Kwangho Lee Exhibition "GHOST IN THE SHELL” / "O SERIES" at SKAC
photo@DAISUKE SHIMA
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東京、1月に行くべき無料のアート展11選

ユアサエボシ、イ・カンホ、SIDE COREなど

Chikaru Yoshioka
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新年の東京は、無料で楽しめる良質なアートが豊富だ。原宿、亀有、銀座、四谷──街ごとに個性の異なる展示が点在し、都市を歩くことそのものがアート体験へと変わっていく。ラインアップは、若手作家から世界的アーティストまで実に幅広い。気負わず、ふらりと立ち寄れるのも無料展ならでは。

2026年1月に行くべき、東京の注目無料アート展を厳選して紹介する。

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  • アート
  • 品川

KOTARO NUKAGA Three」で、関西を拠点にする木津本麗の大規模個展「そこにあること」が開催。フェルトが紡ぐ、まだ名前を持たない色と形の詩学が展示会場に広がる。

かつて作家の母親が作ってくれたおもちゃの素材であり、何にでもなれる魔法の切れ端であるフェルト。木津本そのフェルトをランダムに切り出し、彩色を施し、それを床に放り投げ、そこに生まれた形の重なり、色の交わりをキャンバスへと拾い上げていく。

鑑賞者は、画面に散らばる色や形を認知し、次に何かの風景やものを当てはめようとするが、木津本の作品はそうした性急な「理解」をふわりとかわし、ただそこにあるものを受け取るよう促す。意味を手放し、感性と出合う。彼女が描く「ただそこにあること」の美学を感じてほしい。

  • アート
  • 銀座

「ギャラリー小柳」で、ユアサエボシの個展「でいかい」が開催。7点の新作を含めた、「戦争」にまつわる絵画を10点を紹介する。

ユアサは、大学卒業後に就職した金融関係の会社が入社半年で倒産し、その後画家になることを決意して美術学校に進学したという異色の経歴を持つ。シュルレアリスムの世界に出合い、やがて自らを「大正生まれの三流画家・ユアサヱボシ」として位置づけ、当時の画風を模した絵画制作に取り組むようになった。

ユアサが擬態する架空の画家、ユアサヱボシ(19241987年)は戦争を生きた世代に属すが、重度のヘルニアのため出征はせず、疎開先で物資の欠乏に耐えながら日々を過ごしたという設定。直接的な従軍経験こそなかったものの、ヱボシは時代のただ中で「戦争」という現実に晒されていた。絵には、時に勝利の報に安堵(あんど)し、時に敵国を憎む感情を抱いた「時代の感情」が静かに刻まれている。

会場では、戦時中に作られた土人形の玩具をモデルにした特攻服の若者が立つ『少年』、胸元に勲章を輝かせながらも滑稽な顔を見せる『似非元帥』や、戦後日本における健康至上主義を風刺的に表した『健康第一』など、多様な角度から「戦争の残響」を描いた作品を展覧する。

なお、2025年12月28日(日)から2026年1月12日(月)まで冬季休廊なので、注意してほしい。

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  • アート
  • 葛飾区

「SKAC(SKWAT KAMEARI ART CENTRE)」で、韓国・ソウルを拠点に活動するイ・カンホ(Lee Kwangho)が手がける2つのインスタレーション『GHOST IN THE SHELL』と、韓国のアップサイクルブランド「FORMAT」とのコラボレーションによる『O SERIES』の展示が開催される。

弘益大学で金属工芸・デザインを学んだイは、幼少期に農家であった祖父の姿に影響を受け、日常の平凡なものに新たな意味と機能を与えるという独自のアプローチを形成した。「私の作品は、結び目を作る行為から始まる」という彼の「結び目」の意味は、物理的・心理的・抽象的に解釈した形が作品に現れている。

アート・デザイン・日常生活機能が交差する重層的な文脈を形成している、SKACという空間だからこそ立ち上がる表現を体感したい。

  • アート
  • 六本木

「禅フォトギャラリー」で、チベット生まれで中国江西省を拠点とし、1980年代以降の中国現代写真を代表する写真家の1人、莫毅モ・イー)の個展「時間的風景」が開催。都市生活における疎外感や抑圧を捉えた作品で知られる莫毅が、1995年に撮影した同名シリーズからモノクローム写真25点を展示する。撮影から30年を経て、今回が世界初公開となる。

