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新宿・歌舞伎町の「新宿歌舞伎町能舞台」をメイン会場に、江戸時代の春画約150点を集めた展覧会「新宿歌舞伎町春画展ー文化でつむぐ『わ』のひととき」が始まった。2025年9月30日(火)まで開催される。
展示を監修するのは、春画コレクターとして国内外で高く評価される浦上満。葛飾北斎・歌川国芳・喜多川歌麿・菱川師宣など、そうそうたる浮世絵師たちによる春画の名作が一堂に会する。

会場は、メイン会場の新宿歌舞伎町能舞台から徒歩3分程度に位置する、現在は営業していないホストクラブも第2会場として活用。みやびと俗が絶妙なバランスで溶け合う、不思議で心地よい空間に仕上がっている。

能舞台が持つ神聖さと静けさの中に展示された春画は、構図の大胆さ、陰毛の一本一本まで描かれた緻密さ、ポップな色使い、そして知的な「笑い」を併せ持つ。さらに、本物ならではの迫力は、言葉では言い表せないほどだ。


春画には、現代のポルノのような一方向的な視点ではなく「見る」「のぞく」「笑う」といった多層的な視点があり、それを精緻な画技で成立させていることに驚かされる。

かつてホストクラブとして使われていた第2会場では、足元で輝くネオンの光が包み込む独特の雰囲気を味わいながら作品が鑑賞できる。江戸時代には「性」が今よりも身近で自然なものであったという感覚が、会場の雰囲気を通じてよみがえるだろう。


同会場ではグッズの販売も行われており、100枚の春画カードから自分だけの春画帳が作れる。そのほか、絵柄をあしらったクッキーやオリジナルキーホルダー、クッションなども手頃な価格で販売される。

歌舞伎町と春画、誤解されがちな魅力が2つをつなぐ
同展の企画を手がけたのは、歌舞伎町を拠点にホストクラブ、飲食店、介護事業など多彩な事業を展開するSmappa!Group。代表の手塚マキは、元ナンバーワンホストであり、現在は歌舞伎町で伝統的な日本文化の発信者としても活動する人物だ。

手塚は同展開催に際し、「歌舞伎町は危ない街、春画はエロい。そんな先入観のせいで、多くの人の思考が止まってしまっています。でも、よく知れば、どちらも人間味あふれる深い世界なんです。駅から会場までの街の様子も楽しみつつ、ぜひ本物の春画に触れて、新しいイメージを持ってもらいたいですね」と語った。

日本でまとまった春画が展示されるのは10年ぶり。貴重な春画を提供した浦上も、新たな視点で展示される春画に期待を寄せる。

会場では、来場者たちが春画を観ながら、仲間と笑顔で語り合う姿が見られた。美術展であることを忘れてしまいそうなほど、リラックスした雰囲気に包まれていた。その中心にあるのは、「性=恥ずかしい」ではなく、「性=人間らしい」と捉える江戸の感覚だろう。

これほどまでに自由で、明るく、そしてユーモラスに性を表現した絵が、かつてあっただろうか。 江戸の人々が春画を日常の中で楽しみ、笑い合っていたというのもうなずける。人間味あふれる歌舞伎町で、ぜひ春画と向き合ってみてほしい。
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