注意! 最新情報の掲載に努めているが、通常とは営業時間などが異なる場合もあるため、外出前に必ず確認してほしい。

Photo: Keisuke Tanigawa

LGBTQ+への理解を広めるメイクアップアーティスト 西村宏堂

僧侶、メイクアップアーティスト、LGBTQ+の当事者として

作成者: Time Out Tokyo Editors
Advertising

タイムアウト東京 > Things To Do > LGBTQ+の理解を広めるメイクアップアーティスト 西村宏堂

テキスト:Emma Steen
写真:Keisuke Tanigawa

 

僧侶、メイクアップアーティスト、またLGBTQ+の当事者であり、自身の体験を踏まえた視点をグローバルに発信する西村宏堂。その波瀾万丈なキャリアは、ミスユニバース大会の舞台裏や、日本で撮影されたNetflixの番組『クィア・アイ in Japan!』スペシャルシリーズでのファブ5とのコラボレーションまで、多岐にわたる。

任されたプロジェクトで世界を飛び回ることと、東京で僧侶として生活することは、一見異なる二重の人生を過ごしているように見えるが、西村はそこに違いはないと言う。このインタビューで、彼は自身の類いまれな人生と、自分自身のために道を切り開いた経験について語っている。

西村の両親は仏教の僧侶だ。幼少期から過ごし現在も暮らしている家は、法事などの儀式を執り行う寺院でもある。極めて格式があり厳かな環境にもかかわらず、子ども時代の西村の家庭生活は、ほかの生活圏の子どもたちとそれほど違いはなかった。放課後と週末には友人たちが定期的にやって来て、庭で遊んだり境内で椅子を積み重ねてゲームをしていたそう。ドレスアップをすることも、もちろん彼が好んだ遊びの一つだった。

Nisimura

「子どもの頃、僧衣を包むために使われるピンクの布を頭にかぶって、『リトルマーメイド』のアリエルの格好をよくしていました。幼少期の私は両親の跡を継ぐことは考えていませんでした。仏教の存在について懐疑的かつ批判的でだったことや、アリエルごっこが大好きだった当時の私にとって頭をそった僧侶になることは、全く選択肢になかったのです」

彼の両親は息子の趣味や興味に常にオープンで、彼がしたいさまざまな道を探すことを喜んでいた。思春期の西村の転機は、2002年のアン・ハサウェイ主演の映画『プリティ・プリンセス』(原題:The Princess Diaries)を見た時にやってきた。 12歳の僧侶の息子が、ハサウェイ演じる架空のアメリカのプリンセス映画にインスピレーションを受けたという事実は、一見戸惑いを覚えるかもしれない。しかし西村は、それが自分の人生の深淵たる瞬間だったと語る。

「映画の最後に、アン・ハサウェイ演じるプリンセスが話すスピーチに感銘を受けました。彼女のメッセージは、自分が何者であるかを臆せずに受け入れ、周囲の人々の意識を向上させるよう心がけることを伝えてくれました。 その瞬間、私はアメリカに行きたいと思い、ボストンの大学に留学することを決意しました」

西村はアメリカ留学という夢を実現したが、大学生活ではマイノリティーであるという闘いに突然直面した。

「私の大学ではダンスを専攻する人が多く、彼らはディズニープリンセスのように見え、たとえパジャマを着ていてもすてきだったのです。私は自分の日本人らしい外見の特徴、特に小さな目のことをコンプレックスに感じました。自分が劣っているように感じ、自分が日本人であることに悩み始めました」

自分の外見と民族性に対するネガティブな認識は、2007年に、日本人女性の森理世がミスユニバースに選ばれた時に刺激を受けた。西村は当時の自分の反応を思い出してこう語った。 

「日本人がどうして美のコンテストに勝つことができたのか?と私は思いました。私は彼女の行なった戦略について読み、多くのアジア人が持つ美点でもある彼女のアーモンド形の目を、スモーキーなアイメイクが強調していることを知りました。誰もが独自の美しさを持っていて、受け入られるということを理解し始め、私はアイライナーとマスカラをつけるようになりました」

ボストンで過ごした後、西村はニューヨークに移り、パーソンズ大学でアートを学んだ。 堂々と自分たちのアイデンティティーを誇りに思うアーティスト達と過ごす新しい環境で、西村氏は自身のアイデンティティーを受け入れる力が湧くのを感じていた。

彼は大学3年生の時、ミスユニバース大会2007のメイクを担当したメイクアップアーティストの下で働き始め、実力のあるメイクアップスキルで同会の舞台裏で働くという夢を実現した。そして、ニューヨークで若いメイクアップアーティストとして成功しながらも、子どもの頃は興味がなかったことの追求にも関心を向け始めた。

「パーソンズ大学で勉強していた頃、韓国人学生によるパフォーマンスアート作品を見ました。 それは彼が兵役のため韓国に戻る義務についての強烈な作品であり、自分自身の経歴と日本人としてのルーツについて考えさせられたのです。自分のアイデンティティーを強め、特に仏教にまつわる疑問を解決するには、自身のルーツに向き合う必要があることに気付き、僧侶になる勉強を始めることにしました」

西村はメイクアップアーティストとしてフルタイムで働きながら、仏教の僧侶になるために修行し、ニューヨークと日本の2カ所で2年間を過ごした。2013年から2015年の間、数週間の修行のために数カ月ごとに日本を訪れ、米国に戻ってメイクの仕事を続けた。

修行中、西村は僧侶になった後もメイクの仕事を続けることができるかと疑問を持った。なぜなら、彼は日本の仏教徒コミュニティーの反感を買いたくなかったからだ。迷う西村に彼の導師はこう告げた。

