東京ジャーミィ
Photo: Kisa Toyoshima | 東京ジャーミイ礼拝堂
Photo: Kisa Toyoshima

東京、リトルイスラムの旅

美しいモスクやパレスチナ刺繍帯、ウイグル料理など、平和と慈悲に満ちた世界への扉を開く

Karin Minamishima
寄稿: Saki Takao
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聞こえてくるアザーン、漂うスパイスの香り、色鮮やかな布や器――。

筆者は数年前、イスラム教の女性とルームシェアをしていた。イスラム文化についていくつかの知識はあるつもりだったが、彼女の生活や文化的背景をほとんど知らなかった自分にがくぜんとした。今、彼女のことを思い返しながら、東京というイスラム文化圏とは遠い場所で、その文化に触れる方法を探している。

多文化が共生する都市・東京では、イスラム文化に触れられる場所が少しずつだが増えてきた。モスクやモロッコ雑貨店、少数民族のハラールレストランを巡れば、都心にいながら異国の祈りや香り、そしてイスラムの人々の温かさに出合えるだろう。

今回、この旅をナビゲートしてくれたのは、日本人ムスリマのインフルエンサー・高雄咲。美しいイスラム世界への扉は、いつでもあなたを待っている。

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美しいモスクで静寂と出合う。

東京ジャーミィ
Photo: Kisa Toyoshima礼拝。イスラム教の「全ての信仰者が平等である」という教えに基づき、信者が肩を寄せ合って横一列に並ぶ

代々木上原にあるイスラム教のモスク「東京ジャーミイ ディヤーナト トルコ文化センター」。イスラム教やトルコ文化を紹介する「トルコ文化センター」や書店、ハラールショップも併設されている。一般公開もされ、イスラム教徒でなくても内部の観覧が可能だ。

一番の見どころは、白とブルーのコントラストが美しい礼拝堂。礼拝を告げるアザーンやコーランの朗誦(ろうしょう)が響き渡り、荘厳な空気に包まれる。礼拝堂の2階は女性専用エリアなので、女性の読者はぜひ見学してみてほしい。

東京ジャーミィ
Photo: Kisa Toyoshima女性たちは礼拝堂の後方で参加する。男性たちの視界に「美しいもの」が入って気が散らぬよう、という教えに基づく決まりだ

1日5回行われる礼拝も、見学できる。タイミングが合えば、実際の祈りを肌で感じられる貴重な機会となるだろう。ただし、礼拝している人の前を横切るのは厳禁なので、注意が必要。女性は肌の露出を避けた服装が求められるため、スカーフを持参するか、入り口で貸し出しもある。

また、施設内は装飾やタイル、工芸品など、イスラム教のアートにあふれている。東京ジャーミイ ディヤーナト トルコ文化センターは、チューリップをシンボルに掲げており、建物を巡りながらチューリップの絵画や文様を探すのも楽しい。

 Saki:イスラムでは「清潔さは信仰の半分」と言われるほど衛生管理が大切にされています。同センターには清潔さ以外にもイスラムの教えが数多く反映されており、知れば知るほど美しいモスクです。館内ツアーがおすすめ!

手作りの雑貨を通じて文化に触れる。

Fatima Morroco
Photo: Kisa Toyoshima店内の様子。商品の種類が豊富で、どれにするか迷ってしまう

モロッコに魅せられた大原真樹がディレクターを務める、青山のモロッコ雑貨店「Fatima Morocco(ファティマ モロッコ)」。店名の「ファティマ」はイスラム教の開祖・ムハンマドの娘の名。誠実で慈悲深かった彼女はイスラムの理想の女性で、ファティマの手をかたどったものは今も昔もラッキーアイテムとして親しまれている。

店内は、まるでモロッコのスークのような文化が交じり合う場所。アフリカ大陸に息づく民族文化と神秘的なイスラム文化、そしてかつてフランス領地でもあったためエスプリの効いた洗練された雑貨が並ぶ。

ラグや食器、ランプシェードなど、大原自ら現地でセレクトしたアイテムに加え、職人が一点ずつ手作業で仕上げた同店オリジナルのバブーシュやバスケットも豊富に取り揃える。長年にわたる現地との深い関係性を背景にしながら、常に新しく、日常に取り入れやすいラインアップだ。

Fatima Morocco
Photo: Kisa Toyoshimaアラビア文字のカリグラフィーで彩られた陶器

また店内では、モロッコの暮らしに欠かせないアルガンオイルやローズウォーターに着目したコスメブランド「fleur de fatima(フルールドファティマ)」も展開。モロッコの自然から生まれる上質な植物成分を贅沢にボトリングした力強いアイテムを、ぜひ手に取ってみてほしい。

