ガチャガチャ展
Photo:Kisa Toyoshima | ガチャガチャ展の様子
Photo:Kisa Toyoshima

東京、8月から9月に行くべきアート展

個性豊かな注目の展覧会を紹介

Chikaru Yoshioka
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タイムアウト東京 > カルチャー > 東京、8月から9月に行くべきアート展

東京の人気ギャラリーや美術館で開催するアート展を紹介。パフォーマンスやワークショップも数多く展開する「日常のコレオ」から、集団的な撮影行動「8・6広島デー」を紹介する写真展日本上陸60周年を迎えるガチャガチャまで、今月も注目の展示が盛りだくさんだ。

厳選したアート展を紹介する「東京、8月に行くべきアート展5選」「東京、8月に行くべき無料のアート展9選」という記事も公開しているので、併せてチェックしてほしい。

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8月から9月に行くべきアニメ展示

  • アート
  • 築地

画家で造形作家の佐藤穂波による、ぬいぐるみ製作を中心としたプロジェクト「夜行」の個展が開催。「ぬいぐるみが動物として生きていたら、こうなるであろう」という形にされた、親しみが持てるぬいぐるみと絵画が展示される。 


佐藤が作るぬいぐるみの大半は、現実には存在しない生物たち。佐藤が創造しているというより、彼らがまるで最初からこの世に存在していたように「あっちからきました」と語りかけてくるみたいに感じるという。

会場では、ぬいぐるみたちが空間の中を自由に泳ぎ、現実の日常とは少し違った状態で楽しくやっている。彼らと同じ空間に入り満喫しているうちに、自分と気が合うぬいぐるみが泳いでいることに気がつくかもしれない。

そんな現実にはいない生物が、それでも現実味を持って存在する夢のような空間を味わってほしい。

  • アート
  • 清澄

「東京都現代美術館」で、アジアを中心に15を超える国と地域を拠点に活動するアーティストが一堂に会する国際展「日常のコレオ」が開催。各地の社会的、歴史的文脈を起点とした絵画・写真・インスタレーション・映像といった、現代美術の幅広い表現を紹介するだけでなく、参加と対話を伴うパフォーマンスやワークショップも数多く展開する。

国内で初めて発表される作家・作品も多数の本展。ジェンダー規範に基づく家庭から美術館のような制度的空間、ムンバイや沖縄などの都市空間に至るまで、異なる場所における人々の営みや身ぶりに着目し、変容をもたらす主体性の現れを探求する。

また、美術館が位置する深川・木場を取り上げたパフォーマンスや、東京近郊の移民コミュニティーに関する参加型作品など、東京でのリサーチを元に制作された新作を多数発表。アーティストと鑑賞者がさまざまな形で集い、視点を共有しながら、それぞれの「日常」の域を問い直す契機を創出していく。パフォーマンスとワークショップの日程は、公式ウェブサイトを確認してほしい。

なお、913日(土)・14日(日)は学生と中学・高校生の入場が無料だ。リーズナブルな一般2枚のツインチケットも、チケットカウンターでのみ3,500円販売している。 

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  • アート
  • 恵比寿

「LIBRAIRIE6/シス書店」で、「エヴァ&ヤン・シュヴァンクマイエル博物誌」展が開催。テーマを「博物誌」とし、ヤン・シュヴァンクマイエル(Jan Švankmajer)とその妻のエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー(Eva Švankmajerová、1940〜2005年)によるドローイング、コラージュ、立体作品を約30点展示する。



会期中には多数のトークイベントが展開。2025年9月20日(土)にはドラァグクイーンでアーティストのヴィヴィアン佐藤を招いた「驚異の部屋と私」、27日(土)は早稲田大学演劇博物館招聘(しょうへい)研究員のペトル・ホリー(Petr Holy)による「魔窟の中のシュヴァンクマイエル夫妻」、10月11日(土)は博物学研究家の荒俣宏と俳優の佐野史郎による「シュヴァンクマイエルの博物誌」が実施される。

また、写真集「KUNSTKAMERA – クンストカメラ –」も販売予定だ。

  • アート
  • 恵比寿

恵比寿の「MEM」で、1968年から1971年にかけて全日本学生写真連盟(以降、全日)のメンバーによって広島で展開された集団的な撮影行動「8・6広島デー」を紹介する展示が開催される。

全国の高校、大学の写真部を中心に組織された全日。1960年代半ばに写真評論家の福島辰夫を指導者に迎え、学生運動や公害などの社会問題をテーマに据えた活動を展開し、展示と出版活動を行った。

「8・6広島デー」とは、原爆が投下されてから20年余り経過し、急激な復興が進む広島の街とそこに生きる人々の生活にカメラを向け、改めて広島とは何かを問う行為を当時の参加者たちが呼称したもの。復興した都市「広島」でもなく、被爆して記号になった「ヒロシマ」でもなく、自身が学び行動し認識するものとして発音記号で表したのが第3の広島、つまり「hírou-ʃímə」だ。

1972年には写真集『ヒロシマ・広島・hírou-ʃímə』を出版。戦後復興の名の下に変貌していく街や生活、8月6日の祈念式典、灯籠流し、整理されゆく原爆スラム、原爆投下当時の写真、遺品、広島大学の闘争などの写真が収録された。

会場では、当時のプリントとともに関連する記録資料なども展示する。終戦80年の節目に開催される本展が、全日の「8・6広島デー」とは何であったかを考察するとともに、現代にとって「hírou-ʃímə」とは何かを問う。

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  • アート
  • 六本木

「森美術館」で、「藤本壮介の建築:原初・未来・森」が開催。「2025年大阪・関西万博」の会場デザインプロデューサーを担当するなど、今最も注目される日本の建築家の一人である藤本壮介の初の回顧展だ。

