エリック・カール展
Photo: Keisuke Tanigawa | 絵本『ありえない!』の原画
Photo: Keisuke Tanigawa

東京、6月から7月に行くべきアート展

個性豊かな注目の展覧会を紹介

Chikaru Yoshioka
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東京では、国内外のアートファンが注目するイベントが常に充実している。美術館やギャラリーでは話題の展覧会が継続的に開催され、今の時代を映し出す多彩な表現に出合える。

厳選したアート展を紹介する東京、6月に行くべきアート展5選東京、6月に行くべき無料のアート展12選という記事も公開しているので、併せてチェックしてほしい。

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  • アート
  • 恵比寿

「東京都写真美術館」で、日本における実験映画およびビデオアートの先駆者・出光真子による大規模展「出光真子 おんなのさくひん――ある映像作家の自伝」が開催。同館収蔵のフィルム・ビデオ全作品に加え、主要インスタレーション作品を含む全作品を、展覧会と上映を通して網羅的に紹介し、その創作活動の軌跡を振り返る。

出光は1960年代、アメリカ滞在を経て映像制作を開始。女性の生き方や家族、メディアと社会の関係をテーマに、フィルムや当時最先端だったビデオメディアを用いた作品を発表してきた。特に1970年代以降のビデオ作品では、テレビメロドラマの手法を取り入れながら、母と子、夫婦関係、女性の社会的役割といったテーマを独自の視点で描いている。近年は、ジェンダーや身体を巡る国際的議論の高まりを背景に、その実践が改めて注目を集める。

会場では、計5点のインスタレーション作品を展示室内外で公開。また、出光の映像作品40点を9つのプログラムで上映する。『Woman’s House』『At Yukigaya 2』など一部作品は、ニュープリントによる16ミリフィルム上映を予定している。 

  • アート
  • 箱根

「ポーラ美術館」で、開館25周年を記念し、新収蔵作品の中から映像作品2点を前期・後期に分けて紹介する企画「コレクション・シネマ」が開催。前期ではクリスチャン・マークレー(Christian Marclay)による最新映像作品、後期ではゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)による映像作品を、それぞれ初公開する。

時間芸術、とりわけ音楽や映像表現に取り組んできたマークレーの『ドア』は、古今東西の膨大な映画からドアのシーンを収集・編集した大規模なコラージュ作品で、10年以上をかけて制作された。ドアにまつわるシーンの数々が、別の映画のドアへと滑らかにつながり、映画史を横断しながら迷宮のような世界を立ち上げる。

一方、リヒターの『ムーヴィング・ピクチャー(946-3)京都ヴァージョン』は、過去の絵画作品を基に、映画監督のコリンナ・ベルツ(Corinna Belz)、作曲家のレベッカ・サンダース(Rebecca Saunders)、トランペット奏者のマルコ・ブローウ(Marco Blaauw)との協働によって制作された映像インスタレーション。13基のスピーカーによる音響と、生成と変容を続けるイメージが重なり合い、没入的な体験を作り出す。近年の制作における集大成の一つだ。

同時開催の「モネ没後100年・開館25周年記念 あたらしい目 ― モネと21世紀のアート」展と併せて楽しんでほしい。

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  • アート
  • 丸の内

「三菱一号館美術館」で、展覧会「カフェに集う芸術家―印象派からゴッホ、ロートレック、ピカソまで」が開催。本展では、エドゥアール・マネ(Édouard Manet)、フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(Henri de Toulouse-Lautrec)、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)らによる約130点の作品を通して、「カフェ」を起点に広がった19世紀後半の芸術文化を紹介する。

19世紀後半のパリでは、マネや後に「印象派」と呼ばれる芸術家たちがカフェに集い、芸術や社会について活発な議論を交わした。当時のカフェやキャバレー、ダンスホールは、単なる飲食や娯楽の場ではなく、新しい芸術が生まれる創造の拠点でもあった。それは、「官展=サロン」中心の芸術制度からの脱却であり、芸術が都市の群衆や日常空間へと開かれていく、新たな時代の幕開けでもある。

1897年にはカタルーニャ出身の画家、ラモン・カザス(Ramon Casas)が、モンマルトルの有名店「シャ ノワール(黒猫)」に着想を得て、バルセロナに「クアトラ ガッツ(四匹の猫)」を開店。若き日のピカソもこの店に通い、ロートレックやカザスが描いた、歓楽と孤独が同居する都市の情景から大きな影響を受けた。そして社会の周縁に生きる人々へ向けられたそのまなざしは、後の「青の時代」へとつながっていく。

会場では、芸術家たちの交流と創造の現場に光を当て、カフェが近代芸術にもたらした影響を再考する。見どころは、パリとバルセロナ、それぞれのカフェ文化とピカソの関係性、さらにそれが「青の時代」の表現へどのように結実したのかを、日本で初めて紹介する点。また、スペインからカザスによる『マドレーヌ』も、35年ぶりに来日する。

なお、1820時の夜間開館時間限定で、少し大人向けのカフェにまつわる裏話も紹介されるので気になる人はチェックしてほしい。

  • アート
  • 鎌倉

「神奈川県立近代美術館 鎌倉別館」で、50年以上にわたり、ジャガイモを版に用いる薯(いも)版画を独学で探求してきた山室眞二の展覧会が開催。ジュール・ルナール(Jules Renard)の『博物誌』に倣い、「かまくら博物誌」をテーマに植物や小さな生き物たちを描いた作品群や、切手を模した作品や自筆の画文集、挿絵や装丁を含む造本作品などを通して、山室の幅広い創作活動を多角的に紹介する。

生ものであるジャガイモを版として用いる薯版画は、数時間しか使えない版を丹念に重ねながら生み出される。作品には、植物や虫、鳥など、鎌倉で出合った身近な存在が数多く登場し、それらを慈しむ作家のまなざしと、薯版への探求心が息づいている。

会場では、志村ふくみの言葉から着想を得た新作『志村ふくみの言葉 百葉筥』も展示。山室と親交の深い志村の100歳を記念して制作された100枚組の作品で、志村の著作から引用した言葉とイメージを、10センチメートル四方の紙に薯版で刷り重ねている。志村による糸や裂の小片も用いられ、山室の版表現と志村の言葉や素材が響き合う特別な作品だ。

小さなジャガイモから広がる豊かな表現を楽しんでほしい。

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  • アート
  • 初台

NTTインターコミュニケーション センター[ICC]」で毎年開催されている「ICC アニュアル」は、メディアアート作品を中心に、現代のメディア環境における多様な表現を紹介する展覧会。今年度の「ICC アニュアル 2026 遺す/残る/受けとめる」では、歴史と技術、メディアの関係に焦点を当てる。

現代のメディア環境では、生成AIなどの技術発展により、情報はかつてない速度と規模で生み出され、流通している。その過程で情報はアルゴリズムによって選別・再編成され、何が記録され、どのように共有されるのかという枠組みそのものが変化しつつある。歴史や記憶もリアルタイムに更新され、時に政治的・経済的な力学の下で書き換えられる可能性もはらんでいる。

会場では、歴史と技術、メディアの関係に着目し、それらが記録や記憶の形成にどのように関わってきたのかを考察するとともに、「遺す/残す」という行為そのものを問い直す。記録メディアに内在する選別や排除の構造、デジタル環境におけるイメージの流通とその背後にある力学、さらに西洋近代以降の知覚の枠組みからこぼれ落ちてきたコミュニケーションのありようなど、多様な視点から読み解く作品を紹介する。

また、歴史に直接言及しない作品も含め、記憶の継承に新たな視点をもたらす表現を通して、メディアと歴史の関係を多角的に捉える。本展は、何が遺され、残されたものをどのように受け止めるのかという問いを通して、歴史と記憶の在り方を改めて見つめ直していく。

  • アート
  • 原宿

浮世絵の世界には、やイヌのように親しまれてきた動物から、不気味な鬼や「土蜘蛛」「猫又」のようなユーモラスな妖怪まで、多彩なキャラクターたちが登場する。さらに、擬人化された動物や奇妙な姿の空想上の生き物など、その表現は実に自由奔放だ。

「太田記念美術館」で開催の展覧会では、浮世絵に描かれたアニマル&モンスターたちが大集合。「かわいい」「怖い」「ちょっと変」をキーワードに、人気作品から新収蔵品約27点を含む約140点を通して、浮世絵ならではの豊かな想像力に触れられる。

見どころの一つは、同館所蔵の擬人化された動物たちの作品群。やウサギ、タコに加え、ホオズキやカボチャといった植物までもが人間のような姿で描かれている。中でもは、そば屋うなぎ屋、銭湯などで思い思いにくつろぐ姿が数多く登場し、思わず頬が緩む