Saki: かわいい手作りの品々からはイスラムに根付いた現地の生活が想像できます。幾何学模様は偶像崇拝しない中で発展したデザインであり、大皿や蓋付きの食器は皆んなでご飯を食べるラマダン月を思い出させます、猫のデザインも多いですが、猫は預言者が大変かわいがった動物とされています。日本にいる改宗ムスリムとしては、現地に思いを馳せて、羨ましくなってしまう品々があるのです

女性たちの祈りと思いを見つめる。

パレスチナ刺繍帯・民族衣装展
Photo: Kisa Toyoshima「パレスチナ刺繍帯・民族衣装展」

月に一度、麻布十番や恵比寿など都内のギャラリーで開かれる「パレスチナ刺繍帯・民族衣装展」。女性たちが代々受け継いできた刺繍(ししゅう)文化は、今ユネスコ無形文化遺産として世界に知られている。繊細なステッチに込められた祈りや誇りを、実際に手に取って感じることができる貴重な機会だ。

パレスチナでは、7世紀にイスラム王朝の支配が始まり、多くのイスラム教徒が移住してきたことをきっかけに、地域のイスラム化が数世紀にわたってゆっくりと進んでいった。

パレスチナ刺繍は、連続する幾何学模様が特徴。イスラム教徒だけでなく、周辺に暮らすキリスト教徒の文化も混ざり合い、宗教や習俗を越えて共同体の中で育まれてきた。農村の作物や植物、月や星などのモチーフが多く、同じ図案でも村ごとに少しずつ趣が異なる。

第一次中東戦争後、多くのパレスチナの人々が難民になる中で、女性たちは自らの刺繍文化を守り、国際的な支援を受けながら今日まで伝えてきた。今、その手仕事は難民キャンプの生活を支える技術となり、女性たちの大切な収入源になっている。

展示会では、着物の刺繍帯や小物の販売を中心に、駐日パレスチナ常駐総代表部とマーリ・シアム大使夫人の協力の下、パレスチナのアンティーク民族衣装も併せて展示する。

Saki:パレスチナ刺繍と和服の帯は全く異なる美しさを持ちますが、融合した時の美しさは圧巻。イスラームと日本文化にはどちらも、謙遜したりリスペクトしたりする文化があります。控えめで優しい2つの文化がマッチしているのは、「モノ」だけでなく人間にも通じているように思え、より美しく思います。

香辛料たっぷりな現地グルメを手で食べる。

MONGGO MORO
Photo: Kisa Toyoshimaおかずが並ぶ棚

ビルが立ち並ぶ新宿御苑前の大通りに、まさに異文化への入り口のような店がある。インドネシア料理店「MONGGO MORO(モンゴ モロ)」。店名はジャワ語で「いらっしゃい」という意味で、ジャワ州クラテン出身の料理人・レトノ ワヒュニングシ(Retno Wahyuningsih)が作る、甘辛くスパイシーな料理が楽しめる。

インドネシアでは、11世紀頃からアラビア半島からのイスラム商人がジャワ島やスマトラ島などの港町に立ち寄るようになり、交易品だけでなくイスラム教の教えも広まった。

現地の菓子やドリンクが並ぶ、小さな商店のようなカラフルな入り口が目印。店の奥にあるディスプレーの中には、所狭しとインドネシアのおかずが並ぶ。肉や魚などのメインのおかずを1つ選び、付け合わせや副菜、ご飯と一緒にワンプレートに盛り付ける「ワルン(食堂)」方式で提供。おかずは日替わりのため、メニュー表はなくスタッフが親切に一つ一つ説明してくれる。

一番人気は牛肉をココナツミルクとスパイスと一緒にほろほろに煮込んだ「ルンダン」。ほかにも、ナマズの唐揚げ「レレ」やカツオの煮付けなど、日本ではなかなか出合えない郷土の味が揃う。さまざまなニーズに応えるメニューが用意されているので、食べたいおかずが見つかるだろう。

MONGGO MORO
Photo: Kisa ToyoshimaナビゲーターのSakiと同店のシェフで「ママ」のレトノ。これまで20年以上、日本で料理人として働いてきた

副菜も充実。少し酸味のあるソラマメの甘辛炒めや、程よい苦みが肉料理にぴったり合うパパイヤの葉炒めなど目新しいものばかりで、組み合わせの可能性は無限大だ。

2階はイートインスペースで、注文した後に席で待っていると食事を運んできてくれる。手で食べるのが現地風。もちろんスプーンやフォークも用意されているが、思い切って手で味わえば、香りや温かさまでダイレクトに伝わってくるだろう。

