ヴォイツェック
Photo: ©PARCO.Co.,LTD
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インタビュー:森田剛 パルコ・プロデュース 2025『ヴォイツェック』

主人公・ヴォイツェックのまっすぐな芯を探して

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タイムアウト東京>カルチャー>インタビュー:森田剛『ヴォイツェック』

テキスト:高橋彩子

19世紀前半、実際に起きた殺人事件に想を得てドイツ人作家のゲオルク・ビューヒナー(Georg Büchner、1813~1837年)が執筆した未完の戯曲『ヴォイツェック』が、劇作家ジャック・ソーン(Jack Thorne)による2017年のニューアダプテーション版で上演される。

演出は新国立劇場演劇部門芸術監督でもある小川絵梨子、トラウマや葛藤を抱えて悲劇へと向かっていく主人公・ヴォイツェック役に森田剛。立ち稽古が始まってまもない稽古場で、森田に聞いた。

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知識を入れつつ直感も大切に

―今回の『ヴォイツェック』では、舞台が東西冷戦下にある1981年の西ベルリンに置き換えられています。立ち稽古が始まったばかりとのことですが、その前に座ったままで話し合う「テーブル稽古」で、時代や人物についてじっくり話し合ったのでしょうか?

森田:はい、出演者みんなでいろいろな方向・考えを共有した4日間のテーブルワークがとても濃い時間でした。皆さん教養があって物知りで、役や時代背景などについて話されていて。聞きながら勉強になりました。

そうやって、まず共通認識のようなものを作る時間があり、それをそれぞれが自分の中に落とし込んで、立ち稽古に臨んでいます。

―演出の小川絵梨子さんとは初めてですよね。いかがですか? 

けっこうなハイスピードで進んでいますね。いずれは細かくやるのでしょうけど、とりあえずは起きていることを感じる稽古というか。でも、気になること、こうした方がいいといったこともちゃんと言ってくれています。

日本では稽古期間は1カ月が一般的ですが、僕はすごく短いと感じるんです。そんな中で、僕にせりふが入っていないと、時間の無駄になってしまう。なので僕は今、せりふを言うこと、そして同時に相手のせりふを聞くことに集中しているところです。

そうこうするうち、インプットしたいろいろな知識を引っ張り出してミックスさせていく段階が来ると思います。僕としては、テーブルワークで皆さんからたくさんのものをいただいた分、立ち稽古の中でお返しをして深めていきたいという気持ちがありますね。

―今回上演されるバージョンでは、ヴォイツェックは西ベルリンにいるイギリス人兵士で、東ベルリンとの国境線では東ドイツの人々と一触即発、という状況も描かれます。彼が置かれている状況をどう感じますか?

戦争と背中合わせの、生と死のはざまのギリギリのところにいるという緊張感は、すごく彼に影響を与えている。イギリス人としての自分の立場や周囲の人々との関係など、さまざまなものに影響され、さらに自分の過去の記憶とぐちゃぐちゃになっているんですよね。日本にいる我々はやっぱりどこか平和ボケしているところがあるので、しっかりと想像して作っていかなければと思っています。

映像だったら例えば景色で説明することもできますが、舞台はもっと抽象的ですから、空間をしっかりと埋める作業が重要で。それを一人ではなく、出演者みんなで行う作業がすごく大変です。

―子どものことをかわいがっているのに、その性別が分からなかったり名前で呼ばなかったりするヴォイツェック。上司であるトンプソン大尉は「本当の君にたどり着ける気がしない」と言いますが、森田さんがたどり着くためのキーになりそうなものはありますか?

不思議な人ですよね。稽古が始まったばかりなので、分からないことだらけです。ヴォイツェックとして生きる上で一つでもいいからブレないもの、例えば(内縁の妻である)マリーに対する愛情でも何でも、まっすぐな「芯」ができたら乗り越えられるような気がするんですけど。それを作るのが、まだなかなか難しくて。

―確かに台本を読んでも、マリーのことは愛しているようだけれど、「こんなふうに振る舞われたらマリーは引いてしまうだろうな」と感じるところもあり、ヴォイツェックが哀れに思えてきます。

すごく純粋でまっすぐな愛なんですけど、こんがらがってしまった糸を自分では解くことができず、被害者と加害者が逆転してしまうようなところがある。何ともやるせない気持ちにはなります。

でもさっき「芯を作りたい」と言ったのは、どうしようもない状況でも「ヴォイツェックがかわいそう」というだけのものにはしたくないからなんです。この作品の大きなテーマとして、生きることと死ぬことというのがある気がするのですが、その辺りは今の時代にも通じることで、死ぬことが悲しいこととも、生きることがつらいこととも限らないですよね?

