ゆうめい10周年全国ツアー公演『養生』
画像提供:劇団ゆうめい/撮影:佐々木啓太/ゆうめい10周年全国ツアー公演『養生』/セットの美術写真
画像提供:劇団ゆうめい/撮影:佐々木啓太/ゆうめい10周年全国ツアー公演『養生』/セットの美術写真

東京、12月に観るべき舞台6選

『くるみ割り人形』新制作から注目の劇作家の『養生』まで

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テキスト:高橋彩子

2025年も師走を迎えた。多彩なジャンルの舞台が繰り広げられるが、バレエではクリスマスイブの夜に起きる物語を描いた『くるみ割り人形』が定番。今年は、新国立劇場バレエ団が、新制作版を上演する。

ダンスでは、恒例の「YOKOHAMA DANCE COLLECTION(ヨコハマダンスコレクション)」が開催中。同時期に横浜で行われている「横浜国際舞台芸術ミーティング」では、「韓国コンテンポラリー・ダンスのゴッドマザー」とも評される振付家、アン・ウンミ(Ahn Eun-Me)の『北朝鮮ダンス』に注目が集まる。

K-BALLET Optoは、柳田國男生誕150周年の今年、代表作の『遠野物語』をもとにした作品を発表する。古典バレエの枠にとどまらない舞台を作り上げてきた同プロジェクトだが、今作でもK-BALLET TOKYOのダンサーと麿赤兒や尾上眞秀などとの競演が見ものだ。

新国立劇場の演劇部門では、『夜中に犬に起こった奇妙な事件』でトニー賞演劇作品賞を受賞した劇作家サイモン・スティーヴンス(Simon Stephens)の『スリー・キングダムス Three Kingdoms』が初演。劇団ゆうめいが10周年で再演する傑作『養生』も見逃せないだろう。12月の観るべき舞台の見どころを詳しく紹介していこう。

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  • ダンス

横浜で毎年開催され、31回目を迎える「YOKOHAMA DANCE COLLECTION(ヨコハマダンスコレクション)」。コンペティションや公演から成るコンテンポラリーダンスの祭典のうち、コンペティションや一部の公演は終了したが、まだまださまざまな舞台を観ることができる。中でも見逃したくないのが、台湾の「クラウド・ゲイト・ダンスシアター(雲門舞集)」の『WAVES』だ。

1973年、台湾初のコンテンポラリー・ダンス・カンパニーとして創設され、初代芸術監督リン・ファイミン(Lin Hwai-Min)の振り付け作品で世界的に知られることになったクラウド・ゲイト・ダンスシアター。リンは2019年いっぱいで退任し、2020年からは鄭󠄀宗龍(チェン・ゾンロン)芸術監督の下で活動している。

今回上演する『WAVES』はそのチェンが振付・コンセプトを、アーティスト・コンポーザー・プログラマーの真鍋大度(まなべだいと)がコンセプト・ビジュアル・音楽・プログラムを手がけ、2023年に初演された作品だ。さまざまな波を彷彿(ほうふつ)とさせるソロ・デュオ・群舞が、音や映像とシンクロするさまは必見である。

また、日本のcontact Gonzoと香港のTS Crewが「橋を架ける」をテーマに創作し、台湾の台南芸術祭が共同制作に入って上演した『Bridging Bridge』も、今だからこそぜひ観たい作品であり、小㞍健太が建築家・アーティストのハネス・マイヤー(Hannes Meyer)と縁側を多角的に考察し共同制作したという『Engawa, The Self in Season』も気になる。

さらに、梅田宏明、福永将也、WETTRIBUTEなど、注目のアーティストのダンスが目白押し。

それぞれの公演日や会場、演目などの詳細は、公式ウェブサイトをチェックしてほしい。

※11月27日~12月13日/開演時間は演目により異なる/料金は3000円〜、U-25・ダンサー割3,000円、高校生以下1,000円

「横浜国際舞台芸術ミーティング(YPAM)」が2025年も開催される。これは国内外の舞台芸術関係者が公演やミーティングを通じて交流するプラットフォームで、ここで関係者の目にとまり、招聘されるというケースも少なくない。一般の観客にとっても、様々な気鋭のアーティストのパフォーマンスを観られる催しとして愛され、今回で30回目を迎える。

実験的なプロジェクトの簡易プレゼンテーションとディスカッションを行う「YPAMディレクション」、舞台芸術関係者のシンポジウムやミーティングから成る「YPAMエクスチェンジ」、YPAMが国内外の芸術文化団体と共同で公演する「YPAMショーケース」、YPAM会期中に行われる自主公演を集めた「YPAMフリンジ」などから成るYPAM。中でも注目したいのが、ショーケースの一つ、アン・ウンミの『北朝鮮ダンス』だ。

アンは、もとは同じ国でありながら今では文化的に異なるところも多い北朝鮮の軍事パレード、扇の舞、アクロバット、伝統舞踊、村の踊り、さらには独特のジェスチャーなどに着目し、インターネットから素材を採集して本作を創り上げた。

韓国に生まれ、ニューヨークで活動後、韓国に戻って「大邱市立舞踊団」の芸術監督に就任し、2018年には「パリ市立劇場」のアソシエート・アーティストとなるなど、国際的な経験を持つアンが、ダンスを通して見つめる北朝鮮と韓国。そこからどんなものが浮かび上がるのだろうか?