藤本は東京とパリ、深圳に設計事務所を構え、個人住宅から大学、商業施設、ホテル、複合施設まで、世界各地でさまざまプロジェクトを展開している。2010年の「武蔵野美術大学美術館・図書館」、近年ではフランス・モンペリエの集合住宅「ラルブル・ブラン(白い樹)」やブダペストの音楽複合施設「ハンガリー音楽の家」など、高い評価を得たプロジェクトを次々と完成させた。

本展では、活動初期から世界各地で現在進行中のプロジェクトまで主要作品を多数紹介し、四半世紀にわたる建築家としての歩みや建築的特徴、思想を概観する。また、模型や設計図面、記録写真に加えて原寸大模型やインスタレーションなども展示される。

藤本建築のエッセンスを視覚的にも空間的にも体験してほしい。

  • アート
  • 乃木坂

「TOTOギャラリー 間」で、「2025年日本国際博覧会」(以下、大阪・関西万博)の休憩所ほか設計業務の公募型プロポーザルで選ばれた、1980年以降生まれの20組の建築家たちによるグループ展が開催。会場を埋め尽くす図面や模型などの資料と言葉を通じて、彼らの奮闘を追う。

20組の建築家は大阪・関西万博の休憩所・トイレ・サテライトスタジオなどの施設の提案に当たり、仮設建築物を造るという前提の下、社会や建築に対する問いを立てた。そして、自らの仮説を手がかりに試行錯誤を続けてきた。

本展は、彼らがどのような問題を提起し、複雑な状況に向き合いながら、どのように案を実現させてきたのかに迫るドキュメンタリーだ。また、彼らの実践から、新しい建築の当事者像を浮かび上がらせる試みでもある。

現実社会の中で建築を実現させるために奔走する全ての人々と共有し、これからの建築について議論していく場となることを願う本展。ぜひ足を運んでほしい。

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  • アート
  • 丸の内

「東京ステーションギャラリー」で、乳白色の下地に描いた絵画で世界的に知られた、エコール・ド・パリを代表する画家・藤田嗣治(1886〜1968年)の個展が開催。藤田の芸術を「写真」をキーワードに再考し、画家と写真の関係を「絵画と写真につくられた画家」「写真がつくる絵画」「画家がつくる写真」の3つの視点からひもとく。



見どころは、オカッパ頭に丸メガネ、口元のひげと奇抜なファッション、そして傍らには猫という、絵画と写真でセルフブランディングした藤田のメディア戦略。アイコニックなキャラクターを世に知らしめた自画像とポートレート写真を一挙に展示し、映像が氾濫する時代に先駆けた「画家のメディア戦略」の跡を追う。

また、日本とフランスに遺された写真資料の中から、藤田が撮影した優品を厳選して紹介。ライカを手にした藤田が好奇心の赴くままにシャッターを切ったモノクロ写真とカラー写真は、見る者の心引きつける必見のスナップショットだ。

描くこと、そして撮ること。2つの行為を行き来した「眼の軌跡」を追いかけ、これまでにない角度から藤田の魅力に迫っていく本展。ぜひ足を運んでほしい。

  • アート
  • 新宿

映画界の巨匠、ジャン=リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard)の映像表現の革新性をひもとく日本初の展覧会が、新宿・歌舞伎町の「王城ビル」で開催。ゴダール最後の長編作品であり、「カンヌ映画祭」で映画祭史上初の「スペシャル・パルムドール」を受賞した『イメージの本』を、映像インスタレーションとして再構成する。

『イメージの本』は、歴史・戦争・宗教・芸術などの変遷を、さまざまな映画の引用でコラージュし、振り返る映画作品。本展では、映画上映の時系列的な束縛を打ち破り、視覚・空間的にゴダールの世界を体感する。映像や音の断片を通じて、ゴダールの思考に入り、彼の眼で世界を見つめる観察者となっていく。

キュレーターは、2010年の映画『ゴダール・ソシアリスム』から撮影・音響・編集を手がけ、晩年のゴダールの右腕であったスイスの映画作家、ファブリス・アラーニョ(Fabrice Aragno)。これまでドイツ、スイスなどで、会場の特徴を生かした展示が行われてきた。

また、クラウドファンディングも実施しており、リターンの一つには、『イメージの本』の制作ノートや先行販売チケットなどが用意されている。 

新しい形で映画とアートの鑑賞体験を提供し、ゴダールの芸術性を極限にまで拡大させた本展。チケットの発売は6月から。往年の映画ファンはもちろん、ゴダールを知らない若い世代もぜひ足を運んでほしい。

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  • アート
  • 所沢

演出の高畑勲、原案・脚本・画面設定の宮﨑駿がコンビを組み制作された、中編アニメーションの『パンダコパンダ』。高畑・宮﨑作品の源流とも言われ、今もなお愛され続ける名作ファンタジーの本作の世界を丸ごと紹介する体験型展覧会が、「角川武蔵野ミュージアム」で開催される。

会場は、公開当時の貴重な資料のほか、設定資料やイメージボードなど制作資料の一部展示、シーンの再現を通してより深く作品を楽しめる構成。物語の舞台にもなっているダイニングの再現コーナーや、立体的で大きなパパンダのオブジェといった楽しいフォトスポットも盛りだくさんだ。

カフェとのコラボレーションメニューや、オリジナルグッズなど、会場限定の企画も用意されている。ゆかいな『パンダコパンダ』の世界に没入しよう。

  • アート
  • 江東区

「ギャラリー エークワッド(Gallery A4)」で、数多くの建築のサイン計画などで知られるグラフィックデザイナー・廣村正彰の展覧会が開催。学校や商業施設、工場、美術館、路上などそれぞれの場所に応じた約30のデザインを、廣村の言葉とともに、写真、映像や実物資料を交えて展示する。