また、石にトラの手足と尾が生えた「虎子石」や、人面魚、十二支が一つに合体した動物など、不可思議で愛嬌(あいきょう)のあるキャラクターたちも勢ぞろい。病気や薬、金銭までもが人の姿で描かれるなど、江戸の人々の遊び心あふれる発想を楽しめるだろう。

浮世絵たちによる豊かなイマジネーションの世界を満喫してほしい。

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  • アート
  • 千葉

「千葉県立美術館」で、印刷の歴史とその美しさに焦点を当てた展覧会が開催される。思想家や文筆家、デザイナー、職人たちが各時代・各地域で最先端の技術を用いて生み出した貴重な印刷物を、「印刷博物館」のコレクションから厳選して紹介する。

本展では、印刷物に込められた文化的背景や技術に着目し、印刷がどのように時代を映し出し、文化を形作ってきたのかをひもとく。千葉県ゆかりの画家・浅井忠(18561907年)が手がけた『甲辰 明治三十七年 暦』をはじめ、海や船をテーマにした作品も並び、千葉の風土とも呼応する展示構成だ。

会場では、宗教や学問を広く共有するためのメディアとして、印刷が果たしてきた役割に注目するほか、日本の印刷史を語る上で欠かせない代表的な印刷物を取り上げる。さらに、地図やポスター、ちりめん本など、多彩な印刷物を通してデザインの魅力にも迫る。

また、体験型展示として、スクリーンに投影された印刷物の世界を歩きながら鑑賞できるデジタルインスタレーション「ページの中を歩く」も登場。細部の意匠や色彩、印刷技術の美しさを、没入感のある空間の中で体感できる。

  • アート
  • 渋谷

PARCO MUSEUM TOKYO」で、展覧会「agnès b. on aime le graff!! _50年、ストリートとともに」が開催。自身をデザイナーではなく、スタイリストと称するアニエスベー(agnès b.)ことアニエス・トゥルブレ(Agnès Troublé)の、ストリートアートへの深い敬意と先駆的な視点に光を当てる。

ブランド創設以来、アニエスベーは一貫して「街」と向き合い続けてきた。1976年のパリ1号店オープン当初から都市の空気を取り込み、1984年にはいち早くアーティストに展示の場を提供するなど、半世紀にわたりストリートの表現者たちを支えてきた。

会場では、彼女が長年にわたり収集してきたコレクションから、FUTURA 2000、KRことクレイグ・コステロ(Craig Costello)、鈴木ヒラク、デニス・ホッパー(Dennis Hopper)など20人以上のアーティストによるグラフィティ作品を通して、ストリートアートの歴史を多角的にたどる。

さらに、アーティストとともに制作してきたアイコニックな「アーティストTシャツ」のアーカイブや未公開資料も展示。なお、本展は、フランスのルーベで開催された展覧会を起点とし、渋谷および台南への巡回を経て再構成されている。

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  • アート
  • 六本木

建築家アントニ・ガウディ(Antoni Gaudí、1852~1926年)の没後100年となる2026年、「ガウディの窓」に焦点を当てた創造的かつ革新的な展覧会が、「21_21 DESIGN SIGHT」ギャラリー3とバルセロナで開催される。バルセロナの世界遺産「パラウ グエル」での展示とコンセプトを共有するサテライト展として、ギャラリーの空間特性を生かした独自の構成で展開する。

本プロジェクト「ガウディ:未来をひらく窓」は、「窓を考える会社」YKK APがこれまでに蓄積してきたガウディの窓に関する知見や研究成果、模型、共同研究の一部などを、展覧会をはじめドキュメンタリー映像や書籍、関連イベントを通じて紹介するもの。来場者とともにガウディの豊かな窓の世界を多角的に捉え、未来の窓の在り方を考える産学官連携プロジェクトだ。

独自の建築思想と探究心、独創的な形態感覚や構造開発に加え、芸術と技術に関する幅広い知見を背景に創作活動を行ったガウディ。多様な職人や協働者との連携、パトロンや施主の支援を受けながら、既存の建築様式や工法にとらわれることなく、多彩な窓を設計し、建築における「総合」と「調和」の実現を目指した。

世界遺産を含むガウディ建築群とのコラボレーションの下、研究者や専門家とともに横断的に探求された「ガウディの窓」の魅力に触れてほしい。

  • アート
  • 横浜

KAAT 神奈川芸術劇場」で、劇場空間と現代美術の融合による新たな表現を探るシリーズ「KAAT EXHIBITION」の一環として、神奈川ゆかりの彫刻家・三沢厚彦と棚田康司による彫刻展が開催される。劇場で彫刻展が行われるのは今回が初の試みだ。

三沢は、樟から等身大の動物を彫り出す「ANIMALS」シリーズで知られ、棚田は一木造りによって、少年少女など境界に漂う存在を形にしてきた。本展では、彫刻と演劇という本来異なる領域の関係性を問い直し、その越境を試みる。

会場には、複数の動物の要素を併せ持つ三沢のキメラ像や、人間を超えた精霊や霊魂の姿を探る棚田の人物像が並ぶ。静的な存在である彫刻が、人が動き表現する「動」の場である劇場空間に置かれることで、場そのものの意味や在り方を浮かび上がらせる。

さらに特別パフォーマンスも上演予定。ポールダンサーやドラァグクイーン、車椅子ダンサー、バーレスクパフォーマーらが集う東京QQQによる「彫刻されるわたし。」、ふんどしパフォーマンスで話題を集める五十嵐ゆうやと仲間たちによる「彫刻される心・褌」は入場無料で鑑賞できる。加えて、山本精一と宮坂遼太郎による即興ライブも有料で開催される。

彫刻と身体表現が交差する、立体的な体験に注目したい。

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  • アート
  • 府中

「府中市美術館」で、近年海外での評価も高まっている画家・松本陽子による、美術館で初となる大規模個展が開催。本展では2025年から制作された新作が初公開されるほか、1950年代末の初期作品から最新作まで、厳選された作品群によって構成される。

松本の代名詞ともいえるピンクを基調とした絵画群は、1960年代末のアメリカ滞在でのアクリル絵具と、下地塗りを施さない綿のローカンヴァスとの出合いを起点に、その後の長年にわたる探究と実践の中で生み出されてきた。鮮やかで軽やかな色彩が重なり合い、動きと光に満ちた画面は、見る者を強く惹きつける。

2000年代には油彩画にも本格的に取り組み、緑や黒、青などを用いた豊かな表現へと展開。20265月に90歳を迎える現在も、制作は続けられている。

会場は大画面作品の迫力を存分に体感できる構成で、いずれも2メートルを超える大型作品が並ぶ空間は圧巻の一言。松本絵画の醍醐味をじっくりと味わってほしい。

  • アート
  • 清澄

「東京都現代美術館」で、世界的ファッションデザイナーとして知られるコシノヒロコの活動を、ファッションの領域にとどまらず、絵画、書、音楽、映像、空間表現へと拡張して紹介する過去最大規模の展覧会が開催。約400点におよぶ作品・資料を通して、日本のファッションと表現文化を牽引してきたコシノヒロコの創作を、現代的な視点から改めて捉え直し、その本質的な価値と広がりを問い直す。

会場では、半世紀を超えるキャリアの中で生み出された膨大な作品群から、現代の感覚や価値観と共鳴する表現を厳選。さらに、各時代の社会状況や文化的背景、同時代の芸術表現との関係性を重ね合わせながら、「なぜその表現が生まれたのか」「いまどのような意味を持ち得るのか」を再考する。

そこから浮かび上がるのは、固定化されたイメージやブランド像を超え、実験性と批評性を内包しながら、常に自己更新を続けてきた表現者としてのコシノヒロコの姿だ。時代を超えて変化し続ける、その創造の現在地に触れてほしい。

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  • アート
  • 上野

アイルランドの首都ダブリンにある文化施設「チェスター・ビーティー」には、アメリカの鉱山事業で成功を収めたアルフレッド・チェスター・ビーティー卿(Chester Beatty、18751968年)が収集した美術コレクションが所蔵されている。1917年に来日したビーティー卿は日本美術にも深い関心を寄せ、とりわけ物語絵においてはヨーロッパ屈指のコレクションを築いた。

同コレクションは198889年に東京・神戸・名古屋で公開されたほか、狩野山雪の『長恨歌絵巻』などの重要作品は「在外日本古美術品保存修復協力事業」によって修復された。このように、日本とアイルランドは継続的な文化交流を行なってきた。

「東京国立博物館」で開催される本展「アイルランド チェスター・ビーティー・コレクション 絵巻と絵本のたからばこ」では、その中から厳選された日本の物語絵25件を紹介。名品を通じて、美術がつないできた日本とアイルランドの関係にも光を当てていく。

