゃうんだけどね。自分にとってはいろんな意味がある言葉。映画ってそういうものでしょ? 観る人によっていろいろな受け取り方があっていい」。  映画『KUSO』より 次作の脚本に取りかかっていることも明かしたフライング・ロータス。「次の作品は、また違ったクレイジーな作品になるよ。すべて頭の中で起った出来事で、相当いっちゃってる感じ。『KUSO』で表現した僕の考えていることは、どういうものが狂ってるか、何を観たときに驚いたり怖いと思うのかということ。自分の中にあるユーモアを交えたダークジョークが現れている」と話した。 映画『KUSO』はシネクイントで8月18日(土)より1週間限定で上映される。 『フライング・ロータス初長編監督作品 KUSO』の詳細はこちら

おしゃれなカフェレストランがある映画館
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おしゃれなカフェレストランがある映画館

東京の映画館には、美味い料理が味わえるレストランが併設されたものも多い。ここでは、日替わりシェフの味が楽しめる店や、ミシュラン二つ星を獲得したことがあるフレンチレストランなど、映画を見るかどうかに関わらず訪れたい、落ち着ける店を紹介する。鑑賞後にゆっくり食事をしながら余韻に浸るのもよし、上映前に軽く食事を済ますのもいいだろう。

オーシャンズ8
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オーシャンズ8

クールぶった犯罪集団、円滑に行われる壮大な強盗計画、完璧な衣装。「オーシャンズ」シリーズの最新作では、その魅力をふんだんに楽しめる。監督のゲイリー・ロス(代表作は映画『ハンガー・ゲーム』など)は、豪華キャストとニューヨークのグルーヴを加え、本作『オーシャンズ8』の評判を上げた。ターゲットとなる人気女優ダフネ・クルーガーを演じる、アン・ハサウェイのコメディセンスがいかされており、この役柄は本作の秘密兵器だ。ハイディ・クルムやアナ・ウィンター、キム・カーダシアンらがカメオ出演しており、ダイヤモンドやスパンコールを施したデザイナーズドレスを凌駕する華やかさにあふれている。 兄のダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)にかわり、前科者のデビー・オーシャンをサンドラ・ブロックが堂々と演じた。彼女はニューヨークで開催されるファッションの祭典『メットガラ(MET GARA)』で、荘厳な『カルティエ(Cartier)』のネックレスを盗むというプランを考える。そして、右腕のルー(ケイト・ブランシェット)、ファッションデザイナーのローズ(ヘレナ・ボナム=カーター)、ジュエリー職人のアミータ(ミンディ・カリング)、『ヴォーグ』誌の事情通タミー(サラ・ポールソン)、スリ師のコンスタンス(オークワフィナ)、カリスマハッカーのナインボール(リアーナ)を呼び集める。 シリーズの手法に忠実で、スティーブン・ソダーバーグの3部作で見られた軽妙な活気にはかなわなくとも、ジョークを交え、十分な仕掛けを加えて結末へとつなげている。いたずら好きの精神に抗うことはそもそも不可能だ。有能な女性たちの集団が悪党であるなんて、めったに許されることではない。一流集団に続きながら、素晴らしい世界に足を踏み入れ、楽しみに加わろう。 原文:TOMRIS LAFFLY 翻訳:小山瑠美 公式サイトはこちら 2018年8月10日(金)公開

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野外映画祭 2018
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野外映画祭 2018

春から秋の定番となった野外映画祭が、今年も各地で開催される。山の中でキャンプをしながらオールナイトで楽しめるものや、ライブやDJイベント、トークショーなど映画以外にも楽しめる要素が詰まったものなど様々だ。特集では、気軽に訪れることのできる都内の上映もピックアップ。開放感と非日常を体験しよう。

渋谷の映画館リスト
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渋谷の映画館リスト

東京の流行の中心地であり、混沌とした魅力を持つ渋谷には、意外と多くの映画館が集まっている。ここでは、最新設備が整ったシネマコンプレックスや、アート性の高い作品に絞った上映を行う映画館、レストランも併設されたミニシアターなど、渋谷にある映画館を10軒紹介する。

エディターズ・ピック

東京、最新設備の映画館
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東京、最新設備の映画館

家で映画を見るのもいいが、究極の没入感と映画本来の音を体感したいなら、最新設備を備えた映画館に行こう。座席が動き、風が吹き付けるなどアトラクション感覚で楽しめるMX4Dや、270度に広がるスクリーンScreenx、映画『マッド・マックス』のためにメイヤーサウンドのスピーカーを追加導入した映画館など、究極の映画体験をできる場所を紹介する。

