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Photo: Masataka Ito | シェフのダラミ
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東京、プチイラン旅行7選

紀元前16世紀の遺産からシルクロードの書籍、ペルシャ料理など

Masataka Ito
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タイムアウト東京 > Things to Do> 東京、プチイラン旅行

旅をすると、がらりと印象が変わる国がある。イランは、その最たる国だ。

ニュースで目にする同国は、戦争やデモといったただならぬ空気に包まれ、アメリカの大統領に「悪の枢軸」とまで呼ばれた過去もある。負のイメージがどことなくつきまとい、身近に接することのない遠い異国とあっては、それが拭い去られることもない。

マイナスのイメージから入るので、実際に訪れると、旅先で出会う人々のフレンドリーさや親切さが余計に際立ち、帰国する頃にはすっかりイラン「人」のファンになってしまうというわけだ。筆者も、その「イランマジック」に見事にかかった一人である。

「そうなのであれば行ってみたい」と思っても、現下の状況ではイランを旅することはかなわない。しかし幸い、東京にはイランにまつわるスポットがいくつかある。ここでは、料理店をはじめ、イラン人がオーナーの店やイランの文化に親しめるスポットをピックアップ。ゴールデンウィークの一日、誇り高きかつ繊細なイラン人のソウルに触れてみては。

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  • ミュージアム
  • 歴史
  • 池袋

古代オリエント博物館

池袋のにぎやかな「サンシャインシティ」の中に、ひっそりと広がる「古代オリエント博物館」。西アジア・エジプト一帯を指す「古代オリエント」を専門に扱う日本初の博物館である。「サンシャインシティ 文化会館」のエレベーターを降りて左に進めば、シルクロード華やかなりし古代世界に通じる館が現れる。右に進めば「よしもとパフォーミングアカデミー」があり、このギャップの妙こそ「プチイラン旅行」にふさわしい。

同館の一角には「古代イランとその周辺」の展示があり、当時の文物が鑑賞できる。イラン=ペルシャ美術といえば、「正倉院」に伝わるサーサーン朝ペルシャで製作されたといわれる『白瑠璃椀』がよく知られている。6世紀ごろのカットグラスのわんだが、同館にはそれをはるかにさかのぼる紀元前(以下、前)16〜前14世紀のガラス製ペンダントなどが展示されている。

ハイライトの一つが、カスピ海沿岸のギーラーン州で見つかったとされる『コブ牛型土器』(前1500〜前800年)。鼻先から液体をそそげるようになっており、酒器のように使われたらしいが、こぶを誇張した姿がなんとも愛らしい。

ほかにも、まさに飛び立たんとする鳥を描いた彩文土器『鳥紋の壺』(前2500~前2000年)や青銅製の『神獣像の儀器』(前1000〜前600年)など、キュートなコレクションの数々が見られる。遊び心あふれる造形は、縄文土器好きの人にも訴えるものがあるだろう。古代イランの人々と心を通じ合わせられるひとときを楽しんでほしい。

  • アトラクション
  • 図書館、アーカイブ、財団
  • 東中野

シルクロード文庫

東中野駅前に建つ「PAO COMPOUND」の8階にある、私設文庫「シルクロード文庫」。和光大学の名誉教授で、中央アジアの遺跡の研究と保護に力を注いだ亡き前田耕作の構想を継ぎ、安仲卓二ら有志が2023年に開設した。

中に入ると、窓からは中野の街並みを遠望。天気の良い日には、富士山を望む。背中側にはぐるぐると円を描くように書棚が並び、さながら知の迷宮だ。書籍は1万冊以上を数え、イランをはじめシルクロード関連書籍を中心とするが、一言ではまとめられないジャンルレスな本が揃う。

日本とペルシャを結んだシルクロードには、さまざまな国の文化や歴史、そこに暮らした人々の「生」が幾層にもわたり網の目のように織り込まれてきた。同文庫の棚も、それを表しているようだ。万人に開かれた図書館ではない。司書もおらず、貸し出しもしていないが、自ら探求心を持って本の山に挑めば、「宝物」が見つかるかもしれない。

同ビルの1階には中央・西アジア料理店、2階には工芸品を扱うショップがあり、9階のバーではイラン映画の上映会などのイベントを開催。ビル丸ごとが、シルクロードのオアシスごとき複合施設と化している。

安仲は、書籍の出版も手がけている。出来たてほやほやの最新刊は、元駐日イラン大使のアラグチ外相が書き下ろした『歴史の歩みにおけるイランと日本-サーサーン朝ペルシャから現代まで-』。前イラン最高指導者のアリ・ハメネイ師が殺害された2026年2月28日に原稿を受け取ったという。興味のある人は、手に取ってみては。

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  • ショッピング
  • 馬喰町

ダルビッシュ

日本橋小伝馬町にある「ダルビッシュ」は、イラン食材店。店主のムハンマド・ハサン・アガシ(Mohammad Hassan Aghassi )は、イランにまつわるニュースがあると日本のメディアがインタビューを求めてやって来る、東京を代表するイラン人の一人である。

