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高輪ゲートウェイに実験的ミュージアム「Mon Takanawa」がオープン

100年先の文化を考える実験場

テキスト
Akiko Mori
Writer
MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa Toyoshima | 「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」外観
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高輪ゲートウェイ駅直結の複合施設「TAKANAWA GATEWAY CITY」が、2026年3月28日(土)にグランドオープン。いよいよ街として本格始動する。

これまで「NEWoMan TAKANAWA(ニュウマン高輪)」など一部エリアが先行開業していたが、今回のオープンで注目を集めているのが「Mon Takanawa: The Museum of Narratives(以下、Mon Takanawa)だ。100年先へ文化をつなぐことを掲げるこの実験的ミュージアムは、高輪ゲートウェイを街に育てる拠点として期待されている。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa Toyoshima正面エントランス

高輪ゲートウェイ駅の改札を抜けると、整列して行進する小さなロボットたちが出迎えてくれる。同駅の近未来的な風景はもはやお馴染みだが、その先に現れる建物は、これまでの東京にはなかった存在感を放っている。

植物が外壁をらせん状にぐるりと覆い、まるで建築そのものが自然をまとっているようだ。ここは単なる美術館ではない。私たちの営みに「問い」を投げかける「門(MoN)」であり、100年先の文化を考えるための実験場、そして物語(Narratives)が生まれる場所でもある。

本記事では、地上6階・地下3階から成る新たなミュージアムの試みをレポートする。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa Toyoshima2階のエントランスロビー「未来文化の門」

100年先への問いかけが始まる場所

エントランスに設置された「未来文化の門」では、32人の著名人が「100年先に残したい文化」についての回答を提示。音楽プロデューサーの松任谷正隆は「マニュアル車」を挙げ、ノーベル賞受賞者の山中伸弥は「AIのない時間」として愛用のランニングシューズを展示する。

例えば文筆家の松浦弥太郎は、「道草」という急がないための知恵を提案。いずれの展示からも「人間らしい時間」を大切にしたいという思いが伝わってくる。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa Toyoshima著名人の私物も展示されている

著名人の私物も展示されている

同施設が革新的なのは、美術館という枠を完全に超えた設計思想にある。「BOX300」「BOX1000」「BOX1500」、そして約100畳の畳スペース「Tatami」といった、広さで区切られた空間は、展示だけでなく音楽ライブや演劇、和楽器演奏など、あらゆる文化活動を受け入れる。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa Toyoshimaステージ全面にLEDが設置された最新のシアター空間、Box1000。スタンディングで最大2000人収容できる

従来の「一つの箱を多目的に使う」発想ではなく、初めから境界のない融合を前提としているのだ。館内には木材が随所に使われ、近代的な建築の中に日本的なスピリットが融合している。平日は働く人々でにぎわうが、土・日曜日は閑散としがちな高輪を、毎日人が集い続ける街へと変えていくビジョンが、建物の隅々から感じられる。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa Toyoshima青山のアートセンター「Spiral」が手がける開放的なカフェレストラン「MoN Kitchen by Spiral」

プラレールの世界に迷い込む圧巻の「鉄道ビュー」

Mon Takanawaの魅力は、何といっても意図的に設計された「鉄道ビュー」だ。高輪は江戸時代、日本で初めて海上に築堤を築き、鉄道を走らせた歴史ある場所として知られている。

館内の木製ベンチは、当時の築堤を支えた松杭(まつくい)を掘り起こして再利用。さらに屋上にある神社の敷石には、築堤の石が使われ、石に刻まれた白い数字がその歴史の痕跡を物語っている。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa Toyoshima海底で150年以上築堤を支え続けた松杭を再利用したベンチ

特におすすめなのが「トレインテラス」。5階のBOX1500へ続く長いスロープ状の廊下である。右側が全面ガラス張りになっており、複数の線路が交差するダイナミックな光景を少し高い位置から見下ろせる。

