夏を感じるエモい青春映画8選
イラスト:Lee Yuni
イラスト:Lee Yuni

夏を感じるエモい青春映画8選

花火、海、台風…夏のきらめきが詰まった邦画の青春作品を厳選

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夏を感じる青春映画が観たい! クリスマスシーズンにはクリスマス映画が観たくなるように、夏には夏のきらめく青春映画が観たくなるというものである。

かつてザ・クロマニヨンズの真島昌利は「夏以外の季節は歌になんないから」という名言を吐いたが、夏は神々が与えたもうた特別な季節である。夏ほど、何かが起きそうな気配をはらんだ季節はない。

そして夏と相性がいい映画ジャンルといえば、そう、青春映画である。若さゆえの愚かさと美しさを描く、センチメンタルとレボリューションに満ちたこのジャンルを、石原裕次郎の時代からずっと愛し続けてきた。結局どんなにあがこうと、夏のきらめきに、青春の輝きに、心を奪われざるを得ないのだ。

今回は、そんな夏を感じる青春映画を厳選に厳選を重ねてピックアップしてみたので、うだるような正午にあるいは真夜中に、ぜひゲラゲラ笑ったり切なくなったりしてほしい。

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ウォーターボーイズ(2001年)

監督・矢口史靖の大ヒット作にして、ゼロ年代青春邦画を代表する一本。ひょんなことから文化祭でシンクロナイズドスイミングを発表することになった、男子高校生たちの奮闘の夏を描く。

モテたいが一心で頑張る男子や天真爛漫で腕っぷしの強い美少女、さまざまな感情が交錯する文化祭など、日本人の大好物が幕の内弁当のごとく90分間に詰め込まれている。

「○○人が選ぶ! 夏に観たい邦画ランキング!」のような企画では大体1位を獲りがちな本作。テレビ局&広告代理店的なJ-POP感と、矢口特有の荒削りなストーリーテリングが実によくハマっており、とてつもなく観やすい。

ラストの8分にわたるシンクロ公演は、これぞ名シーンという出色の出来。コレオグラフのみならずカット割りやカメラワークも素晴らしい。「なっつかしー!」とか言いながら観よう。

海がきこえる(1993年)

宮崎駿と高畑勲がまったく関わっていないジブリ作品であり、シティポップリバイバルとヴェイパーウェイヴの隆盛によって近年再評価を受けた、「ジャパニーズエモ」の金字塔的超傑作。

大学進学を機に上京してきた青年・杜崎拓が、吉祥寺駅のホームで初恋相手の武藤里伽子にそっくりな女性を見かけ、過ぎ去りし日々を振り返る……。というトレンディーかつセンチメンタル極まりない作品で、こんなにエモいことがあるかというぐらいエモい。

ジブリヒロイン界のダークホースこと里伽子の沼っぷりも相当なもの。夏の熱気が立ちこめる中央線の空気感や、地方民から見た東京の雰囲気などなど、肌感覚に訴えかける演出がとにかくすばらしい。

2025年7月から3週間限定で全国リバイバル上映が決定。万難を排して観るべし。

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あの夏、いちばん静かな海。(1991年) 

それまでのソリッドな暴力映画路線から一転、北野武が「シャイなロマンチスト」という素顔を全面に押し出した青春恋愛映画。聾唖(ろうあ)のカップルがサーフィンに出会ったひと夏の思い出を描くラブストーリーで、主演2人が一言もセリフを発さない、感情の起伏もあらわにしない、ラブシーンも肩を抱くのみと、ストイックに削ぎ落とされた演出が心を打つ。

久石譲との初タッグとなる作品でもあるが、フィックス撮影でひたすら反復されながらも少しずつ変化してゆく画/構図に呼応するサウンドトラックはすばらしい。寡黙な映像と饒舌な音楽が引き起こすケミストリーが、全編爆裂しまくっている。

随所にちりばめられたギャグも楽しく、よく見ないと気づかないようなところにも笑いを忍ばせる、北野の茶目っ気がいとおしい。

台風クラブ(1985年)

ロバート・デニーロが推薦! 監督・相米慎二のマスターピースにして、1980年代邦画を代表するスキャンダラスな超傑作。東京郊外の町に台風がやって来て、気がヘンになった中学生たちが家出したり学校に閉じ込められたりする映画なのだが、小学生でも高校生でもなく、中学生に設定したことが本当に天才的だ。

人生で一番頭がおかしい上に全てが中途半端な時期としておなじみの中学生でなければ、この映画は成立しない。行動原理不明なアクションを矢継ぎ早に繰り出す中学生たちの姿は、思春期のモヤモヤやザワザワを思い出させてくれる。

