大西茂 写真と絵画
《題不詳》1950年代 ©Estate of Shigeru Onishi, courtesy of MEM
《題不詳》1950年代 ©Estate of Shigeru Onishi, courtesy of MEM

東京、2月に行くべきアート展5選

90年代英国アート、ドナルド・ジャッド、大西茂など

Chikaru Yoshioka
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2026年2月の東京は、国内外の美術史を横断する注目の展覧会が揃う。「国立新美術館」では、90年代英国アートの潮流を再検証する展覧会が開催され、「ワタリウム美術館」ではドナルド・ジャッドの思想と実践を深く掘り下げる「ジャッド|マーファ 展」が展開。さらに、日本の美術館として初となる大西茂の回顧展では、写真・絵画・数学を横断した戦後日本美術の異才に光を当てる。

本記事では、2月に東京で足を運びたい注目のアート展を5つ厳選して紹介する。

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「国立新美術館」で、1980年代後半~2000年代初頭のイギリス美術に焦点を当てた展覧会が開催。「テート美術館」の所蔵作品から、約60人の作家によるおよそ100点の作品を通じて、1990年代のイギリス美術の革新的な創作の軌跡を検証する。

19791990年のサッチャー政権下、失業率の悪化など社会が緊迫すイギリスでは、美術の枠組みを問い直し、実験的な表現に挑む作家たちが次々と台頭した。1988年にはダミアン・ハースト(Damien Hirst)がロンドン東部の倉庫街で「フリーズ」展を企画し、同世代の作家たちとともに新しい素材や方法を用いながら、積極的に発表の場を切り開いていく。

彼らは「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)」と呼ばれ、その自由な活動によって、1990年代のイギリスのアートシーンは世界的に注目を集めるようになる。

本展では、ハースト、ジュリアン・オピー(Julian Opie)、ルベイナ・ヒミド(Lubaina Himid)、スティーヴ・マックイーン(Steve McQueen)、トレイシー・エミン(Tracey Emin)、ヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)など、世界のアート史に名を刻むアーティストの作品が集結する。

UKカルチャーがあふれた黄金期の息吹。当時のイギリスで起こったアート・音楽・ファッションの革命的ムーブメントの核心を体験できるだろう。

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  • 原宿

革新的なアイデアと作品によって、アート・建築・デザインの領域に刺激と影響を与え続けた20世紀を代表するアーティスト、ドナルド・ジャッド(Donald Judd、1928~1994年)。1970年代、彼はメキシコ国境にほど近いテキサス州マーファを拠点とし、町に残る建物を生活と制作の場として再生した。

そこで自身の作品をはじめ、ダン・フレイヴィン(Dan Flavin)、ジョン・チェンバレン(John Chamberlain)、イリヤ・カバコフ(Ilya Kabakov)らの作品を恒久的に展示するため、チナティ財団を設立。アート・建築・土地の融合と調和を目指したその空間は、半世紀を経た現在も、意図された姿のままマーファに存在し続けている。

「ワタリウム美術館」で開催される本展「ジャッド|マーファ 展」では、1950年代の初期絵画から、196090年代にかけての立体作品を紹介するとともに、マーファに残された空間について、ドローイングや図面、映像、各種資料を通して多角的に読み解いていく。そこから浮かび上がるのは、展示を「その場限りのパフォーマンスにしてはならない」という、アートと展示空間の完全性を巡るジャッドの揺るぎない信念だ。

さらに、ワタリウム美術館の創設者・和多利志津子が1978年にジャッドを日本へ招聘(しょうへい)し、開催した「ジャッド展」の貴重なドキュメントを紹介するコーナー展示も設けられる。

生涯を通して、アートと芸術表現の重要性について訴え続けたジャッド。その思考と実践を改めて見つめ直す機会となるだろう。

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  • アート
  • 丸の内

岡山県生まれの大西茂(19281994年)は、北海道大学で数学を研究する傍ら、位相数学(トポロジー)を応用した独自の創造を追求した作家である。「東京ステーションギャラリー」では、日本の美術館として初となる大西の回顧展を開催。数学・写真・絵画を横断する思索と創作によって、戦後日本美術の鬼才として国際的に活躍した彼の全貌を紹介する。

