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トレーディングカードほどの小さな春画が約300点集結

「豆判(まめばん)春画」と呼ばれる手のひらサイズの春画を約300点展示する展覧会「『小さな愛の物語―豆判春画の世界―』新宿歌舞伎町春画展WA 橋渡し回」が、新宿・歌舞伎町で2026年3月15日(日)まで開催されている。会場となるのは、「新宿歌舞伎町能舞台」と現在休業中のホストクラブ「BOND」の2会場で、同展のキュレーションを手がけたのは、Chim↑Pom from Smappa!Groupの林靖高だ。
本展の主役は、約300点に及ぶ江戸時代に流行した極小サイズの「豆版春画」。同展は、昨年に会期延長となるほど話題を呼んだ「歌舞伎町春画展WA」の第2回に当たる「北斎・英泉 艶くらべ ー歌舞伎町花盛りー」のプレイベントという位置付けである。
前回の展示とは一変し、手のひらサイズの「豆判」のみに絞り込んでいる点で興味深い。同展の監修を務めた「浦上蒼穹堂」代表の浦上満も「これまで豆版春画に限って展示したことはあまりありません。展覧会に来た人だけが、この量の豆版春画を一度に見られる貴重な機会が得られるのではないでしょうか」と語る。
春画は平安時代から存在し、葛飾北斎や歌川国芳といった浮世絵師たちもこぞって筆をとった、当時の人気コンテンツ。現代で豆版春画と呼ばれる小ぶりなサイズが盛んに描かれ始めたのは、江戸時代後期の1818〜1830年頃だ。
流行の背景には、多色刷りの「錦絵」の登場と、耐久性の高い「奉書紙」の量産があった。豆版春画のサイズは縦9センチメートル×横12.3センチメートルほどのものが多く、これは浮世絵に使われた大きな奉書紙「大泰書(おおぼうしょ)」を4分割した大きさに相当する。
会場に並ぶ豆版春画を観ていて気がつくのは、全て「パロディ」として成り立っているという点だ。既存のキャラクターや設定を借り、独自の解釈を加えて創作される「二次創作」の形態をとっているのである。
たとえば、『忠臣蔵』の物語が春画の世界観に持ち込まれると、吉良上野介が「さぁ捕まえたぞ。いざ覚悟」いう場面で手にしているのは刀ではなく男性器の形をした性具の「張り型」となる。また、滋賀県大津市の民画「大津絵」を題材にした『大津絵春画』をモチーフにしたものまである。
さらに、「大黒天」や「毘沙門」といった七福神が登場するシリーズや、病を取り除く神として信仰されている「鍾馗(しょうき)」も格好のネタだ。この作品では、風邪をひいていた鬼が、鍾馗の「大きなイチモツ」に突かれて大汗をかき、すっかり治ってしまうという治療の場面が描かれている。多少罰当たりにも思えるこれらのモチーフから、江戸時代の人々のおおらかさがストレートに伝わってくる。
女性の職業をテーマにしたシリーズ『浮世姿二編』もまた、多様性を示す一例だ。現代でも日常を逸脱することで性的快楽を覚えるのはよくある話だが、その感覚は昔から変わらない普遍的なものなのだと思わされる。そして、その想像力に比例したバリエーションの豊かさには、ただただ感心してしまう。
豆版春画はただ面白いだけではない。着物の柄や体毛に至るまでの微細な表現や凝った構図の面でも、大きな作品と比べて全く遜色がないからこそ、絵画作品として十分に見応えがあるのだ。
浦上は「春画の根底にあるのは、『笑い』なんです。別名『笑絵(わらいえ)』とも呼ばれるんです。それは『ヒヒヒ』というような卑猥な笑いではなく、大らかな笑いなんですよ」と話す。
会場で手渡されるルーペを使い、小さな画面に凝縮された江戸時代のプライベート空間をのぞき見すれば、江戸時代の人々の底抜けの大らかさで心が解放されるだろう。
第2会場のBONDにはグッズ売り場が展開している。Tシャツやフーディーといったファッションアイテムをはじめ、豆皿やステッカーなど多彩なラインアップが並ぶ。
中でも注目のトレーディングカードサイズに印刷された豆版春画は、「縁起が良い物」として当時の人々が持ち歩いたように、現代でもお守り代わりにポケットに忍ばせたい。また、サイケデリックなカラーの「バンダナ」(2,200円、税込)は、普段の洋服に色でも柄でも目を引くアクセントとなりそうだ。
会期は残りわずか。ぜひ足を運んでみては。
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