  • アート
  • 上野

「上野の森美術館」で、フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh、18531890年)の画業を2期に分け、足掛け4年にわたって紹介する壮大なプロジェクト「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」が開催。展示作品は、オランダの「クレラー=ミュラー美術館」の所蔵品によって全て構成される。

大きな見どころは、不朽の名作『夜のカフェテラス(フォルム広場)』の来日。アルルに実在するカフェを描いた本作は、夜の青とガス灯の黄色が織り成す鮮烈な色彩対比が印象的であり、星空をテーマにした初期の代表作としても知られている。「夜なのに黒を使わない」という革新的な表現は、ゴッホの創造性を象徴する。

さらに、ゴッホの秀作約60点に加え、ピエール=オーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir)やクロード・モネ(Claude Monet)といった印象派の巨匠たちによる作品も登場。ゴッホが影響を受けた同時代の画家たちの作品と並べて紹介されることで、芸術的な創造の連鎖を体感できる。

なお、2027年から2028年に予定されている第2期では、オランダの国宝とも称される『アルルの跳ね橋(ラングロワ橋)』が約70年ぶりに来日する予定だ。国外に出ること自体が極めて稀少な作品であり、貴重な鑑賞機会となるだろう。

ゴッホが生涯を通じて追い求めた「魂の探求」。その軌跡を体感できる本展に、ぜひ足を運んでほしい。

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  • アート
  • 虎ノ門

虎ノ門の「art cruise gallery by Baycrew’s」で、写真家の竹沢うるまによる個展「Boundaries」が開催。初期作品集『Walkabout』から最新作『Boundary』シリーズまでを網羅し、約50点の写真で構成される。

世界各地を旅しながら撮影を続ける竹沢のレンズが捉えるのは、「大地」とそこに生きる人々の姿だ。南米、アフリカ、アジア、太平洋諸国の雄大な自然風景とともに、その土地に根ざした営みが写し出されている。

ジャングルの奥地、砂嵐の先にある集落、山を越え、海を渡った先で出会う人々。彼らは伝統と文化を守りながら、自然に抱かれるように暮らしている。そこでは人間もまた大地の一部として存在し、彼らと視線が交わる瞬間、私たちが抱く「自然と人間」という二元的な境界は静かに溶けていく。

本展では、自然と人間の関係から立ち現れる本質的な美を「大地」という形で提示。国境や人種、宗教、イデオロギーといったあらゆる境界を超えた先にある世界へと、鑑賞者を導いていく。

  • アート
  • 丸の内

「東京ステーションギャラリー」で、20世紀前半のスイスで活躍した画家、カール・ヴァルザー(Karl Walser、1877~1943年)の個展が開催。約150点が日本初公開となる本展では、絵画をはじめ、挿絵や舞台美術、壁画など多彩な分野で活動したヴァルザーの全貌に迫る。

スイスのベルン近郊に生まれたヴァルザーは、1899年以降ベルリンを拠点とし、革新的な表現を志向したベルリン分離派に参加。象徴主義的な作品を数多く残し、鮮烈さの中にほのかな陰影と繊細な色彩を併せ持つその作品群は、どこか神秘的な気配を漂わせる。

1908年には東京や京都府の宮津などに滞在し、日本の風景や風俗を精力的に描いた。本展で紹介される水彩作品には、今なお鮮やかな色彩が息づき、芸者舞妓(まいこ)、歌舞伎役者、市井の人々の姿が生き生きと表現されている。

また、ドイツやスイスに残る壁画や、シェイクスピア作品を含む舞台美術のセットやコスチュームのデザイン、さらに装丁や挿絵に見られる巧みな線描も見どころの一つ。会期中は、2026年4月にオープンした美術館隣接のカフェ「TOKYO STATION CAFE -THE NORTH DOME-」とのコラボレーションスイーツも登場する。

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  • アート
  • 六本木

「森美術館」で、革新的な素材や技法、表現方法を用いて具象彫刻の可能性を押し広げてきた現代美術作家、ロン・ミュエク(Ron Mueck)の大規模個展が開催。初期作品から近作に至るまで、作家の制作活動全体を包括的に紹介する。

人間を綿密に観察し、哲学的な思索を重ねて制作されたミュエクの作品。洗練され、生命感にあふれ、孤独、もろさや弱さ、不安、回復力といった人間の内面的な感情や体験を巧みに表現している。

総作品数が約50点しかないミュエクの彫刻を11点揃える本展は、それだけで貴重な機会だ。うち6点が日本初公開で、中でも初期代表作『エンジェル』(1997年)は見逃せない。

展示の中心となるのは、巨大な頭蓋骨の彫刻100点で構成されたインスタレーション『マス』(20162017年)。これまで世界各地で展示され、その都度会場に合わせて再構成されてきた作品で、同館でも約300平方メートルを使ったサイトスペシフィックな展示となる。

さらに、25年以上にわたりミュエクの制作現場を撮り続けてきたフランス人写真家のゴーティエ・ドゥブロンド(Gautier Deblonde)による写真と映像が並び、創作プロセスの舞台裏が垣間見える。

  • アート
  • 表参道

GYRE GALLERY」で、展覧会「SPECTRUM 2076 AD ── 来たる世界の意識体」が開催される。本展は、気候変動やテクノロジーの特異点を経た「50年後の未来(2076年)」という視点から現在を遡及的に問い直す、思想的な実験の場。出品作家には、池田謙、森万里子、山田晋也、名和晃平、牧田愛、草野絵美、熊谷亜莉沙が名を連ねる。

会場では、池田は音響によってベルクソン的な「持続」を空間に立ち上げ、鑑賞者の意識の輪郭を剥ぎ取っていく。森の垂直に立つクリスタルは、宇宙的な全一性へと開かれた上昇を提示し、山田は可視と不可視が交錯する絵画の層に、亡霊の気配を定着させる。

名和は物質を波動へと転じ、実在の皮膜を連続体として解体。牧田はポストヒューマンのトポロジーを描き出し、草野はAIという潜在空間から「存在し得なかった過去」を生成して現実と虚構の境界を揺るがす。熊谷は、沈みゆく文明の記憶を照らし返し、現代という一瞬に形而上学的な鎮魂を与える。

鑑賞者は、身体感覚を揺さぶる音響や重層的な視覚体験を通して、自身が「未来から現在へと送り込まれた亡霊(スペクター)」であるかのような感覚に導かれるだろう。壮大な思想的ドキュメントを体感してほしい。

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  • アート
  • 白金台

1983年に「東京都庭園美術館」として開館して以来、旧朝香宮邸の建築に光を当てた展覧会を重ねてきた同館。今年は「アニマルズ」をテーマに、その魅力を改めてひもとく。

かつて白クジャクやツル、イヌ、ウサギなどが飼われていた朝香宮邸では、室内装飾にもシカや魚といった動物モチーフが随所に取り入れられている。会場では、作品や資料を通して、建物に息づく動物の存在に目を向ける。

併せて、展覧会によって限定公開される最上階の「ウインターガーデン」を公開。白と黒の市松模様の床が印象的な空間に実際に足を踏み入れ、細部まで鑑賞できる。さらに、普段は閉じられているカーテンを開け放ち、新緑の庭園を望む開放的な環境の中で、宮邸時代の家具や調度品によって当時の雰囲気を再現する。

アールデコと日本の意匠が融合した唯一無二の建築と、都心にありながら豊かな自然を併せ持つ同館ならではの魅力を堪能してほしい。

  • アート
  • 乃木坂

「国立新美術館」で、アジア人で初めてパリ・オートクチュール正会員となり、日本のファッションをリードした森英恵(1926〜2022年)の回顧展が開催。オートクチュールのドレス、資料、初公開となる作品を含む約400点を通じて、森のものづくりの全貌を明らかにする。

高度経済成長期の日本において、家庭と仕事を両立しながら活躍し、新しい女性像の象徴として受け止められた森。1961年には雑誌『装苑』で、快活さと向上心を備えた人物像「ヴァイタル・タイプ」を提唱し、晩年まで世界を股にかけて活動した。

会場では、1977年から膨大な数のオートクチュールコレクションから、テーマごとにドレスを展示。高品質な素材と卓越した技術を持って世界に挑んだ一点ものの作品群から、森の美意識と創造力の高さを体感できる。

また、多彩な衣装や資料を通して、森のアメリカ時代の活躍を網羅的に展示。まずは、森が日本の帯地や絹織物を用いて生み出した作品に注目したい。日本的美を体現する絹地に鮮やかな色彩のプリントを施したオリジナルの布地とともに、近年の調査で新たに確認された布の原画や試し刷りを紹介している。

