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カスタムスピーカーの真価が発揮される特等席で音と酒に酔いしれる

渋谷の喧騒(けんそう)から少し離れた並木橋エリアに、2026年3月6日、ミュージックバー「PASS(パス)」がオープンした。手がけるのは、表参道のテクノ・ハウス専門店「VENT(ベント)」のチームである。
店名の由来は、みんなで音楽をシェアするという「People's Audio Sharing Space」。そして「次の世代に伝えたい音」という意味も込められている。
同店の構想はコロナ禍にさかのぼる。「イベントができない時期にサウンドシステムの研究をしていて、古い文献と最新の理論を組み合わせた今の構想が浮かびました。このシステムを生かすならミュージックバーかなと」と、プロデューサーの大城啓一郎は語る。約5年をかけて温めてきたアイデアが、ようやく形になったのだ。
カウンターの奥に設置されたスピーカーは、往年のJBLのキャビネットをベースに内部をフルカスタムしたもの。完成には半年を要したという。音の方向性は懐かしい感じでもなく、最先端のハイファイなものでもなく、「聴いていて楽しい音」を目指した。そして、VENTがテクノ・ハウスに特化しているのに対し、PASSではジャズやダブ、ヒップホップに歌モノまで、ジャンルを横断した曲がかかるのを特徴としている。
カウンターの中心には、「Sweet Spot Sharing Seat」と呼ばれる席がある。1曲ずつ交代で利用する仕組みで、その名の通り、置く場所をミリ単位で調整したスピーカーのサウンドが最も美しく聴こえる特等席だ。
特に、ボーカルの入った曲が分かりやすいとアドバイスを受け、実際に座ってみると、自分だけに向けてその曲が演奏されているような感覚になった。
また、食事のメニューはないが、ドリンクに力を入れている。スタンダードなものはもちろん、メスカルをベースに自家製の燻製(くんせい)塩を使った「スモーキー・レモンサワー」や、水出しコーヒーを使った「珈琲・マティーニ」など、個性的なカクテルがラインアップする。
さらに、ソムリエ資格を持つスタッフが厳選したワインもおすすめだ。京都の「ethelvine(エーテルヴァイン)」から仕入れたナチュラルワインをはじめ、東京ではなかなか飲めない希少なものも揃える。「食事と合わせなくとも、ワイン単体で十分に楽しめるものを置きたいと思っています」と、セレクトについて教えてくれた。
今後は、レコードのみのDJイベントやリスニングイベントを行う予定で、レギュラーイベントも順次立ち上げていくという。また、VENTと連携し、PASSの来店者にVENTの割引パスの発行も考えている。それぞれ異なる音楽体験を楽しむ夜もいいかもしれない。
予約なしでふらっと立ち寄れるのも同店の魅力の一つ。カウンターでじっくりと音楽と向き合ったり、テーブル席で気の置けない友人と話しながらゆったりとした時間を過ごしたりするのもいいだろう。気張らずに訪れられる同店に、ぜひ足を運んでみてほしい。
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