yayoi kusama
Photo: 『マンハッタン自殺未遂常習犯の歌』2010年 ©︎Yayoi Kusama

この夏行くべきアートイベント

見ることの果てしなさをかみしめて

作成者: Sato Ryuichiro
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タイムアウト東京 > アート&カルチャー > 東京で行くべきアートイベント

東京のアートシーンは多様だ。見る側のニーズもそれ以上にさまざまだ。だから、自分が好きなアートに巡り合うのは簡単なようで難しい。何も知らずにアートに触れ、その虜(とりこ)となったり、分かり合えないまま破局を迎えた人たちはいったいどれほどいたのだろうか。不用意に近づいて石灰化するナトロン湖のように危険で魅力的なアート界をうまく泳いでいくためには、何かしらの指針が必要なときもあるだろう。

ここでは、現在東京都内で開催されている多様な展示をテーマに沿って紹介する。今回は、近寄ってみることで作品の真価を理解できる展示やハシゴして理解を深められる展示など

今年のお盆期間は遠方への旅行を控えるように求められているが、都内の展示をじっくり巡ってみてはどうだろうか。

森山大道
森山大道
『東京ブギウギ』より 2018年 ©Daido Moriyama Photo Foundation

東京の街巡りをしたくなる展示4選

アート

アートが好きな人の多くは、アートだけではなく、歴史や場所といった具体的なものから言説、眼差しなどの形のないものまで、それを取り巻くさまざまな要素にも関心があることだろう。アートを見た後はその知見をさまざまな方面に広めたくなるだろうし、出かけたくもなる。

今回は「東京」というトポスに焦点を当てて、東京という街を巡ってみたくなる展示を紹介する。銭湯、マンガ、江戸の歴史などの展示と、その冒頭にあるリンク先の記事と合わせて東京を巡ってみてはどうだろうか。

月岡芳年
月岡芳年
月岡芳年『風俗三十二相 いたさう』(太田記念美術館蔵)前期展示

近寄って見てこそ楽しめる展示4選

アート

コロナ禍の最中、ソーシャルディスタンスが求められる時勢。人同士に限らず、作品と鑑賞者の間にも同じことが求められる。屏風やインスタレーションなどは作品と鑑賞者の間にも適切な距離をとってこそ全体像が見えてくるというものだ。しかし、離れて見るのではなく、近くに寄ってこそ分かる魅力もある。

今回は、東京国立博物館常設展の日本最高峰と謳われる『大包平』、太田記念美術館の月岡芳年の「血みどろ絵」に凝らされた巧妙な技法、沖潤子による刺繍を織り成す糸の有り様など、近づいて見て、うっとりできる作品のある展示を紹介する。

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福井 誠《命を継ぐ神「パレス・ボザール」》2019年
福井 誠《命を継ぐ神「パレス・ボザール」》2019年
福井 誠《命を継ぐ神「パレス・ボザール」》2019年

日本美術史を学べる展示5選

アート

作品を鑑賞するときは、先入観なしで造形を理解できれば、それが一番自由で幸せなのかもしれない。美術史的な知識を得ることは、多くの場合、物の見方を去勢してしまうことになるからだ。しかし、それは作品を理解するために必要なことでもあるはずだ。

今回は、50年以上も世界の第一線で活躍し続ける草間彌生の最新作、三菱財閥のコレクションを歴史の一部として眺める展示、近年注目を浴び、歴史的な枠組みから逸脱することでむしろ学問的な眼差しを意識させがちなアーティストならざる者の表現などを紹介する。 新型コロナウイルス感染症対策や事前予約制などを採用している展示もある。詳細は公式サイトを参照してほしい。

森山大道
森山大道
鶴松

ハシゴしたい展示4選

アート

アーティストを知ることは作品を見ることと一見同じようだが、実は違う。作品はその作品だけで鑑賞に耐えうることもあるが、作品を数多く見なければ作り手であるアーティストの特徴は見えてこないだろう。もちろん、その逆もあり得るし、結局は両者は分かち難く結び付いているのだから。だからこそ複数の展示を見ておくことは意味がある。

現在、鴻池朋子と森山大道の展示がそれぞれ複数開催中だ。今回は、この二人のアーティストをより深く知りたい人のために展示を選んでみた。 入場制限などを設けている場合もあるので各公式サイトを事前に確認してから訪れてほしい。

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北アルプス芸術祭
目 『信濃大町実景舎』(Photo: Tsuyoshi Hongo)

2021年、見逃せない芸術祭4選

アート

2021年も全国各地の風土に根ざした多くの芸術祭が開催予定だ。本記事では、川俣正や宮永愛子らが参加してコロナ禍からの再スタートを図る北アルプス国際芸術祭 2020 - 2021』家の蔵に眠った「地域の宝」を市内から集める『大蔵ざらえ』などを実施する『奥能登国際芸術祭2020+』など4つを紹介する。

鳥獣戯画 甲巻 平安時代 12世紀 京都・高山寺
鳥獣戯画 甲巻 平安時代 12世紀 京都・高山寺

史上初の全4巻一挙公開、「国宝 鳥獣戯画のすべて」展が再開

ニュース アート

2021年6月1日(火)、東京国立博物館を会場とした『国宝 鳥獣戯画のすべて』展が再開する。同展は緊急事態宣言の影響で休館中となっていた。会期は延長され、6月20日(日)まで、開館時間は8時30分〜20時(入館は閉館の30分前まで)。チケットは事前予約制で、詳細は公式ウェブサイトを参照してほしい。