そして、ニューヨークの「メトロポリタン美術館」に所蔵されているドレスも日本初公開。伊藤若冲『月下白梅図』に着想を得て制作した1着を含む、計4点が出品される。

さらに、森がファッションを文化にするために力を注いだメディア発信にも焦点を当てている。森は1966年に『森英恵流行通信』を創刊。後に『流行通信』となり、日本を代表するファッション誌へと発展した。また1978年には表参道に「ハナヱ モリビル」を開設し、国内外のデザイナーが集う拠点を築いた。

デザイナーとしての表現だけではなく、生き方とその創造の根幹にまで迫るまたとない機会。会場でこそ味わえる体験が待っている。

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  • アート
  • 上野

「東京都美術館」で、20世紀のアメリカ具象絵画を代表する画家、アンドリュー・ワイエス(Andrew Wyeth、19172009年)の回顧展が開催される。

ワイエスは、第二次世界大戦後に脚光を浴びたアメリカ抽象表現主義、ネオ・ダダ、ポップアートといった動向から距離を置き、91歳で没するまで、ひたすら自分の身近な人々と風景を描き続けた。

作品には、自分のいる側と向こう側を隔てる象徴として窓や扉といったモチーフが繰り返し登場。境界は西洋絵画史の中で古くから取り上げられてきたテーマだが、ワイエスにとってはより私的な世界とのつながり、あるいは境目として機能している。

本展は、その境界の表現に着目し、ワイエスが描いた世界を見ていこうとするもの。作家自身の精神世界が反映された作品群に浸ってほしい。

  • アート
  • 用賀

「世田谷美術館」で、1960年代以降の日本の前衛美術を語る上で重要な作家の一人、田中信太郎(19402019年)の回顧展が開催。アトリエに遺された約40点を中心に構成される本展では、書き留められた言葉とともに活動をたどり、静寂の奥に潜む創造の謎に迫る。

田中はネオ・ダダの一員として活動後、ミニマルアートを想起させる単純な形態へと転じ、抑制された表現で「もの派」とも関連付けられ、注目を集めた。1985年以降は平面と立体を組み合わせた作品へと展開し、独自の思想に基づく表現を生涯にわたり追求。「ヴェネチア・ビエンナーレ」など海外展にも多数参加している。

その後はアトリエを世田谷から日立へ移し、東京の美術界から距離を置いた制作へと移行。常に新たな表現を提示し続けた姿勢は、「視る」ことを基点に美術の本質を探究し続けていたといえる。

本展では、国内未発表となる1970年の絵画作品をはじめ、晩年に探求を続けた平面作品、最晩年まで制作された金属によるドローイングなどが登場。またヴェネチア・ビエンナーレ出品作など、今まであまり展示されてこなかった作品も紹介される。

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  • 銀座

「ギンザ・グラフィック・ギャラリー」で、映像デザイナー/クリエイティブディレクターであり、クリエイティブアソシエーションCEKAIの共同代表を務める井口皓太の個展が開催。本展では、動的なデザインを軸に、モーショングラフィックスから実写映像まで一貫した表現を展開してきた井口の実践の中から、平面として存在してきたグラフィックに時間と空間を与える試みに焦点を当てる。

会場には、石井伶、三重野龍、佐々木拓/金井あきといったコラボレーションゲストを迎えた。それぞれ幾何図形と規則性、文字と身体性、紙と連続性という、グラフィックデザインの基礎的要素をテーマとした新作3点を発表。平面グラフィックから、立体、そしてモーショングラフィックスへとつながる思考の軌跡に焦点を当てる。

井口とCEKAIの代表的な仕事と合わせて、体験的かつ没入的な視覚コミュニケーションの現在地と、その先に広がる可能性を提示する。

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  • 六本木

「小山登美夫ギャラリー六本木」で、現代ブラジルを代表するアーティストの一人、エルネスト・ネト(Ernesto Neto)による個展「Dreaming Beings(夢見る存在たち)」が開催。新たな立体シリーズとドローイング作品が紹介される。

ネトは1980年代後半からソフトスカルプチュアを発表し、その後、大型インスタレーションへと展開。1990年代には、伸縮性のある薄い布を用いて、皮膚や臓器を想起させる有機的なフォルムの体感型インスタレーションに取り組んできた。特に、天井からつり下げた布の中に鑑賞者が入り込める「ネーブ」(ポルトガル語で「宇宙船」の意)のシリーズは、世界中から注目を集めた。

本展での新作「SymbioZooEthicalBeings – SZEBs」は、約40年にわたる制作の延長線上に位置づけられるシリーズ。綿糸によるかぎ針編みの網やひも、竹といったシンプルな素材を用い、空間に張り巡らされた構造体は、壁や天井との緊張関係の中で、繊細なドローイングのような広がりを生み出す。

併せて展示されるドローイングは、土を素材として2024年に制作された「In Search of a Happy Path(幸福への道を求めて)」シリーズ。筆を握る身体の動きとともに、呼吸するかのように生まれた線は、行為の痕跡であり、時間の蓄積であり、さらにはダンスでもあるとネトはいう。

これまで、物質や存在の間にある関係性を主題に、生命とその概念について表現してきたネト。本展の作品群は、あらゆる生命への愛と、地球への賛歌を、より素朴かつ根源的な形で示している。

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  • アート
  • 清澄

ページごとに紙のサイズが変わり、「あおむし」の食べた跡が穴で表現されている絵本『はらぺこあおむし』(1969年)は、現在でも世界中の子どもたちに愛されている。「東京都現代美術館」では、日本語版刊行50周年を記念し、アメリカを代表する絵本作家のエリック・カール(Eric Carle、19292021年)の回顧展が開催される。

会場では、『はらぺこあおむし』『パパ、お月さまとって!』『10このちいさなおもちゃのあひる』など27冊の絵本の原画に合わせ、グラフィックデザイナー時代の作品、アイデアの最初の構想段階で作られるダミーブック、コラージュに使用する素材など、約180点を紹介する。

原画の色鮮やかさ、デザイナーとしての造本の工夫、そして絵本に込めた子どもたちへの優しいまなざしを体験できるだろう。

  • アート
  • 渋谷

DIESEL ART GALLERY」で、ジョージア・トビリシ出身のアーティスト、アントン・レヴァ(Anton Reva)による日本初の個展が開催。本展は、相互に連関する2つのプロジェクト「NERVOUS」と「WATGT」を、「圧力」という概念の下に一つの知覚的フィールドとして統合する試みだ。

レヴァは、写真や映像、コラージュ、プリント、インスタレーションを横断するマルチディシプリナリーな表現を展開するアーティストでありビデオディレクター。ヨーロッパを拠点に、デジタル環境における知覚のゆがみやアイデンティティーの断片化、記憶と現実の間に生まれる緊張をテーマとしている。

会場では、「NERVOUS」を軸にした知覚体験として構成され、鑑賞者の感覚を揺さぶる空間が立ち上がる。その中で、奥行きやつながり、対話といった要素は次第に希薄化していく。言語化にあらがう感情の在り方に焦点を当て、意識や身体の中に確かに存在しながらも言葉として捉えきれない感覚、そして自己と世界の間に生じる微細なズレを浮かび上がらせる。

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  • アート
  • 銀座

「ギャラリー小柳」で、クリスチャン・マークレー(Christian Marclay)による個展「LISTENING」が開催。マークレーのオリジナルコラージュで構成される本展では、新作シリーズ「Concentric Listening」と「Eccentric Listening」を発表するほか、彼のアイコンといえるレコードジャケットを用いたシリーズ「Oculi」の最新作も展示される。

マークレーは1979年、レコードとターンテーブルを楽器として用いたパフォーマンスを開始し、実験音楽の分野で先駆的な存在となった。1980年代以降は即興的なパフォーマンスに加え、聴覚と視覚の関係を探る作品を、映像・写真・彫刻・絵画・版画など多様なメディアを横断しながら制作している。

コラージュは一貫してマークレーの創作の基盤にある。映像やサウンド、紙媒体の作品において、DJのように音楽や映画、漫画、雑誌などポップカルチャーの断片をサンプリングし、重ね合わせ、切り取り、再構成することで、新たなイメージを立ち上げてきた。

本展の新作シリーズは、「LISTENING」すなわち「聴く」という行為に焦点を当てている。音を聴く行為は、長年にわたりマークレーの創作活動を形作ってきた要素であり、音と映像の境界を曖昧にしながら、それらを一つの知覚の領域として提示してきた。

本展を通して、マークレーの現在地を感じてほしい。

※12〜19時/休廊日は日・月曜・祝日/入場は無料

  • アート
  • 乃木坂

TOTOギャラリー 間」で、建築家・山田紗子の初個展が開催。ギャラリー空間を「環境」と捉え、自然、生物、ランドスケープなどが複雑な旋律を奏でながら共鳴する独自の世界を表現する。

