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Photo: Masataka Ito
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東京、隠れ家書店5選

上野から高円寺まで、路地裏・屋根裏にあるような本屋を探す

Masataka Ito
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中小書店から成る「東京都書店組合」に加盟する店舗数は、2025年4月1日時点で238店。ピークだった1984年の1426店から比べると8割以上減少したことになる。

これらの多くは、人通りの多い駅前や商店街の書店が中心と思われる。しかし東京には、駅から遠かったり、路面店でなかったり、あまり人目につかない場所に存在する「本屋さん」がある。そんなロケーションでなぜ店を開き、続けていけるのだろう。いや、反対か。隠れ家のようにしてあるからこそ、本・書店好きにはたまらない魅力を覚えるのだろうか。

ここでは、都内の書店から5店をピックアップ。何が客を引きつけるのか。東は上野、西は駒沢公園、高円寺などにある「隠れ家書店」をのぞきに出かけてみよう。

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  • ショッピング
  • 書店
  • 代々木上原

2023年に代々木上原に誕生した複合施設「CABO Uehara」の102号室に入居している書店「CITYLIGHT BOOK」。路面店ではなく、一歩奥まった場所にあり、通りからはまさか本屋があるとは分からない。

店主が書店を開こうと物件を探し始めたその時、CABO Ueharaの正面に店を構えるカフェ「No.(ナンバー)」のオーナーから同施設の存在を知らされ、入居を決めた。

2階建てで、蔵書は2000冊ほど。ヒッピーカルチャーやスピリチュアル、人文系が中心で、1960〜70年代のカウンターカルチャーを浴びた人にはグッとくるだろう品揃えだ。古本も一部あり、かつてヒッピーが愛読した雑誌『Whole Earth Catalog』が面陳されている。店主が10年ほど前に、アメリカの古書店で手に入れたという代物である。

また、決して広いとはいえない店内にはZINEが多数。出版社に勤めたこともある店主の、作り手を応援したい気持ちが伝わってくる。一方で2階には、主にレシピ本や絵本が並ぶ。近隣に暮らす人々の求めに応じて形作られてきた棚であり、上原の「街の書店」としての機能も果たす。

ビルのテナント看板には、CABO Ueharaのスタッフがちゃめっ気たっぷりに添えた「Speakeasy」という言葉が書かれていた。アメリカの禁酒法時代の隠語で、「もぐり酒場」を指す。本を読むのも、店主と静かに語らうのもよし。同店は、カウンターバーを併設した上原の隠れた社交場でもあるのだ。

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  • 上野

東上野にある雑貨や植物も扱う書店「ROUTE BOOKS」。上野駅の入谷改札から歩いて5分、角を曲がると、地元の人もあまり通らないという路地に観葉植物の緑に彩られた店が現れる。

上野恩賜公園」があるにぎやかな駅の西側と異なり、東側は静かな住宅街が広がる。ものづくりの職人が集まった地域でもあり、同店も主体はリノベーションを手がける工務店だ。路地を挟んだ向かいの工場が廃業した時、駐車場になってしまうくらいならと物件を借り、2015年に書店とカフェを作った。以来のんびりと流れに任せて店を続け、2階では陶芸教室も開いている。

そんな空気を反映した店内は、一見無造作。観葉植物や廃材を再利用した家具や什器(じゅうき)がそれぞれに存在感を発揮し、まるでいわくありげな人物が集まり、オフビートな会話を繰り広げる映画のシーンに出てきそうだ。独特なたたずまいに引かれてか、客がSNSにアップした写真を見てやってくるのだろう外国人が客の半数を占める。

本の選書は担当者に任せているというオーナーは、特段本好きというわけでもない。筆者が目についた雑誌『新百姓』に話を向けると、流行している本やベストセラーはとりたてて仕入れるつもりはないが、有名無名を問わず、いいものはリトルプレスでも置くという。

「本屋はもうからない」と笑いながら店を閉めもしないオーナーは、同じ作り手として、本と書店が持つ力は揺るぎのない確かなものと見定めているのだろう。

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  • 高円寺

高円寺のひっそりとした南エリアに、2023年11月に開業した書店「ヤンヤン」。飲み屋が並ぶ高円寺のガード下を離れて数分、こんなところに本屋が?と思う場所に看板が立つ。

人一人がやっと通れるほどの狭くて急な階段を上っていくと、数メートル四方の小さな本屋が出現する。2階だが、秘密めいた屋根裏部屋に上るような気分。そこには、店主がセレクトした小説や評論、エッセーなどとともに、日記をはじめとする人の「記録」をテーマにした書籍を揃える。

例えばZINEの『地震日記』は、2024年1月1日に発生した能登半島地震の5日間の体験を鹿野桃香(かの・ももか)がスマートフォンにつづった記録だ。鹿野が同店を訪れたことがきっかけで、書籍化に結びついたという。

同日記は話題を呼び、自費出版ながら3版を重ねた珍しい例だが、店主はマスマーケットに乗らない「小さな声」の記録を拾っていきたいと考えている。亡くなった祖父の日記を読み、知らなかった祖父の姿を「発見」した経験から記録に引き寄せられたのだという。住む場所や生きた時間が違えども、無名の人の書き残したものに触れて、響き合うものを感じ、つながりを見いだせれば、「世界」の見え方も変わっていくだろう。