廣村は、人の意識や心が動く瞬間を見つめ、情報だけでなく、共感や愛着など新たな価値を生むデザインを作ってきた。本展では、「記憶と痕跡」「字と美」「シルエット」「矢印」「仮設的」の5つのキーワードでエリア分けされ、空間を歩きながら廣村の思考をたどる体験ができる。

現代社会へ向けて廣村が提案する、デザインの可能性を考えてみてほしい。

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  • アート
  • 上野

誰もが持つ創造性に目を向け、自分なりの方法で「よりよく生きる」ことを考える「DIY(Do It Yourself/自分でやってみる)」をテーマにした展覧会が「東京都美術館」で開催。DIYの手法や考え方に関心を寄せる5組の現代作家と2組の建築家が、版画、ドローイング、言葉、写真、映像、インスタレーションなど、多様な表現で空間を作り上げる。

出品作家は、若木くるみ、瀬尾夏美、野口健吾、ダンヒル&オブライエン(Dunhill and O’Brien)、久村卓、伊藤聡宏設計考作所、スタジオメガネ建築設計事務所。身の回りのもので作る作品や、多様な人が関わる場のデザインに加え、震災や経済的な事情により多くのものを失った人々の切実な営みにも焦点を当てる。

また、実際に手を動かして体験できる参加型の作品も登場。見るだけでなく、つくる・話す・考えることで「つくるよろこび」を体感するだろう。

  • アート
  • 銀座

「銀座メゾンエルメス ル フォーラム」で、グループ展「体を成す からだをなす」が開催。「社会的身体」をテーマに、13人のアーティストによる1973年から2025年までの作品を紹介する。

本展では、アートによってもたらされる日常や秩序の可変性に着眼しつつ、個人あるいは集団的に機能する社会的な身体を浮き彫りにする作品を考察。身体と密接に結びついた芸術形式であるパフォーマンスとして、ヘレン・チャドウィック(Helen Chadwick)のジェンダーを問う『In the kitchen』や、アンドレ・カデレ(Andrei Cădere)の『丸い木の棒』などの1970年代を代表する写真から始まる。

また、アナ・トーフ(Ana Torfs)のビデオ『サイドショー』や、ネフェリ・パパディムーリ(Nefeli Papadimouli)のコスチュームとビデオ作品などを紹介。さらに、クリスティーヌ・ドゥクニット(Christine Deknuydt)のドローイングは、描くことで痕跡が消滅するような実験的な態度で存在の境界を問いかける。


彼らの作品を通して、多様な視点や行為が交差する場を体験してほしい。

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  • アート
  • 汐留

「パナソニック汐留美術館」で、近現代の陶芸をテーマとした企画展が開催。約120作品を通して、陶芸と絵画的表現の交差に焦点を当て、アートとしての魅力を探る。

タイトルにある「ピクチャレスク」とは、「絵画的な」「絵画のように美しい」といった意味を表す美術用語。本展では、絵付けされた陶器にとどまらず、平面と立体がダイナミックに融合した形態や、メディアを越境して表現を更新していくような造形の在り方にも注目する。

会場では、富本憲吉やバーナード・リーチ(Bernard Leach)をはじめ、河井寬次郎、濱田庄司、イギリスやデンマークの作家まで約50人の作家が並ぶ。

近代から現代まで、ユニークな陶芸の作家たちを横断的に注目する実験的な本展。色彩や形や素材などの視点から、陶芸との新たな出合いを楽しんでほしい。

  • アート
  • 六本木

ムーミンの生みの親で、多方面に才能を発揮したフィンランドのアーティスト、トーベ・ヤンソン(Tove Jansson、1914〜2001年)の個展が開催。初期の油彩画や第二次世界大戦前後の風刺画、ムーミン小説・コミックスの原画やスケッチ、愛用品など約300点を通して、トーベの創作の世界を振り返る。

画家を目指していたトーベは、若い時から雑誌の挿絵で活躍。第二次世界大戦後の復興期には、市庁舎や病院、保育園など、公共施設の壁画も数多く手がけた。

戦争中のつらい日々からの救いの場として書き始め、1945年から1970年までに刊行された「ムーミン」小説は全9冊。ストーリーも挿絵もトーベによるムーミンは、新聞連載漫画や絵本にもなり、世界的な人気を博した。

本展の見どころは、ムーミンたちも登場する保育園のために描かれた壁画「フェアリーテイル・パノラマ」。日本ではあまり知られていない本作を、2面合わせて幅約7メートルの原寸大映像で紹介する。さらに、「ムーミン」小説の印象的な挿絵の映像演出も予定している。

ムーミンシリーズの魅力と、それを支えるトーベの豊かな創造力を再発見してほしい。

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  • アート
  • みなとみらい

「横浜美術館」で、佐藤雅彦の40年にわたる創作活動の軌跡をたどる世界初の大規模個展が開催。よく知られたテレビ番組やCM、キャラクターから、ビジュアルデザインやコピーライティング、漫画、ゲーム、楽曲、映画、教科書、膨大な著書まで、佐藤が表現者・教育者として世に送り出してきたコンテンツを一堂に紹介する。

「ピタゴラスイッチ」「バザールでござーる」「だんご3兄弟」「モルツ」「ポリンキー」など、時代を超えて話題作、ヒット作を送り出し続けた佐藤。創作の根幹には、「作り方」「分かり方」についての独自の理論やアイデアが蓄積されている。

本展では、多様な作品の創作プロセスを紹介し、その独創的なコミュニケーションデザインの考え方や理論をひもとく。あらゆる物事にじっくりと対峙(たいじ)すること、自分なりの考え方を整理整頓すること、そこから表現を生み出すことの大切さ・面白さを広く伝えていく。

どの世代の人でもなじみ深いもの、記憶に残っているものが必ずある佐藤の手がけた作品。 「これ懐かしい」から始まり、「これも同じ人が作ったものだったのか」、さらに「え、こんなものも作っているの?」と、会場で発見と驚きを繰り返すだろう。