「私たちの宗派で最も重要なことは、セクシュアリティに関係なく全てを救済できることを人々に伝えることです。そのメッセージをより多くの人に届けることができるならば、外見が問題とは思いません。また日本の僧侶は複数の職を持ち、それに応じて装うように発展してきたのです」

西村は僧侶の資格を取得した後、国連、イェール大学、さらには2019年11月に公開されたNetflixの『クィア・アイ in Japan!』スペシャルシリーズの出演など、さまざまな場所で自分の話を語る場に呼ばれ始めた。

そして日本に帰国し僧侶としての生活を始めてからも、メイクアップの仕事を続けた。アトランタのミスユニバース大会2019など大規模な国際プロジェクトのために、現在も定期的に旅を続けている。

僧侶としての仕事の際、彼は伝統的な僧衣を着て、仏教への敬意からメイクを落としている。メイクアップアーティストの仕事は僧侶の職務とは対局のように見えるが、西村の目にそうは映らない。

「仏教は平等を説いています。仏教を通して、私は本当の自分になることができることを学びました。 仏教はあなたが自分色に輝くことを推奨しています。自分らしくあることに、罪悪感を感じる必要はないのです。

メイクアップアーティストとして人々を力づけ、誰でもすてきに輝くことができると理解してもらうのが私の仕事です。 私は人々が自分を信じて、また他人と自分を比較しないことを願っています」

WAIFUPhoto: Keisuske Tanigawa

西村氏は、平等とエンパワーメントの哲学にから、LGBTQ +について自分の作品にアプローチしている。

「実際に仏教では、さまざまな寺で使われる多色の旗があり、多くの人がそれをLGBTQ +の旗と比べています。 私はかつて、宗教のために彼のセクシュアリティを受け入れない母親と確執を持ったブラジルの少年からメッセージをもらいました。宗教を批判したり、比較したくはありませんが、少なくとも私の信仰する浄土宗では、全ての性別とセクシュアリティを受け入れていることを人々に知ってもらいたいのです。 あなたが誰であっても、私たちは平等に救済されるのです」

「数年前、アン・ハサウェイがLGBTQの権利と人種平等について講演しました。 彼女は、力を持った『白人男性』以外の人々が受ける差別と偏見について語り、それが昔の慣行に基づく神話であると語りました。成長したアンが今、それを語ることが本当にうれしいです。幼少期に見た映画で演じるプリンセス役の彼女から、私は励まされていました。今でも彼女が人々を力づけるために活動しているのは本当に素晴らしいことです。

私は、この時代の世界に生まれました。だからこそ、現在メークアップをしてヒールを履く僧侶でいられます。他の多くの人もなりたい自分になり、自由と喜びを祝うことができると伝えていこうと思います」

関連記事

インタビュー:SECRET GUYZ

LGBT

2016年11月30日に6枚目のシングルを発売し、12月1日には初のワンマンライブを渋谷で成功させたFtM(Female to Male)アイドルグループ「SECRET GUYZ(シークレットガイズ)」。2017年4、5月には日本ツアーの開催も決定した。メンバーは、吉原シュート、諭吉、池田タイキの3人。今回は、そんな精力的な活動を展開中の3人に、LGBTを広く知ってもらうための活動について、ららぽーと豊洲にて行われたリリースイベントの合間に話を聞いた。

自分たちの居場所を作ること

LGBT

クラブイベントには珍しく、参加者の多くが女性というパーティーが渋谷の青山蜂で開催され、話題を集めている。2019年9月13日(金)に4回目の開催を迎える『Wife/WAIFU(ワイフ)』は、「ジェンダー、セクシュアリティ、人種、年齢などにかかわらず、オープンで他者と寄り添う気持ちのあるさまざまな人が安心して楽しめるセーファースペースを、参加者とともに作り上げていくこと」をテーマに据え、トランスジェンダー女性を含めた女性を軽視するような行為、および人種差別的な行動には即刻退場を求めるポリシーを掲げている。 社会のさまざまなところでジェンダーバランスの不均衡が問題視される昨今、音楽シーンもまた例外ではいられない。大規模の音楽フェスティバルでも男性の出演者が圧倒的に多いなかで、このパーティーのオーガナイザー5人全員が女性であることは大きな特徴だ。今回タイムアウト東京では、社会の現状に対するカウンターとして自分たちの居場所を作り出したオーガナイザーたち、美術家で海外展示のため不在のミドリ(Midori Morita)を除く、ローレン(Lauren Rose Kocher)、エリン(Elin McCready)、アサミ(Maiko Asami)、リサ(Lisa Tani)に話を聞いた。

Advertising

生きた本棚が作るゲイコミュニティー

LGBT

言わずと知れたゲイタウン新宿二丁目。その深奥にある、とりわけディープな一角「新千鳥街」の中でブックカフェ「オカマルト」は営業している。店主の小倉東(おぐら・とう)は、ドラァグクイーン「マーガレット」の名でも知られる、日本のアンダーグラウンドなゲイシーンにおける最重要人物の一人だ。かねてより雑誌編集や文筆業でも豊富な知識と鋭い洞察力を披露してきた彼が、2016年末にオープンさせた店とあって注目が集まっている。同店の本棚に並ぶのは、通常のブックカフェとは異なり、ポルノ雑誌からアカデミックな研究書まで、ゲイやクィアカルチャー、同性愛などにまつわるものばかり。二丁目というコミュニティー内でゲイ資料をアーカイブしていく意義とは何なのか。平日昼間のオカマルトで話を聞いた。

おすすめ

    関連情報

      Advertising