マティス ― 色彩を奏でる
アンリ・マティス《リュート》1943年、油彩/カンヴァス、ポーラ美術館
アンリ・マティス《リュート》1943年、油彩/カンヴァス、ポーラ美術館

東京、10月に行くべき無料のアート展8選

銀座・六本木・清澄白河・品川などで注目の展示を紹介

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涼しさを感じる心地よい季節。今回、10月に開催する芸術の秋にぴったりの無料のアートイベントをセレクトした。

銀座「ポーラ ミュージアム アネックス」での「マティス ― 色彩を奏でる」や、野口里佳を交えた5人の写真家による写真展「紙の光 光のしるし」、今最も注目の若手作家の一人であるハン・イシュ(潘逸舟)の個展「波を耕す」など、入場無料で鑑賞できるアート展示を揃えた。リストを片手に街に繰り出してほしい。

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  • アート
  • 銀座

「ポーラ ミュージアム アネックス」で、「マティス ― 色彩を奏でる」展が開催。アンリ・マティス(Henri Matisse)が生涯を通して描き続けた室内画の名品『リュート』をはじめとした絵画5点と、晩年の傑作品『ジャズ』を展示する。

「色彩の魔術師」と呼ばれ、鮮やかな色彩を大胆に用いて表現するマティスの作品は、見るものに強いインパクトを与える。また、感情を直接的に表現する制作スタイルは作品にダイナミズムを生み出し、色彩の配置やバランスは音楽のような視覚的なリズムを感じるだろう。

会期中は、赤ちゃんとの鑑賞会や、認知症や高齢の人を対象にした対話型鑑賞会など、誰もが楽しめるプログラムを実施予定。また、マティスの切り絵の技法を取り入れたワークショップも行われる。

会期が短いので、マティスファンは絶対に見逃さないでほしい。

  • アート
  • 神保町

5人の写真家による写真展「紙の光 光のしるし」展が、「竹尾 見本帖本店」で開催。「光」に調和するファインペーパーを、色・張り・重みといったそれぞれの観点で、写真家自らが精選した作品が並ぶ。

参加作家は、「東京国立近代美術館」「グッゲンハイム美術館」「ポンピドゥーセンター」などに作品が収蔵され、現代美術の国際展にも数多く参加する野口里佳。また、この夏に「市原湖畔美術館」の展示に参加した石田真澄のほか、熊谷聖司、濱田祐史、山元彩香だ。

会場では、豊かな階調と濃度・鮮やかさを実現する印刷技術によって、写真家のとらえた光景を紙の上に繊細にしるす。また、本展のために制作した各写真家の作品集を限定販売する。

なお、本展は「DNPプラザ」会場でも同時開催を予定している。

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  • 六本木

「東京ミッドタウン デザインハブ」で、さまざまな時代のデザインを特集する「ROOTS OF FUTURE 過去を探って、未来を見つける」展を開催。戦後の日本のデザインにおける豊かな流れに着目し、未来のデザインのルーツを探る試みだ。

展示作品は「グッドデザイン賞」受賞作品などの中から選定。再評価したいデザインや今後のスタンダードとしたいデザイン、未来へのヒントとなるデザインで構成される。

1950年代から現在までの各時代の8つのデザイン領域(空間・グラフィック・クラフト・インテリア・インダストリアル・ジュエリー・パッケージ・サイン)にわたるえりすぐりの代表的なデザインを、その時代背景とともに年代順に紹介。また、領域・時代も異なる約90点のデザインを、現代のデザインに必要な6つの視点で読み解いていく。

会期中は、関連イベントのトークセッションも開催予定。公式ウェブサイトをチェックしてほしい。

  • アート
  • 六本木

六本木のギャラリー「スカイ ピラミデ」で、ニューヨーク在住のアーティスト、トニー・アウスラー(Tony Oursler)の個展「Transmission」が開催。テクノロジーやメディアがいかに人々の心理に影響を及ぼしているかを、絵画・立体・ビデオインスタレーション・パフォーマンスなどの表現によって示してきた、アウスラーのこれまでのキャリアを俯瞰(ふかん)する。

アウスラーは、創造性・テクノロジー・サイエンスフィクション・ポップカルチャーの要素を組み合わせ、既存の信念体系を揺るがすことで、不安や恐怖を引き起こす「不気味なもの」などをテーマに作品を作り続けている。作品は、時にユーモアを交えてメディアを批判し、心理的に不安を与えると同時に詩的に心を揺さぶる没入型の環境を作り出す。

また、「映像イメージを箱型のテレビから解放した」アーティストの一人でもある。映像プロジェクションと彫刻が合わさった『Blue Mood』(1992年)では、人形の頭部だけが映像プロジェクションで映し出され、人を驚かせる魔法のような体験を与えている。