  • アート
  • 立川

立川の「プレイ!ミュージアム(PLAY! MUSEUM)」で、「どろぼう」をテーマにした没入体験型のエンターテインメント展覧会「大どろぼうの家」が開催。最後の盗みに出て留守中の、かの有名な「大どろぼう」の家に忍び込むという設定で構成した、来場者が主役のアート展だ。

本展では、新井風愉、伊野孝行、嶽まいこ、幅允孝、張替那麻、名久井直子、ヨシタケシンスケといった絵本作家・イラストレーター・建築家・アートディレクター・映像作家ら各ジャンルからクリエーターが参加。どろぼうをテーマにした、新作の絵画やインスタレーション、体験型の展示が揃う。

また、回廊、応接室、隠し部屋など8つの部屋に分けられた展示室には、どろぼうの肖像画や変装道具のほか、星や靴下などの謎が謎を呼ぶコレクションが並ぶ。来場者は無事に大どろぼうの家から抜け出て、この家に住む大どろぼうの正体を突き止めることができるのか。

どろぼうや人間の不思議さ、面白さを、新しい没入体験とともに楽しんでほしい。 

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  • アート
  • 表参道

GYRE GALLERY」で、グループ展「永劫回帰に横たわる虚無 三島由紀夫生誕100=昭和100年」が開催。国内外の現代美術家によって、三島由紀夫(19251970年)の遺作『豊饒の海』をテーマに、戦後日本美術の空虚と再生を見つめ直す。

フランスの哲学者、ロラン・バルト(Roland Barthes、19151980年)は、「表徴」があふれている中心のない空虚な日本に注目し、それを「意味の帝国」に対し「表徴の帝国」と表現した。天皇・都市・女形・すき焼き・礼儀作法・パチンコ・学生運動も表徴であって、意味から解放された日本文化の自由度を描写した。

本展では、バルトが語った「表徴の帝国」としての日本と、三島が自決する数カ月前に遺した「空虚な国」という視点を手がかりにする。そして、アーティストたちが「意味」から解放された表現を通して、中心なき美の風景を浮かび上がらせる。

参加アーティストは、中西夏之、ジェフ・ウォール(Jeffrey Wall)、杉本博司、アニッシュ・カプーア(Anish Kapoor)、池田謙、森万里子、平野啓一郎、友沢こたお。ぜひ足を運んでほしい。

企画:飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所 所長)

  • アート
  • 原宿

中国山西省で生まれ、北京を拠点に活動するチェン・フェイ(陳飛)の個展が、「ワタリウム美術館」で開催。2022年から2025年にかけて描いた新作絵画15点に加え、高さ7メートルの壁画、インスタレーション、ドキュメントなどが、ユニークでサイトスペシフィックにキュレートされた空間の中で展示される。

本展の出発点は、ナチス時代に深く影響を受けたドイツの著名な漫画家、E.O.プラウエン(E.O. Plauen、1903〜1944年)が制作した名作『Vater und Sohn(父と子)』。この漫画は父と息子の関係を描いているだけでなく、家族、仲間、愛という貴重で示唆に富む意味を、非常に特異な社会的設定の中で探求する。

この物語と共鳴するように、チェンは本展で自伝的なアプローチを用い、親しい知人との関係を描き、中国人画家としてのアイデンティティーについての物語を織り交ぜている。作品は、夫と妻、父と子の家族関係や、同僚や友人の社会的な力関係を掘り下げ、画家自身の芸術家としての職業的イメージについての思索も含む。

チェンの最新作を見逃さないでほしい。

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  • アート
  • 恵比寿

「東京都写真美術館」の総合開館30周年を記念する「TOPコレクション展」 を開催。学芸員4人の共同企画によるオムニバス形式で、多角的な視点からえりすぐりの写真と映像の魅力を紹介する。

タイトル「トランスフィジカル」の「フィジカル」には、「物質的」「身体的」という意味がある。本展では、モノとして存在する写真の「物質性」や、被写体や作家自身の「身体的表現」に着目していく。

さらに、「トランス」という接頭辞は、対象がそのもの自体から、別の形態や位置へ移動していくプロセスや行為も指す。これまでのコレクション作品の新たな読み解き方を紹介し、イメージが作られていくその豊かな過程へと目を向ける。

デジタル化が進む現在の写真・映像の在り方に、同館の名作が鮮やかな一石を投じるだろう。

  • アート
  • 六本木

「フジフイルム スクエア(FUJIFILM SQUARE)」で、写真家・深瀬昌久(1934〜2012年)の写真展が開催。近年、展覧会の開催や写真集の発刊に加え、半生を描いた映画『レイブンズ』が公開されるなど、評価が高まり続けている深瀬の原点をたどる。

新しい写真表現を生み出す多くの写真家たちが出現した1960〜70年代の日本。その中で深瀬は、徹底的に「私性」を追求し、日本独自の表現といわれる「私写真」の先駆者として、日本の現代写真史に比類ない足跡を残した。

家族、愛猫、さらには自分自身と、常に緊密な関係性の中で写真を撮り続けた深瀬。中でも、妻・洋子を10年あまりにわたって撮り続けた写真群は、深瀬を語る上で欠かすことのできないものだ。

本展では、深瀬手製の黒マントをまとった洋子をとらえた、没後初の発表となるビンテージプリント33点を展示する。自己、他者、そして写真の本質について、大きな問いを投げかけるだろう。

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  • アート
  • 上野

「国立西洋美術館」で、「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」が開催。ヨーロッパ美術史における巨匠の作品をはじめ、芸術家の技量と構想力の全てが注ぎ込まれている素描の魅力を存分に堪能できる。

「スウェーデン国立美術館」は、同国王家が収集した美術品を基盤にする、世界で最も古い美術館のうちの一つ。中でも素描コレクションは、世界規模で見ても質、量ともに充実したコレクションとして知られている。