店名の「ダルビッシュ」とはイスラム教の神秘主義における修行僧や托鉢(たくはつ)僧を指し、転じて、欲深くなく、控えめで落ち着いた性格の人を表す。立派なあごひげをたくわえ、中折れ帽をかぶったハサンの風貌はそれに近く、物腰柔らかで、「ハサンおじさん」と呼ばれ親しまれている。入店すると、忙しくなければ「お近づきに」とデーツ(ナツメヤシの実)を差し出し、時には紅茶もふるまってくれる。

店内には入荷次第で菓子をはじめイランのさまざまな食材が並ぶが、現況では届くものも届かず、ハサンもため息交じり。取材時にはイランを代表する家庭料理・ハーブシチューの「ゴルメサブジ」が簡単に作れるルーなどが、以前より幅をきかせて並べられていた。

それでも同店はイランの人々の社交場でもあり、イラン人がやって来てはひとしきり話してまた出かけては戻ってきたり、ほかの人が来店したりを繰り返す。柔らかなペルシャ語の会話を耳にしながらロンドンを拠点に活動するペルシャ語の衛星テレビチャンネル(すなわち反体制派の)「イラン インターナショナル」を見るともなしに見ていると、イランにいるような気分になってくるだろう。東京にあるイランの「飛び地」が、ダルビッシュなのだ。

  • イラン料理
  • 高円寺

BolBol

高円寺にあるイラン料理店「Bol Bol」。テヘラン出身のホセイン・ボルボル(Hossein Bolbol) が2004年に開業した、都内で最も名の知れたイラン料理店の一軒である。

イランのレストランメニューの筆頭といえばケバブであり、Bol Bolでも人気の一品。煮込み料理は通常家庭で食べるものだが、イランの料理文化を伝えたいとランチでも提供する。ボルボルも「お母さんのが一番ですが」と、笑みを浮かべながら煮込み料理も薦めてくれた。

「ゲイメ」は、トマトベースのシチュー。肉と「ラッペ」というひき割り豆、サフランなどのスパイスと乾燥ライムや乾燥レモンを加えて煮込む。「ゲイメ スィーブザミーニー」(1,300円、以下全て税込み)はフライドポテトが添えられたイラン版肉じゃが、「ゲイメ バデムジャン」(1,300円)には素揚げしたナスが入る。

同店のゲイメ バデムジャンはこくとうまみたっぷりのトマトシチューが癖になり、よく煮込まれたラム肉は口の中でほろほろと崩れる。ナスは香ばしく、ラッペがまたいい仕事をして、キュッキュ、キュッキュとした食感がたまらない。

「ゴルメサブジィ」(1,300円)もまた、家庭によって味付けが異なるイランの「ママンの味」であり、ハーブの香りと乾燥レモンの酸味が重なる複雑な味わいが特徴。ほかにないイランの味覚を求めるなら、ぜひ試してほしい。

イランの伝統文化の一つである水たばこの「ガリユン」(2,000円)も体験できる。社交場である「チャイハネ(喫茶店)」でガリユンをくゆらせ談笑に興じるのは、イランの日常シーンでもある。ボルボルおすすめのフレーバーは、オレンジとミントのミックスだ。

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  • ショッピング
  • ライフスタイル
  • 西荻窪

BaHaR

ペルシャじゅうたんの専門店「BaHaR(バハール)」。グーチャーニー・ビジャン(Bijan Ghoorchiyani)が、2000年に西荻窪にオープンした。

じゅうたんはイランの人の暮らしに欠かせない、日本の畳のようなもの。しかし、じゅうたんと一口にいっても多彩で、毛足が長くふかふかとした座り心地の「ギャッベ」、毛足が短く扱いやすい部族の織物「トライバルラグ」などがあり、産地や遊牧民の部族によってデザインも異なる。

それゆえ、「古民家でもモダンな洋室でも、何でも合わせられるのがじゅうたん」とグーチャーニーは話す。「床暖房の部屋にも使えて、ペットのけが防止にもなり、フローリングの床を痛めることもなく、卵を落としても割れない……じゅうたんの長所を挙げると本1冊になりますよ」。背筋の伸びたイラン紳士然としたグーチャーニーが言うと説得力がある。

決して安いものではないが、じゅうたんには気持ちが織り込まれており、思いに値段は付けられない。一つ一つが手織りであり、一生使えるものなら高いともいえないだろう。

だが、「戦争」がここにも影を落とす。船便がストップし取引のない状態が長引けば、作り手の離職を促すことは容易に想像でき、作り手が減れば、価格はさらに高騰する。作り手を支援する仕組みをグーチャーニーは構築したいと考えている。