自由な造形や大胆な構成、鮮やかな色彩、生命感あふれるインスタレーションなどを通じて、建築に新たな息吹を吹き込む山田。「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)では休憩所の設計を手がけ、樹木群と人工物が溶け合う環境を実現させた。近年は、観光牧場のリニューアルや公共図書館のプロポーザル最優秀者にも選ばれている。

山田は、野生動物を記録する映像ディレクターを母に持ち、大自然の中で命を営む生き物たちの情景を観ながら育った。彼女のルーツには、絶え間なく風景が移り変わる悠久の時間の中で多様な生命が奏でる、無数の歌声が響く大地がある。

「いくつもの歌が同時に響くような建築」を掲げる山田は、要素同士がぶつかり合いながら新たな調和を生むポリフォニー(多声音楽)の在り方を空間として立ち上げる。日々複雑さを増す世界を多声的と捉えて肯定しつつ、躍動感のある豊かな環境の創出を目指す。

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  • アート
  • 神泉

古くから多様な民族が行き交ってきた中央アジアでは、シルクロードの要衝として、オアシス都市を中心に豊かな工芸美術が生み出された。8世紀以降に広まったイスラム文化の影響は、抽象的で装飾性の高い文様として結実し、テキスタイルをはじめ木工や金工、陶器など多様な分野に受け継がれている。機械では再現しがたい精緻さと華やかさを備えた手仕事は、今なお強い魅力を放つ。

ウズベク人に伝わる刺繍布「スザニ」や衣装にはミステリアスな文様と豊かな色彩が広がり、女性たちの手によって布一面に施された刺繍(ししゅう)が特徴。一方、砂漠地帯で遊牧生活を営んできたトルクメンは、重量感のある銀製ジュエリーで身を飾る習慣を築く。これらは単なる装飾品ではなく、厳しい環境を生き抜くための知恵や祈りを宿した存在でもある。

「渋谷区立松濤美術館」で開催される「中央アジアの手仕事 華麗なる刺繍とジュエリー 広島県立美術館コレクションより―」では、国内有数のウズベクおよびトルクメンの染織・ジュエリーコレクションを誇る「広島県立美術館」の所蔵品を紹介。民族ごとに受け継がれてきた刺繍布や装身具を通して、中央アジアに花開いた繊細かつ華麗な手わざを堪能してほしい。

  • アート
  • 六本木

SCAI PIRAMIDE」で、フランス出身の美術家、ダニエル・ビュレン(Daniel Buren)による個展が開催。本展では、1960年代から1980年代、そして2010年代に制作された布やキャンバスの作品に加え、光ファイバーを用いた作品群を紹介する。

1960年代半ば以降、60年以上にわたり活動を続け、コンセプチュアルアートの地平を切り開いてきたビュレン。既存の美術制度へ一石を投じたパリでのグループ結成や、街路空間における無許可のポスター掲示といった活動は、ビュレンの批評的かつ哲学的、そして挑戦的な側面を強調している。

彼の代名詞ともいえる白と色のストライプは、「視覚の道具」と称される重要なモチーフ。パレ・ロワイヤル中庭に設置され議論を呼んだ『Les Deux Plateaux(二つの台地)』をはじめ、ギャラリーや美術館、建築、さらには都市空間へと広がる、空間に応答する作品やサイトスペシフィックなプロジェクトの基軸を成し、現在も世界各地で展開されている。

『可変形態の絵画』は、そのストライプの原点ともいえる、作家が市場で偶然見いだしたしま模様の幌布との出合いを契機に制作されたキャンバス作品だ。また、光ファイバーとLEDを組み合わせた「Fibres Optiques」シリーズや、6時間30分に及ぶ映画『Beyond time, as Far as the Eye Can See』も上映される。

本展は、各時代の作品を通じて、変化し続ける世界の中でも揺るがないビュレンの思考と方法の核を浮かび上がらせるもの。ストライプという「不変の記号」は今なお強い存在感を放ち、その批評性を鮮明にする。長年にわたる実践を現代の文脈から再考し、その意義に改めて光を当てていく。

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  • アート
  • 京橋

Gallery & Bakery Tokyo 8分」で、アーティストのLottaによる新作個展が開催。自身の分身ともいえるキャラクター「ソックス」を投影したセルフポートレートを軸に、豊かな物語性を宿した作品群が並ぶ。

本展タイトルの「ユートピア」は、理想郷や夢のような世界、そして人が絶えず追い求める幸福の形を意味する。Lottaはこの概念を、独自の色彩と視点によって表現した。

会場は、訪れる人々を柔らかく包み込むように、作家の世界観で満たされる。キャンバスからあふれ出したイメージが空間へと広がり、その感性に触れた時、そこには日常から切り離された「理想郷」が立ち現れるだろう。

  • アート
  • 六本木

「フジフイルム スクエア」で、1970年代から活動を続ける写真家・潮田登久子の写真展「マイハズバンド」が開催。1970年代後半から1980年代にかけて撮影され、約40年の時を経て発表された同シリーズから、ゼラチン・シルバー・プリント作品約30点を展示する。

1978年に写真家の島尾伸三と結婚した潮田は、翌年から豪徳寺の古い洋館で家族と暮らし始める。古い洋館の2階中ほどにあった15畳程度の一室が家族の住居。風呂なし、台所は共有という環境の中、潮田は夫と幼い娘との日常を淡々とフィルムに収めていった。

それらのネガやプリントは長らく忘れられていたが、引っ越しの整理中にたまたま発見され、2022年に写真集『マイハズバンド』として刊行。国内外で大きな反響を呼び、再評価の契機となった。

写されているのは、家族の姿だけでなく、食器やカーテンといった身の回りの事物や日常の風景。作品は、どこか非現実的な気配をまといながらも、不思議な既視感を呼び起こす。

発表を前提とせずに撮られ、長い間熟成されていた写真は、記録であると同時に、撮影者の無意識な感情を率直に反映している。写真が内包する本質が、時間を超えて鑑賞者の前に立ち上がっていくだろう。 

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  • アート
  • 汐留

「パナソニック汐留美術館」は開館以来、20世紀のフランスを代表する画家ジョルジュ・ルオー(Georges Rouault、18711958年)の作品を中心に収集を続け、現在では約270点に及ぶコレクションを所蔵している。近年は、ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreauのアトリエで学んだ初期の貴重な作品群が充実し、そこにモローの作品も新たに加わった。

本展「ジョルジュ・ルオー アトリエの記憶」では、そうした新収蔵作品を軸に同館のルオーコレクションを紹介。名作が生まれた創作の場「アトリエ」に焦点を当て、初期から晩年に至る代表作をたどる。

会場では、ルオーが晩年に使用していた画材や机を用いてアトリエの一部も再現。家族でさえ立ち入りを制限されていたという、聖域であるアトリエの記憶をたどる。さらに、収蔵作品としては初公開となる『モデル、アトリエの思い出』にも注目したい。

  • アート
  • みなとみらい

「横浜美術館」で、明治末から大正初期にかけて活躍した画家・今村紫紅(18801916年)の大回顧展が開催される。公立美術館では初、実に42年ぶりとなる本展では、初公開作品約40点を含む約180点が一堂に集結。国指定重要文化財も揃い、その全貌に迫る。

平安時代以来の「やまと絵」の伝統を学び、若くして歴史画で高い評価を得た紫紅は、やがて日本画の革新を志す。琳派の伸びやかな表現に加え、中国・江南地方の絵画に影響を受けた南画、西欧の印象派など、多様な要素を取り込みながら、風景画に強烈な個性を発揮した。

代表作である国指定重要文化財『熱国之巻』や『近江八景』に見られる大胆な筆致と構図、明るい色彩は、その個性を象徴するもの。35年という短い生涯の中で築かれた創作の軌跡を、紫紅自身の言葉を章題に据えた4章構成でたどる本展は、その全体像を捉える決定版といえる。見逃せない機会となりそうだ。

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  • アート
  • 原宿

「ライカギャラリー表参道」で、ポルトガル出身の写真家、テレサ・フレイタス(Teresa Freitas)による写真展が開催される。

色彩を主題に、ストリートやドキュメンタリー、ファインアートの領域を横断しながら独自の視覚言語を築いてきたフレイタス。彼女の作品は、色を単なる装飾としてではなく、空間を構築し、知覚を導くための根源的な力として捉える点において、現代写真に新たな視座を提示している。

本展では、異なる地域で撮影された写真を組み合わせたシリーズを紹介。「東」と「西」という大きな概念的枠組みを背景に、遠く離れた場所のイメージを並置することで、文化的な差異を強調するのではなく、色彩や光、形によって生まれる視覚的な連続性を浮かび上がらせる。