本展では、その素描コレクションから、ルネサンスからバロックまでの名品をえりすぐって紹介。素描は環境の変化や光、振動の影響を受けやすいため、通常、海外所蔵の素描作品を日本で公開することは難しく、世界最高峰の素描コレクションがまとまって来日するのはこれが初めてだ。

作者の手の跡がより直接的に感じられ、制作の試行錯誤の過程を垣間見ることができ、まるで作家の創造の場に立ち会っているような臨場感を味わえる素描。その魅力を存分に楽しんでほしい。

  • アート
  • 上野

「東京国立博物館」の「平成館」で、大奥の歴史と文化に迫る展覧会「江戸 大奥」が開催される。

見どころは、大奥で演じられた豪華絢爛(けんらん)な歌舞伎衣装の一挙公開や、本来の武家女性たちの装いの紹介。美しい和刺しゅうで草花や風景を表わした搔取(かいどり)や小袖の数々を、四季折々のしきたりとともに鑑賞できる。

また、最高の刺しゅう技術を用いて制作された、重要文化財である奈良・興福院の『刺繡掛袱紗(ふくさ)』は、全31枚が登場。さらに、庶民が憧れた江戸城の大奥の女性たちの生活を楊洲周延(ようしゅう・ちかのぶ)が描いた錦絵 『千代田の大奥』の40場面も展示する。大奥の様子が、実物で全場面観られる貴重な機会だ。

江戸幕府の隠された歴史ともいえる謎多き大奥の世界。真の姿を垣間見ては。

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  • アート
  • 六本木

トゥーワン トゥーワン デザインサイト(21_21 DESIGN SIGHT)」で、自然災害に焦点を当てた企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」が開催。そもそも災害とは何かという視点から、人々が直面してきた自然災害を広く見つめ直す。

会場では、これまでの地震や水害のデータビジュアライゼーションをはじめとしたリアルな状況把握や、防災に関するプロダクト、災害をきっかけに生まれたプロジェクトなどを紹介。また、各地に残る災害に関する言い伝えや今後の可能性に目を向けた研究など、過去から未来に至るまでの災害への向き合い方も解き明かす。

あまり考えたくはない災害の存在から目を背けず、その捉え方を見つめ直すことで、今やるべきことや、考えるべきことが見えてくるだろう。

  • アート
  • 用賀

「世田谷美術館」で、写真家・野町和嘉の集大成となる展覧会が開催。「サハラ」「ナイル」「エチオピア」「グレート・リフト・ヴァレー」「チベット」「メッカとメディナ」「アンデス」の7つのテーマで代表作品を紹介し、野町の50年にわたる活動の足跡をたどる。

1972年、野町は25歳の時にサハラ砂漠を訪れ、大きな転機を迎えた。辺境に関する情報が乏しい時代、出会った旅人と地図を分け合うような行程の中で、野町は青天の下に開けた地平線と、古来より脈々と続く人々の営みに魅せられる。

サハラでの写真が認められ、『LIFE』をはじめとする各国のグラフ誌に掲載されるようになり、野町はさらに旅を続ける。深い信仰が人々の暮らしを形作っている、しかし外部の者が容易には近づくことのできない土地を目指した。野町の写真には、過酷な風土の中で暮らす人々の息遣いと生き抜く意志が宿っている。

デジタルデバイスと携帯電話の普及により、生活様式が、その土地独自の風習が、そして身に着けるものが急速に変化してしまった現在。野町の写真の光景は、貴重な地球のドキュメントといえるだろう。

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  • アート
  • 恵比寿

「東京都写真美術館」で、近年国際的に注目されるイタリアを代表する写真家、ルイジ・ギッリ(Luigi Ghirri、1943〜1992年)のアジア初の美術館個展が開催。初期の代表作から晩年の作品まで約130点を幅広く紹介し、20年ほどにわたるギッリの写真に対する多角的な思索をたどる。

ギッリは測量技師としてのキャリアを積んだ後、1970年代から写真家として本格的に活動を始めた。色彩、空間、光に対する類まれな美的感覚と、ありふれたものをユーモラスに視覚化する才能によって、主にカラー写真による実験的な写真表現を探求してきた。

本展では、ギッリが撮影したイタリアや旅先の風景、画家のジョルジョ・モランディ(Giorgio Morandi)や建築家のアルド・ロッシ(Aldo Rossi)といったアーティストのスタジオ、自宅の室内、美術品、看板やポスター、窓や鏡に映る風景など、多様な視覚的断片によって構成された風景表現を紹介する。

併せて、ギッリの活動を語る上で欠かせない存在であり、自身もグラフィックデザイナーとして活動した妻、パオラ・ボルゴンゾーニ(Paola Borgonzoni、1954〜2011年)の作品や資料も並ぶ。また会期中には、2022年に公開されたギッリの貴重なドキュメンタリー映画『Infinito』を、日本初上映する。

ギッリが探求し続けた、終わりのない風景に対する解釈と世界観に触れてほしい。

  • アート
  • 渋谷

「渋谷ヒカリエ」の9階「ヒカリエホール」で、絵本界の巨匠、レオ・レオーニ(Leo Lionni、1910〜1999年)による「レオ・レオーニの絵本づくり展」が開催。作品に込められたメッセージ、そして、今なお世界中の幅広い世代に愛され続ける魅力に迫る。

絵本『スイミー』や『あおくんときいろちゃん』など、多数の名作を世に送り出したレオーニ。その生涯において携わった仕事は、グラフィックデザインやアートディレクションから絵本制作まで、多岐にわたる。

本展では、その中でも49歳になってから始めた絵本づくりに焦点を当てる。アートディレクターとして培った豊富な経験やセンスに基づく、コラージュをはじめとしたレオーニならではのさまざまなテクニックをひも解く。