このほか、常にダンスの振り付けとは何かを鋭く問うてきたフランスの振付家ジェローム・ベル(Jerome Bel)が自らを語る(日本版は舞踊家の川口隆夫によって演じられる)『ジェローム・ベル』、イタリアの振付家アレッサンドロ・シャッローニ(Alessandro Sciarroni)が、「回転」や伝統舞踊の実践・リサーチに基づき探求した『ページをめくるのを怖がらないで』『ラストダンスは私に』『第三の対話:ある風景の中で』なども楽しみだ。

各プログラムの詳細は、公式ウェブサイトでチェックしてほしい。

※11月28日~12月14日/会場・開演時間・料金はプログラムにより異なる

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  • 初台

イギリスの劇作家サイモン・スティーヴンスの『スリー・キングダムス Three Kingdoms』が、「新国立劇場」で日本初演される。イギリス、ドイツ、エストニアの3カ国のクリエーターによる共同制作で2011年に初演され、大きな話題をさらった作品だ。

全ては、ロンドンのテムズ川で発見された女性の変死体から始まる。犯人を追うイギリス人刑事イグネイシアスとチャーリーは、背後に国際的な犯罪組織があることを突き止め、物語はドイツ、エストニアと舞台を移しながら進んでいく。

悪夢のような出来事の数々、混乱や衝撃に満ちた展開、その中で暴かれていく人間の本性……。勧善懲悪や予定調和とは対極にあるその世界は、普段、私たちが目を背けがちな現実を突きつける。

演出は、過去にもスティーブンスの作品を手がけた経験のある上村聡史。イグネイシアスには伊礼彼方、チャーリーには浅野雅博。2人がドイツで出会う刑事シュテッフェンに伊達暁、イグネイシアスがドイツで出会う女性に音月桂。音月はさらに、観客と舞台をつなぐミステリアスな存在も演じる。刮目して見届けよ!

※12月2日~14日/昼の部は13時か、14時から、夜の部は18時30分から(日によって異なる)/休演日は8日/料金は3,300円から(席によって異なる)

  • 初台

12月は、『くるみ割り人形』の季節。各バレエ団がそれぞれ趣向を凝らしたバージョンを上演するが、新国立劇場バレエ団では、イギリスの振付家・ウィル・タケット(Will Tuckett)による新国立劇場オリジナル版を新制作する。

クリスマスイブ、自身の家で開かれたクリスマスパーティーを訪れたドロッセルマイヤーからくるみ割り人形をプレゼントされたクララは、夜になってネズミとの戦闘に勝利し王子に変身したくるみ割り人形に誘われて「お菓子の国」へと向かう……。

タケットは、バレエ『くるみ割り人形』の従来の物語はそのままに、レフ・イワーノフの原振付も尊重しながら、随所に工夫を施していくという。

まず、チャイコフスキーの楽譜を見直し、そこに書かれたシナリオや音楽のテンポなどを復活させるほか、1幕のクリスマスパーティーで出されるデザートが2幕のお菓子の国で踊りとして再登場するなど、より一貫性ある設定になる。今回のバージョンでは、クララのゴッドファーザーとされているドロッセルマイヤーはもちろんのこと、1幕に登場するダンス教師などもキーパーソンになりそうだ。

タケットと美術家コリン・リッチモンド(Colin Richmond)がイングマール・ベルイマン(Ingmar Bergman)監督の映画「ファニーとアレクサンデル」をイメージとして共有したという美しい美術の中、新国立劇場バレエ団のダンサーたちがクリスマスの特別な一夜を浮かび上がらせる。

※12月19日~1月4日/昼の部は13時か、14時から、夜の部は18時か、19時から、31日は16時から(日によって異なる)/料金は6,050円から(席によって異なる)

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  • 横浜

今注目の劇作家・池田亮率いる劇団ゆうめいが、結成10周年として、2024年に初演した『養生』の全国ツアーを実施中。今月は、北海道、高知を巡り、最終公演を神奈川で行う。