―なるほど。今作ではヴォツェックがイギリス人、マリーはアイルランド人という独自の設定になっているのも特長ですが、そのマリーとの劇の前半辺りまでのやりとりで幸せそうだったり笑っていたりするところにも、のちのちの破綻や悲劇の予兆を感じることができそうな戯曲になっています。

難しいですね。今はまだ、読めば読むほど分からなくなっていくところがありますが、ヴォイツェックはマリーも含めてその時その時に会った人から影響を与えられていて、他の人々もヴォイツェックからも影響を受けているわけなので、その場で起きていることに感覚的に反応できたら、深いところまでいける気もするんです。

だから演じるに当たっては、頭で考える部分と、直感的、感覚的な部分との両方が必要だし、観る人にも舞台上の出来事を感覚的にとらえてもらえたら面白いんじゃないでしょうか。

ヴォイツェック
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ヴォイツェックに光を当てたい

―森田さんは、『金閣寺』しかり『ビニールの城』しかり『FORTUNE』しかり、何か鬱屈(うっくつ)した複雑な内面を抱えていたり、今の状況に違和感を感じてここではないどこかを夢見ていたりする人物を演じることに定評があります。ご自身としてはいかがですか?

演じていて喜びはありますが、そういうものを好んで選んでいるとか、意識しているとか、そういうことは全くないんです。この感じか、などと思ったら飽きてしまう。過去に演じたものをなぞるようなことはしたくないですし。

というのも、「どう見せたいか」ということと「どう見られたいか」ということが、自分の中でつながってしまっていて、それがすごく邪魔に感じるんですよ。だからあえて考えないのかもしれません。

とはいえ、そういうことを考える必要がある時もあるし、正解はないですよね。特にヴォイツェックみたいな役は、ガーッと入り込めばいいというわけではなく、どこか客観的に自分を見ていなければいけないし。

―ヴォイツェックの周囲の人物、トンプソン大尉やドクター・マーチンは、口では相談に乗ると言いながら全く手を差し伸べてくれない。ヴォイツェックの同僚の妻であるマギーの、マリーに対する態度も同様です。他者に冷たい現代社会にも通じるのではないでしょうか。

まだ多くは語れないのですが、登場人物それぞれのキャラクターが色濃くなっていったら、面白い芝居になると思います。だって、普段の生活でも、誰もがほかの人の言葉に助けられたり傷つけられたりと、影響を受けながら生きていますから。

舞台でしか経験できないこと

―観客もまた、舞台上の人物たちのせりふにそれぞれ、さまざまな受け止め方をしたり影響を受けたりしますね。ちなみに森田さんは、舞台をやることから、どういう影響を受けていますか?

舞台って、キャストもスタッフも面白い人がいっぱいいますから、そういう人たちに出会えることは楽しさの一つですね。あとは、「できないから面白い」というのもあるかもしれません。稽古はもちろん、本番中も、やっぱり舞台って独特じゃないですか。お客さんがいて、開幕したらもうずっと止められない緊張感も怖さもある。そうしたことを含めて、舞台でしか経験できないことがたくさんあるから続けているんだと思います。

そもそも、悲しい芝居を悲しくやるのがあまり好きではないので、つらい人こそただつらくはやらず、何かと戦っているさまを見せたい。ヴォイツェックに、ちゃんと光が当たっているというのをどこかで表現したいと考えているんです。

―これまでの豊かな舞台経験があるからこそ、演じることの難しさ、ハードさを痛感していらっしゃるのだろうと推察します。

そうですね。でも、観てくれる方には素直に感じてほしいです。こうやって役について語ることが良い情報になる場合もあるけれど、舞台を観ている時に僕の取材での言葉がよぎるのは違う気がする。

