日本で生まれた美術表現に光を当てる展覧会「時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010」が「国立新美術館」で開催されている。
1989年は平成の始まりであり、同時にベルリンの壁崩壊によって冷戦体制が終わりを迎え、グローバリゼーションが本格化した年でもある。2011年の東日本大震災に至るまでの約20年間、日本では多様な芸術表現が生まれた。
同展は、日本という一つの視座から美術史を語るのではなく国内外50組を超えるアーティストの実践を通じて、日本からどのような表現が発信されたのか、また日本での滞在経験を通じて海外のアーティストがどのようにその影響を受け作品化したのかを示す試みである。
企画には、当時をリアルタイムで見てきた国立新美術館の学芸員に加え、香港の美術館「エムプラス(M+)」のキュレーターも参加。複数の視点から平成期の多様な表現を振り返れる貴重な機会となる。
1. プロローグ
1980〜1989年に安齊重男が日本で撮影したナム・ジュン・パイク(Nam June Paik)やヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys)らの写真、そして「ドクメンタ」「ヴェネチア・ビエンナーレ」で活躍したアーティストの記録を通じて、国際化していく時代の空気感が伺える。
2. イントロダクション
エドゥワール・マネ(Édouard Manet)が1863年に描いたセンセーショナルな絵画『オランピア』をオマージュした森村泰昌の作品『肖像(双子)』を起点に、大竹伸朗・村上隆・中原浩大らが、レゴやランドセルといった日常的な素材を用いた新しい批評的表現を展開する。今やビッグネームとなった彼らの初期作が揃う贅沢な空間だ。
3. 過去という亡霊
戦後日本が抱えるポストコロニアリズムや移民、多様性、戦後トラウマといった諸々の課題をテーマに、奈良美智の『Agent Orange』をはじめ、宮島達男・ヤノベケンジ・会田誠・小泉明朗といった戦後生まれのアーティストが歴史に真摯に向き合う。サイモン・スターリング(Simon Starling)の原爆と冷戦を題材にした映像作品『仮面劇のためのプロジェクト(ヒロシマ)』も見逃せない。
4. 自己と他者と
1990年代の「ガーリー・フォト」現象を背景に、長島有里枝『empty white room』や森万里子、石内郁らの作品を通じて女性写真家の立場を問い直す。また、ジョーン・ジョナス(Joan Jonas)やマシュー・バーニー(Matthew Barney)ら海外作家が、日本文化を取り込んで制作した作品も展示される。
5. コミュニティの持つ未来
ここでは、アーティスト自身が地域と協働して発表する場を拡張させた作品を紹介。白く塗った木箱をホワイトキューブに見立てた小沢剛の『なすび画廊』シリーズや、島袋道浩が世界各地の人々や文化に介入した映像作品など、DIY的手法で新たなつながりを築いた活動が展示される。
会期は、2025年9月3日(水)から12月8日(月)まで。国内で展示される機会の少ないアーティストの作品が見られるチャンスなので、アートファンにとってはうれしい限りだろう。
会場では至る所で映像作品の音が重なり合っている。これもまた90年代前後の雑踏として楽しんでほしい。
関連記事
『時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010』
『日常を拡張し物語を掘り起こす、「笹本晃 ラボラトリー」展が開幕』
『アートと建築が街を変える、「前橋国際芸術祭」が2026年9月に初開催』
東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら

