かつてミカン畑が広がっていた小田原市江之浦の地に、現代美術作家の杉本博司が設立した「小田原文化財団 江之浦測候所」が立つ。ここは、自然と建築、そしてアートが交わり、人類の意識の原点に立ち返って現代における芸術の意味を問い直す場だ。
敷地には、美術品を展示するギャラリー棟をはじめ、石舞台・光学ガラス舞台・茶室・庭園・門・待合棟などが点在し、それぞれが日本建築の歴史と伝統工法を継承している。来館者は建築群を巡ることで、日本文化の奥深さと技の系譜を体感できる。
素材には地元産の石材を用い、擁壁や庭園には「根府川石」や「小松石」を採用。庭園の景石には、早川石丁場群跡から出土した江戸城石垣用の原石を配置し、古代から近代に至る建築遺構や考古遺産が随所に息づく。
江之浦測候所は、単なる美術館ではなく、時間と空間、歴史と現代が交錯している。天空を測る古代人の視点に立ち返り、アートと人間の意識の源流を体感できるだろう。
なお、入場は日時指定の予約・入れ替え制で、2日前までに公式ウェブサイトから予約が必要だ。

























