Dressing Up: Pushpamala N
「Dressing Up: Pushpamala N」Return of the Phantom Lady, No.5, 2012 ©Pushpamala N
「Dressing Up: Pushpamala N」Return of the Phantom Lady, No.5, 2012 ©Pushpamala N

東京、7月に行くべき無料のアート展8選

銀座・六本木・恵比寿・表参道などの注目の展示を紹介

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日々を豊かにするグッとくるアートとの出合い。本記事では、2025年7月に都内で開催する無料のアート展を届ける。

杉本博司、アニッシュ・カプーア、友沢こたおらが参加する、三島由紀夫の遺作をテーマにしたグループ展や、評価が高まり続ける写真家・深瀬昌久の写真展など、厳選したものをピックアップ。リストを片手に街へと繰り出そう。

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  • アート
  • 銀座

「Akio Nagasawa Gallery Ginza」で、デジタル作品や油彩・アクリル画の制作を続け、精⼒的に作品を発表するTORAJIROによる個展「Boys Just Want to Have Fun」が開催される。

自身の制作について、「セクシュアルマイノリティーとして、子どものころから感じていた孤独や不安をテーマに絵を描いている」と話すTORAJIRO。これまで社会問題を背景に、内面の葛藤や孤独、動物や自然との共存の重要性を表現し続けてきた。

本展では、「声⾼な主張はない『静かなレジスタンス』の集積」として、沈黙と⾊彩を通して感情の痕跡を残す、新作を含む作品群を展観する。

政治的スローガンを叫ぶ代わりに、沈黙と色彩を通して、より深い真実を語る絵画。本展を通じて、「日々を楽しむこと」「誰かを愛すること」「自分に正直になること」といった、ごく当たり前で、だからこそ奪われやすい行為の尊さを再確認してほしい。

  • アート
  • 表参道

GYRE GALLERY」で、グループ展「永劫回帰に横たわる虚無 三島由紀夫生誕100=昭和100年」が開催。国内外の現代美術家によって、三島由紀夫(19251970年)の遺作『豊饒の海』をテーマに、戦後日本美術の空虚と再生を見つめ直す。

フランスの哲学者、ロラン・バルト(Roland Barthes、19151980年)は、「表徴」があふれている中心のない空虚な日本に注目し、それを「意味の帝国」に対し「表徴の帝国」と表現した。天皇・都市・女形・すき焼き・礼儀作法・パチンコ・学生運動も表徴であって、意味から解放された日本文化の自由度を描写した。

本展では、バルトが語った「表徴の帝国」としての日本と、三島が自決する数カ月前に遺した「空虚な国」という視点を手がかりにする。そして、アーティストたちが「意味」から解放された表現を通して、中心なき美の風景を浮かび上がらせる。

参加アーティストは、中西夏之、ジェフ・ウォール(Jeffrey Wall)、杉本博司、アニッシュ・カプーア(Anish Kapoor)、池田謙、森万里子、平野啓一郎、友沢こたおだ。

企画:飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所 所長)

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  • アート
  • 六本木

「フジフイルム スクエア(FUJIFILM SQUARE)」で、写真家・深瀬昌久(1934〜2012年)の写真展が開催。近年、展覧会の開催や写真集の発刊に加え、半生を描いた映画『レイブンズ』が公開されるなど、評価が高まり続けている深瀬の原点をたどる。

新しい写真表現を生み出す多くの写真家たちが出現した1960〜70年代の日本。その中で深瀬は、徹底的に「私性」を追求し、日本独自の表現といわれる「私写真」の先駆者として、日本の現代写真史に比類ない足跡を残した。

家族、愛猫、さらには自分自身と、常に緊密な関係性の中で写真を撮り続けた深瀬。中でも、妻・洋子を10年あまりにわたって撮り続けた写真群は、深瀬を語る上で欠かすことのできないものだ。

本展では、深瀬手製の黒マントをまとった洋子をとらえた、没後初の発表となるビンテージプリント33点を展示する。自己、他者、そして写真の本質について、大きな問いを投げかけるだろう。

  • アート
  • 銀座

シャネルネクサスホール(CHANEL NEXUS HALL)」で、写真を主なメディアとして創作活動を行うアジアのアーティストにフォーカスしたシリーズとして、インド出身のアーティスト、プシュパマラ・N(Pushpamala N)を紹介する。

インドのベンガルールを拠点に活動するプシュパマラは、彫刻家として創作活動を開始した。1990年代半ばからは、自らがさまざまな役柄に変装し、示唆に富んだ物語を作り上げるフォトパフォーマンスやステージドフォトの創作を始める。

