1987年に制作されて世界的なヒットとなり、日本でも89年にロングラン上映されてミニシアター・ブームを象徴する作品の一つとなったパーシー・アドロン監督の映画『バグダット・カフェ』。夫と二人でドイツから旅行に来たジャスミンが、夫婦喧嘩の末に一人、アメリカ西部の砂漠に建つさびれたダイナー兼ガソリンスタンド兼モーテルである「バグダッド・カフェ」にたどり着き、人々の荒んだ心を変えていく物語は、ジェベッタ・スティールが歌ってアカデミー賞歌曲賞にもノミネートされたテーマ曲「Calling You」とともに多くの観客に感動と共感をもたらした。
この映画と同じくアドロン監督と妻のエレオノーレ・アドロンが脚本を、ボブ・テルソンが楽曲を手掛け、2004年に初演されたミュージカル版が日本初演される。
演出は丁寧な心理描写でストレートプレイからミュージカルまで幅広く手掛ける小山ゆうな。主演のジャスミンに花總まり、カフェを切り盛りするブレンダに森公美子、その娘フィリスに清水美依紗、ジャスミンに恋する画家ルディ役に小西遼生が扮するほか、彼らを取り巻く人々に松田凌、芋洗坂係長、岸祐二、坂元健児、太田緑ロランス、越永健太郎と、多彩な俳優が集結。クラシック、ロック、ソウル、レゲエ、ラップなど多様なスタイルの音楽も、物語を引き立てる。
異なる個性やバックグラウンドをもつ人々がカフェに集い、揉め事を起こしたり、心を通わせたり、あるいは通わせなかったりするこの物語。多文化共生と排外主義に揺れる世界の中、必要なものとは何かを問いかけてくれるような作品を、今こそ味わいたい。
※11月2日 ~ 21日/日比谷シアター クリエ/昼の部は13時から、夜の部は18時から(日によって異なる)/休演日は11、18日(8日昼の部、9日、19日昼の部、20日夜の部は貸切)/料金は平日13,500円、土・日曜・祝日・千秋楽14,000円
















