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東京、学びのクィアスポット6選
書を捨てず町へ出よう、プライド月間を契機に訪れたい場所
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テキスト:ヒラマツマユコ
6月がプライド月間(Pride Month)と称されるようになった発端を、聞いたことはあるだろうか。1969年6月28日、ニューヨークのゲイバー『ストーンウォール・イン』(Stonewall Inn)で度々起きていた警察の踏み込みに対し、同性愛者やトランスジェンダーの人々が立ち向かい、5日間におよぶ暴動に発展した(*1)。それをきっかけに、同性愛者をはじめとするLGBTQ+の人たちが、自らの権利について声を上げ始めた(声を上げやすくなった)ことに由来し、6月をプライド月間と呼ぶようになった。毎年6月、聖地ニューヨークを筆頭に各地でプライドパレードが開催されているのも、そのためだ(*2)。
今こそ、積極的に学ぶ時
さらに『ストーンウォール・イン』での出来事をけん引したとされるのが、勇敢なブラック&ブラウンの二人であったことを知っているだろうか(*3)。2020年5月25日から改めて注目を集めているブラック・リヴズ・マター(Black Lives Matter、以下BLM)の動きのなかで、当事者以外にもできることとしてドネーションなどの直接的支援があるが、「歴史を知ること」「学ぶこと」が求められている状況について考えたい。
今回は苦境の中で立ち上がった先人たちに敬意を表し、そしてプライド月間を祝し、クィアを入り口に「学び」を得られる場所をクィアスポットとして、いくつか紹介する。黒人差別をはじめ、あらゆる差別と暴力の歴史について、ともに学ぶ機会となることを願って。
Ryusen112
ビーガンフードを提供
入谷駅、三ノ輪駅からそれぞれ徒歩10分弱の台東区竜泉に位置するカフェスペース。クィアコミュニティーから始まり、ビーガンフードの提供も行っている。人との関わりや情報を求めて利用する客から、近所のマダムたちまで、おいしく優しい料理と心地よい空間は、幅広い客層に親しまれている。
映画上映などのイベントを不定期で開催しているほか、他店舗やクィア系イベントの情報も集まるため、フライヤーをチェックするのも楽しみの一つ。
現在はテイクアウトのみだが、2020年7月2日(木)からはランチタイムのカフェ営業も再開する見込み。またテイクアウトのみでの営業では運営継続が難しい状況にあり、そんな運営のサポートにもなる、無期限で全てのメニューで使えるギフトカード(金券)を発行している。
イレギュラー リズム アサイラム
アナキズムがテーマのインフォショップ
イレギュラー リズム アサイラム(Irregular Rhythm Asylum)は、アナキズムとDIYをメインテーマに、社会運動や対抗文化に関する書籍やZINEやグッズを取り扱う店。オンラインショップと店舗があり、新宿御苑前駅から徒歩5分ほどに位置する店舗には、展示やイベントのためのスペースも併設されている。
一時は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けオンラインのみの営業だったが、2020年6月5日から店舗の営業も再開している。アナキズムとDIYがメインテーマというだけあって、人種差別、クィア、フェミニズムなど、あらゆる問題に向き合える濃いラインナップがそろう。
BLMに関しては、逮捕者や黒人トランス女性の移動を支援する
Kosaten
人と人との違いを歓迎し、排除をしない交流所
上石神井駅から徒歩15分、杉並区善福寺に位置するコミュニティスペース、Kosaten(あなたの公-差-転)。現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響でオンラインでの交流を主としており、今後も当面はオンラインでの交流を呼びかける予定だ。
「すべての人を排除しない」ことを理念としており、食料に困っている人向けのパントリーや、日本在住の外国人や、外国がルーツの人たちが悩みを共有したり相談できる「ボーダークロッシング・ドロップイン・センター」などの取り組みが行われている。
BLMについても、メッセージとともに日本からできるドネーション一覧の紹介や、「警察と収監」をテーマにzoomでの勉強会を企画している。
タコシェ
中野ブロードウェイならではの品ぞろえ
サブカルチャーの聖地、中野ブロードウェイの中にある書店。ZINEや一般流通に乗らない書籍、グッズなどを多く取り扱い、不定期で展示やイベント開催なども行っている。
アートやサブカルチャーに関する商品が多いなか、LGBTQ+関連書籍が集められたコーナーもある。田亀源五郎著書の存在感が大きいのは、さすが中野ブロードウェイとも言うべきか。カルチャー好きに向け広く構えられた間口は足を踏み入れやすく、手に取りやすいラインナップも魅力だ。
※写真はアメリカの西海岸でLGBTQ+のためのユニークな活動に取り組むアーティスト、Jeffery Cheung企画展示の際のもの。
community center akta
新宿二丁目のコミュニティセンター
二丁目の情報拠点として、2003年から親しまれているakta(アクタ)。HIV/エイズをはじめとする性感染症の予防や検査、サポートなど、セクシュアルヘルスに関する情報を多く集めており、当事者からも需要の多いコミュニティセンター兼フリースペースだ。
スペースの貸し出しによりイベントや学習会もしばしば開催され、クラブイベントやお店のフライヤーも多く設置しているため、気軽に立ち寄ることができる。
6月5日から営業を再開。ウェブサイトでの情報発信にも力を入れており、「HIV・セックスと新型コロナウイルス感染症に関連する支援情報」や「youtube channel」などコンテンツも充実しているので、ぜひチェックしよう。
コロナ禍でも学ぶ
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、インターネット上での買い物や情報収集にはそろそろ飽きてきた、そんな人も少なくないだろう。それでも学びを止めてはいけない。筆者も含め、コロナウイルス感染症の拡大には注意しながらも、オンラインとリアルに最大限アクセスして学んでいきたい。
(*1)『ストーンウォール・イン』での出来事、通称『ストーンウォールの反乱』については諸説あり。
・今年で50周年「ストーンウォールの反乱」とは
・LGBTプライドの発祥「ストーンウォールの反乱」とは?今こそ知りたいプライドの歴史
(*2)今年で50周年を迎える2020年のニューヨーク・プライドは、パレードをはじめとするイベントが新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止した。
(*3)昨今の情勢を踏まえ、ここではあえて人種カラーの表記をした。気になった人は以下のリンクを筆頭に、彼女たちやLGBTQ内における人種問題についても、ぜひ調べてみてほしい。
・悪意なく「排除」する日本のLGBTQ運動とBlack Lives Matterの深い関わり
・NY市 トランスジェンダー活動家のモニュメント建設へ
・アフリカ系のLGBT活動家たちが残した功績。ストーンウォールの反乱から51年経った今
(*4)非当事者が「ホモ」という言葉を使うことが差別的な意味合いを含むことを理解した上で、「ホモ本」ブックカフェを自称するオカマルト公式の表記にならい「ホモ」という表記を使用した。
もっと学びたいと思ったら......
