[category]
[title]
「SORAYAMA 光・透明・反射 ーTOKYOー」展に行ってきた

現在、京橋の「CREATIVE MUSEUM TOKYO」で、2026年5月31日(土)まで開催している、アーティスト・空山基(そらやま・はじめ)の展示「SORAYAMA 光・透明・反射 ーTOKYOー」に行ってきた。
本展は、空山の半世紀以上にわたるキャリアの中でも最大規模の回顧展。1970年代後半から現在に至るまでの代表作を網羅し、そのクリエートを圧倒的スケールで総観できるというフレコミであったが、まあもうさすがのヴォリュームであった。あまたの作品から放たれるエネルギッシュなオーラたるや凄まじく、さながらロックバンドのライヴを観た後のような、快い消耗を感じた。
空山基でしかないクールネス
セクションを大きく分けると、①大型キャンバス作品、②インスタレーション、③立体作品、④原画、⑤コラボレーションもの、⑥4Dインスタレーションの6つから成り立っている。この半世紀間に制作されたさまざまなメディアの作品が並んでいるにもかかわらず、それらが喚起する感慨はたった一つ。それは「マジかっけー」だ。
例えば、ジェームズ・ブラウンがジェームズ・ブラウンでしかないように、寺沢武一が寺沢武一でしかないように、空山基はずっと空山基でしかありえない、同一種類のクールネスを発揮し続けている。
余談だが、寺沢が「コブラ」でセクシーな女性型ロボットを登場させたのと、空山がウイスキー広告のために初めてロボット作品を描いたのは、同じ1978年のことである。
セクシーロボットは、恐らくフリッツ・ラング(Fritz Lang)の『メトロポリス』がイメージソースになっていると推測するが、女性型ロボットに乳首をセットアップし、大ぶりのイヤリングなどを装着させたのは本当に発明だし、慧眼だと思う。「機械もエロいんだ」って発想のラジカルさたるや、すごい。
コンピューターグラフィック的な美的感覚の先駆者であり、ドカーンとパワフルで、すさまじく精緻で、アメリカンオールディーズへの憧憬(しょうけい)がにじむ『パルプ・フィクション』的なテイスト漂う作品は、まさしく「かっけー」という表現がしっくりくる。「格好いい」ではなく、「かっけー」なのだ。
誤解を恐れずに言えば、超一流のB級、凡百のファインアートをしのぐ圧倒的娯楽性を担保したポップアートだと思う。とにかくどれを見ても、視神経が喜ぶのが分かる。
フィジカルな刺激に満ちた展示
そうした作品の強烈な娯楽性をよりブーストするようなディレクションが施された本展は、フィジカル的な刺激に満ちており、とにかくドキドキワクワクさせられる。空山は本展を「遊園地」に例えたが、超ベテランのアーティストの回顧展において、これほどエキサイティングでエンターテインメント性の高いものはなかなかないと思う。
「タイトルを付けたら負けだと思っています。絵で描いているんだから文字はいらないですし」と語る空山の姿勢を反映し、作品解説などが書かれたキャプション類が一切排されているというのも特徴的だ。爆発するイマジネーションが、ひたすらに五感を攻め立てる。最初から最後までトバしまくりである。
御年79歳の空山の新作なども展示されているが、それが半世紀前の作品となんら変わることのないバイブスを放っていることにも驚く。
ずっっっっっっとクールだし超エネルギッシュ。枯淡の境地などとは到底無縁そうなそのバイタリティーは、超人というほかはない。このギンギンぶりに類例があるとすれば、田名網敬一ぐらいのものではないか。
光・透明・反射
本展の「光・透明・反射」とは、空山が常々語っている自身の作品のコンセプトだそう。「光を表現するためには空気を描く必要がある」「空気を描くには透明を表現する必要がある」「反射表現をいかにして征服するのかが鍵を握る」とインタビューなどで再三語っているそうだが、このあたりに着目すると、なるほど確かに面白い。
アクリル絵の具という制限された画材を駆使し、光の方向や明度の強さを巧みに演出し、ストレートかつ極めてナチュラルに目にくるように仕上げるその手腕たるや、発明だし革命だし、唯一無二だと思う。一種のサイケデリックアートだ。これどうやってやってるんだろう、と思って近づいてまじまじと観察してみても、どうなっているかはやっぱり分からない。
「空山ワールド」へトリップ
原画でも大型キャンバス作品でも、その光の精度は少しも変わるところがなく、そのこだわりっぷりにはアーティストというよりむしろアルチザン(職人)的な趣を感じる。名人芸というほかにないその光彩美は、ここではないどこかを明確に描き出し、鑑賞者をトリップへ誘う。
絵画だけではなく、「Floating Through Space」と題されたセクションではまるで宇宙空間に迷い込んだかのような没入体験を提示しているし、続く「Mirror Maze」ではロボットが収められた鏡面のショーケースがずらりと並び、エレガントなサイバーパンク感覚を味わわせてくれる。
また、これだけ確固たるスタイルを持ちながら、それらをほかの潮流とうまくミックスするセンスにおいても驚異的だ。
コラボレーションにスポットを当てたコーナーには、「ブルガリ」や「ディオール」といったハイブランドとのコラボレーションで生まれたアイテムが展示されていた。どれも空山以外の何物でもないのに、それが企業プロダクツとしてもちゃんと成立しているというバランス感覚にも、改めて驚かされる。
空山が長きにわたってあらゆる方面からラブコールを受け続けているのは、こうした優れたバランス感覚も持ち合わせているからなのだと思った。
というわけでツラツラ書いてまいったが、本展はかなりおすすめ。年季の入ったオールドファンからミリ知らのビギナーまで楽しめる間口の広さがあるし、極上の「まじかっけー」を味わえる。美術館に行くというより、テーマパークに行くような感じでぜひ鑑賞してみてほしい。
関連記事
『90年代英国カルチャーをスクリーンで体感、109シネマズプレミアム新宿で特集上映を実施』
『世界の「最高の映画館100選」に東京エリアから3館がランクイン』
『MIYASHITA PARKに新たなカルチャースペース「Park in Park」が誕生』
『DJ・須永辰緒によるレコードバー「moderno」が駒沢大学にオープン』
東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら
Discover Time Out original video