万引き家族
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万引き家族

是枝裕和は、優れた日本人映画監督の1人として評価されている。計算された物語展開のスピード、物静かな調子、すっきりとまとまった映像が、そのスタイルをきわめて独特のものにしている。しかし、彼の作品には名声に釣り合わないところがある。是枝は『誰も知らない』や『歩いても 歩いても』『そして父になる』といった家族を描いた作品によって、偉大な小津安二郎の後継者というちょっとした名声を得た。 『万引き家族』は、これまでの名作に及ばないとしても満足のいく作品だ。 物語の中心は、血の繋がらない貧しい「家族」だ。今にも壊れそうな平屋に住み、自分たちにできる限りのことをしながら、なんとか生活していこうとしている。万引きをするのは、中年の建設労働者と、彼が息子として扱う男の子だ。労働者の妻は、クリーニング屋でパートとして働いている。一緒に暮らすもう1人の若い女性は、のぞき部屋で働いている。仮の家族の最年長者の女性は、かつての夫の年金と、謎めいた収入源に頼って暮らしている。暮らしぶりは楽ではない。そのため、小さい女の子を見つけて家に連れて帰ってきた時、彼女は当初養わなければならない余計な口がまた増えたと思った。しかし、女の子の身体にある傷跡に気づくと、母親とその愛人の元へ戻さない方がいいかもしれないと思うようになったのだ。 この作品は、複数の視点で見る価値がある。まず、主だった筋のない語りで、登場人物たちの日課を描くことで、人々がただ単に生活していくために万引きをし、労働収入を補わざるを得ないという、日本の社会経済システムの欠点について教えてくれる。それだけでなく、人々があらゆる境遇で適応してしまう様子について、見識を与えてくれるのだ。境遇を哀れむどころか、家族のメンバー数人が、一緒にいられることや、季節の移り変わり、コミュニティとしての連帯感などに、それぞれ小さな喜びをみつけ、楽しんでいる様子を見せてくれる。優しさがあふれているにも関わらず、理想化をしようとはしない。結局、この家族は血がつながった本当の家族ではないし、その事実は、境遇がより厳しくなった時に明確に現れるかもしれない。軽犯罪をめぐる倫理について考えるのと同様に、愛と忠誠の限界を探るのだ。 決して感傷的ではなく、是枝独特の穏やかで優しい調子で、ゆっくりと最後の感動的なシーンへと紡いでいく。すばらしい演技が随所に見られる(脚本も担当した是枝は、子どもたちに精通していることが分かる)。チャーミングで、おもしろく、心を打つ本作は、是枝独特の厳しいけれども愛情あふれるヒューマニズムのひとつの例だ。 原文:GEOFF ANDREW 翻訳:小山瑠美 公式サイトはこちら 2018年6月8日(金)全国公開

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インタビュー:ウェス・アンダーソン
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インタビュー:ウェス・アンダーソン

ウェス・アンダーソンは唯一無二の映画監督だ。スタイルの巨匠、風変わりのチャンピオン、特定の色彩をこよなく愛する人というイメージだろうか。最新作『犬ヶ島』は、『ファンタスティック Mr. FOX』に次ぐ2本目のアニメーション作品。日本を舞台に、犬のインフルエンザが発生後、島に追放されて来た犬たちの物語だ。アンダーソン作品に期待される視覚的な要素があり、その根底には寛容の大切さという強いテーマも流れている。そして、俳優ハ―ベイ・カイテルの吠え声も。ロンドンでの公開前にアンダーソンに電話インタビューを行った。アンダーソンはとても魅力的で、文学的表現や皮肉っぽい観察、そして思慮深さに満ちていた。 原文はこちら

青春、ホラー、LSD、ギャスパー・ノエ最新作が待ちきれない
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青春、ホラー、LSD、ギャスパー・ノエ最新作が待ちきれない

