「ギンザ シックス(GINZA SIX)」の吹き抜け空間のアートが切り替わった。バトンを受け取ったのは、イギリス出身のアーティスト・ジュリアン・オピー(Julian Opie)だ。イギリスのロックバンド・Blurのアルバムで、目が点で描かれた4人のジャケットを思い浮かべれば、彼の作風をイメージできる人も多いだろう。
極限まで簡略化しながらも対象の特徴を的確に捉える一貫したスタイルで絵画・彫刻・映像作品を制作し、世界各国の名だたる美術館で個展を開催。日本では、2019年に「東京オペラシティ アートギャラリー」での個展が話題になった。
オピーが安藤広重や葛飾北斎の浮世絵の熱心なコレクターであるのはよく知られた話だ。明晰で洗練された浮世絵と彼の作品は、一見シンプルでありながら対象の本質を捉える粘り強い観察眼、そして複雑な工程を経て生み出される点で、多くの共通性を持っている。
今回、ギンザ シックスに新たに登場したのは、道路標識を思わせる箱型のデジタルサイネージに投影されたLED映像作品『Marathon. Women.』。等身大の女性短距離走者がひたすらに走り続けるこの作品は、多くの人々が行き交う吹き抜け空間のために特別に制作された最新作だ。
ジュリアン・オピーにショートインタビュー
来日したオピーは、最新作について話をしてくれた。
ーこれまでもユニークな場所で作品を発表されていますが、今回のギンザ シックスでの展示の依頼を受けたとき、最初に抱いた印象を教えてください。
この場所は芸術を目的に訪れるというより、買い物のために来る人が多い空間です。そのため、どのフロアからも楽しめるような、場に呼応する作品にしたいと考えました。
ー今回、女性スプリンターという具体的なイメージを選ばれた理由を教えてください。
近年取り組んでいるテーマが「スプリンター」です。走る際、爪先だけで床に触れ、ほとんど宙に浮いているように見える瞬間があります。その姿が、まさに空中を飛んでいるように感じられました。つり下げ型のデジタルサイネージには、その浮遊感がふさわしいと思ったのです。
ー日本でお気に入りの場所、もしくは行ってみたい場所を教えてください。
東京の北へ足を延ばし、青森や秋田など山沿いを訪れてみたいと思っています。観光客として観光地を巡るのは少し苦手で、すぐにスタジオへ戻りたくなってしまうんです。尾道で偶然入ったお好み焼き屋さんのように、目的地を決めずに小さな村を歩きながら、異なる景色と出合うのが好きです。
―旅の途中で、リサーチやドローイングをすることはありますか?
若い頃は、フィルム写真やドローイングで旅の記録を残していました。今は、家族へのメモ代わりにスケッチをする程度です。主にiPhoneを使って、気になった風景や、出会った人のポートレートを撮影しています。
ヤノベのネコとの別れは寂しい気もするが、オピーの作品がある景色もまたいいものだ。ギンザ シックスに立ち寄った際は、買い物の合間にぜひ目を向けてほしい。
展示期間は2026年の秋まで。なお、これまで吹き抜け空間を彩った歴代アーティストは、以下の通りだ。
- 2017年4月20日〜2018年3月21日/草間彌生『南瓜』
- 2018年4月2日〜10月31日/ダニエル・ビュラン(Daniel Buren)『Like a flock of starlings: work in situ 』
- 2018年11月12日〜2019年2月20日/ニコラ・ビュフ(Nicolas Buffe)『“Fantastic Gift”~「冬の王国」と「夏の王国」の物語~』
- 2019年2月27日〜2019年10月27日/塩田千春『6つの船』
- 2019年11月5日〜2020年2月15日/クラウス・ハーパニエミ(Klaus Haapaniemi)『Celebration of Life ー星の海の祝祭ー』
- 2020月2月27日〜2021年2月23日/」」吉岡徳仁『Prismatic Cloud』
- 2021年4月12日~2022年10月20日/名和晃平『Metamorphosis Garden(変容の庭)』
- 2022年10月26日〜2024月3月31日/ジャン・ジュリアン(Jean Jullien')『The Departure』
- 2024年4月5日〜2025年9月6日/ヤノベケンジ『BIG CAT BANG』
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