タイムアウト東京 > 映画 >インタビュー:YURI HORIE
ギラギラ光るデコトラ、ギャル男、北九州や沖縄の派手な成人式、和彫、地方の祭りーフォトグラファーのYURI HORIEはそうした日本特有のカルチャーを追いかけ、全国各地を飛び回りながら撮影する。
彼女は大学卒業後、国内カメラメーカーの技術部に勤務した後、ストリートスナップを扱う媒体「DropTokyo」に所属。2022年からフリーランスに転身し、今国内外から熱視線を浴びまくっている前途洋々の気鋭である。
経歴からしてただ者ではないが、はたして本人もただ者ではなく、饒舌なしゃべりや奔放なキャラクターから極めて陽性のグッドバイブスを発していた。一言でいうなら「パワフル」な人物だ。
常に面白いことを追求し続けるその姿は、まぶしいほど魅力的で、「最高!」としかいいようがない。このほど、自身3冊目となる写真集『浪漫』をリリース。その折にインタビューを行った。
写真:YURI HORIE
ー写真集『浪漫』を購入させていただいたんですが、最高ですね。装丁もめちゃくちゃ縁起がよくて。
表紙にはこだわっていて。表紙っていうか外観? 自分の手元にあってテンションが上がるような本にしたくて、それでいつもギンギラギンにしてるんですけど。
ータイトルもいいですよね。
去年やった展示と同じタイトルなんです。自分が好きなものをひたすら撮っていった時に「男の浪漫」みたいな、そういうのが好きで撮っているんだなって共通点を感じてこのタイトルにしました。
ー男の浪漫ですか。
必要のないものにお金をかけるというか。ミニマリストとかだったら全く必要ないもの。例えばデコトラとか旧車とかもそうですけど、自分が満足するために集中して頑張ってる人がすごく好きで、それって浪漫だなって。
お祭りとか、伝統的なことを頑張ってやり続けてる人もそうですよね。そういうものをずっと撮ってるんですけど、今回はもうちょっと人にフォーカスしてみました。浪漫を追いかけてる人と実際に交流して写真を撮ったり、ちょっと人間性が入ってる写真集になったと思います。
写真:YURI HORIE
ー確かに、被写体との距離感が近い気がします。奥行きを感じるというか。
一番最後のページのデコトラの写真とかも、ただパッと撮ったわけじゃなくて、事務所みたいなところで一日過ごしてから最後に撮りました。
今回は人と交流して、話を聞きながら撮っている感じです。表紙にちっちゃく「日常」って入ってるんですけど、これは浪漫を日常に取り込んでる人にフォーカスしたよ、みたいな意味なんですよ。
ーなるほど! この「日常」って何なんだろうと思っていたんですが、そういう意味を込めていたんですね。
写真集にそういう説明がまったくないから(笑)。本当は多分説明を入れた方がいいんですけど、完全に時間がなくて。
ーデコトラや平成ギャル、祭りなど、全体的にギラギラした写真が満載ですけども、こういう日本特有のギラつきカルチャーにはもともと興味があったんですか?
面白いことがただ好きで。『Droptokyo』の社内カメラマンをしていた時は海外へ行くことが多かったんです。海外は面白いことは面白いんですけど、あちこちへ行き過ぎて、逆に日本にフォーカスしたくなりました。
商業カメラマン的な広告の仕事とかも面白いんですけど、消費されていくというか、撮ってSNSで流れてはい終わり、みたいなのが2年ぐらい続いた時に、なんだかちょっと飽きてきたんですよ。それで、もう少し自分の好きなことを写真に収めていこうかなと思って、そういうものに至ったって感じです。
写真:YURI HORIE
ー今回の写真集は、トータル何枚ぐらいからセレクトしたんですか?
何枚かは分からないんですけど、全部今年撮った写真です。多分20カ所ぐらいに行って、採用しているのは10カ所ぐらいかな。
ー20カ所! やばいっすね。
撮影の仕事をして、週末に面白いことをしている現場に行って撮るみたいな。
好きなものだけ撮っていけたら面白いんですけど、なかなかそういうわけにもいかないんで、趣味でいろんなところへ行って撮ってます。今回もほぼ自費出版だし、利益ないんですけど、でも面白いからやってるって感じですね。
ーフルカラーの本を作るのって、お金かかりますよねえ。
表紙がバカみたいに高くて(笑)。普通の写真集だとなんか面白くないなって思っちゃうんで、テンションが上がるような作品とか印刷方法にしたかったんです。
自分の展示にもクレーンゲーム機とか置いたりしてるんですけど、来ていただいた人に「面白いな」って思ってもらえるようなものにしたいですね。
ー今回の取材に当たって経歴など調べさせていただいたんですが、大学卒業後にカメラの開発チームに就職して、それからカメラを始めたんですよね?
写真家になろうとは全く思ってなかったんですけど、流れでそういう方向に行ってしまって。で、ホワイトな会社にいたんで、仕事が早く終わるし暇だったんですよ。
暇だし、カメラ借りられるから写真撮ってみようかな、っていうのがきっかけです。遊ぶにしても、仕事が終わるのが早いから、友達と合流するまで2時間ぐらいかかるんですよね。
その間に友達のカフェに入り浸って、いろんな人と知り合って、その流れで写真撮らせてもらうみたいな。とにかく、毎日外に出てました。
ーフルタイムで仕事をして、韓国でバイイングのお手伝いもしていたとか?