テクノロジーに向けた新たな創造への道筋を指し示すアウスラーのまなざしを感じてほしい。

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  • アート
  • 品川

品川の現代美術ギャラリー「アノマリー」で、ハン・イシュ(潘逸舟)の個展「波を耕す」が開催。上海で生まれ、東京を拠点にするハンは、国内外の展覧会で精力的に発表を続ける、今最も注目の若手作家の一人である。

ハンは、映像・パフォーマンス・インスタレーション・写真などのメディアや日用品などを用いて、共同体や個が介在する同一性と他者性について考察する作品を発表。幼い頃に上海から青森へ移住した経験による視点をベースに、切り取られた日常風景の中に自らを介入させ、社会と個の関係で生じる疑問や戸惑いを、真摯(しんし)に、時にユーモアを交えて表現する。

本展では、代表作の一つである、ハン自身が海に向かって行うパフォーマンスを定点から撮影した映像作品シリーズから、最新作『波を耕す-日本海』を展示。また、自身が撮りためたホームビデオの音声が辞書から聴こえてくる『辞書が言葉を学ぶとき』も、今回初めて発表される最新作だ。

2024年10月5日(土)には、これまで協働してきたキュレーターの三木あき子とハンのトークイベントも行われる。アーティストとキュレーターの密なトークが楽しめるだろう。

  • アート
  • 清澄

清澄白河の現代美術ギャラリー「ハギワラ プロジェクツ(HAGIWARA PROJECTS)」で、今井俊介の個展「fields」を開催。大胆にトリミングされた色面を描いた新作の絵画と、レーザーカッターで切り取った紙を組み合わせたドローイング作品を展示する。

日本の現代社会にあふれる情報やイメージに応答する今回の絵画は、東京の街のネオンやファストファッションが持つビビッドな色彩要素を採用。そして、その色彩の組み合わせが生み出す図と地の張り合いは、無意識的な「見る」という行為を想起させ、鑑賞者を視覚表現の本質に立ち返らせる。

シンプルな要素の中で、鮮やかに描かれている今井作品を堪能してほしい。

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  • 原宿

「マホ クボタ ギャラリー(MAHO KUBOTA GALLERY)」で、ニューヨークを拠点にするアーティスト、ブライアン・アルフレッド(Brian Alfred)の最新の展覧会「Golden Hour」が開催。アーティストが自身の旅の中で捉えた、個人的な瞬間を深く探求した作品群が並ぶ。

タイトルの 「Golden Hour」は、日の出直後や日没前の、光の質が暖かく、魔法のような輝きで周囲を一変させる時間帯のことを指す。この光は、人生における影響力のある一瞬であり、はかない美しさそのものであるという。

作品は、アルフレッドの感情を凝縮した視覚的な日記の一ページであり、親密な体験のスナップショットだ。光と反射の相互作用により、瞬間の物理的な美しさが際立ち、その時間の流れの速さをも暗示する。

本展を通して、鑑賞者が内観し、日々の体験における無常の美を受け入れるきっかけとなることをアルフレッドは願っている。

もっと芸術の秋を楽しむなら・・・

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約15年間にわたりメキシコで画家・教育者として活躍した北川民次の生誕130年を記念する展覧会「北川民次展―メキシコから日本へ」が、2024年11月17日(日)まで世田谷美術館」で開催されている。

北川の回顧展は、1996年の「愛知県美術館」での開催以来、28年ぶり。これまで開催されなかった背景には、長く続いたヨーロッパ中心主義の影響で、日本国内の画家が広く紹介される機会が限られていたことがある。しかし、今回の展覧会は、ヨーロッパ以外の美術にも関心が高まってきた時代の流れを反映し、これまで見過ごされてきた空白を埋める重要なものだ。

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バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰―ガンダーラから日本へ―」展が、日本橋の「三井記念美術館」で2024年11月12日(火)まで開催されている。

バーミヤン遺跡の壁画に焦点を当てた本展では、壁画に描かれている太陽神と弥勒の世界に迫ることで、特に弥勒信仰の地理的な広がりをたどる。

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六本木の「森美術館」で、国内27年ぶり、2回目となる最大規模の個展「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」が2025年1月19日(日)まで開催されている。

六本木ヒルズ」を象徴するように配置された、ルイーズ・ブルジョワ(Louise Bourgeois、1911〜2010年)のパブリックアート『ママン』 。クモの形を模したこの彫刻を知っている人は多いと思うが、その作家であるブルジョワについて国内ではあまり知られていない。

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