夜のプールサイドに忍び込んだ中学生たちが、バービーボーイズで踊り狂うオープニングの格好良さは国宝級。ダンスは暗闇で踊らなければならないのだ。

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EMOTION=伝説の午後・いつか見たドラキュラ(1966年)

当時CMディレクターだった大林宣彦が監督した、自主制作16ミリ作品。日本のカルト映画の草分け的存在で、タイトル通りハチャメチャにエモい。

コマ撮りや早回し、ストップモーションなどを駆使しながら、あらゆるジャンルを縦横無尽に行き来するリリカルでポップな映像美は、まさにイメージソースの源泉掛け流しであり、本作に影響を受けたクリエーターは数知れない。

昔の革新的な傑作を指して「これが○年前の作品なんて信じられないだろ?」とか言う人がいるが、そういうのは大体その分野の歴史を大まかに知っているから言えることであり、ナウなヤングからすれば「いや、全然信じられるよ。古臭せーもん」ってなパターンがほとんどなのだが、本作に関してはマジでそう。

演出もスタイリングも、いま観るだに余裕で通用しまくり。VJ適性が凄く高い映画なので、どんな音楽を当てても合う。

つぐみ(1990年)

吉本ばななのベストセラー小説を映画化した作品。病弱で、ワガママで、口が悪くて、自分がめちゃくちゃかわいいということを完全に自覚している美少女・つぐみが、海辺の町で初恋に落ちたり、暴走族を生き埋めにしたりする青春映画だ。

監督・脚本はCMディレクター出身の市川準で、構図は極めて的確だし画面構築にもアイデアがある。柔らかい光にあふれた西伊豆の風景や、板倉文によるサウンドトラックの秀逸っぷり、モノローグを多用した演出のエモ具合など、とにかく情緒たっぷりムード満点な本作は、切なくなるほどの美しさに満ちている。

そして、何といってもつぐみを演じる牧瀬里穂のかわいさ。もはや妖気すら漂っており、危険。夏の夜に、できれば一人で、悶絶しながら鑑賞してくれ。

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BU・SU(1987年)

CMディレクターとして活躍していた市川準の映画監督デビュー作。人とうまく関われない自閉的な少女が田舎から上京して芸者修行するという青春映画、というと何やらエネルギッシュで楽しそうな作品に思えるが、実際はその逆で、ひたすらにアンニュイ。物憂げで気だるくて透き通っている。

朝靄に煙る街並みや、ガラス窓を打つ雨粒の描写など、平穏さをはらんだ映像美がエモエモにエモい。白昼夢めいた浮遊感独特の心地良さ含め、岩井俊二や新海誠の先駆だと思う。本作以前に、東京の景色をこの感覚で切り取った映像作家はいなかったはずだ。

ファッションも、今見るとイケまくりだし。少女が誰もいない住宅街を一人蹌踉(そうろう)とよろめくスーパー名シーンがあるのだが、そこで流れる挿入曲『Tonight’s the night』がこれまたスーパー名曲である。歌っているのはサザンオールスターズの原由子。天才!

FROG RIVER(2002年)

加瀬亮の初主演作。中古レコード屋でアルバイトする美大生のツトム(童貞)が、テニスサークル所属のマドンナ・水野に片想いしたり、悪友に金をだまし取られたり、ヤバい兄弟に不法侵入されたりしているうちに、なんやかんやあって剣道で決闘するハメになるオフビートな青春コメディーである。

全編に散りばめられたシュールギャグやダサカワなスタイリングなど観るべき点はいろいろあるが、なんといっても最大の見せ場は、冒頭で加瀬亮が演じる自宅DJシーン。名機「UREI 1620」を巧みに操りながらハウスミュージックを2枚がけし、最終的には全裸で踊り狂うというこの場面は、間違いなく映画史上屈指のディスコシーンであり、海外評価もエラく高い。

監督の伊志嶺一は、マジでハウスDJやっている人らしい。ちなみに原作は、石井克人が大学時代に書いた小説だとか。

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東京のかき氷シーンは、年を重ねるごとに盛り上がっているといっても過言ではない。多くの店が個性を打ち出すべく、ティラミス、アボカド、トマトなどこれまでかき氷には使用されてこなかった食材や斬新な素材の組み合わせなどを駆使し、新しいメニューを次々に生み出している。

一年中かき氷が食べられる店が増えたとはいえ、ベストシーズンは。ここでは、タイムアウト東京エディターで、かき氷を愛してやまないケイラ イマダ(@kakigori_kaila)一部監修のもと、暑い日にはしごしてでも巡ってほしい店を紹介する。

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