『鳥獣戯画』は京都府の高山寺が所蔵する『甲巻』『乙巻』『丙巻』『丁巻』の全4巻から成る絵巻物で、制作時期は平安時代〜鎌倉時代とされる。動物や人物を異なる作風で描いた紙葉を貼り継いで絵巻にしており、複数の作者が描いていると考えられている。

鳥獣戯画
『国宝 鳥獣戯画のすべて』会場、東京国立博物館平成館(Photo: Kisa Toyoshima)

展示は3章構成で、第1章ではこの絵巻を全巻展示、4巻の絵巻物をそれぞれ最初から最後まで通して公開されるのは史上初だ。ここでの見どころは、この絵巻で最も有名な『甲巻』だろう。同巻は「動く歩道」に乗って鑑賞することになっており、来場者は全員が間近に作品の細部を堪能できる。線描や紙の質などの違いから異なる作者に帰されており、そうした細部の違いに注意してみると面白いだろう。

鳥獣戯画
動く歩道(Photo: Kisa Toyoshima)

『甲巻』以外の3巻でも、線描の違いなどに見どころが丁寧に説明されている。『乙巻』では前半の実在の動物が躍動感あふれる線描であるのに対し、後半の架空の動物は線の肥痩(ひそう)が小さく、手本を参考にしたのではないかという。

鳥獣戯画
『鳥獣戯画 乙巻』部分(獅子)、平安時代 12世紀 京都 高山寺蔵(Photo: Kisa Toyoshima)

 『丙巻』は鎌倉期の作例とも言われる一方で、前半の人物を描く場面では、人物などの薄い墨線が当初のオリジナルの墨線の上を後代の筆で濃い線がなぞっている。オリジナルの線をもとに判断すれば、この巻が平安時代のほかの作例と共通性を持ち、平安時代にまで制作年をさかのぼらせることもできることが指摘されている。 

鳥獣戯画
『鳥獣戯画 丙巻』部分(双六)、平安〜鎌倉時代 12〜13世紀 京都 高山寺蔵(Photo: Kisa Toyoshima)

『丁巻』は躍動感あふれる線の運びが見どころだ。一見粗放とも思わせる描写だが、振り返る貴人の表情は鎌倉期の似絵(にせえ)をほうふつさせ、描写のコントラストも楽しめる点も面白い。 

鳥獣戯画
『鳥獣戯画 丁巻』部分(振り返る貴人)、鎌倉時代 13世紀 京都 高山寺蔵(Photo: Kisa Toyoshima)

第2章は、前半は現在の絵巻物から分割されたミホミュージアム(MIHO MUSEUM)所蔵の断簡や狩野探幽の『探幽縮図』などを展示。錯簡の多い『鳥獣戯画』の当初の姿や、どのように現在まで伝世してきたかを考えさせる興味深い試みだ。

鳥獣戯画
鳥獣戯画断簡(MIHO MUSEUM本) 平安時代 12世紀 滋賀 MIHO MUSEUM蔵(Photo: Kisa Toyoshima)
鳥獣戯画
『明恵上人坐像』 鎌倉時代 13世紀 京都 高山寺蔵

第3章では、『鳥獣戯画』を所蔵する高山寺と、高山寺を再興した僧、明恵上人など絵巻を取り巻く背景に着目した構成となっている。重要文化財の『明恵上人坐像』は寺外での公開は28年ぶりとなる。NHKの報道によると、今回の展示に先立っての調査で像内に巻物が納入されていることが判明したという。像内の納入物は珍しいことではないが、像の制作年や作者など制作の背景の手がかりとなると思われる。

鳥獣戯画
龍子(たつのこ) 京都 高山寺蔵

ほかにも現存最古のタツノオトシゴの標本などが展示されており、明恵上人が天竺(てんじく)をしのぶ品々の一つとして所有していたと考えられている。包みには「小龍」と書かれており、当時の日本人が異国をどのように想像していたかを考えるのも楽しい。さらに、ミュージアムショップではすみっコぐらしやミッフィーとコラボレーションしたグッズも販売されており、作品ともども見逃せない。

『国宝 鳥獣戯画のすべて』展の詳細はこちら

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Photo: Intermediatheque
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無料で美術館やギャラリーが東京には一定数ある。今回セレクトするのは、質の高い国内外の作家を紹介する資生堂ギャラリーや明治期洋画の重鎮、黒田清輝の作品を展示する黒田記念館から、目黒寄生虫館やおりがみ会館といった変わり種まで16館だ。

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《マーシー・ガーデン・ルトゥー・ルトゥー/慈しみの庭へ帰る》 2014年 マルチチャンネル・ヴィデオ・インスタレーション(15分14秒)

鮮やかな世界を切り取る、ピピロッティ・リストの大規模個展が開催

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2021年4月6日(火)〜6月13日(日)、スイスを拠点に活躍する現代アーティスト、ピピロッティ・リストの展覧会『ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island -あなたの眼はわたしの島-』が京都国立近代美術館で開催される。

 

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