再燈社書店
Photo: Keisuke Tanigawa
Photo: Keisuke Tanigawa

東京、美しい独立書店5選

田原町から吉祥寺まで、異彩を放つ本屋は店主も棚も個性的

Masataka Ito
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タイムアウト東京 > ショッピング&スタイル > 東京、美しい独立書店5選

テキスト:長島咲織

時に人生を変えるほど大きな影響力を持つことがある、本。その出合いの場となる書店も、個性豊かなところが増えている。本記事では個人書店を中心に、足を運ぶだけでワクワクする「都内にある美しい独立書店」というくくりで、5つの書店を紹介しよう。

「美しい」という言葉は抽象的で説明が難しいが、今回は見た目の美しさを踏まえた上で、店主のこだわりや美意識がにじみ出ている書店を選んだ。光が差し込む空間を大切にした書店、内装に和紙をふんだんに使った書店、歴史を引き継いできたモダンな古書店、ナチュラルな雰囲気で奥深い写真の世界を紹介する書店、開放感があり独自の視点を持つ書店と、取材してみてそれぞれの美しさに心が躍った。

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  • 三軒茶屋

店主が三軒茶屋にあるビルの3階を内覧した時、大きな窓と奥の天窓から光が差し込む様子を見て、「光を提供する場所にしよう」と決めたという。

「トワイライライト(twililight)」がオープンしたのは、2022年の3月11日。さかのぼること11年前、東日本大震災が起きた2011年3月11日は、店主がかつて勤めていた会社の最終勤務日でもあった。「あの日からずっと続いている」という思いから、あえてオープンをこの日を選んだ。コロナ禍に家で自分としか向き合えないつらさを経験し、ホッとひと息つけるサードプレイスを作ろうと思ったという。

書店は、カフェとギャラリーを併設。生成り(きなり)色の壁に柔らかい光が差し込み、落ち着いた空間が広がっている。古い建物を生かし、あえて抜け感を意識したレイアウト。白と青のデザインが目を引く壁は、昔お風呂として使われていたタイルの名残だそうだ。

選書は自ら行い、好きな文芸や詩の本が少し多め。壁沿いの棚は大まかなジャンルに分けられ、中央には今手に取ってもらいたい本を面出しで並べている。そのほか、トークイベントや朗読会、ギャラリーでの展示も開催しており、楽しみどころが満載だ。「今は自分の場を持ち、一日一日を自分で作っている手応えがあると」語る店主の表情が頼もしい。

商品を購入するかカフェで注文すれば、屋上に出ることができる。三軒茶屋の街並みを眺めながらゆったり過ごす時間は、格別だろう。

場所が少々わかりづらいが、茶沢通りの1階にある「ブーランジェリー ボヌール 三軒茶屋店」が目印だ。

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  • 吉祥寺

吉祥寺駅から井の頭公園の中を歩いて数分の静かな住宅街にある、古書が8割の写真集専門店「ブックオブスキュラ(bookobscura)」。店にたどり着くと、木枠を使った6つの大きな窓と、その上を覆うように広がる緑の外観に目がいく。窓からは明るい室内が見え、思わず足を踏み入れたくなるだろう。

店主の写真集との出合いは15歳の時。古本屋でヨゼフ・クーデルカ(Josef Koudelka)の写真集『Exiles(エグザイルズ)』を手に取り、文がないのに作家の寂しい、悲しいという感情が読み取れたことに衝撃を受けた。以降は写真集のとりこになり、200年以上の歴史を持つ「写真」というものについて日々研究している。

店を訪れる人は写真は撮っても、写真集は見たことがない人がほとんどだそう。奥深い写真の世界をより多くの人に見てもらうため、作家別ではなく、家族やファッションなど、ジャンル別に並べている。また、冊数を絞ってすっきり見せることで、できるだけ手に取りやすくしているという。不定期で作家の展示も行う。

我が家のように店でくつろいでもらいながら、写真について知ることができる「学び舎」のような存在でありたいと願う店主。写真集は読み物であり、それを読み解くヒントを提供したいと話していた。店を訪れた後は、写真に対する印象が変わるかもしれない。

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  • 御茶ノ水

「神田明神」のすぐそばにあり、ブルーのひさしとガラス越しに見える白い内装が目を引く「再燈社書店」。店主を務めるのは、老舗の和紙舗の7代目。「紙の文化に再び火をともしたい。そのためにも紙に触れる機会を増やそう」と、書籍を扱うことを決め、2023年の1月に店をオープンした。

本や紙にまつわる本、日本語の言葉や色彩に関連した本が充実しており、人気を得ている。 店内の白い空間が冷たく見えないのは、職人がすいた大判の越前和紙をふんだんに使っているからだ。本棚を仕切る縦長の和紙と、店内を横切るようにつるされた和紙。まるで和紙の鳥居が連なっているようにも見える。光の加減で表情も変わり、和紙ならではの温かさを感じる。

また、上向きの矢印が積み上がって見える桧垣紋(ひがきもん)は、店を象徴するモチーフとして外観と内観、また1,000円(税込み)以上購入した人に渡すしおりにも描かれている。

