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新たな価値を生み出す舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」が池袋で開幕

10月1日〜11月3日、日本と世界の舞台芸術表現が新たな視点を創り出す

Kaoru Hoshino
編集
Kaoru Hoshino
Editorial assistant
秋の隕石2025東京
画像提供:秋の隕石2025東京 | 『ダンスの審査員のダンス』
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テキスト:Akiko Mori

舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」が、2025年10月1日(水)から11月3日(月・祝)まで、池袋の「東京芸術劇場」を中心に開催される。

同芸術祭は、劇作家・演出家として国内外で注目を集める岡田利規がアーティスティックディレクターを務める初の試み。会場は東京芸術劇場をはじめ、「池袋西口公園野外劇場 グローバルリングシアター」など、池袋周辺エリアが中心となる。

秋の隕石2025東京
画像提供:東京舞台芸術祭実行委員会前列左から花形慎(アーティスト)、岡田利規、菊川朝子(うたうははごころ)、後列左から山口遥子(人形劇研究者)、関田育子(演劇団体)、タニノクロウ(劇作家・演出家)、葛西敏彦(サウンドエンジニア)

3つの柱で構成されるプログラム

同舞台芸術祭は、「上演プログラム」「上演じゃないプログラム」「ウェルカム体制」という3つの柱で構成される。「上演プログラム」では、国内外の多様な舞台芸術が集結し、言葉・身体・視覚が交差する14のパフォーマンス作品を展開。岡田によるダンス兼演劇作品『ダンスの審査員のダンス』は、音や光の刺激に敏感な人や、一定の姿勢を保つことが苦手な人でも安心して楽しめる「リラックス・パフォーマンス」として上演される。

秋の隕石2025東京
画像提供:東京舞台芸術祭実行委員会

また、人ではなく物体に演技をさせる演劇「オブジェクト・シアター」も登場。観客は1回の上演につき5人限定。親密なサロンのような空間で、濃密な体験を味わえる演目も用意されている。

演劇は「観る」だけではない。「上演じゃないプログラム」では、共に創り、対話し、立ち止まる時間として、ワークショップやアフタートーク、リサーチ公開などが展開される。観客もまた、共創のクリエイターとしての役割を育んでいく。

注目すべきは、「ウェルカム体制」。これは、子ども連れの家族や、光・音の刺激に敏感な人など、これまで劇場に足を運びづらかった人々に向けた開かれた上演環境を整える取り組みだ。

「あなたたちは最初から歓迎されている」と、演劇が静かに語りかける。泣いても、動いても、途中で出入りしてもいい。劇場が社会の一部として開かれていく、その過程こそが、同芸術祭の核となっている。

絶えず変容し続けるビジュアル

ビジュアルには、多彩なクリエーターが集うクリエーターズクラブ・NEW Creators Clubが開発した「LIVE VI(ライブ・ヴィジュアル・アイデンティティ)」が採用された。このデザインは、来場者の動きや感覚によってリアルタイムに変化する。外部からの刺激に応じて絶えず変容し続けるこのビジュアルは、フェスティバル全体の象徴でもある。

秋の隕石2025東京
画像提供:東京舞台芸術祭実行委員会

また、芸術祭名にも使われている「隕石」は、空から落ちてくる「異物」として、私たちの既成概念に裂け目を入れ、新たな問いを投げかける存在だ。会期中、どのような「隕石」が降り注ぎ、どんな変化が生まれるのか。そうした問いを出発点に、さまざまな試みが準備されている。

秋の隕石2025東京
画像提供:東京舞台芸術祭実行委員会アーティスティックディレクターを務める岡田利規

岡田は記者会見で、「演目や演者だけでなく、観客もまた『隕石』の一つです。観客と舞台の双方向の刺激から新しい価値が生まれることを期待しています。これまで舞台芸術を楽しみにくかった子どもたちや、光や音に敏感な障がいを持つ方々も、疎外感なく楽しめるリラックス・パフォーマンスとして上演する作品もあり、とても楽しみにしています」と語った。

同芸術祭は、「ここにまだないもの」に出合うための場だ。演者と観客がフラットな関係で交わり、言葉や文化の違いを越えて共に何かを生み出す瞬間に立ち合おう。社会の周縁にいる人々を中心に据えた優しい空間の中で、何を感じ、何に心を揺さぶられるかを体験してほしい。 

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