ニューノーマルの時代を考える、Netflix配信中のドラマ5選
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自分たちの居場所を作ること
クラブイベントには珍しく、参加者の多くが女性というパーティーが渋谷の青山蜂で開催され、話題を集めている。2019年9月13日(金)に4回目の開催を迎える『Wife/WAIFU(ワイフ)』は、「ジェンダー、セクシュアリティ、人種、年齢などにかかわらず、オープンで他者と寄り添う気持ちのあるさまざまな人が安心して楽しめるセーファースペースを、参加者とともに作り上げていくこと」をテーマに据え、トランスジェンダー女性を含めた女性を軽視するような行為、および人種差別的な行動には即刻退場を求めるポリシーを掲げている。 社会のさまざまなところでジェンダーバランスの不均衡が問題視される昨今、音楽シーンもまた例外ではいられない。大規模の音楽フェスティバルでも男性の出演者が圧倒的に多いなかで、このパーティーのオーガナイザー5人全員が女性であることは大きな特徴だ。今回タイムアウト東京では、社会の現状に対するカウンターとして自分たちの居場所を作り出したオーガナイザーたち、美術家で海外展示のため不在のミドリ(Midori Morita)を除く、ローレン(Lauren Rose Kocher)、エリン(Elin McCready)、アサミ(Maiko Asami)、リサ(Lisa Tani)に話を聞いた。
生きた本棚が作るゲイコミュニティー
言わずと知れたゲイタウン新宿二丁目。その深奥にある、とりわけディープな一角「新千鳥街」の中でブックカフェ「オカマルト」は営業している。店主の小倉東(おぐら・とう)は、ドラァグクイーン「マーガレット」の名でも知られる、日本のアンダーグラウンドなゲイシーンにおける最重要人物の一人だ。かねてより雑誌編集や文筆業でも豊富な知識と鋭い洞察力を披露してきた彼が、2016年末にオープンさせた店とあって注目が集まっている。同店の本棚に並ぶのは、通常のブックカフェとは異なり、ポルノ雑誌からアカデミックな研究書まで、ゲイやクィアカルチャー、同性愛などにまつわるものばかり。二丁目というコミュニティー内でゲイ資料をアーカイブしていく意義とは何なのか。平日昼間のオカマルトで話を聞いた。
インタビュー:ブルボンヌとエスムラルダ
※2014年12月発行『タイムアウト東京マガジン5号(英語版)』に掲載した日本語翻訳記事を転載
近年、日本のテレビのバラエティ番組では、「女装」タレントを非常によく見かけるようになった。日本の芸能界においては、「オネエ系」と呼ばれ、1つのジャンルを築き上げるほどの人気となっている。 セクシャルマイノリティへの極度の差別を目にすることは比較的少ない一方、まだまだ偏見が根強く残り、同性愛を公言する芸能人や政治家、実業家なども極端に少ない日本において、「女装」だけが熱烈な歓迎を受けているのはなぜだろうか。 現在、女装タレントとして活躍する人物の多くは、日本屈指のゲイタウン、新宿二丁目のバーやクラブで開催される、ドラァグショーをはじめとした女装パフォーマンスをその出自としている。ブルボンヌとエスムラルダは、二丁目での女装パフォーマンスをはじめて20周年を迎えた、シーンを代表するパフォーマーだ。ライターとしても多方面で活躍するブルボンヌは、女装パフォーマンス集団の結成やゲイ雑誌の編集を経験した後、女装キャストが日替わりで働くミックスバーCampy! barを手がけるなど、つねに女装シーンの最先端を進む人物。エスムラルダは、女装とは関係のないテレビドラマの脚本家を本業とするが、吐血を模したショーなどで唯一無二の「ホラー系女装」として親しまれている。そんなブルボンヌとエスムラルダに、東京の女装シーンの変遷と現況について話を聞いた。
インタビュー:東ちづる
女優として活躍する傍(かたわ)ら、誰も排除しない「まぜこぜの社会」を目指す非営利団体、Get in touchの代表としても活動する東ちづる。彼女が今、Get in touchで取り組んでいるのが、2017年12月10日に品川プリンスホテル クラブeXで開催される『月夜のからくりハウス』だ。「見世物小屋」を連想させるものだろうか。当日は様々な特性を持ったアーティストが全国から集い、サーカスのようなファンタジックな空間でパフォーマンスを繰り広げるという。今回のインタビューで「見世物小屋を再現したかったというわけじゃない」という驚きの言葉も飛び出したが、その真意とはいったい何なのか。彼女の言葉に耳を傾けてほしい。