トニー・アウスラー:技術と霊知のはざま~魔術、メディア、アート~
《計り知れないもの》 2015-2016年、展示風景:ニューヨーク近代美術館、2016年、Courtesy:Tony Oursler Studio | 「トニー・アウスラー:技術と霊知のはざま~魔術、メディア、アート~」
《計り知れないもの》 2015-2016年、展示風景:ニューヨーク近代美術館、2016年、Courtesy:Tony Oursler Studio

東京、7月に行くべきアート展5選

トニー・アウスラー、ナムジュン・パイク、青木淳×リチャード・タトルなど

Chikaru Yoshioka
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2026年7月の東京では、国際的なアーティストによる個展から、写真史を再考する企画展、建築と美術の境界を揺さぶるコラボレーションまで、多様な表現が一斉に立ち上がる。

「TOKYO NODE」ではトニー・アウスラーによる日本初の大規模個展が開催され、「ワタリウム美術館」ではナムジュン・パイク没後20年を記念する企画展が展開。さらに、「まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険」が巡回展としてスケールを拡大して上陸し、青木淳とリチャード・タトルによるコラボレーション展が空間そのものの認識を揺さぶる。

いま東京でしか体験できない視覚体験が、都市の各所に彩るこの夏。注目アート展を厳選して紹介したい。

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日本発のネクストジェネレーション

  • アート
  • 渋谷

近年、日本の写真表現は国際的に高い評価を受けているものの、その代表として語られる作家は長く男性に偏ってきた。「渋谷ヒカリエ」の「ヒカリエホール」 で開催される展覧会「まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険」では、女性写真家に光を当て、日本の写真史を新たな視点から捉え直す。2024年夏に「アルル国際写真フェスティバル」で大きな話題を呼んだ世界巡回展が、規模を拡大して日本に上陸する。

出展作家は石内都、石川真生、岡上淑子、片山真理、川内倫子、志賀理江子、長島有里枝、蜷川実花、野口里佳といった、日本の写真史のみならず美術史においても重要な役割を果たしてきた約30人の女性写真家。狭義の「写真」という枠組みを超え、インスタレーション・コラージュ・映像プロジェクション・観客参加型作品といった、創造性豊かな作品を紹介する。

さらに内容を深く掘り下げ、記憶・身体・日常・ジェンダーなど多岐にわたるテーマの作品約200点が登場。幅広い層の観客が写真表現の多様さを発見することで、さまざまな対話へと導かれるだろう。

日本の女性写真家による、写真史上前例のない大規模展を見逃さないように。

  • アート
  • 虎ノ門

TOKYO NODE」で、アメリカを代表するマルチメディアアートのパイオニア、トニー・アウスラー(Tony Oursler)による日本初の大規模個展が開催される。現代美術家のジム・ショー(Jim Shaw)と共同制作した初期の代表作『プライベート』や主要作品『スペキュラー』をはじめ、構想から四半世紀以上を経て実現する未発表作品や本展のための新作など約50点を紹介。そのうち約半数が日本初公開となる。

アウスラーは、映像・彫刻・音・光・言葉を融合させた没入型インスタレーションで知られる。プロジェクションマッピングに先駆け、立体物への映像投影という表現手法を切り開いた。その作品世界は、ポップカルチャーから科学、宗教、陰謀論、超常現象、宇宙まで広がり、データの流れや監視システム、霊や信号といった現代社会における「見えないもの」への欲望と不安を映し出す。観る者を感覚的な思索へと誘う表現が特徴だ。

会場では、世界的音楽家のデヴィッド・ボウイ(David Bowie)と作曲家のグレン・ブランカ(Glenn Branca)との協働により2000年に構想された『空(くう)』を初めて作品化して公開。さらに、サイトスペシフィックな大型新作『キメラ』も制作中で、科学・魔術・未確認現象などに関するアウスラーのリサーチや収集資料から厳選されたアーカイブも並ぶ。

AIや監視技術、生成メディアの発展により、私たちの知覚や現実認識は大きく変化する一方で、スピリチュアルや未確認現象への関心も高まりつつある。こうした時代において、「テクノロジーと霊知のはざま」を見つめてきたアウスラーの作品は、重要な問いを投げかける。

魔術・メディア・アート・テクノロジーに関心を持つ人にとって、本展は刺激的な体験となるだろう。

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  • アート
  • 原宿

1963年、ナムジュン・パイク(Nam June Paik19322006年)は西ドイツでメディアアートを発表し、その後の映像表現に大きな影響を与えた。映像と音を組み合わせ、一見ユーモラスでありながら現代社会の問題を鋭く突く作品群。ブラウン管からAIへと技術が進化した現在も、その作品は色あせることなく、新たな視点を投げかけ続けている。