色彩がもたらす新たな知覚の在り方に触れられるだろう。

  • アート
  • 新宿

SOMPO美術館」で、「印象派の先駆者」と称される画家、ウジェーヌ・ブーダン(Eugène Boudin18241898年)の展覧会が開催される。日本では約30年ぶりとなる本展には、フランスから油彩・素描・パステル・版画など約100点が来日。初期から晩年に至る画業をたどりながら、自然の一瞬を捉え続けた制作の軌跡にも迫る。

空や雲、海景、牛の群れなどを、みずみずしい色彩と軽やかな筆致で描き出したブーダンの作品は、故郷のノルマンディーをはじめとする各地の光と大気の移ろいを繊細に捉えている。戸外制作を重視し、変化し続ける自然現象と向き合うその姿勢は、若きクロード・モネ(Claude Monet18401926年)に大きな影響を与え、やがて印象派の誕生へとつながった。

会場では、「海景」「空」「風景」「建築」「動物」「人物」「素描」「版画」という8つの切り口から作品を紹介し、その多彩な表現を読み解く。印象派誕生から150年の節目に、フランス近代風景画の礎を築いたブーダンの魅力に改めて触れたい。

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  • Things to do
  • 西麻布

KARIMOKU RESEARCH CENTER」で、テーマ「Survey 03FORM FOLLOWS FEELINGS」を掲げた展覧会「間の音ー Between Space & Sound ー」が開催。ニューヨークを拠点に活動するオーディオデザイナーのデヴォン・ターンブル(Devon Turnbull)と、彼が率いる高忠実度スピーカーシステムで知られるブランド「OJAS」との協働プロジェクトの成果を発表する。

ターンブルは工場を訪れ、日本の高度な木工技術と自身の音響哲学の親和性を見いだした。合板を主材としてきたOJASのスピーカーに精緻な加工技術を掛け合わせ、新たな音響表現と工芸的品質が結実。本展では、「Sanjo」「Rokujo」「Nurikabe」3つのスピーカーに加え、木製ホーンスピーカーやチェアシステムを展示する。

会場は3フロアの構成。茶室を思わせる空間での瞑想(めいそう)的なリスニング体験や、ダイナミックな木製ホーンを備えた試聴室を展開し、さらに仕上げの違いによって生まれる表現の変化も提示する。

加えて、レコード店「春の雨 cafe & records」によるセレクト盤の販売や、雑誌「MJ無線と実験」のアーカイブ展示も実施。多角的なパートナーシップを通して、ターンブルの重層的な世界観を立体的に浮かび上がらせていく。

  • アート
  • 京橋

「小山登美夫ギャラリー京橋」で、韓国のアーティスト、アン・ジサン(Ahn Jisan)による日本初個展「昼、夜」が開催。新作ペインティングが発表される。

アンの絵画は、閉塞(へいそく)や抑圧、混沌(こんとん)、恐怖といった不穏な感情をたたえながらも、緻密な構成とドラマティックな光の表現、力強い筆致によって見る者を強く引き付ける。幼少期に過ごした釡山・保守洞の書店街での記憶や、父のアトリエに漂う陰影のある空気、政治ドラマにおける拷問の映像体験など、個人的な経験が普遍的な感覚と混ざり合い、彼が紡ぎ出すさまざまなイメージは深い世界としてキャンバスに繰り広げられている。

世界の真実か虚偽か、現実か仮想か、実体か幻影か、内面を貫く暗さにどんな真実が含まれているのか。イメージの背後に立ち上がるリアリティーは、鑑賞者に新たな感情を呼び覚まし、またどこか既視感を伴いながら、無意識の中の記憶を呼び起こす。

制作においては、事前に綿密な構想が重ねられる点も特徴的だ。浮かんだアイデアは鉛筆によるドローイングとして記録され、一部はアトリエ空間で実際に検証される。また、多くの作品が写真コラージュを起点としたドローイングから発展している。

昼と夜が繰り返されるように、揺らぎ続ける世界の見え方を問い直す本展は、日常に潜む新たな視点を提示する。

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  • アート
  • 表参道

「エスパス ルイ ヴィトン東京」で、南アジア系ディアスポラのアーティスト、リナ・バネルジー(Rina Banerjee)による展覧会「You made me leave home…」が開催。インスタレーションや彫刻、絵画など、厳選した19点の作品を紹介する。

本企画は、「エスパス ルイ ヴィトン」の20周年および「フォンダシオン ルイ ヴィトンによる「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラム10周年を記念したもの。バネルジーは、約30年にわたる創作活動を通じて、現代社会における重要なテーマを探求してきた。本展では、地球規模の移動や植民地主義の遺産といったテーマの作品群を届ける。

  • アート
  • 埼玉

開館1周年を迎える「ハイパーミュージアム飯能」で、日本発のポップカルチャー「KAWAII」の第一人者・増田セバスチャンによる大規模展「KAWAIITOPIA -GO TO HEAVENHELL-」が開催される。

見どころは、宮沢湖に出現する巨大なピンクの島「KAWAII-CORE ISLAND」。実際に島へと入り込むと、来場者にはアーティストからの最後の問いかけが待ち受けている。

入り口では、「私たちの皮膚の下には、カラフルな血が巡っている」をテーマにしたシリーズ作品の巨大タワー「Polychromatic Skin -Gender Tower-」が登場。ジェンダーをはじめとする無意識の固定観念を揺さぶり、それを超えてつながっていく可能性を提示する。

さらに館内では、増田の原体験をたどる没入型企画が展開され、葛藤の先にあるKAWAIIの本質に触れられる。生まれつき難聴の増田は、小学生で聴力を得るまで視覚を中心に世界を捉えてきた。その経験は強烈な色彩体験として記憶に刻まれ、作品世界の原点となっている。

そのほか、限定ポップアップストアや撮影ブースも設置。「KAWAIITOPIA」に上陸して、KAWAIIカルチャーを多角的に体感しよう。

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  • アート
  • 上野

ルネサンス以降、西洋美術において作者の姿はしばしば作品として表されるようになり、とりわけ自画像は一般的な画題として広く定着していく。「国立西洋美術館」で開催される展覧会「アーティスト・バイ・アーティスト――西洋版画に見る芸術家のイメージ」では、自画像を含む芸術家の表象の変遷を、版画を中心とした約50点の作品を通してたどる。

造形作品に作者の姿が表れる背景には、社会における表現者の地位や在り方の変化がある。中世には匿名の職人に過ぎなかった彼らも、16世紀以降、制作行為を学問や科学と結びつけることで、創造の主体としての「芸術家」へと位置づけられていく。さらに19世紀には、芸術家は思考する「個」としての自覚を深め、孤高で苦悩する表現者として捉えられるようになる。

本展は、およそ18世紀までの芸術家のことを呼ぶ「オールドマスター」を扱う第1章と、19世紀以降の近代画家を扱う第2章で構成。各章は、集合的な芸術家像や理想像を扱う「制作する芸術家」と、個別の風貌を写す「自画像と芸術家像」の2つのセクションから成る。

多彩なイメージを通して、芸術家とは何者かを改めて問い直し、創造と自己表現の歴史を見つめる機会となるだろう。なお、6月14日(日)は本展及び常設展の観覧が無料だ。

  • アート
  • 初台

東京オペラシティ アートギャラリー」で、「拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」が開催。理性によって分断された現実を超え、新たな現実の可能性を探求する芸術運動・シュルレアリスム(超現実主義)の多様なジャンルの優品を一堂に集め、その広がりと社会への浸透を提示する。

シュルレアリスムには、違和感のある風景や夢幻的なイメージといった一定の表現傾向が見られるが、単なる様式ではなく、世界の変革を目指す共通の精神に基づくあらゆる創造行為を指す。そして、「日常を変えること」と「世界を変えること」を不可分なものとして捉えていた。

本展では、絵画、オブジェ、写真といった美術領域にとどまらず、広告、ファッション、インテリアなど日常生活へと拡張していったシュルレアリスムの展開を横断的に検証し、その発展と変遷をたどる。

会場には、サルバドール・ダリ(Salvador Dalí)、マックス・エルンスト(Max Ernst)、ルネ・マグリット(René Magritte)といった代表的作家の名品が大集結。とりわけ、マグリットの象徴的モチーフである山高帽の男を描いた『王様の美術館』や『レディ・メイドの花束』は注目作だ。

さらに、シュルレアリストたちと交流のあったデザイナー、エルザ・スキャパレッリ(Elsa Schiaparelli)による作品群も紹介される。ショッキングピンクのドレスをはじめ、独創的な意匠が施された香水瓶やジュエリーなど、多彩なデザインが並ぶ。