アルゼンチンの映画監督ギャスパー・ノエが、2015年の『Love 3D』以来3年振りの新作『クライマックス(Gaspar Noe's 'Climax)』を発表した。2018年のカンヌ映画祭の非公式部門「監督週間」で初公開され、この部門の最優秀賞「Noéthe Art Cinema Award」を受賞した作品だ。 1990年代が舞台となる本作は、森の中の閉鎖された元寄宿校に、18歳から23歳までの20人を超えるダンサーが集まり、リハーサルを行っていたのだが、最後の打ち上げで飲んだサングリアに何者かがLSDを入れ、ダンサーたちが地獄と天国をみるというストーリーだ。 テクノ ミュージカルとも言える本作のサウンドトラックには、物語のキーとなる「サングリア」をタイトルにしたトーマ・バンガルテルの新曲や、「What To Do」、ダフト・パンクの「Rollin’ & Scratchin’」、エイフェックス・ツインの「Windowlicker」などが使われている。ノエ節が効いたトレーラーを見て、公開を楽しみにしてほしい。  関連記事『カンヌ映画祭 2018について、答えが知りたい10の疑問』

インタビュー・アーカイブス

インタビュー:ウェス・アンダーソン
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インタビュー:ウェス・アンダーソン

ウェス・アンダーソンは唯一無二の映画監督だ。スタイルの巨匠、風変わりのチャンピオン、特定の色彩をこよなく愛する人というイメージだろうか。最新作『犬ヶ島』は、『ファンタスティック Mr. FOX』に次ぐ2本目のアニメーション作品。日本を舞台に、犬のインフルエンザが発生後、島に追放されて来た犬たちの物語だ。アンダーソン作品に期待される視覚的な要素があり、その根底には寛容の大切さという強いテーマも流れている。そして、俳優ハ―ベイ・カイテルの吠え声も。ロンドンでの公開前にアンダーソンに電話インタビューを行った。アンダーソンはとても魅力的で、文学的表現や皮肉っぽい観察、そして思慮深さに満ちていた。 原文はこちら

インタビュー:石井岳龍
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インタビュー:石井岳龍

石井岳龍(旧名 石井聰亙)は、1957年に福岡で生まれた。パンク ロックの先駆者セックス・ピストルズや日本のバンド、スターリンやルースターズと同世代である。石井は長年、パンクとDIYの精神を持ちながら映画制作に携わってきた大胆な映画監督の1人として、国内外で高評価を得ている。町田康原作の『パンク侍、斬られて候』(6月公開)の映画を監督したことでも大きな話題を呼んでいる。2018年3月13日(火)~25日(日)には、東京国立近代美術館フィルムセンターで『自選シリーズ 現代日本の映画監督6 石井岳龍』が開催される。パンクな作風や、映像制作のきっかけ、改名した理由、新作について話を聞いた。

インタビュー:アダン・ホドロフスキー
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インタビュー:アダン・ホドロフスキー

映画『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』などで知られる、映画監督アレハンドロ・ホドロフスキー。最新作『エンドレス・ポエトリー』は、ホドロフスキー自身の出生を描いた作品で、『リアリティのダンス』の続編だ。1940年から1950年代のチリを舞台に、カルロス・イバニェス・デル・カンポを大統領に据えるための動乱のなか、サンティアゴでアーティストや詩人と出会う青年期のアレハンドロを描いている。 主人公を、ホドロフスキーの末の息子であるアダンが演じ、前作に引き続き、長男ブロンティスが父親役、衣装をホドロフスキーの妻パスカルが担当。一家団結して作られた本作について、アレハンドロを演じたアダンに、幼少時代の家族とのエピソードや父親との関係などについて話を聞いた。

インタビュー:坂本龍一
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インタビュー:坂本龍一

ドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』が公開中だ。坂本龍一が2012年に行った岩手県陸前高田市でのコンサートから始まり、2017年4月に発売されることになる最新アルバム『async』の完成に至るまでの約5年間を追った作品である。 東日本大震災にまつわるシーンでは、官邸前のデモでのスピーチや、防護服に身を包んでの被災地視察、津波をかぶったグランドピアノをつま弾く姿など、行動的な坂本の姿が映される。その後、カメラは、2014年に発覚した中咽(いん)頭がんによる闘病生活を経て、黙々と音楽制作と向き合う音楽家としての坂本を静かに見つめる。 映画は、5年間という時間の中で坂本個人に起こった変化のひとつひとつに焦点を集中させることなく、淡々とその姿を追い、言葉を拾いながら、時代の移り変わりや音楽の本質といった普遍的なテーマを浮かび上がらせる。坂本龍一という人物を通して、人類の業や未来について、深く考えさせられる1本だ。今回のインタビューでは、劇中の随所で坂本が発した印象的なセリフについてその真意を尋ねるとともに、アルバムに込められた「async」=非同期というテーマをひも解く鍵を探った。

