東京の盆踊りでしかできない5のこと
Photo by Tsuyoshi Kozu on Unsplash
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東京の盆踊りでしかできない5のこと

歴史とカルチャーが交差する、東京でしか味わえない盆踊りの魅力

Mari Hiratsuka
テキスト: Hajime Oishi
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東京では、戦後になって始まった盆踊りが各地域で続いている。運営団体は町内会や商店街、寺社、企業などさまざまで、東京ならではのバラエティー豊かな盆踊り文化が華開いている。

ここでは「東京の盆踊りでしかできないこと」を、『盆踊りの戦後史 「ふるさと」の喪失と創造』(筑摩選書)などの著作がある文筆家の大石始が紹介する。

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1. 新旧さまざまな楽曲で踊れる

東京における盆踊りの特徴の一つが、かかる楽曲のヴァリエーションが豊かなことだ。

「東京音頭」「大東京音頭」など東京をモチーフにした楽曲のほか、ドイツのディスコグループであるボニーMの「Bahama Mama」など、盆踊りには一見ミスマッチに思える楽曲もかかる。

多くの地域で「ドラえもん音頭」などアニソン音頭も重要なレパートリーになっており、秋葉原を氏子地域の一つとする神田明神では近年「アニソン盆踊り」(2025年は8月8日に開催)と題する、アニソン音頭に特化した盆踊りが人気を集めている。毎年「クックロビン音頭」や「おそ松くん音頭」などで大変にぎわう。

東京は、戦後になって県外から多くの人々が流入し、多様なルーツを持つ住民による新たなコミュニティーが形成されてきた。そうした住民をまとめるため、流行歌や「アニソン」という共通言語による「新たな祭り」が必要とされてきた面がある。

東京の盆踊り曲の多様さは、そうした背景を現代に伝えるものともいえるだろう。

2. 世界中の人々と踊ることができる

都心部の盆踊りでは、以前から海外からやってきた観光客が踊りの輪に加わる光景がよく見られた。しかしアフターコロナの時代に入り、爆発的な観光客の増加が盆踊りの光景もにわかに変えつつある。

「日比谷公園丸の内音頭大盆踊り大会」(2025年度は中止)や「築地本願寺納涼盆踊り大会」などは外国人観光客も多く、レンタル着物店で浴衣を着付け、下駄を履いてやってくる観光客も少なくない。沿道から神輿を眺める各地の祭りにも外国人観光客は多いものの、盆踊りは自らが参加できるという点に意味がある。

人気の観光スポットやレストランを回るだけでなく、もう一歩深く日本文化に触れたいという層には、ハードルの低い盆踊りは高い人気を集めているようだ。

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3. 東京ならではのロケーションが楽しめる

東京には絵になる盆踊りが多い。ほかの地域の盆踊りのように城下町ならではの風情や大自然の雄大さはないものの、高層ビルをバックに櫓(やぐら)がそびえ立つ光景には、都市型盆踊りとしての洗練された魅力がある。

増上寺の境内で開催されている「地蔵尊盆踊り大会」(2025年は中止)では、櫓の背後に増上寺の本堂と東京タワーがこうこうと光り輝き、ロケーションの素晴らしさは都内随一だ。

東京タワーのお膝元に広がる都立芝公園では「みなと区民まつり」が実施されている。

また、東京タワーと並ぶランドマークである東京スカイツリーの麓にも櫓が立ち、「墨田区民納涼民踊大会」などが行われている。こちらでは「東京スカイツリーおどり」などご当地音頭も人気だ。

4. ニュースタイルの盆踊りに触れられる

東日本大震災以降、東京では新たな盆踊りが次々に立ち上がり、夏の風物詩となっている。バンド演奏やDJの実演が繰り広げられることもあり、新たな盆踊り文化の創造の場とも言えるだろう。

本年度はすでに終わってしまったが、「DAIBON」の通称で呼ばれる「大和町八幡神社 大盆踊り会」はその最先端。さまざまなパフォーマーが盆踊りをテーマにした演舞を見せるが、「地域の祭り」という軸がぶれることはない。

DJ KOOらによる「DJ盆踊り」がたびたびメディアで取り上げられる「中野駅前大盆踊り大会」もまた、もともとは中野で開催されてきた地域の地道な盆踊りだった。その原点は、中野区民謡連盟の生演奏によるトラディショナルな「盆踊りタイム」に見ることができる。

近年は安易な盆踊り風イベントも多く、盆踊り愛好家としては少々思うところもあるものの、そうしたものも含めて無数の踊りの場が作り出されるところもまた、東京らしさとはいえるかもしれない。

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5. 盆踊りのハシゴができる

東京の盆に当たる7月中旬から8月最終週までは、都心部ではありとあらゆる場所で盆踊りが繰り広げられる。中でも無数の盆踊りが開催されるのが中央区だ。

浜町公園を舞台とする「中央区大江戸まつり盆おどり大会」のように大規模なものから、公園や小学校のグラウンドで開かれる小規模なものまで種類はさまざま。

車や自転車で区内を走っていると、どこからともなく「ドドンガドン」という音頭のリズムが聞こえてくることがあるだろう。そのリズムを頼りに盆踊りから盆踊りへとハシゴするというのも、夏の東京の楽しみ方である。

粗末な音響設備から流れるアニソン音頭や「バハマママ」に合わせ、地域の老若男女が揺れる小さな踊りの場にこそ、東京の盆踊りの「リアル」がある。

ライタープロフィール

大石始

地域と風土をテーマとする文筆家。 旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」。著書に「南洋のソングライン」「盆踊りの戦後史」「奥東京人に会いに行く」「ニッポンのマツリズム」「ニッポン大音頭時代』など。2024年5月に最新刊「異界にふれる ニッポンの祭り紀行」(産業編集センター)が刊行された。

もっと夏を満喫するなら……

  • 映画

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