僕たち俳優は稽古の中で、自分でこうやりたい、こう動きたいというのを一回ゼロにする作業があります。観劇する人も、きっと戯曲を読んだり勉強したりしながら楽しみにしてくれていると思いますが、それを一回ゼロにして舞台を観たら、その瞬間に起きることをじかに感じられるのではないでしょうか。すてきなせりふがいっぱいありますから、しっかり聞いてほしいですし。

それでも事前に入れた知識は残っているわけだから、家に帰ってから答え合わせをすることもできる。それも楽しいだろうな、と想像するんですよ。なのでこの記事も、読んだ後、客席では一度なかったことにして(笑)、自由に観てもらえたらうれしいですね。

ヴォイツェック
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Contributor

舞台芸術ライター。現代劇、伝統芸能、バレエ・ダンス、 ミュージカル、オペラなどを中心に取材し、「SPICE」「AERA」「The Japan Times」や、各種公演パンフレットなどに執筆。第10回日本ダンス評論賞第一席。年間観劇数は250本以上。現在、ウェブマガジン「ONTOMO」で聴覚面から舞台を紹介する「耳から“観る”舞台」、エンタメ特化型情報メディア「SPICE」で「もっと文楽!〜文楽技芸員インタビュー〜」を連載中。

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トレードマークはおかっぱの髪形。2023年10月放送の「相席食堂」では自身の曲「今宵乾杯」を披露するなど、クセのある俳優として注目を集めているのが坂口涼太郎だ。フジテレビ系ドラマ『ビリオン×スクール』では教師役として圧倒的な存在感を発揮。ダンサーとしてデビューした坂口の経歴は、ピアノの弾き語りや演技など、各方面へ才能の光を飛ばし続ける。そんな、坂口が次なる舞台として選んだのが、劇作家・山本卓卓によるKAAT神奈川芸術劇場プロデュースの新作音楽劇『愛と正義』(演出:益山貴司)だ。

人を助けるヒーローたちが「愛と正義」を両立させる難しさに苦しみつつ、過去から未来へ縦横無尽に行き交い、戦う姿を描いている。5人の俳優と2人のダンサーで構成されており、主人公のいとこ役の「ウチ」とウチに憑依(ひょうい)して愛を食べる怪物「アク」を演じるのが坂口だ。2025年2月21日(金)から「KAAT 神奈川芸術劇場」で始まる上演に先駆けて、その意気込みを語ってもらった。

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2024年3月1日公開の映画「52ヘルツのクジラたち」で、トランスジェンダー男性の岡田安吾役として出演した志尊淳のInstagramストーリーズが話題となった。

劇中で志尊がつけていたあごひげに対して、ファンから「似合わない」という感想に、「自分でも似合ってないなとは思います(笑)」と前置きしながらも、「世の中には似合ってるか似合ってないかじゃなくて、自分がやりたいから、好きだから、自分を表現できるからでやってる人もたくさんいます」と意見を投稿。「この映画でもこのひげは必要であり、演じた岡田安吾を守る大切なものです」と、あごひげをつけるトランス男性への思いを続けた。

これに対し、LGBTQ+当事者を中心に、「真摯(しんし)に向き合っている」「安心」など好意的な反響が広がった。

本作で志尊の「トランスジェンダーの表現をめぐる監修」を務めたのは、俳優で自身もトランス男性の若林佑真。2人はお互いに「思ったことは全部言い合う」と決め、二人三脚で岡田安吾の人物像を練り上げていったという。

トランスジェンダーの表現をめぐる監修とは一体どんなことをして、どう人物像を作り上げたのか?Instagramストーリーズ投稿の背景とともに、作品に込めた思いを聞いた。

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映画やテレビ、舞台などでキャリアを重ね、注目を浴びる俳優、高橋一生。先月にはハードなアクションシーンを含むドラマ「インビジブル」が最終話を迎えたばかりの彼が次に挑むのは、一人芝居「2020」だ。

戯曲は芥川賞作家の上田岳弘による書き下ろしで、演出は高橋と何作もタッグを組んでいる白井晃。高橋自身が両者を引き合わせるなど、企画段階から深く関わっている。彼は一体どのような思いで、どんな舞台を世に送り出そうとしているのだろうか?

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