また、絵本原画だけでなく、レオーニの絵本ワールドを体感できるインタラクティブな映像コンテンツも展開。細部にまでこだわり抜いた絵本づくりの技法、そして、レオーニが手仕事に込めた思いを感じてほしい。

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  • アート
  • 渋谷

「渋谷ストリーム ホール」で、「鳥羽市立 海の博物館」「牧野富太郎記念館」「島根県芸術文化センター グラントワ」などの代表作で知られる建築家・内藤廣の個展「建築家・内藤廣 赤鬼と青鬼の場外乱闘 in 渋谷」が開催。内藤の約半世紀にわたる建築思考を多角的に紹介する。

本展は、2023年に島根県益田市で開催され、建築ファンをはじめ多くの来場者を魅了した。今回は渋谷の都市を舞台に企画され、3フロアで構成。渋谷駅周辺と益田市街地との対比を直感的に体感できる新作模型をはじめとして、模型・図面・写真・映像など多彩な手法を用いた展示が並ぶ。

各作品には内藤の頭の中に宿る「赤鬼」と「青鬼」、そして時には「亡霊(物故者)」による、独特の語り口でユーモアも交えた解説が添えられている。また、ドローン撮影やスローモーション、タイムラプスを織り交ぜた映像が上映され、都市の「見えない風景」を映像作品として提示する。

さらに、2025年7月25日(金)には島根県石見地方の伝統芸能「石見神楽」を公演するほか、 7月28日(月)には内藤本人による特別講演も実施。内藤のユーモアたっぷりの語りとともに体験できる、唯一無二の建築展に足を運んでほしい。

  • アート
  • 京橋

「アーティゾン美術館」で、オーストラリア各地で躍動する複数の女性アボリジナル作家に焦点を当てた、日本初の展覧会が開催。オーストラリア現代美術の現在地を、世代と地域を超えた7人と1組の作家から読み解く。

近年の国際的な現代美術の動向とも呼応し、オーストラリア先住民によるアボリジナルアートは、改めて世界的に注目を集めている。オーストラリア現代美術では多数の女性作家が高い評価を得ており、その多くがアボリジナルを出自の背景とする。

現代アボリジナルアートの特徴の一つに、制作手法やテーマ、そして素材の多様性が挙げられる。バティック、ジュエリー、編み物、土地神話物語を含まない事象的な主題など、それまで芸術作品として受け容れられていなかった創作を、女性作家たちは芸術表現に昇華させた。

また、社会問題、環境問題、過去の歴史、失われた文化の復興などの幅広いテーマを扱い、イギリスの脱植民地化の言説が進むオーストラリアで、アートを通して積極的にその実践を試みている。



オーストラリア現代美術の方向性を握る、複層的で多面的な現代のアボリジナルアートの「いま」に迫る本展。その多様な創作活動を垣間見てほしい。

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  • アート
  • 箱根

イギリスのサフォークを拠点に活動し、国内でも高い人気を誇るライアン・ガンダー(Ryan Gander)の個展が、箱根の「ポーラ美術館」で開催。日本初公開の最新作を含め、館内のさまざまなスペースで、全18点におよぶ作品の数々を紹介する。

日常の中に潜む物語や多層的な意味を、知的な遊び心と鋭いユーモアを交えながら表現するガンダー。人間の言葉を話すカエル、読めない時計や仮想の国旗、ある兄弟の偽りの歴史など、作品は極めて具体的でありながら、捉えどころのない神秘に満ちている。

「アートの目的はコミュニケーションではなく、触媒として曖昧さを提供すること」と作家が語るように、作品の意味は固定されていなく、解釈と連想のプロセスによって、新たな物語が創造される。

見どころは、家族とともに生み出された作品の数々。ガンダーの子どもたちの声が作品に使用されていたり、ガンダーの父親による手書き文字が描かれていたりする。

また、ガンダーが生み出した新たな動物たちにも注目だ。館内のさまざまな場所にすみついた、不思議な動物たちを探しに行ってほしい。

  • アート
  • 渋谷

「東京都渋谷公園通りギャラリー」で、11の作家が映し出すイギリス、アール・ブリュット(Art Brut)の現在地を紹介する「未知なる世界と出会うー英国アール・ブリュット作家の現在(いま)」が開催。世界的に評価の高いレジェンドから、新進気鋭の作家まで、幅広い世代の多様な作品群が集合する。

ゲストキュレーターは、イギリスを拠点にアール・ブリュットと、アウトサイダーアート分野のキュレーターやギャラリストとして活躍する、ジェニファー・ギルバート(Jennifer Gilbert)。マッジ・ギル(Madge Gill)やスコッティ・ウィルソン(Scottie Wilson)といった作家が参加し、緻密で繊細、かつエネルギッシュさを放つ表現が一堂に会する。

出展作品は、白黒とカラフルな作品に分けて公開。白黒の作品が並ぶクラシカルな雰囲気の部屋では、女性モチーフのほか、優美で有機的な形や線が印象的な作品が展示される。

カラフルでポップな印象を受ける部屋では、不思議な生き物や、どこか懐かしいカメラなど、多彩なモチーフが並ぶ。印象の異なるそれぞれの展示室で、想像力をかきたてる作品群を楽しんでほしい。 

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  • アート
  • 天王洲

スタジオジブリ作品の魅力に迫る展覧会「ジブリの立体造型物展」が、天王洲の「寺田倉庫 B&C HALL/E HALL」で開催。2003年に始まった本格的なスタジオジブリ展の原点である「立体造型物展」が、進化を遂げて22年ぶりに東京に帰ってくる。

今、世界中で観られているスタジオジブリ作品。その背景には、長い時間をかけて届けようとした人々がそれぞれの国や地域にいた。

本展では、「海を渡った熱風」をテーマに、海外のパートナーたちがどのように作品を届けていったのかをたどる。併せて、『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』など、数々の映画からの名場面が立体造型物となって展示される。