店頭には店の名の由来である、台湾の巨匠エドワード・ヤン(Edward Yang)の遺作で、2025年12月に4Kレストア版が公開される『ヤンヤン 夏の思い出』のDVDが立てかけてある。

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  • 世田谷区

駒沢大学駅から歩いて20分ほどで到着する「SNOW SHOVELING」。駒沢公園通りに面してはいるもののサインはなく、脇道にあるガレージを進んだ奥の階段を2階へ上がる。ドアーズのファーストアルバムのジャケット写真が貼られた扉の向こうに、隠れ家感満載の空間がのぞく。

店主は冷やかしでこの場所を内覧した時、思い描いていた姿とは異なるが、ここなら気負いなく始められそうだとパッとひらめいて2012年に店をスタート。軌道に乗れば移転するつもりだったが、動くことはなかった。いつしか行きにくさや見つけにくさも、同店を彩る魅力と化した。

「世の中、お金だけじゃないよね」という心持ちの店主がセレクトした新刊や古本には、ビジネス書も自己啓発本もむろんない。扉にある、ドアーズが『ハートに火をつけて』を発売した1967年前後のアメリカンカルチャーにまつわる本の数々に合える。書籍のほかにも、レコード、古着、雑貨、アートなどがボーダレスに並べられ、まるで博学の先輩宅に招かれた気分。知らなかった文化に触れ、新たな価値観や生き方に開かれるようだ。

また、店名ゆかりの村上春樹に関連する書籍は、日本で発売されているものはほぼ揃う。「ブッククラブ」と呼ぶ村上作品の読書会も定期的に開催中。「隠れ家」に集い、おのおのに村上作品を語らう様子は、大人の楽しい部活動そのものだろう。

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  • 広尾

広尾の、とあるマンションの一室で開かれる、ブックコミュニティー「Daily Practice Books」。住所非公開の隠れ家であり、エレベーターのボタンを押しながらちょっとドキドキするだろう。

オーナーがここを開いたのは、2022年のこと。約3000冊の蔵書を抱えていたが売り払うのもためらわれ、引っ越しを機に自宅を改装して本棚を設置、自宅を開放することにした。現在は一部、新本やZINEも扱う場であり、閲覧・貸し出しをする私設図書館でもある。また、読書会、茶会、編み物などのワークショップの会場にもなっている。

ずらりと並ぶ書籍はアートブックを中心に、小説、エッセー、コミック、人文・思想とジャンルに垣根はない。緑の塊が気になったので近づいてみると、東海林さだおの「丸かじりシリーズ」だった。ハマって全巻揃えたそうで、偏愛感あふれる他人の書棚をのぞく楽しみも味わわせてくれる。人によって、「自分の棚を見るよう」「知らない本がいっぱい」と感想もさまざまだ。

「本屋をやってみたい」という訪問者もいるという。街の書店が消えていく一方、シェア型書店は隆盛し、新本を入手するハードルは下がっている。本を介して人が緩やかにつながる同コミュニティーは、新たな「書店」の可能性も秘めているのかもしれない。

開放日やイベントなど詳細は、Instagramをチェックしてほしい。

秘密にしておきたい東京の「隠れ家」……

  • カフェ・喫茶店

看板がなく知らないと通り過ぎてしまうような店や、予約をした者にしか住所を教えない店、薄暗い階段を上らないとたどりつけない店……。そういう隠れた店は、初めて入る時こそ少し勇気がいるが、入ってしまえば長居したくなるような居心地の良い店も多い。

時には一人でゆっくりと過ごし、また時には友人と冒険気分で楽しむのもいいだろう。ブックマーク必須のおすすめ隠れ家カフェを紹介する。

外出するならトキメキや驚きがほしい......。そんな気分なら、異次元への扉を開いてしまうというのもいいかもしれない。ここでは不思議な世界にいざなってくれる、変わった入り口の店を紹介する。外観はタバコ屋だが実はカレー店、入り口が冷蔵庫、自動ドアとエスカレーターの2段構え、謎を解かないと入れない、などだ。

ただ「入り口が変わっている」というだけではなく、勇気を出して扉を開ければ、どの店も味や内容も素晴らしい人気店であることが判明した。見つけにくさの難易度も参考に、トキメキ体験をしてほしい。 

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秘密にしておくということは、他人に共有できないほど素晴らしいものがあるということもある。都内には隠れた穴場のバーがいくつかあるが、ここでは誰もが体験すべきという信念に基づいて、特別に紹介しよう。

路地裏にひっそりとたたずむおしゃれなバーや人づてに聞かないと見つけられないプライベートな店の中から、気になるスポットを訪れてみては。

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タイムアウト東京では、今までベストレストランや、ショップを紹介してきたが、東京には秘密にしておきたいとっておきの場所がある。

この特集では、隠れ家レストラン、バー、黒湯温泉にストリートアート、バイブバーに知る人ぞ知るディープなショッピングスポットと、グルメやショッピングから、カルチャーまで、すべてが充実している東京だからこそ見逃していた秘密のスポットを紹介する。

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