その革新的な視覚表現と広範な影響で、誕生から約100年を経た現在においてもなお、新鮮な驚きをもって受け止められている世界を堪能してほしい。

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  • アート
  • 上野

NHKの長寿番組「日曜美術館」は、1976年の放送開始以来2500回以上を重ね、2026年に50周年を迎える。これを記念し、「東京藝術大学大学美術館」では、番組が紹介してきた「美」の魅力に迫る展覧会が開催。西洋・日本の絵画や彫刻、浮世絵、びょうぶ、土器、伝統工芸などジャンルを横断する名品約120点を集め、5章構成で紹介する。

会場では、これまで番組に出演してきた人々の言葉を過去の放送から厳選して上映し、高精細映像とともに日曜美術館が紡いできた歴史をたどる。作品がどのように語られ、伝えられてきたのかを、当時の映像や言葉を通して追体験できるのも見どころだ。

大江健三郎が語るフランシス・ベーコン(Francis Bacon)、モデルであった矢内原伊作の視点から読み解くアルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti)など、多彩なゲストによる言葉と古今東西の作家と作品を紹介。さらに、村上隆、大野一雄、井浦新らの言葉とともに、縄文土器・土偶や伊藤若冲、曾我蕭白、葛飾北斎といった日本美術の名品が新たな輝きを放つ。

また、「作家の生き様と美~アトリエ&創作の現場」と題し、制作の現場を捉えた貴重な映像も公開。作中の作家の言葉・作品が生み出される瞬間を、作品とともに味わえる。この機会を見逃さないでほしい。

  • アート
  • 品川

KOSAKU KANECHIKA」の天王洲および京橋の2会場で、平松典己による個展が開催される。作家の現在進行形の試みを紹介する本展では、天王洲ではドローイング約10点、京橋では絵画を中心に約10点を展示する。

平松は、あらかじめ特定のモチーフを定めることなく制作を開始し、抽象的な背景や即興的な筆致、重なり合う色彩によって生まれる混沌(こんとん)の中から、偶然と必然が交差する瞬間を探る。個人的な記憶や体験、想像、さらには美術史的な引用を横断しながら、人物などの具体的なイメージを事後的に立ち上げていくプロセスが特徴だ。

本展では、その表現を多角的に読み解く。タイトルの「汗と涙」は、これまで以上に身体的な実感を伴う制作の熱量を示すもの。静かに積み重ねられた判断とその痕跡が、試行錯誤の対話の果てにどのような像として結実するのかが問われる。 

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  • アート
  • 六本木

21_21 DESIGN SIGHT」で、スープを入り口に衣食住の根源を見つめ直す企画展「スープはいのち」が開催。衣服や住まいといった身体の外側の環境と、食という内側の環境を「身体を包む行為」として捉えてきたデザイナーの遠山夏未がディレクションを手がける。

水と食材を火にかけるという最小の行為から生まれるスープには、素材に宿る力や熱の移ろい、土地の歴史、身体の感覚、器や食空間のたたずまいなど、多様な層が同時に息づく。外側と内側の世界が溶け合い、小さな器の中に「生きる環境そのもの」が立ち上がる構造を、衣食住を支える「包まれる身体」という共通原理として、遠山は提示する。

本展では、水や塩、野菜といった素材の気配や、熱による変化、器や空間との呼応、「食べる」という所作の繊細な動き、さらには記憶や香りといった目に見えにくい要素を手がかりに、生活環境を「包む」という視点から再考。抽象的な構造としての衣食住と、人間の身体に残る野生的な感覚の間に潜むデザインの働きを浮かび上がらせる。

会場では布や音によるインスタレーション、香りの作品、写真、スープにまつわる資料などを展示。動詞を軸に構成されたゾーンを巡ることで、始まりへの回帰から再生、分かち合いへと至る、命の循環を体感できる。作品に対応するレシピを収集しながら鑑賞に関与する仕掛けも用意され、持ち帰った後も「味わう」「作る」といった行為へと体験が接続されていく。

スープという最小の食を起点に、身体や環境、記憶や時間が折り重なる中で、鑑賞者は五感を通して新しい視点や気づきを見いだすだろう。

  • アート
  • 六本木

幕末から明治期にかけて活躍し、現在も国内外で高い人気を誇る絵師・河鍋暁斎(18311889)。神仏画・戯画・動物画・妖怪画、さらには世相を映した風俗画まで、その画題は多岐にわたり、いずれにも卓越した画技と機知に富んだ発想が発揮されている。

即興で絵を描く席画を得意とし、書画会でもその場で揮毫(きごう)するなど人気を博したが、1870年、酔って描いた絵が問題視され逮捕・投獄される。翌年の放免後はさらに制作に励み、画業は全盛期を迎えた。

開国後は欧米でも注目を集め、フランスの美術品コレクター、エミール・ギメ(Émile Guimet)が著書で紹介したことで、その名は海外にも広まった。さらに、建築家のジョサイア・コンドル(Josiah Conder)らが弟子入りするなど、国際的な交流も生まれている。

「サントリー美術館」で開催される本展「ゴールドマン コレクション 河鍋暁斎の世界」では、代表作を含む約110点を展示。日本初公開となる肉筆画や、保存状態に優れた版画など、半数以上が初出品となる作品群を通して、暁斎の多彩な創作世界を紹介する。

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  • 六本木

「東京ミッドタウン デザインハブ」で、サインデザイン分野では初となる展覧会が開催。「過去・現在・未来」という時間軸を軸に、サインデザインが社会の中で果たしてきた役割と、その進化の軌跡をひもとく。

都市や建築、公共空間、商業施設、文化活動など、あらゆる場面において、人と人、人と場所、人と社会を結びつけてきたサインデザイン。その本質は、「環境における新しい価値観を、情報によって創出する」ことにある。

会場では、人類が古来より用いてきた情報伝達手段としてのサインを、11のコンテクストに分類。時代を象徴する77のプロジェクトに焦点を当て、コンセプトや写真、映像、模型、モックアップなど多角的な資料を通して読み解いていく。

さらに、サイン関連企業10社が同一形状の矢印サインに挑戦した展示では、それぞれの技術開発のプロセスと熱意を壁面展示として紹介。加えて、五十嵐威暢が手がけ、かつて「松本PARCO」の外壁に掲出されていたネオンサイン「P」の実物も公開される。

サインデザインが持つ多面的な魅力と、その可能性を体感できる機会となりそうだ。

  • アート
  • 上野

「国立西洋美術館」で、リトアニアを代表する国民的芸術家、ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス(Mikalojus Konstantinas Čiurlionis、18751911年)の日本で34年ぶりとなる回顧展が開催される。祖国・リトアニアにおける生誕150周年の祝賀ムードを引き継ぎ、「国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)」が所蔵する絵画やグラフィック作品、約80点を紹介する。

チュルリョーニスは、絵画と音楽という2つの領域で類まれな才能を示し、35歳の若さで亡くなるまでのわずか6年ほどの画業で、300点以上もの作品を手がけた。世紀末のアールヌーヴォーや象徴主義、ジャポニスムといった国際的な芸術潮流と響き合いながら、作曲家ならではの感性と、当時ロシア帝国の支配下にあったリトアニアのアイデンティティーを反映した作品群は、唯一無二の個性を放っている。

見どころは、人間の精神世界や宇宙の神秘を描いた幻想的な作品の数々のうち、日本初公開となる謎に包まれた最大の代表作『レックス(王)』。また、音楽形式を取り入れた連作や、自身の手になる楽譜、展示室に流れる旋律を通して、優れた作曲家でもあった画家の個性と感性を体感できる。

日本ではめったに見られない作品が来日する本展。再評価の機運が高まるチュルリョーニスの世界を堪能してほしい。

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  • アート
  • 恵比寿

複数の写真と短文を組み合わせて物語を描く「フォトエッセー」の第一人者として、確固たる評価を築いた写真家のW. ユージン・スミス(W. Eugene Smith)。第二次世界大戦中はグラフ誌「ライフ」の特派員として沖縄やサイパンなどの激戦地を取材し、戦後も『カントリー・ドクター』『慈悲の人 シュヴァイツァー』『水俣』など、人々の生活に寄り添った作品を発表した。

1954年にライフ誌を離れたスミスは、ニューヨーク・マンハッタンのアパート、通称「ロフト」へ移住。そこはセロニアス・モンク(Thelonious Monk)やマイルス・デイヴィス(Miles Davis)といったジャズミュージシャンをはじめ、サルバドール・ダリSalvador Dalí)、ロバート・フランク(Robert Frank)など、ジャンルを超えた多彩な芸術家が集う創造の拠点となる。頻繁に行われたジャムセッションや交流の様子は、スミス自身によって記録された。