注目は、『紅の豚』に登場する飛行艇「サボイアS.21」。「もしも本当にあったら」という想定で作られる迫力満点の飛行艇は、今にも飛び立ちそうに見えるだろう。

また、 宮﨑駿がかつて「三鷹の森ジブリ美術館」の企画展示用に制作した短編アニメーション『空想の空とぶ機械達』が特別上映。大空に憧れた人々がかつて空想した「空とぶ機械たち」を描く。さらに、会場隣接の水上施設「T-LOTUS M」では、『崖の上のポニョ』に出てくる「あのハム入りラーメン」が味わえる。

ジブリの世界に飛び込める本展。帰り道は、きっとジブリ作品が観たくなっているだろう。

  • アート
  • 白金台

「東京都庭園美術館」で、旧朝香宮邸の建築空間を生かした、年に一度の建物公開展が開催。素材や技法、室内意匠など、建築そのものに注目しながら、同館の建築としての魅力を紹介する。

現在に至るまで同館は、朝香宮家が過ごした邸宅として、元首相・吉田茂の政務の場として、国の迎賓館として、民間の催事施設として、そして美術館として、時代の潮流とともに歴史を紡いできた。

本展では「機能の変遷」をテーマに、各時代を彩るゆかりの作品や写真・映像資料を通して、建物の記憶をひもとく。また、家具や調度品を用いた再現展示、ウインターガーデンの特別公開、さらに窓のカーテンを開け放ち、夏の新緑を望めるように設える。

アール・デコ様式の邸宅建築の魅力の源泉に迫る本展。唯一無二の空間を堪能してほしい。

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  • アート
  • 神奈川

「平塚市美術館」で、平塚市出身のアーティスト・原良介の個展「原良介 サギ子とフナ子 光のそばで」が開催。一貫して追求している光の表現を中心に、近年多彩な広がりを見せている画家の現在地までを紹介する。

原の作品は、油絵具による一層のみの筆致で対象を的確に捉えた、明るい色の光あふれる風景が特徴。少ない手数で描く対象の形、奥行きや前後関係も見事に捉え、大画面の迫力ある筆遣いが魅力だ。

風景は、自然と人間の接点あるいはその境界を表し、多くはフィールドワークを元に制作。平塚出身の画家が子どものころから慣れ親しんだ土地や、何度も取材した場所は、鑑賞者にとってどこかで出合った景色を想起させるだろう。

  • アート
  • 銀座

横尾忠則の個展「横尾忠則 未完の自画像 - 私への旅」が「グッチ銀座 ギャラリー」で開催。「旅」を想起させるテーマを描いた作品を中心に、今回初公開となる自画像や家族の肖像など最新作6点を含めた約30点の作品が展示される。

本展のテーマである「未完」とは、「芸術の創造性は完成された瞬間よりも、むしろ未完成であることにこそ宿る」という、横尾が一貫して掲げてきた美学に基づくもの。1960年代から約60年にわたり、千変万化するスタイルと森羅万象に及ぶテーマを駆使しながら作品を生み出してきた横尾は、常に新しい表現の可能性に挑戦してきた。

特別に解放された屋上スペースでは、1970年の「日本万国博覧会(大阪万博)」で大きな話題を呼んだ、「未完」のイメージをシンボリックに提示した「せんい館」の赤い足場を再現した作品を展開。ダイナミックで創造的な空間を感じてほしい。

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  • アート
  • 青山

デンマークの映画監督であるニコラス・ウィンディング・レフン(Nicolas Winding Refn)とゲームクリエーターの小島秀夫が考案した展覧会「Satellites」が、「プラダ 青山店」で開催されている。

映画業界とゲーム業界のプロセスが互いに接近し、重なり合う傾向にあると考えているウィンディング・レフンと小島。そして、将来的には共通のテクノロジーの活用などを通じて一つのデジタル次元へと融合し、個人や集団の体験に新たな可能性をもたらす可能性があるという信念の下、活動している。

今回のコラボレーションでは、両者の選択的な一体感を浮き彫りにし、個の枠、言語の壁を超えることを可能にした。

会場は、ミッドセンチュリー風のインスタレーション空間として生まれ変わり、鑑賞者を別の次元へと誘う。レトロフューチャーな宇宙船を模した6台のテレビで構成され、映像として浮かび上がったウィンディング・レフンと小島が深く思索的な対話を交わす。

彼らの対話は、友情、クリエーティブなコラボレーション、新しいテクノロジーと創造性、アイデンティティーとコミュニケーション、死とその先に残るものなど、多岐にわたるテーマを探っている。

  • アート
  • 丸の内

「三菱一号館美術館」で、ピエール=オーギュスト・ルノワールPierre-Auguste Renoir、1841〜1919年)とポール・セザンヌPaul Cézanne、1839〜1906年)の2人展が開催。パリの「オランジュリー美術館」が、ルノワールとセザンヌという印象派・ポスト印象派の2人の画家に初めて同時にフォーカスし、企画・監修をした世界巡回展だ。 


ルノワールの『ピアノを弾く少女たち』やセザンヌの『画家の息子の肖像』などの代表作をはじめ、肖像画、静物画、風景画、そして、2人から影響を受けたパブロ・ピカソ(Pablo Ruiz Picasso)を加えた52点の作品を展示。モダンアートの原点を探り、自在で多様な表現が生み出される2人の巨匠の、卓越した芸術表現を楽しめる。

ミラノ、スイス、香港を経て日本へ。国内唯一の会場となる本展を見逃さないように。

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  • アート
  • 箱根

「ポーラ美術館」で、フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh、1853〜1890年)をテーマとした展覧会が開催。今日に至るまで、芸術家たちがゴッホからの影響を糧としながら、それぞれの時代にふさわしい新たな情熱をどのように生成してきたのかを振り返る。  