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映画レビュー・アーカイブス

万引き家族
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万引き家族

是枝裕和は、優れた日本人映画監督の1人として評価されている。計算された物語展開のスピード、物静かな調子、すっきりとまとまった映像が、そのスタイルをきわめて独特のものにしている。しかし、彼の作品には名声に釣り合わないところがある。是枝は『誰も知らない』や『歩いても 歩いても』『そして父になる』といった家族を描いた作品によって、偉大な小津安二郎の後継者というちょっとした名声を得た。 『万引き家族』は、これまでの名作に及ばないとしても満足のいく作品だ。 物語の中心は、血の繋がらない貧しい「家族」だ。今にも壊れそうな平屋に住み、自分たちにできる限りのことをしながら、なんとか生活していこうとしている。万引きをするのは、中年の建設労働者と、彼が息子として扱う男の子だ。労働者の妻は、クリーニング屋でパートとして働いている。一緒に暮らすもう1人の若い女性は、のぞき部屋で働いている。仮の家族の最年長者の女性は、かつての夫の年金と、謎めいた収入源に頼って暮らしている。暮らしぶりは楽ではない。そのため、小さい女の子を見つけて家に連れて帰ってきた時、彼女は当初養わなければならない余計な口がまた増えたと思った。しかし、女の子の身体にある傷跡に気づくと、母親とその愛人の元へ戻さない方がいいかもしれないと思うようになったのだ。 この作品は、複数の視点で見る価値がある。まず、主だった筋のない語りで、登場人物たちの日課を描くことで、人々がただ単に生活していくために万引きをし、労働収入を補わざるを得ないという、日本の社会経済システムの欠点について教えてくれる。それだけでなく、人々があらゆる境遇で適応してしまう様子について、見識を与えてくれるのだ。境遇を哀れむどころか、家族のメンバー数人が、一緒にいられることや、季節の移り変わり、コミュニティとしての連帯感などに、それぞれ小さな喜びをみつけ、楽しんでいる様子を見せてくれる。優しさがあふれているにも関わらず、理想化をしようとはしない。結局、この家族は血がつながった本当の家族ではないし、その事実は、境遇がより厳しくなった時に明確に現れるかもしれない。軽犯罪をめぐる倫理について考えるのと同様に、愛と忠誠の限界を探るのだ。 決して感傷的ではなく、是枝独特の穏やかで優しい調子で、ゆっくりと最後の感動的なシーンへと紡いでいく。すばらしい演技が随所に見られる(脚本も担当した是枝は、子どもたちに精通していることが分かる)。チャーミングで、おもしろく、心を打つ本作は、是枝独特の厳しいけれども愛情あふれるヒューマニズムのひとつの例だ。 原文:GEOFF ANDREW 翻訳:小山瑠美 公式サイトはこちら 2018年6月8日(金)全国公開

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犬ヶ島
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犬ヶ島

ウェス・アンダーソンの新作『犬ヶ島』は、近未来の日本を舞台に描かれる。鼻風邪と犬インフルエンザの大流行後に、「メガ崎市」から追放された犬たちは、ゴミ処理場の島に隔離され、ゴミの山に囲まれながら生活するようになった。美しいプードルたちは、すぐに自分たちが喧嘩っ早い野良犬たちと対等な立場であることを悟る。犬たちの声は、アンダーソン作品でおなじみのキャストたちが演じている。リーダー犬のレックス(エドワード・ノートン)や、しゃべり好きなデューク(ジェフ・ゴールドブラム)、スポーツのマスコット犬のボス(ビル・マーレイ)、俳優犬のキング(ボブ・バラバン)らだ。 物語は、追放された愛犬スポッツを探しに、12歳の小林アタリが、ゴミ処理場の島に小型飛行機で着陸したことから始まる。アタリは、スポッツを番犬として飼っていたが、メガ崎市の市長である叔父にゴミ処理場の島に真っ先に追放されていた。アタリは危険な島を散策するために犬の群れに協力を頼み、傍観しながらうなるだけだったチーフ(ブライアン・クランストン)が思いもよらない協力者として現れる。本作は少年と犬の絆の描写に全力を尽しており、その焦点は妙に感動的である。 チーフとナツメグ(スカーレット・ヨハンソン)との間に映画『わんわん物語』のようなロマンスが芽生える可能性があるにもかかわらず、雌犬たちはサブキャラクター的な存在になっていることも語っておかなければならない。鳴り続ける和太鼓の音楽から、古ぼけた機械的なケーブルカーまで、スタイル的には紛れもなくアンダーソンの作品だ。愛情を感じるが、あまり敬意を払っていないような方法で、日本文化からユーモアを引き出している。文化の盗用という非難から逃れるのは容易ではないだろう。アンダーソンの作品は、変わらず視覚的にも物語的にも均整美は折り紙付きだ。ただし、にぎやかな本作は、映画『グランド・ブタペスト・ホテル』のような静穏さと、開いた口が塞がらないほどの美しさを欠いている。また、映画『ファンタスティック Mr.FOX』ほど包括的で満足感が得られるわけでもない。しかし、彼のファンならばなんとしても見逃したくない作品だ。 原文:ANNA SMITH 翻訳:小山瑠美 2018年5月全国公開 公式サイト