大きさも形も価格帯もさまざまなペルシャじゅうたんの奥深い世界を、気軽にのぞいてみては。どんな時もあなたとともにある、一期一会の出合いが待っているかもしれない。

  • Things to do
  • 恵比寿

アラシの占いサロン

恵比寿駅から徒歩1分で到着する、とあるビルの一室にある完全貸切・予約制の「アラシの占いサロン」。チャイムを鳴らすと、アラシ(Arash)がにこやかに迎えてくれる。累計1万5000件以上の相談実績を持つ彼が主に提供するのは、古くから中東などで親しまれているコーヒー占いだ。

占いには、コーヒー粉をこさずに上澄みを飲む、いわゆる「トルココーヒー」を用いる。コーヒーをおおよそ飲み終わった後、カップにソーサーをかぶせ、思いを込めてひっくり返し、カップに残ったコーヒー粉の模様の位置や形から占う。イランでは特にアルメニア系住民の間で大切に守られてきた伝統といわれ、そこから広く広まったという説もある。

模様にはシンボリックな意味があるが、アラシは模様や形を単にシンボルに当てはめるのではなく、それらを通して相手のエネルギーを読み解くのだという。アラシの母や祖母は著名な「コーヒー占い師」であり、幼い頃からその姿を目にし、10代から占いを届けてきたアラシは筋金入りのコーヒー占い師といえる。

コーヒー占いは、予言ではない。カップの模様を媒介として悩み事を共有し、アラシが助言を与える。ペルシャじゅうたんに囲まれた雰囲気満点の一室で、笑みを絶やさぬ穏やかなアラシと言葉を交わしていると、時間があっという間に過ぎていくだろう。筆者もつい取材時間をオーバーして、話し込んでしまった。アラシと静かな対話のひとときを通して、自身の今を見つめ直してみては。

なお、サロンの住所は非公開。予約決定後に詳細が知らされる。

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  • イラン料理
  • 曙橋

Eagle Grill House SHAHIN

2026年1月にオープンした「Eagle Grill House SHAHIN」。ケバブを中心としたメニューを揃えるイラン料理店だ。

キッチンを預かるシェフのダラミ・アラブ・アフサネ(Darami Arab Afsaneh)は、2006年ごろ、イラン料理の技能を携えて家族と来日。大阪や横浜、東京のイラン料理店などを渡り歩いてきた。慣れない異国の生活で心が折れそうになったこともしばしばあったが、どうにか乗り越え、今の状況にはとても満足しているという。

ダラミの作る「クビデケバブ」は、ラムとビーフをミックスしたひき肉を使用し、タマネギと塩・ブラックペッパーを混ぜ込んで火にかけて、仕上げに溶かしバターを塗って焼いて完成する。ごく単純な工程だが、口にすると、なんともふくよかで、わずかな材料の組み合わせだけでできたと思えないほど味わい深い。

「クビデセット」(1,680円)に添えられた、イラン定番のキュウリやトマトなどをレモン果汁で和えた「シラジサラダ」との相性も抜群。とろりとした焼きトマトの火入れも絶妙で、トマトのうまみ・甘みを最大限に引き出している。ケバブの香りの高さは食後も口内に余韻が残り、忘れられないケバブとの出合いになるだろう。

同店のオーナーは、NPO法人の「イーグル・アフガン復興協会」を設立した、アフガニスタン出身の江藤セダカ。アフガニスタンから避難してきた女性に向けて、日本語教室を開いたり、彼女たちが自立できるよう就労支援を行ったりと、さまざまな活動を続けている。

ゴールデンウィークに「エスニック」を楽しむなら……

東京には数え切れないほどのエスニックレストランがある。シェフの出身地や経験が料理に反映され、その奥深い世界は知れば知るほど魅力的だ。

本記事では、異国フードを偏愛し、noteで愛のポエムを添えた食レポを綴るフードライターのじょいっこと、全国各地を取材する中で数々のおいしい料理に出合ってきた旅行ライターの間庭が選りすぐった、2024年以降にオープンしたおすすめのエスニックレストランを紹介する。

  • ハンガリー料理

世界三大貴腐ワインの一つである「トカイワイン」やアカシア蜂蜜、フォアグラなどの名産地であり、世界有数の食の宝庫と知られるハンガリー。地理的環境や複雑な歴史の影響で、独自の食文化を発展させた。ハンガリー料理は、とりわけ唐辛子を品種改良したパプリカを多用するのが特徴で、色鮮やかなメニューが多い。

ここでは、東京で本場のハンガリー料理が味わえるレストランとバーを紹介する。駐日ハンガリー大使がすすめる老舗や国民酒「Palinka(パーリンカ)」を提供するバーなど、いずれも新鮮な驚きのある店ばかり。ぜひ訪れて、異国情緒あふれる食体験を楽しんでほしい。

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  • 台湾料理

豆花(ドウファ)は台湾の定番スイーツ。冷えた豆花がことさらおいしく感じるの今の時期。「豆花」の文字を店名に掲げ、都内で現地そのままの味を追求する、ガチな豆花作りにこだわる個人経営の名店5軒をセレクトしてみた。

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