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オープニング展は6月28日まで、Karin Hosono・真田将太朗・YU SORAによる3人展

2026年3月28日、コーヒーとアートが楽しめるスターバックス(以下、スタバ)「スターバックス カフェ & アートギャラリー 谷中御殿坂」が谷中にオープンした。「藝と珈琲の交差点」をコンセプトとし、スタバとしてコーヒーを提供するのはもちろん、アートと地域にフォーカスした次世代を担う若手アーティストの支援となる店舗を目指している。
スタバ・アートマネジメント・建築設計がタッグを組んで実現した同店のオープン。その背景にあるストーリーと空間の魅力をひもといていく。
今や、東京のあらゆる場所でスタバを見かけるようになった。しかし、日暮里には長い間スタバがなかったため、スタッフたちにとって谷中は念願の土地だったという。
多くの個人商店や神社仏閣が軒を連ね、下町情緒を今に残す谷中。「朝倉彫塑館」や「東京藝術大学」、アートギャラリー「SCAI THE BATH HOUSE(スカイ ザ バスハウス)」など芸術文化の拠点も立ち並び、アートにあふれた地域でもある。そういった背景を踏まえ、「地域の人が大切に守っている街並みに寄り添いながら、アートの拠点ともなるスタバ」というコンセプトが構築されていった。
さらに、「本物であれ」というスタバのブランドコンセプトにのっとり、「スタバの中に本物のギャラリーを作ろう」とプロジェクトメンバーは決意。その思いを実現するべく、谷中を拠点とする設計事務所HAGISO.incが設計を、ギャラリーの運営をThe Chain Museumが手がけることとなった。
谷中の「建築エッセンス」がたっぷり詰まった同店。同店の設計を語る上で重要になるのが、「看板建築」という建築様式だ。関東大震災後の東京や神奈川を中心に、木造の店舗併用住宅のファサードを、銅板・モルタル・タイルなどの耐火・不燃素材で看板のように平らに覆った洋風建築を指す。
安価で、防火性能を確保しつつ、モダンな外観デザインが楽しめる。昭和初期の庶民の商業文化を伝える貴重な歴史的建造物として、現代でもレトロな街並みとして愛されているのだ。
同店の隣に建つのは、1923(大正12)年創業の老舗つくだ煮屋「中野屋」。関東大震災後に再建した、まさに看板建築の象徴だという。戦果や大火、震災のたびに再建を繰り返してきた同地域は防火対策への意識が高く、中野屋以外にも看板建築が多く残っている。その街並みに呼応するように、「令和の看板建築」として同店を設計することにした。
完成したのは、地元の歴史や文化に敬意を込めた2階建て木造建築の店舗。谷中に点在する路地のようなアプローチを進んだ先に入り口を設け、扉の先のバーカウンターからスタッフがゲストを迎える。
店内の中央には1階と2階をつなぐ吹き抜けを作り、コーヒーを受け取るまでのつかの間にも作品が鑑賞できるほか、コーヒーの香りやパートナーの活気を2階からも感じられる。
店内は一貫して、カフェとしての落ち着いた雰囲気と、ギャラリーとしての作品鑑賞性を両立した空間が広がる。オープニングでは、Karin Hosono、真田将太朗、YU SORAの3人の若手アーティストが、「谷中」をテーマにそれぞれ異なる形式で作品を展示。1階には12点、2階には24点が展示されており、まさにギャラリーを訪れたような充実した鑑賞体験ができる。
プロジェクトメンバーは、作品を制作する前からアーティストと対話し、展覧会を組み立てていった。
スタバでは珍しく白壁を採用し、店内照明とは別に、作品用の照明も備えている。また、作品が鑑賞しやすい距離を計算し、席数を調整したといい、細部にまで作品を際立たせるための設計思想が貫かれている。夜は、外の景色が見えなくなることで昼間より作品がはっきり見え、時間帯によって異なる作品の見え方が楽しめるだろう。
店内のアートは定期的に作品を入れ替える。偶然的にさまざまな作品に出合うことも、この店舗の楽しみの一つだ。谷中御殿坂の風景の中で、コーヒーとともに思いがけない発見や時間を過ごせる唯一無二の「スタバ体験」を提供する。
谷中の街並みに静かに溶け込みながらも、日常とアートが緩やかに、時に鋭く交差する場として機能する同店。コーヒーを待つわずかな時間すら、作品との偶発的な出合いへと変わる体験は、従来のスタバの枠のみならずカフェやギャラリーそのものの枠を捉え直すきっかけをくれるだろう。地域の記憶を引き継ぎながら、新たな表現の土壌を育てるこの新たな文化拠点が、これからも見逃せない。
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