東京、文豪が愛した料理店13選

浅草や銀座、人形町、神保町などで堪能する文学の味
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Text by 松崎雅子 and Time Out Tokyo Editors

小説やエッセイを読んだ際、さりげなく登場する料理の名前や描写が、読後にまでも深く印象を残していることはないだろうか。作品に叙情的な厚みを加え、強烈なイメージとなって脳裏に焼き付く料理は、作家が思い入れや意図を持って配置した、作品の重要なエッセンスとも言えるだろう。食に強いこだわりを持つ作家は多く、彼らの著作に贔屓(ひいき)の料理店の名前が繰り返し出てくることもよくある。ここでは、明治~現代の文豪と関係深い料理店を紹介する。下町の洋食店や老舗の和食店など、いずれも文豪が活躍した当時から営業を続ける老舗ぞろい。往時に想いをはせながら、長きにわたって受け継がれてきた味を堪能してほしい。

レストラン

松栄亭

icon-location-pin 淡路町

1907年創業の洋食店、松榮亭の看板メニューとなっている『洋風かきあげ』は、夏目漱石に深い関わりを持つメニュー。初代店主が、東京帝国大学で教べんを執っていたドイツ人の哲学教授フォン・ケーベルの専属料理人を務めていた際、ケーベル邸を訪れた漱石に「何か、珍しいものを、すぐにこしらえて出してください」とリクエストされて作ったのが始まりと言われている。豚肉と玉ねぎ、卵、小麦粉のみを使用したシンプルなレシピは今も守られており、当時をしのばせる素朴な味を楽しむことができる。

レストラン

すき焼き今朝

icon-location-pin 汐留

1880年創業の老舗すき焼き屋。永井荷風や獅子文六らの作品の中にも登場する名店で、多くの文豪に愛されてきた。当初は味噌が主流だったすき焼きなのだが、今朝では創業時から現代に通ずる醤油ベースの割り下を使用してきた。ランチは、前菜、ごはん、デザートなどがついたすき焼き定食が2,700円で、リーズナブルに味わえる。ディナーに利用するなら、ソムリエの資格をもつ5代目の藤森朗にすき焼きに合うワインをセレクトしてもらいながら、贅沢な時間を過ごすというのもまたいい。

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レストラン

はちまき

icon-location-pin 神保町

怪奇小説家の江戸川乱歩がひいきにした店として知られる、天ぷら屋はちまき。昭和初期に屋台からスタートし、1945年から神保町で営業を開始した。店に入るとごま油の香ばしい香りに食欲がそそられるだろう。老舗だが価格は財布に優しく、定番の『天丼』は800円とリーズナブルに味わえる。少し贅沢したいなら、エビ2本と身の大きなアナゴ、野菜の天ぷら2種、アナゴの骨せんべいがのった『穴子海老天丼』(1,400円)もおすすめだ。

レストラン, 日本料理

江知勝

icon-location-pin 湯島

芥川龍之介や夏目漱石の作品にも登場する江知勝。店の門をくぐると、まるで別の時代にタイムスリップしたような錯覚に陥るかもしれない。1871年に創業し、現在は6代目が店の伝統と信頼を受け継ぐ。名物は、創業当初より変わらぬ味で提供されるすき焼き。各部屋に運ばれたすき焼き鍋で、A5ランクの松阪牛肉を使用して作られる。霜降りの肉は数秒で火が通るので、あまり長く煮込まずに、さっと溶いた卵にくぐらせて味わおう。黒毛和牛肉が口の中でとろけるような感覚は、きっと他店では味わえないはずだ。

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レストラン

とんき 目黒店

icon-location-pin 目黒

小説家の池波正太郎も通ったという、創業50年以上の老舗とんかつ屋。とんかつはじっくり2、30分かけて揚げるスタイルで、衣のパリッとした食感が名物。無駄な脂身は無い味わいなので、がっつりとした脂感が欲しい人はヒレよりロースかつがオススメ。つけあわせのライス、豚汁、キャベツはおかわり自由。豚汁の美味さにも定評があるので、じっくり味わってほしい。

タイムアウトレビュー
レストラン

竹葉亭 銀座店

icon-location-pin 銀座

1866年に創業したウナギ料理店の竹葉亭。永井荷風の『断腸亭日乗』に銀座店がしばしば登場するほか、夏目漱石や泉鏡花、林芙美子らの作品にも登場しており、明治より誰もが知る人気店であったことが想像できる。同店で息子の見合いを行ったという歌人の斉藤茂吉も常連の1人だ。名物は、ふっくらとした食感のウナギが乗った『うなぎ丼』。震災、戦火も乗り越え、100年以上にわたって継ぎ足されてきたタレが塗られたウナギからは、甘く芳ばしい香りが立ちのぼり、食欲を刺激する。

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レストラン, 多国籍料理

資生堂パーラー 銀座本店

icon-location-pin 銀座

西洋料理店の草分けとして知られる資生堂パーラーは、前身の「ソーダファウンテン」時代より、永井荷風や谷崎潤一郎など多くの文人が通った名店だ。食通として有名な池波正太郎も、この店を愛した1人。著書『散歩のとき何か食べたくなって』では、「戦前の銀座が、いまも尚、味に残っている」として、少年時代に初めて訪れた際の感動と、洗練された料理への想いを語っている。『ミートクロケット』や『チキンライス』など、池波も食した伝統的メニューを味わいつつ、銀座の今昔に想いをはせてみては。

レストラン

浅草 風流お好み焼き 染太郎

icon-location-pin 浅草

浅草という土地柄もあり、国内外からの客でいつもにぎわう風流お好み焼き 染太郎。天井の低い座敷や木枠のガラス戸、長年の煙ですすけた壁が醸し出す風情は、昭和初期にタイムスリップしたかのような錯覚を覚えさせる。奥の部屋に飾られているのは、江戸川乱歩や開高健、荒木経惟ら、同店を愛した著名人の色紙。多くの文化人が通った店として知られているが、中でも、屋号の名付け親である高見順と、死去する前前日まで訪れていた坂口安吾は常連中の常連。彼らの作品の中にも染太郎は登場しており、その愛着が伺える。

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レストラン

末げん

icon-location-pin 新橋

三島由紀夫が最後の晩餐として選んだ鳥割烹の店。創業は1909年。三島は、同店の伝統的な鳥料理を愛し、足繁く通っていたという。決起前夜に食した軍鶏鍋は、現在も夜の『わ』コースで味わうことが可能。料金は8,640円からで、全6~9品の4種類のコースを揃える。気軽に訪れやすい昼時は、ひき肉を使用した親子丼の『かま定食』を提供。奥久滋軍鶏と東京軍鶏、地養鶏、アイガモをブレンドしたひき肉は甘くしっとりと味付けられ、懐かしい味わいだ。

レストラン

かつ吉 水道橋店

icon-location-pin 水道橋

川端康成や三島由紀夫らが通った、1962年創業のとんかつ専門店。古木や無垢材(むくざい)を使った店内には、骨董や書、拓本などが飾られ、歴史ある古民家のような雰囲気が流れる。自慢のとんかつに使用する肉は、あえて銘柄などを限定せずその時期ベストなものをセレクト。揚げ油にはコーン油とごま油をブレンドしており、低温で煮るようにじっくりと揚げ、肉の旨みを最大限に引き出している。定食では、白米と青しそご飯が選択できるのも嬉しい。

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