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宮﨑駿と高畑勲のコンビによるオリジナル中編アニメーション『パンダコパンダ』。逆立ちが得意な天真らんまんな小学生・ミミ子と、パンダ父子の奇妙で楽しい家族生活をユーモアたっぷりに描き出す。童話『長くつ下のピッピ』の世界観にインスピレーションを受けた宮﨑が原案・脚本・画面設定を手がけ、高畑が演出を担当。後の高畑・宮﨑作品の源流ともいわれる、不朽の名作ファンタジーだ。
そんな本作の登場人物たちが暮らす場所は、埼玉県所沢市北秋津。所沢市の「角川武蔵野ミュージアム」では、2025年8月31日(日)まで、「パンダコパンダ展 -ところざわサクラタウンの巻-」が開催されている。
作品の舞台である所沢での開催
1972年に劇場公開された『パンダコパンダ』。当時の日本はパンダブーム真っただ中で、中国から2頭のパンダが贈られ、その姿を一目見ようと「上野動物園」では大行列ができた。本作は、このパンダブームが後押しとなり、制作が進められる。

作品の舞台は、北秋津。おおらかで頼りになる父のパパンダと、わんぱくな子どものパンちゃん、しっかり者で元気なミミコがともに一軒家に暮らす。さらにパパンダは、北秋津駅から電車で上野動物園へと出勤している。

宮﨑は、彼らが住む世界を「郷愁の産物」として作り上げたのではなく、「こうなれたかもしれない日本」「そうなれたはずの街の風景」、あるいは「今もその可能性を秘めている日本の風土」として描いた。


そして、本作は以降の宮﨑と高畑映画の大本ともいえる作品。のんびりとしたキャラクターのパパンダは、そこにいるだけで周囲を幸せにするような存在で、1988年公開の『となりのトトロ』のトトロのような立ち位置だ。日常を豊かに描く作品世界と生き生きとしたキャラクターたちは、子どもを心からワクワクさせ、人々を幸せにする力を持つ。
日本を代表するアニメーターによる原画やイメージボード
キャラクターデザインと作画は、『アルプスの少女ハイジ』『スーパーマリオブラザーズ』などで知られる小田部羊一と、『未来少年コナン』『ルパン三世 カリオストロの城』などを手がけた大塚康生という日本を代表するアニメーターが担当。温かい雰囲気の原画やイメージボードから、作品が持つ和やかな魅力がじんわりと伝わってくる。

「パンダが家族となったらどんなに毎日が楽しいか。観ているだけでニコニコし、上機嫌になる映画を作りたかった」という宮﨑と高畑の意図が届き、のびのびとした気持ちになってしまう。


展示のラストには、フォトスポットが満載。腕にパンちゃんがぶら下がったように映るコーナーや、抱きつきたくなる原寸大のパパンダとパンちゃんも登場する。どんなことも楽しむパパンダたちのように、家族や友人とで盛り上がってほしい。
パパンダたちをモチーフにしたスイーツとラテアートも
併設のカフェでは、さつまいも団子と黒ごまソースが入ったスイーツ「パンちゃんの黒ゴマあんみつおいもボール」や、キャラクターがラテアートになったカフェラテとココアが味わえる。外に見える緑や、水遊びができる水盤を眺めながら、のどかな時が過ごせるだろう。

また、グッズの種類も豊富。チョコレート入りマシュマロやミルクジャム、「ところざわブレンドコーヒー」のドリップバッグといった、愛らしいキャラクターたちが笑いかけてくるので、つい手に取ってしまうだろう。


本展の取材後にミュージアムを出ると、所沢の豊かな自然が目に入り、気持ちのよい風に吹かれながら水盤で遊ぶ子どもたちの声が耳に入ってきた。ふとパパンダたちに会えるような、または、普段の生活の中にこそウキウキするものがあるのかもしれないという気持ちが芽生えてくる。宮﨑と高畑の作品は、大人をもそんな気持ちにさせてくれる力があるのだろう。
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