新幹線や黄色い点検車両が次々と行き交う様子は、まるで子どもの頃に遊んだプラレールの中に入り込んだような錯覚を覚える。鉄道好きでなくても足を止めて見入ってしまう光景だ。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa Toyoshimaトレインテラスは、5階へと続く緩やかなスロープ状の通路。右手一面のガラス越しに「鉄道ビュー」が広がる

都市の避難所で味わう食体験

さらに6階に上がると、この鉄道ビューを眺めながら草木に囲まれた半屋外空間「足湯テラス」で足湯に浸かれる。さらに、「月見テラス」と名付けられたスペースに配された水盤の水面には、季節や時間とともに変わる月の表情が楽しめる。都会の風を感じながら、行き交う電車と水面を眺める贅沢な時間は、東京でもここでしか味わえないだろう。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa Toyoshima月見テラスで船を模した石の上に立ち、思いを馳せてみては

月見テラスの横には、カフェ「MoN Garden Restaurant LAUBE(ラウベ)」(「ラウベ」​​とはドイツ語で「草陰の小屋」を意味)があり、水面に映る月を眺めながら、食事と飲み物が楽しめる。コンセプトは「都市の空間に浮かぶ文化の余韻を静かに受け止める避難所」で、JR東日本の沿線各地の旬の食材を軸に、野菜や穀物を中心としたプレートやスープ、焼きたてのサンドイッチなど、滋味深いメニューが並ぶ予定だ。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa Toyoshima同じく6階にあるMon Garden Restaurant LAUBE

同店で味わえる「Mitosaya薬草園蒸留所」とコラボレーションしたモクテル「季節のシュラブ」は、イチゴの爽やかな酸味が印象的な一杯。「キャロットケーキ」や「チョコレートケーキ」も絶品で、将来的には屋上の農園で収穫した野菜もメニューに加わる予定だという。食材も、ここで「循環」する仕組みなのだ。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa ToyoshimaMon Garden Restaurant LAUBEの店内

入館料なしで楽しめる「街の一角」

圧巻なのは、4階に広がる約100畳の畳スペースだ。空間に漂う懐かしい畳の香りが印象的で、足を踏み入れた瞬間、懐かしい記憶がよみがえる。寝そべったり、座ったりして、畳の多目的性を現代の都市空間で再発見できる贅沢な場所だ。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa ToyoshimaTatamiの畳床には、茶系飲料の製造過程で排出される「茶殻」をアップサイクルした素材を使用

日本に根づく「循環」の思想を体感

展示のオープニングを飾る「ぐるぐる展ー進化しつづける人類の物語」は、私たちの世界に潜む「循環」や「らせん」の真理を、音声ガイドを聞きながら体験する展覧会だ。人類は、はるか昔から「ぐるぐる」に可能性を見いだし、文明を築いてきたことが分かる。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa Toyoshima5階のBox1500で開催される「ぐるぐる展」

規格外のハクサイがコンクリートの約4倍の強度を持つ新素材へと生まれ変わる展示は、「リサイクル」を超えた価値の転換を実感させる。一方で、神社の建物を決まった年数ごとに建て替える式年遷宮といった伝統や、人間の排泄(はいせつ)物を地球の循環に戻す「野糞研究家」の活動も紹介され、日本に根づく「循環」の思想を体感として理解できる構成だ。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa Toyoshima展示風景

終盤では、渦状の映像に包まれるインスタレーションが投影。出口に用意されたおみくじには、「ぐるぐると思い悩んで進もうよ」と記されていた。迷うことや悩むこと自体にもエネルギーが宿っているのだと、静かに背中を押される。

MoN Takanawa: The Museum of Narratives
Photo: Kisa Toyoshima展示風景

人間がより人間らしく進化する場所

自然界に生かされながら自然を生かし、ロボットやAIとも仲良く共存する。Mon Takanawaは、人間がより人間らしく進化していくためのヒントに満ちた場所だ。

高輪ゲートウェイは羽田にも近く、広域品川圏のシンボルとして、100年先の東京を想像しながら私たちの営みに問いを投げかけ続ける文化空間として成長していくだろう。「ぐるぐる」と巡る体験を通して、100年先につながる「今ここ」を、ぜひ味わってほしい。

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