ニュース

万博のデザインと建築をひもとく「みゃくみゃくとつなぐ展 ~万博とひらく未来~」が開催

4月13日まで、「人間洗濯機」「AIスーツケース」など万博の実物展示も再公開

Karin Minamishima
テキスト
Karin Minamishima
Writer/Editor
みゃくみゃくとつなぐ展 ~万博とひらく未来~
Photo: Kisa Toyoshima | (左から)ミャクミャク、日本科学未来館館長の浅川智恵子、ディレクターの引地耕太、宮原裕美
広告

2025年10月に惜しまれつつ閉幕した2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博、以下万博)。マスコットキャラクターの「ミャクミャク」をはじめ、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、これからの暮らしや社会を体験できる未来の実験場として注目を集めた。

今回の万博が提示した「未来のかたち」を東京で体験できる展覧会「みゃくみゃくとつなぐ展 ~万博とひらく未来~」が、2026年4月13日(月)まで「日本科学未来館」で開催される。未来の食やヘルスケアに関する展示に加え、ミャクミャクから派生した二次創作「こみゃく」のように、市民のアイデアや参加から生まれた万博のデザインにも光を当てる。

会場全体を一つの世界観で結びつけたデザインシステムや、若手建築家が手がけた休憩所やトイレなど、会場の随所にちりばめられた多様な挑戦を振り返りながら、万博が生み出した創造のプロセスとその広がりを体感できる内容となっている。

本記事では、同展の見どころを紹介する。

分断を乗り越えるデザインの秘密

みゃくみゃくとつなぐ展 ~万博とひらく未来~
Photo: Kisa Toyoshimaデザインシステムを紹介するパネル

八百万の神をモチーフに、変幻自在でありながら、どんな場所でも画一化されることのない命の輝きを表現する万博のビジュアルデザイン。その実現を支えているのが、緻密に構築されたデザインシステムだ。ここでは、そのシステム提案時の貴重なプロポーザル資料や、万博のデザインに関わる出来事をまとめた年表などを通して、デザインが生まれるまでのプロセスを紹介する。

みゃくみゃくとつなぐ展 ~万博とひらく未来~
Photo: Kisa Toyoshima会場の様子

「2020年東京オリンピック」では、大きな期待と注目が集まる一方で、ロゴ撤回や建築案の白紙化、人選を巡る炎上などが相次いだ。そこから浮き彫りになったのは、市民とクリエーティブ業界のあいだに生じた不信感や、複雑なプロセスへの理解不足、そして説明の不十分さといった課題である。こうした反省を踏まえ、昨年の万博では社会に開かれた新しい公共の創造をテーマに掲げ、市民の信頼を育むことが重視された。

デザインシステムはまた、現代社会のあり方も映し出す。人々が容易につながれる一方で、過剰なつながりを拒むように対立や分断も加速している。その緊張状態を柔かく解きほぐすように、出会いと別れの循環を通して新しいものが生まれていく――そんなダイナミズムを体感できる構造となっている。 

また、万博会場で耳にした音声演出「サウンドスケープ」も再現。「いのちのアンサンブル」というコンセプトの下、7人の作曲家が手がけた「命・祭・街・森・水・空・地」をテーマとした音楽が制作された。人の温かみや自然の雄大さ、テクノロジーの先進性が混ざり合い、会場を一つの生態系のように包み込む。 

先端技術の実物展示を再公開

みゃくみゃくとつなぐ展 ~万博とひらく未来~
Photo: Kisa Toyoshima東京初公開の「家庭で作る霜降り肉」。日本ではまだ培養肉を食べることが法律で禁止されているため、開発者も味見はできないそうだ

同展では、万博で展示されたさまざまな先端科学技術の中から、未来の食やヘルスケアに関する実物展示を再公開。「家庭で作る霜降り肉」では、本物の和牛の細胞を培養し、3Dバイオプリント技術により「霜降り肉」と、自分の欲しい栄養素を含む培養肉を家庭で作れるようになった2050年の世界が描かれている。

みゃくみゃくとつなぐ展 ~万博とひらく未来~
Photo: Kisa Toyoshima「ミライ人間洗濯機」。1970年の「日本万国博覧会」で示され大きな話題を呼んだ「ウルトラソニックバス」(通称:人間洗濯機)をほうふつとさせる
みゃくみゃくとつなぐ展 ~万博とひらく未来~
Photo: Kisa Toyoshima視覚に障害のある人を目的地まで自動で誘導するナビゲーションロボットの「AIスーツケース」。自身も視覚障害を持つ未来館館長の浅川智恵子も万博会場で実際に使用したという
みゃくみゃくとつなぐ展 ~万博とひらく未来~
Photo: Kisa Toyoshima無数の細胞が協調して拍動を起こす「ヒトiPS細胞由来心筋シート」。このような普段目にする機会がない技術を展示することも、ひとつのデザインとして捉えられる

 エネルギーあふれる市民の協働

みゃくみゃくとつなぐ展 ~万博とひらく未来~
Photo: Kisa Toyoshima「こみゃく」が大集結したテーブル

会場では、「こみゃく」と呼ばれるミャクミャクの二次創作たちも展示。折り紙やTシャツ、フォントまで、万博を盛り上げた市民の豊かな創造力が楽しめる。これも、コンセプトに据えられた「開かれたデザイン」の一部だ。

みゃくみゃくとつなぐ展 ~万博とひらく未来~
Photo: Kisa Toyoshima市民が制作した「ミャクミャクフォント」

半年しか使わない建築はもったいない? 

みゃくみゃくとつなぐ展 ~万博とひらく未来~
Photo: Kisa Toyoshima瀬戸内産の石に着目した「Time-scape Pavillion」の展示

「エッフェル塔」や「太陽の塔」など一部を除けば、万博で作られた建造物は半年しか使われない。万博では、そんな「もったいない」側面を建築の実験の場として捉え、常識にとらわれない挑戦が展開された。

万博を象徴する建築として、大きな注目を集めた「大屋根リング」の設計者・藤本壮介がデザイン・プロデュースした会場計画や、大屋根リングが実際に使われている様子を記録した映像を展示。さらに、若手建築家が担当した3つの施設建築を紹介する。

石を素材として活用してコストパフォーマンスを抑える挑戦や、1970年の「日本万国博覧会」で広く知られるようになった空気膜構造の再解釈、万博後の活用を見据えた設計など、未来社会につながる実験的な取り組みにも触れられる。

みゃくみゃくとつなぐ展 ~万博とひらく未来~
Photo: Kisa Toyoshima「2億円トイレ」として話題になった「積み木のような建築」。「積み木」は分解され、さまざまな場所に移設されることが決定している

「さようなら、万博。こんにちは、未来」という同展のキャッチコピーが示すように、万博は終わっても、そこで生まれたアイデアや技術、未来を考える楽しさは脈々と続いていく。同展は、万博の余韻を記録として振り返るだけではなく、来場者一人一人が未来の担い手となり、新たな可能性を思い描くきっかけとなるだろう。

関連記事

ディオールと日本の美意識が共鳴、代官山に「ディオール バンブー パビリオン」がオープン

クール・ブリタニア神話を解体、90年代英国美術を再考する展覧会が六本木で開催

「DIALOGUE of Ghost and the Shell」#3 真鍋大度×徳井直生トークレポート

植物と景色が調和する「PARADISE 大手町店」がグランドオープン

ポケパーク カントーがオープン、果たして世界の期待に応えられるのか?英語編集部員が正直レビュー

東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら

最新ニュース