「東京都写真美術館」で、ポルトガルを代表する映画監督のペドロ・コスタ(Pedro Costa)による、日本最大規模で東京で初となる美術館での個展が開催。近年、映画だけでなく世界各地で展覧会も開催し、表現の領域を広げるコスタの集大成ともいえる展覧会だ。
ドキュメンタリーとフィクションの境界を揺るがす独自の映像表現で、現代映画の最前線を切り開いてきたコスタ。本展は、コスタが10代の頃に出合い、深い影響を受けたスティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)の1973年のアルバム『Innervisions』と同名のタイトルを掲げる。音楽を通して社会と個人の関係に迫ろうとしたこのアルバムの精神は、彼の映像制作の方法論とも深く響き合っている。
会場では、ポルトガルで暮らすアフリカ系移民の歴史を照らし出した『ホース・マネー』など、コスタ作品において重要な役割を担う登場人物たちや、彼らが生きる場所に関わる映像作品などを紹介。コスタの映像表現とその背景にある歴史的・社会的文脈に触れることで、「インナーヴィジョンズ」という主題を考察していく。
映像・写真・音が交錯する展示空間を歩きながら、その断片を鑑賞者の手で編み直すように体験できる本展。映画とは異なる鑑賞体験を楽しんでほしい。