紙ものの雑貨も充実。オリジナル商品の「はこか」は、日常で気軽に使えるように30色のミニ封筒と80種のミニカードを組み合わせて小箱に入れ、自分だけのセットが作れる。ほかにも、カラフルな御朱印帳やノートなどが並ぶ。

紙の手触りを、ぜひ堪能してほしい。

不定休のため、訪れる際は公式ウェブサイトをチェックしよう。

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  • 高田馬場

早稲田通りを歩いていると、コンクリート打ちっぱなしのモダンな建物が目に留まる。創業1964年、早稲田を代表する老舗古書店「五十嵐書店」だ。本が山積みの古書店のイメージと違い、洗練された空間が広がっている。

2店舗あった店を1つにまとめて、改築したのは2002年。先代の仕事を引き継いだ現店主は、圧迫感がなく入りやすい内装を意識した。 地下には国語国文学、日本史、仏教などの書が並び、1階には学生をはじめ、より多くの人に手に取ってもらえるよう、幅広い分野の本を置いている。

1階のカウンターショーケースとガラスの棚には、装丁が美しい本やアート本を展示。またフロアごとに棚の色や素材を変えるなど、こまごましたところに店主のこだわりを感じるだろう。

地下へ下りると、古代・中世・近世に分けられた日本史の本、東洋史や辞書など、普段目にすることのない専門書が、静かな空間にぎっしり並べられていた。時代を超えて受け継がれてきた本を見ると、「本」は貴重な文化財なのだと改めて実感する。

今後は、江戸時代の和本を少しずつ増やしていきたいという。これからも楽しみだ。

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  • 浅草

田原町駅から大通りを一本入ると、えんじ色のファサードとガラス窓が目に入る。「リーディンライティン ブックストア(Readin’ Writin’ BOOKSTORE)」は外国の店のような趣があり、一度見たら忘れられない店構えだ。

元は材木倉庫だったそうで、吹き抜けの天井や太い梁(はり)があって開放感がある。左の壁一面に木材で組まれた棚は圧巻だ。白い階段を上がると畳敷きの中2階があって、少しホッとするだろう。読書会や「一箱古本市」を開催することもある。

新聞社に長く勤めていた店主は、このまま定年を迎えるより自分で何かをやる方がいいと、2017年の4月に58歳で思い切って新刊書店をオープンした。

新聞記者の頃から人と違う視点を持つことを意識していて、それは今でも変わらない。ここ数年はジェンダー、フェミニズム、戦争、食、レイシズムなどを扱う本や絵本に力を入れている。

「よそがやらないことをやる」というスタンスで、オープン時からトークイベントも継続して開催。社会学者の梁・永山聡子がゲストを呼んで社会問題について語り合うイベントは、今や定番となっている。

書店を営みながら家族との時間を大切にしているという店主の物腰は柔らかく、親切な接客が心地よい。

本が読めるスポットを探すなら……

  • Things to do

近年、大型書店に併設され広がりを見せているのが、「ブックラウンジ」とも呼べる空間だ。ブックカフェとは異なり、入場料を支払うことによって本を自由に読める。

その源は2018年、「青山ブックセンター」の跡地にオープンした「文喫」にさかのぼれる。出版取次大手の日本出版販売株式会社の子会社が運営する。また、2019年には「TSUTAYA」がプロデュースする「SHARE LOUNGE(シェアラウンジ)」が渋谷に登場し、各地に急激に展開している。

背景には、書店の生き残りをかけた収益源の多角化やコロナ禍を経てのコワーキングスペースの需要の高まりがある。書店ではこれまでもカフェを併設するケースが見られたが、比較的資金力のある取次や大手書店がそれを進化させたのが、ブックラウンジだろう。

利用者にとっては、本に触れ、読書するのに絶好の場所といえる。働いて本を読めなくなった人も、たまの休日、スマートフォンを手放した手で本を持って、デジタルデトックスのひとときを楽しんでみては。

読書のおもしろさを再確認できたなら、次は近くの街の本屋や独立系書店、ブックカフェにもぜひ足を延ばしてほしい。

  • コーヒーショップ・喫茶店

温かいコーヒーを片手に、お気に入りのと向き合う時間ほど、心安らぐものはない。慌ただしく時間が過ぎていく東京だからこそ、ときには静かに本の世界に没頭できる、ブックカフェに出かけてみよう。

どの店も、本のセレクトから、メニューの質、空間のあり方まで、それぞれに工夫が凝らされている。客の居心地を考えた店づくりがなされ、帰りたくなくなるほどの居心地の良さだ。タイムアウト編集部がセレクトした25軒から、お気に入りを見つけてほしい。

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日常の延長線上にありながら、時に非日常へと誘ってくれる夜の読書時間。ここでは、ほっとひと息つきたいときにアルコールとともに読書が堪能できるブックバーを紹介する。

友人宅のようにゆったりできる西荻窪の書店から、日本のブックバーカルチャーの原点となった西麻布の老舗バーまで、店主の個性が光るよりすぐりの5軒の中からお気に入りの空間を見つけてみては。

新型コロナウイルス感染症の影響で、営業時間などは変更の可能性がある。訪れる前に必ず公式ウェブサイトなどで確認してほしい。

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