1982年にチベットから天津へ移住した莫毅は、密集する団地の風景に衝撃を受けた。1995年以前の中国では深刻な住宅不足が続き、若者の多くは両親と狭い空間で肩を寄せ合って暮らしていたのだ。トイレは遠く離れた共同施設に限られ、朝には順番待ちの列ができるほどだった。

その後、天津では人々の大半が集合住宅へと住まいを移していく。暖房設備のない当時の集合住宅では、リビングやトイレ、キッチンを他人同士で共有する共同生活が一般的。今日の感覚からすれば決して豪華とはいえない住環境であるが、平屋での暮らしと比べれば、集合住宅への移行はまさに天地がくつがえるほどの変化であった。

外観が全く同じ建物が並ぶ団地の中では、同じ造りの玄関や窓の部屋が並ぶ。その中で莫毅は、三輪車やハニカム石炭、水がめなど、今では使い道がなくなったにもかかわらずなぜか捨てられなかった物たちに目を奪われた。

均一さを打ち破るようなそれらの物たちは、持ち主の過去を語りつつ、過ぎ去った時間の象徴として、また日常風景における時代の変化を映すものとして記録されている。

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  • アート
  • 原宿

原宿へと拠点を移した「シビック クリエイティブ ベース東京[CCBT]」で、リニューアルオープンを記念し、アーティストコレクティブのSIDE COREによる特別展が開催。「CCBTアーティスト・フェロー」として、開設当初からCCBTと共同制作した作品を中心に、SIDE COREの日々の営みと実践を紹介する。

個人がいかに都市や公共空間の中でメッセージを発するかという問いの下、ストリートカルチャーの思想や歴史などを参照しながら制作するSIDE CORE。時に他ジャンルの表現者を交えたプロジェクトとして、 都市の死角や隙間となる場所で多彩な作品を展開してきた。

その活動は、異なる価値観や文化、社会制度の境界を「移動」によって横断し、つなげる試みだ。それらを物理的に結んでいるのが「道路」で、道路は東京と他の地域の交差を生み出し、多様な文化が往来するための基盤でもある。

本展では、CCBTの新拠点から、さらに異なる都市へとつながる新たな道路を開いていく。

  • アート
  • 恵比寿

MEM」で、前衛芸術家・演出家であり、20257月に逝去したロバート・ウィルソン(Robert Wilson、1941〜2025年)をしのぶ個展が開催。現代演劇とオペラの言語を根底から変革し、世代を超えて多分野のアーティストに影響を与え続けている『浜辺のアインシュタイン』の初演50周年を記念し、1975年に同作のために制作された11点のドローイングを世界初公開する。

『浜辺のアインシュタイン』は1976年、「アヴィニョン演劇祭」で初演され、その後ニューヨークの「メトロポリタン歌劇場」でも上演。従来のストーリー的要素を排し、映像とサウンド、役者の動きが交錯しながら展開する。

本展のドローイングは、抽象的なコンセプトを視覚的な形式へと翻訳するウィルソン独自の創作過程を示す。個々の作品は、時間・空間・身ぶりに対する彼の精緻な構想を映し出している。

舞台芸術と美術の可能性を絶えず刷新し続けた、ウィルソンの思考に触れる貴重な機会。見逃さないように。

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  • アート
  • 六本木

「浅草寺」で人々の肖像を捉えた膨大なシリーズ「PERSONA」で知られる、写真家の鬼海弘雄(1945〜2020年)。鬼海は、プロの写真家として世に名を馳せる以前の1976年に、歌舞伎役者の五代目坂東玉三郎を写した。「フジフイルム スクエア」では、その貴重なビンテージプリントと厳選されたモダンプリントの計25点が、初公開される。

1976年、玉三郎が26歳、鬼海は31歳。歌舞伎役者として既に不動の名声を獲得していた玉三郎は、精力的に西洋の古典や近代劇に取り組み、舞台人としてさらなる地平を切り開いていた。プリントは長い間封印されていたが、病床の鬼海が再びそれらと向き合い、サインを施したのは撮影から実に40年を経てのことだった。