パイクの没後20年となるこの夏、「ワタリウム美術館」で開催される「没後20 ナムジュン・パイク|じゅげむ展」では、アーティスト・文人・哲学者・予言者としての側面から、その創造の軌跡を見つめ直す。会場の24階は全てパイク作品で構成される。

2階では、『ケージの森/森の啓示』を中心に、フロア全体を森に見立てる。実際の樹木を用いることで、植物の匂いや変化を伴う生きた空間を生み出し、『時は三角形』や『ロボットK-567』などの立体作品を織り交ぜながら、自然と文明の共存を表現する。

3階では、未公開のコラージュ作品をはじめ20点以上の平面作品を紹介。『TV植物』などブラウン管を用いた立体作品や、パイクの発想の源泉となったドローイングも並ぶ。4階では、三原色の光によって壁面に大きく映し出されるロウソクの作品『ニューキャンドル』を会場全体に展開するほか、「心」をテーマとした作品群を紹介。また、詩作品『for Mr. I & Mr. I』を上映し、パイクの精神性を空間全体へと広げる。

時代を超えてなお斬新さが際立つパイクの作品群を通して、その豊かな想像力と先駆的な視点に触れてほしい。

  • アート
  • 初台

東京オペラシティ アートギャラリー」で、建築家の青木淳と美術家のリチャード・タトル(Richard Tuttle)によるコラボレーション展「ほぼ、空:青木淳 + リチャード・タトル」が開催される。来場者が自然と斜め上を見上げるよう促され、空間そのものを新たな視点で捉え直す体験を生み出す。

「そら」であり「くう」でもある「空」は、光や影、大気に満ちた、絶えず移ろう場。建築を「空気」に例える青木と、作品を「光」に例えるタトルの対話から生まれた展示には、建築と美術という既存の枠組みを超えた豊かな余白が広がる。具体的な意味や機能に縛られない場で、鑑賞者は日常にあふれる情報から距離を置き、世界の在り方を改めて見つめることになるだろう。

会場では、タトルが建材や自然のモチーフを用いて制作した3つのエレメントと、青木が展示台座を再利用して手がけた什器(じゅうき)や照明などを組み合わせ、多彩な景色を生み出す。さらに、美術館内のショップや収蔵品展示の配置も再構成し、館全体を緩やかにつながる一つの場へと変化させる。美術館という空間の可能性そのものを問いかける、実験的な試みだ。

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  • アート
  • 白金台

20世紀を代表するイギリスの陶芸家、ルーシー・リー(Lucie Rie、19021995年)。ウィーンに生まれ、作家としての地位を築いた後、1938年の戦争を機にロンドンへ亡命し、作陶の拠点を移した。ろくろから生み出される優美なフォルム、象嵌(ぞうがん)やかき落としによる文様、釉薬(ゆうやく)がもたらす豊かな色彩は、今もなお多くの人々を魅了し続けている。

「東京都庭園美術館」で開催される本展では、国内に所蔵されるリーの作品を一堂に紹介する。また、ウィーン時代に交流のあったヨーゼフ・ホフマン(Josef Hoffmann)や、イギリスで親交を深めたバーナード・リーチ(Bernard Leach)、ハンス・コパー(Hans Coper)、濱田庄司らの作品も併せて展示。東洋の陶磁との関係性にも光を当てながら、初期から円熟期までの歩みをたどり、その造形の源泉に迫っていく。

会場となるアール・デコ建築の邸宅空間において、リーの繊細で凛(りん)とした造形世界と建築が響き合い、うつわ本来の魅力を引き立てるだろう。

アート情報と言えば……

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幾何学的なフォルムとカラフルな色彩で、現代でも人気のイタリアのポストモダンデザイン。その中心人物として20世紀のデザイン界を牽引(けんいん)した巨匠、エットレ・ソットサス(Ettore Sottsass)の国内初となる大規模回顧展が、「アーティゾン美術館」で2026年10月4日(日)まで開催されている。

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2026年の東京は、アートを巡る話題が尽きない一年になりそうだ。空山基やロン・ミュエクの大規模回顧展をはじめ、ピカソとポール・スミスの創造性が交差する企画、杉本博司が挑む写真表現の極地など、ジャンルや文脈を越えた展覧会が各美術館で開催される。

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