バイイングの手伝いもやってましたね。とにかく毎日アグレッシブに過ごしていました。
その頃は週1で韓国へ行ってたんですけど、カード使いまくって、200万円ぐらい借金作って。それはいったん親に払ってもらったんですよ。で、10万ずつ返すって約束だったんですけど、途中から嫌になって払わなくなって(笑)。
ーかましてますね(笑)。
で、これだとキツいな、つまんないなと思って。それまでお金使いまくってたんで、暇過ぎるし写真でも撮ってみるか、っていうのもありました。暇つぶし(笑)。
ーお話を聞かせていただいていて思ったんですけど、本当にバイタルの塊ですね。
死ぬほど行動していました。あと、人に恵まれたっていうのもあります。
ートラック運転手やデコトラ愛好家が作った「全国哥麿会」など、いろんなところに飛び込んで撮影されてますよね。知らない人に声かけるのって緊張しません? 怖くないですか?
緊張します、怖いです。でも別に、断られたら仕方ない。自分からガンガン行けば、「何だこいつ」って感じでしゃべってくれるんですよ。人とのコミュニケーションは得意なので、そういう感じで撮っています。
私の見た目が怖い系じゃないから、それで話してくれるっていうのもあるかもしれないですね。
ー撮影方法についても伺いたいのですが、光の撮り方がすごく特徴的ですよね。クロスフィルターを使われてると思うんですが、色味とか光彩などにこだわりってありますか?
ん~……どうなんだろう? とりあえず、派手なのとか色味が原色とかが好きで。そういうのを自然に撮ってるから、写真集も自然にそうなっちゃいますね。クロスフィルターは自分の写真の特徴でもあります。
商業の撮影でも、そういうキラキラした感じで撮ったり。キラキラしてるものをうまく捉えるために考えています。ストリートスナップをやってたおかげでロケが得意なんで、光を見つけるのは得意です。
ーなるほど、そこでもストリートスナップの経験が生きてるんですね。
「モデルはちゃんとストリートで見つけろ」みたいな厳しいルールがあったんですよ。真夏に一日中外にいて、ようやく一人見つけるとか、そういう感じでやっていたんで。
今のストリートスナップって、動画撮りながら話しかけて撮るみたいな流れがあるじゃないですか。あれでストリートスナップの文化がまたはやったのはいいと思うんですけど、「不快じゃない?」って思っていて。その流れはちょっとどうなんだろうって思いますね。
私としては、話しかけて大丈夫だったら撮らせてもらうっていうのが普通なので。「怖いから嫌です」っていう人も普通にいるし。最近の流れはすごくSNSって感じがしますね。
ー非常に現代的というか、令和的だと思います。『浪漫』には平成カルチャーへのリスペクト感が漂っていますよね。
自分が平成生まれっていうのもあって、やっぱり響きますね。写真集に載ってる女の子は21歳ぐらいなんですけど、平成がめっちゃ好きで極めてるみたいな子なんです。
平成カルチャーがずっと好きで、30歳でもギャル男やってますみたいな人もいて、浪漫だなって思いますね。
写真:YURI HORIE
ーYURIさんのXも拝見させていただいたんですが、オレンジレンジの『イケナイ太陽』の令和バージョンのミュージックビデオに反応されていましたよね。
あれはすごい響きましたね、同じ世代の人が作ってんだなって思いました。あれは熱いっすよね、オレンジレンジのライブ行きましたもん。
ーいかがでした?
すごく盛り上がってました。最近の曲をいっぱい歌ってましたけど。それでも、オレンジレンジはオレンジレンジでした。
ーアンテナに引っかかった面白いことを撮影するという以外に、何か意図や思惑などはありますか。
今、日本に海外の人がいっぱい来てて、そこから仕事もらえるのってありがたいんですけど、「日本人は安い賃金ですごい働いてくれる」みたいなイメージを持ってる人も多くて。
もちろんリスペクトがあって頼んでくれる人もいるけど、ナメてくる人もいるので、そういうのにバリア張ってます。日本って変な人いっぱいいるし、面白いところもいっぱいあるし、「おまえら気をつけろよ!」っていうメッセージも込めてます。
ー警告も込めている(笑)。
愛国心とかじゃ全然ないけど、気をつけろ!っていう(笑)。日本人も知らないじゃないですか。それで、「こんな変なところや面白いところがあるんだ、行ってみよう」となってくれたらうれしいですね。
そうやって、日本の面白い文化が広がってくれたらいいなって。そういう、元気づけみたいな気持ちもあります。
ー最後になりますが、今後の野望はありますか。
海外で展示をやってみたいと思っています。
今回の作品はほぼ売れたんですけど、外国の方が買ってくださることが多くて。「ニューヨークの僕の家に飾ります」みたいなこと言われて、この写真を家に飾ったらどういう感じになるんだろうって思うんですけど。
常に不思議なところへ行ってて、撮りためてるものもたくさんあるので、それも出せたらいいなと思ってます。