「東京都写真美術館」で開催される「W.ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代」では、「ロフトの時代」とその前後の作品を中心に紹介。報道写真家としてだけでなく、写真表現の可能性を追求した芸術家としての側面にも光を当てる。報道と芸術の融合を目指したスミスの試みを、新たな視点から再考する機会となるだろう。

  • アート
  • 江東区

日本で約40年にわたって活動し、家具やテキスタイルのデザインで知られるノエミ・レーモンド(Noémi Pernessin Raymond18891980年)。建築家である夫のアントニン・レーモンド(Antonin Raymond)を支えながら仕事に携わり、濱田庄司やイサム・ノグチら多くの芸術家と親交を結んだ。日本の暮らしに息づく美や、伝統的な空間と生活文化の価値を深く理解し、建築やインテリアの分野で数多くの作品を残している。

ノエミの仕事は、アントニンの建築や日本の風景と調和しながら、日常の空間に芸術的な彩りを添えるものだった。その役割は主にインテリアデザインに限られるとされてきたが、実際にはレーモンド設計事務所による建築作品全般に深く関わり、自ら住宅設計も手がけていた。

GALLERY A4」で開催される本展では、ノエミが住宅設計において用いた手法に着目し、当時の日本の建築デザインに与えた影響を考察する。見どころは、建築設計からインテリアまでを一貫して手がけた港区の「旧カニングハム邸」(1954年)、および大田区の「旧伊藤邸」(1963年を、貴重な写真資料や図面とともに詳しく紹介する点。また、ノエミがデザインしたテキスタイルや習作、スケッチブック、自画像などの実物資料も多数並ぶ。

さらに、オリジナルの家具をはじめ、椅子やテーブルなども紹介されるほか、「旧伊藤邸」の暖炉回りを実寸大で再現し、ノエミによるファイヤーツールも併せて展示される。近年公開され話題を呼んでいる武蔵野市にある「旧赤星鉄馬邸」(1934年を含め、レーモンド設計事務所による住宅や教会建築など約14事例も紹介予定だ。

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「資生堂ギャラリー」で、日本を代表するグラフィックデザイナーの仲條正義(19332021年)による個展「うたう仲條 おどる仲條文字と画と、資生堂と」が開催。企業文化誌「花椿」をはじめ、資生堂の広告ポスターや資生堂パーラーのパッケージ、さらには貴重な原画など約200点の作品を紹介する。

仲條は長年にわたり同社のデザインおよびアートディレクションに携わる一方、「松屋銀座」や「東京都現代美術館」のロゴデザインなどでも知られ、鋭敏な時代感覚とアバンギャルドな精神に裏打ちされた独自の造形世界を築き上げてきた。とりわけコンピューターによるグリッドデザインが主流となった2000年代以降、自由な構成や手描きの要素を取り入れたその表現は改めて注目を集め、次世代のデザインに影響を与え続けている。

本展では、仲條のライフワークともいえる「花椿」約350冊を手に取って閲覧できるライブラリーコーナーを設置。ページの展開や構成も含め、彼の真骨頂ともいえるグラフィカルなエディトリアルデザインを肌で感じられるだろう。

仲條デザインの本質の一端に迫ろうとする試みの本展。普遍的な美をすくいあげ、新たな形で表現し続けていた仲條の前衛的であり、かつ色あせない世界を体感するはずだ。

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「寺田倉庫 G1-5F」で、妖怪美術と最先端の映像・立体造形が融合するイマーシブ体験型デジタルアートミュージアム「動き出す妖怪展 TOKYO」が開催。江戸・明治期の絵師による「百鬼夜行絵巻」「百物語」「鬼」「てんぐ」「かっぱ」「付喪神(つくもがみ)」など、日本の妖怪美術を基盤に、時代を超えて愛される妖怪たちがダイナミックに動き出す。

妖怪画や戯画に描かれたユーモラスな姿が、3DCGやプロジェクションマッピング、ホログラフィックスクリーンといった最先端のデジタル技術によって躍動。立体造形と映像演出の融合により、リアルな妖怪世界とともに、細やかな表情や質感まで間近に感じられる。

さらに、日本初の古書博物館「西尾市岩瀬文庫」や小豆島の「妖怪美術館」の協力により、妖怪文化や歴史、現代ポップカルチャーへの影響も解説。鑑賞にとどまらず、妖怪と写真や動画を撮影したり、妖怪絵巻の一部となって異世界へ迷い込むような体験も味わえる。

ノンバーバル(非言語)で直感的に楽しめるコンテンツを中心に、座って鑑賞できるスペースも用意。子どもからシニア、外国人まで、妖怪の世界で心を躍らせる時間が待っている。

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革新的なアイデアと作品によって、アート・建築・デザインの領域に刺激と影響を与え続けた20世紀を代表するアーティスト、ドナルド・ジャッド(Donald Judd、1928~1994年)。1970年代、彼はメキシコ国境にほど近いテキサス州マーファを拠点とし、町に残る建物を生活と制作の場として再生した。

そこで自身の作品をはじめ、ダン・フレイヴィン(Dan Flavin)、ジョン・チェンバレン(John Chamberlain)、イリヤ・カバコフ(Ilya Kabakov)らの作品を恒久的に展示するため、チナティ財団を設立。アート・建築・土地の融合と調和を目指したその空間は、半世紀を経た現在も、意図された姿のままマーファに存在し続けている。

「ワタリウム美術館」で開催される本展「ジャッド|マーファ 展」では、1950年代の初期絵画から、196090年代にかけての立体作品を紹介するとともに、マーファに残された空間について、ドローイングや図面、映像、各種資料を通して多角的に読み解いていく。そこから浮かび上がるのは、展示を「その場限りのパフォーマンスにしてはならない」という、アートと展示空間の完全性を巡るジャッドの揺るぎない信念だ。

さらに、ワタリウム美術館の創設者・和多利志津子が1978年にジャッドを日本へ招聘(しょうへい)し、開催した「ジャッド展」の貴重なドキュメントを紹介するコーナー展示も設けられる。

生涯を通して、アートと芸術表現の重要性について訴え続けたジャッド。その思考と実践を改めて見つめ直す機会となるだろう。

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横浜のベイエリアに、没入型アートミュージアムTHE MOVEUM YOKOHAMA(ザ ムービアム ヨコハマ)」が、6月28日(日)までの期間限定で誕生した。

かつて倉庫として使われていた天井高約10メートル、広さ約1800平方メートルの巨大空間を舞台に、オーストリアを代表する二大巨匠、グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)とエゴン・シーレ(Egon Schiele)による絵画の世界の一部になったかのような没入体験ができる。

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この秋、「ギンザ シックス(GINZA SIX)」の中央に位置する吹き抜け空間に、イギリスを代表する世界的な現代美術家のジュリアン・オピー(Julian Opie)の最新作「Marathon. Women.」が登場。同空間初の「動き」のある本作は、作家自身にとっても初めての、「宙に浮かぶ」映像の大型インスタレーションとなる意欲作だ。

シンプルな表現で伝統的モチーフを描くスタイルが、アート界だけでなく広いカルチャーシーンでも高く評価されるオピー。本作は、空間に浮かぶように設置されたLEDサイネージを舞台に、カラフルでシンプルな線で描かれたランナーたちの姿がそれぞれのスピードで駆け抜けていく。

展示環境そのものに強い関心を持ったオピーが、にぎやかな空間において意味を持ち、かつ自然に溶け込むような作品を目指して制作した。スクリーン上を果てしなく走り続ける動きを、4フロアから多角的に鑑賞できる。

なお、展示期間は2026年秋までを予定している。「走る」という人間の本能的な動きが空間全体に浸透し、圧倒的な躍動感と没入感をもたらすだろう。

もっとアート散歩をするなら……

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無数の美術館やギャラリーが存在し、常に多様な展覧会が開かれている東京。海外の芸術愛好家にとってもアジアトップクラスの目的地だ。しかし、貴重な展示会や美術館は料金がかさんでしまうのも事実。

そんなときは、東京の街を散策してみよう。著名な芸術家による傑作が、野外の至る所で鑑賞できる。特におすすめのスポットを紹介していく。

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東京には魅力的なアート展示や、パブリックアートなどがある。しかし建物が密集しているため、大規模なアート施設を新たに造ることは困難だろう。希少な絵画やサイトスペシフィックなインスタレーションを観たいのであれば、千葉、神奈川、埼玉といった近隣の県へ日帰りで出かけるのもいいかもしれない。

自然の中でリラックスしてアートに触れることができる休日に訪れたいアートスポットを紹介する。

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ここではタイムアウトワールドワイドによる、ピカソやミロ、村上隆などの作品を楽しめる世界の「アートレストラン」を紹介。美術館に行く代わりに、レストランを予約してみるというのもいいかもしれない。

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