わずか37年の生涯の中で、数多くの絵画を制作したゴッホ。その名声を築き上げているのは、うねるような筆触と鮮やかな色彩による独自の様式、そして、劇的な生涯に対する評価であるといえる。

ゴッホの作品や芸術に一生をささげたその生き方は、美術に関わる者たちの心を揺さぶるだけではなく、文化、そして社会といった広範な領域にインパクトを与えた。

会場では、異なる地域で描かれたゴッホによる油彩画や、ゴッホに影響を受けた作品として、戦前の画家から岸田劉生、前田寛治、中村彝などを展示する。

また、歴史上の人物や芸術作品に扮装(ふんそう)したセルフポートレートで知られる森村泰昌から、福田美蘭、桑久保徹、オランダ在住の映像作家であるフィオナ・タン(Fiona Tan)まで、多様性にあふれた現代におけるゴッホの変奏曲を紹介する。

見る者の心を揺さぶるゴッホ作品の魅力に迫る本展。ぜひ足を運んでほしい。

  • アート
  • 虎ノ門

虎ノ門ヒルズの「トウキョウ ノード(TOKYO NODE)」で、デザインを体感する展覧会「デザインあ展neo」が開催。デザインについてさまざまな思考・発見を楽しんでもらう展示を行う。

「デザインあ展neo」は、NHKの「Eテレ」で放送中の番組「デザインあneo」のコンセプトを、体験の場へと広げた展覧会だ。「みる(観察)」「かんがえる(考察)」「つくる・あそぶ(体験)」のステップでデザインを体感していく作品や、360度のスクリーンに囲まれて映像と音楽を身体で感じる作品などが展開する。

また、約35点の新作が公開され、番組でおなじみのコーナーも登場。さらに、会場の特徴的なギャラリー空間を生かした展示も構成される。

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  • アート
  • 早稲田

「草間彌生美術館」で、草間彌生の芸術の根源ともいえる「病」に着目する「宇宙からの音響」が開催。初期から現在に至るまでの多様な作品群と関連資料を展示する。

幼い頃から幻覚や幻聴に悩まされてきた草間。精神疾患は、創作活動に多大な影響を及ぼした。1950年代、草間は自らの妄想に駆り立てられるように、膨大な数のドローイングを描き、作家として躍進する。

渡米後は、水玉や網目などの無限に反復するパターンで全ての存在を覆い尽くし、自らもその世界へと埋没していく「自己消滅」の儀式ともいうべき作品群に取り組む。

1970年代後半から80年代にかけては、精神科病院の病室で小作品を数多く制作。その後、複数の画面にわたる絵画や巨大なバルーンなど、作品は拡大していった。

草間の言う「自己消滅」とは、もはやアーティスト個人の内面の問題ではなく、荘厳な「宇宙からの音響」のさなかに身を置くような感覚へと鑑賞者を誘うだろう。宇宙の果てまでも増幅していく、豊かな創造力の所産を体感してほしい。

  • アート
  • 豊洲

豊洲の「クレヴィアベース東京(CREVIA BASE Tokyo)」で、「ラムセス大王展 ファラオたちの黄金」が開催。エジプト史上「最も偉大な王」と称されるラムセス大王と、その時代にまつわるエジプトの至宝180点を公開する。

本展は、過去最⼤級の古代エジプト展であり、エジプト政府公認の展覧会。3000年以上前の古代エジプトの遺物や芸術品を、最⾼の状態で管理と保存しているエジプト考古最⾼評議会の特別⽀援の下、展⽰する。

また、バーチャルリアリティー(VR)で、ラムセス2世が建てた最も壮大な遺跡「アブ・シンベル神殿」とネフェルタリ王妃の墓にスポットを当て、スリル満点の没入体験が楽しめる。なお、VR体験は、入場料とは別に料金2,500円(税込み)が必要だ。

エジプト新王国時代の芸術品が放つオーラを体感しよう。

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  • アート
  • 埼玉

「ハイパーミュージアム飯能」のオープニング企画展として、現代美術作家で世界的アーティストであるヤノベケンジによる「宇宙猫の秘密の島」が開催。立体作品・原画・特別映像に加え、施設の立地を生かした森と湖での巨大な作品など、約80点の作品群が集合する。

時代の物語を包括し、強烈なインパクトを持つキャラクターの巨大彫刻を作り続けるヤノベ。見どころは、敷地内の宮沢湖に出現する眠り猫の形をした巨大な人工島だ。また、『BIG CAT BANG』のバックストーリーや、猫の仲間たちの立体作品、絵本『トらやんの大冒険』と『ラッキードラゴンのおはなし』の全ての原画が集合する。

自然豊かな湖畔のロケーションに誘発され生まれた作品群は、鑑賞者の心の中にもイマジネーションの爆発を拡散させるだろう。

もっとアート散歩をするなら……

  • アート
  • 公共のアート

無数の美術館やギャラリーが存在し、常に多様な展覧会が開かれている東京。海外の芸術愛好家にとってもアジアトップクラスの目的地だ。しかし、貴重な展示会や美術館は料金がかさんでしまうのも事実。

そんなときは、東京の街を散策してみよう。著名な芸術家による傑作が、野外の至る所で鑑賞できる。特におすすめのスポットを紹介していく。

  • トラベル

東京には魅力的なアート展示や、パブリックアートなどがある。しかし建物が密集しているため、大規模なアート施設を新たに造ることは困難だろう。希少な絵画やサイトスペシフィックなインスタレーションを観たいのであれば、千葉、神奈川、埼玉といった近隣の県へ日帰りで出かけるのもいいかもしれない。

自然の中でリラックスしてアートに触れることができる休日に訪れたいアートスポットを紹介する。

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ここではタイムアウトワールドワイドによる、ピカソやミロ、村上隆などの作品を楽しめる世界の「アートレストラン」を紹介。美術館に行く代わりに、レストランを予約してみるというのもいいかもしれない。

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