作品は、女性像の構築や、国家の枠組みを探求するもので、美術史・アーカイブ資料・大衆文化から引き出された象徴的なイメージや原型を丹念に再現している。

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  • アート
  • 乃木坂

「TOTOギャラリー 間」で、「2025年日本国際博覧会」(以下、大阪・関西万博)の休憩所ほか設計業務の公募型プロポーザルで選ばれた、1980年以降生まれの20組の建築家たちによるグループ展が開催。会場を埋め尽くす図面や模型などの資料と言葉を通じて、彼らの奮闘を追う。

20組の建築家は大阪・関西万博の休憩所・トイレ・サテライトスタジオなどの施設の提案に当たり、仮設建築物を造るという前提の下、社会や建築に対する問いを立てた。そして、自らの仮説を手がかりに試行錯誤を続けてきた。

本展は、彼らがどのような問題を提起し、複雑な状況に向き合いながら、どのように案を実現させてきたのかに迫るドキュメンタリーだ。また、彼らの実践から、新しい建築の当事者像を浮かび上がらせる試みでもある。

現実社会の中で建築を実現させるために奔走する全ての人々と共有し、これからの建築について議論していく場となることを願う本展。ぜひ足を運んでほしい。

  • アート
  • 銀座

「銀座メゾンエルメス ル フォーラム」で、グループ展「体を成す からだをなす」が開催。「社会的身体」をテーマに、13人のアーティストによる1973年から2025年までの作品を紹介する。

本展では、アートによってもたらされる日常や秩序の可変性に着眼しつつ、個人あるいは集団的に機能する社会的な身体を浮き彫りにする作品を考察。身体と密接に結びついた芸術形式であるパフォーマンスとして、ヘレン・チャドウィック(Helen Chadwick)のジェンダーを問う『In the kitchen』や、アンドレ・カデレ(Andrei Cădere)の『丸い木の棒』などの1970年代を代表する写真から始まる。

また、アナ・トーフ(Ana Torfs)のビデオ『サイドショー』や、ネフェリ・パパディムーリ(Nefeli Papadimouli)のコスチュームとビデオ作品などを紹介。さらに、クリスティーヌ・ドゥクニット(Christine Deknuydt)のドローイングは、描くことで痕跡が消滅するような実験的な態度で存在の境界を問いかける。


彼らの作品を通して、多様な視点や行為が交差する場を体験してほしい。

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  • アート
  • 江東区

「ギャラリー エークワッド(Gallery A4)」で、数多くの建築のサイン計画などで知られるグラフィックデザイナー・廣村正彰の展覧会が開催。学校や商業施設、工場、美術館、路上などそれぞれの場所に応じた約30のデザインを、廣村の言葉とともに、写真、映像や実物資料を交えて展示する。

廣村は、人の意識や心が動く瞬間を見つめ、情報だけでなく、共感や愛着など新たな価値を生むデザインを作ってきた。本展では、「記憶と痕跡」「字と美」「シルエット」「矢印」「仮設的」の5つのキーワードでエリア分けされ、空間を歩きながら廣村の思考をたどる体験ができる。

現代社会へ向けて廣村が提案する、デザインの可能性を考えてみてほしい。

  • アート
  • 恵比寿

恵比寿の「MEM」で、近年ドローイングや、絵画の制作に力を注ぐ作家・松井智惠の個展が開催。松井が2017年から継続している「Picture」シリーズの第4弾となる展覧会で、パステルをメインに水彩の複合技法、油彩、ネオンの作品を紹介する。

松井が2024年に制作した一枚の作品「リチャペル・アテル」という題を、本展では使用。その絵は版画技法のモノタイプによって転写されることで、元の絵が反転して鏡合わせの架空の世界が現れる。その絵の世界の住人に、松井が造語によって名付けたのが「リチャペル・アテル」だ。

本展は、「リチャペル・アテル(彼/彼女)」がいる世界を舞台に構成し、その入り口として短い物語が付随。また、展覧会の副題には「発するもの、抑えるもの」という言葉が添えられている。

松井自身が何かに抑圧され、声を飲み込むような感覚で描いた作品に封じ込めた思いと、アテルが住む世界が「絵Picture」を媒介に接続する。

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  • アート

2025年の下半期も心揺さぶるアートと出合いたい。「阪神・淡路大震災」から30年を迎え、「2025年日本国際博覧会」(以下、大阪・関西万博)が開催されている中、大阪・京都・兵庫では注目の展示が盛りだくさんだ。

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