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ファントム・スレッド
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ファントム・スレッド

ポール・トーマス・アンダーソンの作品では、邪神たちが颯爽(さっそう)と歩く。強欲な石油業者や、巨根のポルノスター、新興宗教の教祖、古くさい嘘をつく賭博師らだ。本作は、アンダーソンが監督と脚本を務めた魅力的な恋愛映画だが、真の神、少なくとも高い場所に君臨する者について描かれていた。 レイノルズ・ウッドコック(ダニエル・デイ=ルイス)は、1950年代ロンドンのオートクチュールの世界で中心的な存在だった。細腰の上流階級の女性たちのドレスを作り出す仕立屋は、全神経を集中し、ほぼ完全な静寂の中で、自分の仕事に従事していた。レイノルズは「朝食に費やす動作が多すぎる!」と恐ろしいほど厳格に叫ぶ。彼が新たなミューズとして地味なウェイトレスのアルマ(ヴィッキー・クリープス)を求めたときに、観客は彼女に代わって縮み上がるはずだ。 アルマがこの耐え難い気味の悪い男と徐々に形勢を逆転していくのを見るのは、本当に楽しい。その展開は極限まで隠されるが、それまではわずかな戯れや、スポーツカーに乗って猛スピードで運転するようなスリル、優雅な衣装、レイノルズが身体を消耗品に変える儀式化などに夢中になる。映画『インヒアレント・ヴァイス』を手掛けたアンダーソンにしては、真っ当で立派すぎるかもしれない。一方で、ジョニー・グリーンウッドによる繊細なピアノ音楽は、チェロの音色が力強くなり、雰囲気はどんどん暗くなっていく。 アンダーソンが力の振り子を揺らす振り幅が、これまでの彼の監督業における最も楽しい部分を象徴していた。独占欲の強いレイノルズの妹、シリル(マイク・リー作品の常連であるレスリー・マンヴィルが、口をゆがめて小意地が悪く演じる)の視線が突き刺さり、物語の要点となる最も使い古された手法として毒キノコのスープが登場する。本作は、お互いの引き合いを加熱状態に陥らせる相互確証破壊という、非常に珍しいテーマを追求しているからだ。 本作では、強迫観念に取りつかれたアーティストと従順なミューズによる典型的な様式を、共謀した歓喜へと変える心理的な駆け引き、破滅的な孤独、結婚生活において口論する現実が描かれているが、ここでは十分に語り尽くせない。結局のところ、強情に仕組まれた危険要素によって傷付けられた、奇妙な結婚のイメージについて語られている。マックス・オフュルスの名作、あるいは全盛期のベルナルド・ベルトルッチの作品と同様に、本作に漂う雰囲気は完璧だとしても、映画『ローズ家の戦争』のように破壊的な問題に向き合わなくてはならず、ブラックコメディの要素を感じる。色気があり、愚かで、素晴らしく、究極の恋愛のような作品に仕上がっていた。  原文:JOSHUA ROTHKOPF翻訳:小山瑠美 公式サイトはこちら 2018年5月26日(土)公開

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レディ・バード
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レディ・バード