会場では、現存する千点以上の写真と絵画から傑作を厳選して展示。併せて、数学研究の遺稿など、大西のもう一つの表現を示す貴重な資料も並ぶ。

見どころの一つは、リアリズムやジャーナリズムが主流だった時代に生まれた、自己流の「規格外」の写真表現だ。多重露光やソラリゼーション(白黒反転)、沸騰した現像液の不均一な塗布などを組み合わせた交錯したイメージは、彼の数学研究に通じる「超無限」を直観させるビジュアルを生み出す。ドイツ発の「主観主義写真」の潮流とも呼応し、その先鋭的な表現は高く評価された。

また、戦後日本が躍動を始めた1950年代に発表された墨の抽象画も圧巻である。ミシェル・タピエ(Michel Tapié)が提唱した「アンフォルメル」の潮流が日本美術界を席巻する中、大西がひそかに取り組んでいた絵画はタピエに見いだされ、同時代の評論家たちを驚かせた。縦横無尽にうねる線は、観る者を圧倒する力を持つ。

今回は、長辺23メートルの大作も複数登場する。集散する墨の形象が生み出す無限の広がりの中へ、体ごと引き込まれるような体験が味わえるだろう。

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「アーティゾン美術館」で、語りの場をテーマにした展覧会「カタリウム」が開催。国宝2点、重要文化財7点、重要美術品5点を含む約56点の作品が集結する。

「カタリウム」とは、「語り」と空間を意味する「-arium」を組み合わせた造語。作り手が作品に込めた思いを語る瞬間や、アトリエで思索を深める画家の独白、さらには作品を前にした鑑賞者の感想まで、作品を前に展開する語りに耳を傾け、その場をイメージしている。

会場には、今村紫紅による「山幸海幸」の神話を題材にした屏風や油彩、日本画のほか、ベン・シャーン(Ben Shahn)の版画集が並ぶ。さらに、因陀羅の『禅機図断簡』や『鳥獣戯画断簡』など、かつては一巻の巻物だった作品の断簡も紹介される。

中でも注目したいのが、徳川時代に「天下祭」として栄えた「日枝神社山王祭」を描いた『江戸天下祭図屛風』。1998年にその存在が明らかになった、謎に包まれた一作だ。また、重要文化財の『平治物語絵巻 常盤巻』は、2年にわたる修復を経て公開される。

時代もジャンルも異なる作品が織り成す、にぎやかな「語りの場」。作品同士、そして鑑賞者との間に生まれる声に、ぜひ耳を傾けてみてほしい。

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  • アート
  • 丸の内

「三菱一号館美術館」で、「トワイライト、新版画小林清親から川瀬巴水まで」が開催される。

最後の浮世絵師の一人と呼ばれる小林清親が1876年に開始した『東京名所図』は、明治期の風景版画に大きな変革をもたらした。たそがれ時の表情や闇にきらめく光を描いた作品群は「光線画」と呼ばれ、深い陰影によって江戸の情緒を鮮やかに捉えている。

この視点は、失われゆく江戸の面影を惜しむ人々の感傷や、それを記録しようとする写真の意欲とも重なっている。一方で、文明開化によって変貌していく都市を楽天的に描いた開化絵とは、一線を画す表現でもあった。

明治末期に浮世絵の復興を目指したこの新版画は、技術だけでなく清親らが画面にとどめようとした情趣を引き継ぎ、新たな日本の風景を切り開いていった。本展では、清親から吉田博・川瀬巴水に至る風景版画の流れを、「スミソニアン国立アジア美術館」の「ミュラー・コレクション」を通してたどる。

見どころは、アメリカ建国250周年記念の年に里帰りしたコレクション、明治期の視覚を変革した写真と伝統的浮世絵の関わり、そして清親が見せた浮世絵最後の輝きとその継承だ。作品を通して、時代の空気を感じ取ってほしい。

2月の予定を立てるなら……

  • アート

2026年2月の東京は、ふらっと立ち寄れる無料のアート展が豊作だ。ポーランドのポスター界を代表するヤン・レニツァの個展から、日本初公開となるアンドリウス・アルチュニアンの展示、クセ強めで愛おしいぬいぐるみが集う話題の企画展まで、ジャンルも表現も多岐にわたるラインアップが揃う。

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  • 音楽

ここでは、「高輪ゲートウェイ駅」がクラブに変わるあのイベントや、渋谷や原宿一帯を舞台にドローンやライブ演出で都市を実験場に変えるフェス、「渋谷PARCO」で開催されるネットレーベルによるショーケースなど、多彩なイベントを紹介する。冬の街に繰り出して、音楽の高揚感を感じてほしい。

 

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