Saki: インドネシアの友人たちの間でも、おいしいと有名なお店です。オーナーやスタッフの温かさはイスラームの教えそのもの。清潔な手で食べることは推奨されている行為で、科学的にも健康効果や心理的利点が証明されています。普段日本では手で食べると怒られますが、ここは気兼ねなく手で食べられる場所です。

シルクロードの音楽に耳を傾ける。

シープマン
Photo: Kisa Toyoshimaショーの様子

イスラム教徒が多数を占める少数民族・ウイグル族が暮らす新疆ウイグル自治区。中国西部に位置し、中央アジアのイスラム諸国と国境を接していることから、古くからその文化的影響を受けてきた。

現地出身のシェフが腕を振るう「シープマン ウイグルダイニングバー 上野店」では、本場の香辛料が香る羊肉料理を中心に、ウイグルの伝統料理を堪能できる。店内はスタッフ同士のウイグル語が飛び交い、まるで旅先の食堂に迷い込んだような気分になるだろう。

看板メニューは、炭火で香ばしく焼き上げた羊肉の串焼き「シシケバブ」や、サクサクのパイで羊肉を包んだ「タンドールサムサ」のほか、肉のうまみとレーズンの甘みが絶妙に合うピラフ「挽き肉プロ」、シシケバブの盛り合わせなど、仲間と大皿でシェアできるメニューも豊富だ。ビール風飲料の「カワス」も、ぜひ試してみたい。

シープマン
Photo: Kisa Toyoshimaウイグルの伝統的な文様がプリントされた食器も鮮やか。温かい気持ちで食事できる。

ニンジンやトマト、タマネギを使った定番の「ウイグルサラダ」や、現地の主食「ナン」などの手軽な家庭料理も揃っており、一人でも気軽に立ち寄れる。

店内には、ウイグル伝統の織物「アトラスシルク」を使ったクッションやタペストリーが飾られ、異国情緒あふれる雰囲気に包まれる。夜には、ウイグルやカザフスタンの音楽とダンスのショーも開催。食事とともにシルクロードの文化を五感で楽しもう。

Saki:お店に入った瞬間、温かい音楽に包まれます。イスラーム圏の音楽は、自然とのつながりを大切にした精神性の高い音楽が少なくありません。礼拝の呼びかけのメロディーも、「風」にインスピレーションを受けています。こちらでのライブは歌詞が分からなくてもメロディーだけで心が満たされるでしょう。

Navigator

高雄咲

美しいイスラームの本来の教えと日本を愛するコンテンツクリエーター。イスラームに出会って8年、改宗して約3年の日本人ムスリマ。ハラール認証機関に勤めた経験を活かしてSNSでムスリムお役立ち情報を発信中。

もっと異文化を旅するなら……

大手町からわずか15分。西葛西は、IT系技術者のインド人のビジネスマンが多く住むエリアだ。ほかのエスニックコミュニティーと違い、ヒンドゥ語の看板も目立たず、観光的な要素はなく、街に自然となじんでいる。

本格的なインディアンレストランが点在し、インド系ファミリーの日常に寄り添った店が多い。東京では珍しい家庭料理やスイーツ、食材店などもあるので、旅する気分で散策したい。インド料理がカレーとナンだけでないことに驚くはず。

  • 台湾料理

今年、新大久保駅の真上という好立地に新たなガチな台湾料理が集結したゾーンが誕生した。新大久保駅の駅ビル内の3、4階にある「キムチドリアンカルダモン(K, D, C,,,)」だ。「K, D, C,,,」は、「Kimchi, Durian, Cardamom,,,(キムチ、ドリアン、カルダモン)」の略で、新しい食を生み出すフードラボである。

フードコートとしては小ぶりだが、牛肉麵ほか小吃(軽食)各種、豆花、台灣茶いずれも本格派が、手軽に味わうことできる。各店の主人が商売を超え、台湾の食文化の素晴らしさを伝えようと、真摯に志している点もすばらしい。新大久保の台湾美食、ぜひ試してみてほしい。 

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  • ショッピング
  • 食料品店

世界中のあらゆる料理が楽しめる街、東京。各国料理を食べ歩きするもの楽しいが、各国の食材を扱う専門店を訪ねてみると、そこにはレストランとはまた違う発見がある。日本語以外の言葉が飛び交う店内で、見たこともないようなスパイスや、パッケージに何が書いてあるか判読できないような調味料を物色しているだけで、お手軽な旅気分が味わえるはず。

食材の特徴や使い方を尋ねながら、店のスタッフと話をするのもまた一興。ここでは、東京都内で比較的アクセスしやすいエリアに特化しつつ、東京の街に溶け込んだディープなエスニック食材店を紹介する。

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