映画『フランシス・ハ』『20センチュリー・ウーマン』などで知られる女優のグレタ・ガーウィグが監督と脚本を務めた本作は、女同士の絆に敏感な女子の青春時代を描いた私的な物語だ。魅力的なまでに自由な若きリズムで羽ばたいている。ガーウィグが監督を務めるのは2作目だが、彼女にはカメラの裏側でさらに活躍してほしいと思わせる作品である。さらに、女優のシアーシャ・ローナンの魅惑的な演技によって高められ、高校生活最後の年という刺激的で混乱した時期の物語を巧みに描いている。主人公は、カトリック系の女子高で最終学年を過ごす、反抗的で頑固なクリスティン・“レディ・バード”・マクファーソン(ローナンが型破りで無秩序なキャラクターに徹している)だ。時代は2002年。9.11同時多発テロ事件が起こったばかりで、イラク戦争の緊張が高まり、携帯電話がスマートフォンに進化して10代の生活がより一層複雑になる前の頃である。レディ・バードは、頑固な母親マリオン(ローリー・メトカーフ)と口論し、気立ての良い親友ジュリー(ビーニー・フェルドスタイン)と怠けて過ごし、閉塞感のある故郷サクラメントから離れたリベラルな東海岸の大学に進学することを夢見る日々を送っていた。そんな彼女の計画は、とくに父親のラリー(トレイシー・レッツ)が失業した後には、中流階級の家族が抱える経済的な問題とは無関係のように描かれる。本作は、女性の成長を痛快に描く映画として、映画『ミニー・ゲッツの秘密』と『スウィート17モンスター』の仲間入りを果たしている。不格好なガラケーや、バラード『クライ・ミー・ア・リヴァー』の組み合わせ程度のわずかなノスタルジアで、近年という時代を表現していた。思慮深く、寛容で、脇役に呼吸して成長する余地を与える貴重な合唱曲のような本作では、恋愛対象の2人(ルーカス・ヘッジズとティモシー・シャラメ)と、楽観的な修道女(ベテラン女優のロイス・スミス)の好演も光る。母親と娘、忘れることはない少女時代を過ごした故郷にささげる愛のオードのような作品だ。原文:TOMRIS LAFFLY翻訳:小山瑠美2018年6月1日全国公開公式サイト

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シネクイント
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シネクイント

※2018年7月6日オープン 1981年から渋谷パルコ パート3で営業していた、多目的ホールを前身とする映画館。1999年に映画『バッファロー’66』の上映をきっかけに、シネクイントに名前を改めた。2016年からビル建て替えのため休館していたが、場所を宇田川町に移しオープン。約250席、2スクリーンの劇場に生まれ変わる。アメリカやイギリス、日本映画の話題作など幅広いが、エッジなセレクトで独自のカラーを発信していた劇場なだけに、復活が楽しみだ。

ザ・ムービーパレス TOHOシネマズ日比谷
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ザ・ムービーパレス TOHOシネマズ日比谷

「映画の宮殿」をコンセプトにした映画館が東京ミッドタウン日比谷内にオープン。日比谷公園を一望できる開放的なロビーや、最高の映画体験を追求したプレミアム シアターなど上質な環境で映画が楽しめるのが特徴だ。プレミアム シアターには、壁一面に広がる巨大スクリーン『TCX®(TOHO CINEMAS EXTRA LARGE SCREEN)』や、劇場に最適な形で設計された『カスタムオーダーメイドスピーカーシステム』、革張りの『プレミアムボックスシート』を導入。劇場は11スクリーン、約2200席を備える。

丸の内ピカデリー
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丸の内ピカデリー

有楽町マリオン内にある松竹マルチプレックスシアターズが所有する映画館。同ビル内9階にピカデリー1とピカデリー2、新館5階にピカデリー3の3スクリーンを有している。

シネマ カリテ
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シネマ カリテ

JR新宿駅の中央東口を出てすぐ、フラッグス手前にあるNOWAビル地下1階にあるミニシアター。新宿武蔵野館の位置に1994年10月~2001年末までの7年間、美術館を併設したミニシアターとして、その名称で存続していた劇場が2012年12月に、10年の時を経て復活。デジタル上映と35mmフィルム上映、ドルビーSRDに対応した2つのスクリーンを備え、席数はそれぞれ97席、79席。作品の世界観を演出したディスプレイとともに、なんでもありの幅広いラインナップを楽しめる。パリオペラ座やベルサイユ宮殿などでも使われているキネット社の座席は座り心地も抜群だ。 関連記事『新宿でしかできない101のこと』

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