物語の舞台は、ショッピングモールや百貨店の内装を手がける夜勤バイトの現場。美大生の橋本と大学生の阿部はそこで出会い、夢を語り合いながら正社員を揶揄していたが、数年後、二人は正社員になっていた。

大学生時代と社員時代を行き来して進む劇。アートと社会、成功者と落伍者、死んだ者と生き残った者……。夢破れ、孤独で、無力で、傷つき傷つけてしまう人々の姿は、実にリアルでほろ苦い。そんな中、劇中で効果的に使われる脚立と養生テープが、美大生の橋本と中年の橋本の思いをつなげていく。

自身や家族などの実体験に基づく物語を痛みとユーモアをもって描き、注目を集めてきた池田。今作には、美大生の頃の様々な葛藤や感性をどこかに持ちながら30代となった池田の実感が込められており、まさに今だからこそできた傑作といえるだろう。決して見逃してほしくない舞台だ。

※神奈川公演 12月19日~28日/昼の部は13時か、14時から、夜の部は18時か、19時から(日によって異なる)/休演日は22日/料金は前売り5,000円、U-39 4,000円、U-25 2,800円、 U-18 1,000円、当日5,700円、 U-39 4,700円、U-25 3,500円、U-18 1,000円、障がい者割引2,500円

  • 池袋

「芸術がいかに社会にその価値を還元していくか」という命題に応えるべく、東急文化村とK-BALLET TOKYOが2022年に立ち上げたプロジェクトK-BALLET Optoが、第4回公演として『踊る。遠野物語』を上演する。

普段、壮麗な古典の全幕バレエを届けているK-BALLETだが、この企画ではこれまで、プラスチック汚染に着眼し東京中の廃ビニール傘やペットボトルを用いて2作を上演した「プラスチック」やヤングケアラーに焦点を当てたジュゼッペ・スポッタ(Giuseppe Spota)振付・演出の『シンデレラの家』など、よりダイレクトな形で現代の問題を扱ってきた。

今回の『踊る。遠野物語』は、東北出身の特攻隊員が許嫁(いいなずけ)に宛てた手紙の「ただ無性にあなたに会いたい」の言葉と、三陸大津波で亡くなった妻の幽霊と浜辺で再会する男を描いた柳田國男の『遠野物語』第99話とを重ね合わせる形で生まれた。

1945年8月。特攻隊員の青年は許嫁・響子に宛てた遺書を胸に、戦地へと飛び立つが、いつしか遠野の地に迷い込む。そこで、あの世とこの世を自由に行き来する不思議な少年Kに導かれながら、河童(かっぱ)、天狗(てんぐ)、山姥(やまうば)、座敷わらし、サムトの婆、死者、山人たちなどに出会う特攻隊員。やがて彼は海辺で響子に再会するが、響子は青年の死を受け入れて新たな人生を歩み始めており……。

演出・振付・構成は森山開次。特攻隊員の石橋奨也、許嫁ほかの大久保沙耶を筆頭とするK-BALLETのダンサーたちに加え、少年Kに若き歌舞伎俳優・尾上眞秀、死者ほかに舞踏家・麿赤兒、山姥に舞踏舎天鷄主催の舞踏家・田中陸奥子、河童に森山開次、さらには麿が率いる大駱駝艦のメンバーなどが多彩な踊り手が登場する。

柳田國男生誕150年、戦後80年の節目で上演される本作は何よりも、私たちが生きる今を映し出すものとなるに違いない。

※12月26日~28日/26日は15時から、28・29日 昼の部は12時30分から、夜の部は17時から/料金は5,500円から(席によって異なる)

Contributor

高橋彩子

舞台芸術ライター。現代劇、伝統芸能、バレエ・ダンス、 ミュージカル、オペラなどを中心に取材し、「SPICE」「AERA」「The Japan Times」や、各種公演パンフレットなどに執筆。第10回日本ダンス評論賞第一席。年間観劇数は250本以上。現在、ウェブマガジン「ONTOMO」で聴覚面から舞台を紹介する「耳から“観る”舞台」、エンタメ特化型情報メディア「SPICE」で「もっと文楽!〜文楽技芸員インタビュー〜」を連載中。

12月をもっとアートで彩るなら……

  • アート

12月の東京では、心を温めるアート体験が充実している。スウェーデンを代表する作家の創作の裏側に迫る「リサ・ラーソンの作り方 展」、1945年以降の日本と韓国の美術関係史をたどる「いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年」、名匠ハンス・ウェグナーの名作が国内最大規模で集結する「織田コレクション ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ」など、多彩な展覧会が揃う。

ジャンルも時代も異なる作品に触れながら、この冬ならではの深い鑑賞体験を楽しもう。

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