本展では、今もなおその名演が語り継がれる「マクベス夫人」や、三島由紀夫の『近代能楽集』における若き玉三郎の姿を堪能できる。そして鬼海の代名詞である「PERSONA」に至るビジョンを探り、その魅力を再発見していく。

  • アート
  • 銀座

松屋銀座7階の「デザインギャラリー1953」で、日本デザインコミッティー主催による「結城紬の仕事 作ること整えること」が開催。ものづくりにおける「整えること」に焦点を当て、茨城県結城市を中心に受け継がれてきた日本を代表する絹織物「結城紬(ゆうきつむぎ)」の仕事を紹介する。

糸づくりから機織りまで、古来の技法を今も守り続ける結城紬。その歴史は奈良時代以前にまでさかのぼり、柔らかく空気を含んだ肌触りと、時を経るごとに増す風合いは、多くの着物愛好家に愛されてきた。

繭を引き伸ばした真綿から手でつむいだ糸を、よらずに織り上げる全工程には、手仕事の文化が蓄積されている。結城紬を作る職人は絶えず何かを整え、作ることと整えることの間には、ほとんど区別がないように見える。

ズレやムラを味わいとして評価されることの多い手仕事だが、手仕事とはどういう仕事なのか。考え直す機会になるかもしれない。

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  • アート
  • 文京区

「印刷博物館」で、「世界のブックデザイン2024–25」が開催。20252月にドイツのライプツィヒで開催された「世界で最も美しい本(BBDW2025コンクール」受賞図書とともに、日本の「第58回造本装丁コンクール」をはじめ、ドイツ・カナダ・オランダ・中国・ポーランド・ポルトガルという各国のコンクール受賞図書を展示する。

会場では、合わせて約180点が並ぶほか、造本技術の潮流も紹介。展示される図書が全て手にとって鑑賞できるのも魅力だ。ブックデザインの多様性と可能性を実感してほしい。

  • アート
  • 府中

「府中市美術館」の「市民ギャラリー」で、2018年から府中を拠点に制作するマーシャル・G・ロック(Marshall G. Lock)の個展「風景の余白に耳をすます」が開催。日々の光や空気の揺れを手がかりに、風景を記録としてではなく「肖像」として描くロックの油彩・アクリルに加え、木工・彫刻の作品も展示する。

イギリスの綿工場の町に育ったロックは、機械の律動と自然の静けさの間で日常に潜む微細な徴に目を澄ませてきた。独学で制作を続け、イギリス各地で個展を開催。作品は北米・欧州・アフリカ・日本のコレクターに支持されている。

会場では、絵画を中心に、古木の幹から生まれた『森の精霊のテーブル』や、彫刻の大作『北の龍の船』など、観ることと触れることが交差する場を作り出す。根底には「わびさび」に通じる時間感覚があり、余白と呼吸を大切にした構成が、鑑賞者の歩調に寄り添っていく。

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  • アート
  • 天王洲

寺田倉庫 G3-6F」で、「TERRADA ART AWARD 2025 ファイナリスト展」が開催。ファイナリストに選ばれたのは黒田大スケ、小林勇輝、是恒さくら、谷中佑輔、藤田クレアの5組だ。

TERRADA ART AWARD 2025」は、新進アーティストの発掘を目的とした現代アートアウォード。世界を舞台に活躍するアーティストの輩出を念頭に、金島隆弘・神谷幸江・寺瀬由紀・真鍋大度・鷲田めるろという国際的な視点と現代アートに関する深い見識を持つ審査員により、国内外から集まった多数の応募からファイナリストが選出された。

本展では、倉庫をリノベーションしたアーティストの世界観・才能を開花させる空間を舞台に、ファイナリストが独自の展示を創り上げ、未発表の新作を含む作品を発表。次代を担う表現の現在地に立ち合えるだろう。

アート情報なら……

  • アート

2026年の東京は、アートを巡る話題が尽きない一年になりそうだ。空山基やロン・ミュエクの大規模回顧展をはじめ、ピカソとポール・スミスの創造性が交差する企画、杉本博司が挑む写真表現の極地など、ジャンルや文脈を越えた展覧会が各美術館で開催される。

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