テキスト:Akiko Mori
六本木の「森アーツセンターギャラリー」で、2026年3月1日(日)まで開催中の「マチュピチュ展」は、古代インカ帝国のアンデスの世界観に深く入り込める没入型の展示。会場に足を踏み入れた瞬間、静かな神殿に迷い込んだような薄暗さと、祈りの気配を帯びた空気に包まれる。
「マチュピチュ」は、ペルーにある古代インカ帝国の遺跡。標高2430メートルの断崖絶壁に築かれたことから「天空都市」と呼ばれ、世界遺産にも登録されているが、謎も多い。本展では世界初公開を含む約134点の至宝が一堂に会する。マチュピチュ関連の展覧会は、日本国内では13年ぶりだ。
3つの世界が共存するアンデス世界の宇宙観
アンデス世界の宇宙観は、「天空」「現実」そして祖先たちが暮らす地下の「内なる世界」という3つの世界が均衡を保ちながら共存し、しかも循環している。展示ではまず、この3つの世界を巡る英雄「アイ・アパエック」の冒険を軸に、古代の人々の宇宙観が鮮やかに立ち上がる。
旅の途中で、彼はカニや鳥などさまざまな動物に化身して力を得るのだが、展示されている造形は驚くほど保存状態が良く、細部の表情まで読み取れるほど。古代の人にとって自然は「外の世界」ではなく、自分そのものとつながる力だったのだと、しみじみ感じた。
インカ帝国では、祖先も「死んだ」とはみなさず、親密な行為によって結ばれ、完全な存在となったようだ。 男と女、太陽と月のように、全てが一つに結ばれていく。その象徴として、男女の結合を描いたものや、旅の最後に「大地との交わり」が表現されているのも印象的だった。
再現された犠牲の儀式と金・銀の装飾
一方で胸がざわついたのは、いけにえの儀式。戦闘に負けた戦士の血が神にささげられる様子が、影絵で再現されている。戦士は元々高い身分で神々と人間界をつなぐ重要な役割を果たし、死は「敗北」ではなく「神への奉仕」を意味する。いけにえは、人々が安心して暮らせるために身をささげる誇り高き行為だったようだ。
「金」は太陽の汗、「銀」は月の涙とされ、それを身に着けた戦士や祭司は神の力を帯びる存在と考えられた。まぶしいほどの金や銀の装具が付けられ、埋葬された様子が描かれている。
また、「祖先との出会い」と名付けられた章では、10人の支配者がそれぞれ身に着けていた装飾をそのままの姿で展示されており、圧巻。金や銀の輝きはほの暗い空間を照らし、息をのむほど神々しい。しかし、その金をスペイン人が掘り起こして私財として持ち去った歴史は、古代の人々の思いを踏みにじる行為だったと改めて感じさせられた。
圧倒される古代インカ帝国の英知
最終章ではマチュピチュの英知が紹介されており、生活の全てに息づいていたことがよく分かる。特に心を奪われたのは「キープ(結縄)」。ただ縄を結んでいるだけであるのに、人口や収穫、祭祀(さいし)の記録まで担っていたというのだから驚きだ。どう読み解くのか、皆目見当もつかない。
また、天然繊維を編んで作られた46メートルを超える橋は、同時期のヨーロッパのどの石橋よりも長かったという。古代人の技術の高さにも、ただただ圧倒される。
グッズ販売とコラボ割引情報も充実
展示会場を出るとグッズの販売コーナーがあり、クリスマス用オーナメント、キーホルダー人や動物の置き物、クッキー缶から、10万円近くする古代の装飾品がモチーフになった金・銀の装飾品まで、幅広く揃っている。楽しい寄り道になるだろう。
また会期中は、同フロアのレストラン「THE SUN&THE MOON」で、コラボレーションメニューが5品7,000円(税込み)で味わえる。観覧後の余韻を味わうのもいいだろう。ランチのみで、会期終了まで提供されている。
さらに「天空割」として、東京の街を天空から一望できる「東京シティビュー」展望台との相互割引キャンペーンも実施。いずれかのチケットを持っていれば500円引きになる。
古代・アンデスの息吹に触れたい人、自然とともに生きる知恵に引かれる人、心の奥に静かな光を灯したい人に、本展を薦めたい。
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